ファインモーションというウマ娘の夫にされるまでの物語   作:こーさん

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#2 たいちょうさんとなかよくなったよ

お姫様と聞いてあなたなら何を想像する?

 

王子に追いかけられた時に器用に片方の靴だけを残した人や、見るからに怪しいおばさんから差し出されたリンゴを食べて永眠した人か?

はたまた自分をカッコいいと思っちゃってる金髪のナンパ師が女性を呼び止める時に使う言葉?

 

皆沢山のことを想像して貰ったと思うが、私が今話しているのはガチのお姫様の話だ。

そうプリンセス、まじのプリンセス。

 

そんなウマ娘がラーメン屋にいて、更には私をトレーナーにすると言った。

信じられるか?事実なんだよ、これ。

 

びっくりポイントなのはトレーナーになって欲しいじゃなくてトレーナーにすると言った点。

頼み事ではなくもはや決定事項とでも言いたげに私に伝えたかと思ったらそのまま何処かに行ってしまった。

 

反論しようと思い声を掛けようとするも、彼女の後ろには既に屈強な黒服の"お友達"が沢山いてとてもじゃないがそんな事を切り出せる雰囲気では無かった。

 

それが昨日の話。

 

「おかしいだろ……」

 

トレーナー室にて現在進行形で頭を悩ませている私。

一日経ったとはいえ、昨日の衝撃はまだ抜けていない。

 

「でも直ぐに居なくなっちゃったもんな」

 

担当との契約には多くはないがちょっとしたルールみたいなのがある。

とはいってもウマ娘側はトレーナーから差し出された契約書に名前を書くだけで解決するのだが。

 

「書かなかったよね……」

 

机の上に置かれている担当契約書。

一応私の欄の必要事項はちゃんと埋めてあり、向こうのサインが済み次第晴れて私たちは契約を結ぶことが出来るのだ。

 

流れこそよくわからなかったが、レースでの走りは圧巻だった。

そんな彼女の走りに惹かれなかった……とは言い切れず。

 

「どうするかな……」

 

私は大きくため息を吐くことしか出来なかった。

 

校内を軽く歩き回っても昨日のウマ娘や彼女の"お友達"の姿さえ見つけられず。

廊下を歩いているウマ娘たちに聞くも知らない、分からないとの回答。

仲が良かったトレーナーたちに聞くと何故か同情の目を向けられた始末だ。

 

「とりあえずターフ行くか」

 

休憩がてら昨日から開催されているレースの続きを見に行く。

別に約束をした訳ではないし、彼女を見なければならないという義務はない。

 

もしかしたら彼女を超える才能に出会えるかもしれないという期待も込めて私はターフに向かった。

 

「時間通りに来るということが出来ないのですか、あなたは」

 

「別に義務ではないでしょう?しかも今日はちょっと見に来ただけです」

 

既にレースを見ていた全身を緑のスーツに身を包んだ女性の隣につく。

そして観客席に設置されている柵にもたれかかるように体重をかけ、人間の私には到底真似出来ない速度で走っている彼女たちを見守る。

 

「毎回見に来てますもんね、あなた」

 

「彼女たちが走っている姿が何よりも好きなので」

 

ターフと同じ、エメラルドグリーンの瞳が真っ直ぐとウマ娘たちを捕らえる。

その姿はどこか浮かれているようで。

 

「走りたいんですか、たづなさん」

 

「正直に言えば……ですね。トレーナーさんが指導をしてくれるなら考えますよ」

 

「えぇ?でも体操服姿はきつい……痛い!冗談ですって!」

 

ヘッドロックをかまされ、身動きを固められる私。

彼女は昔からそうで、直ぐに手を出すタイプでよく困らされていた。

 

「パワハラで訴えますよ」

 

「セクハラで訴えました」

 

「え?」

 

そう言い何処かへ歩き出していくたづなさん。

 

「おーいたづなさん!?最後、最後なんて言いました!?」

 

私の呼び掛けに応じず、そのまま手を軽く振り彼女はターフから去った。

じょ、冗談だよね……?

 

「スタート!」

 

「あ、レース始まったか」

 

実況の声と共に一斉に走り出すウマ娘たち。

まだ指導も受けていないウマ娘といえども本能的に自分の脚質を理解しているらしく、バラバラとバ群が広がる。

 

「へーあの娘も中々いい走りをするもんだな」

 

バ群中団より少し下に位置しているウマ娘。

冷静に周りを見れていて、差しとしては最高の位置につけている。

 

事前に調べ上げていた資料を参考に彼女の特徴を頭に入れる。

えーと……ボブカットのウマ娘っと。

 

「エアグルーヴ……レース後半から力を溜めて爆発させる走りか」

 

「グルーヴさんって生徒会副会長なんだよ!」

 

「へぇ……レースと両立するのも難しいだろうに」

 

「口調こそちょっと厳しいかもだけどとても優しい方なんだよ〜」

 

「なるほど……?」

 

振り向き会話をしていた女性を確認する。

両耳にクローバーの耳飾りをつけ、楽しそうに彼女は言う。

 

「ひぇ……殿下」

 

「あ、ひどい!私を見てなんてことを言うの!」

 

先程まで探し回っていた噂のウマ娘、ファインモーションがそこにいた。

 

「殿下って呼び方も嫌!君にはファインって呼んで欲しいな」

 

「遠慮させて頂きます、殿下。昨日のご無礼をお許しください」

 

「むむむ、そんな事いうなら私にだって考えがあるもん!」

 

パンパンと手を叩くファインモーション。

すると何処からともなく昨日の黒服の"お友達"が現れた。

 

「お呼びですか、殿下」

 

「君がファインって呼んでくれないなら隊長さんに叱ってもらいます」

 

「殿下、この男を指導すればいいのですか?」

 

「うん!」

 

笑顔で拳を作っているファインモーション。

その手はジャンケンのグーだと思いたい……パンチのグーじゃなくてジャンケンのグーだと。

 

「丁寧な喋り方もダメ。もっと気軽に接して欲しいな」

 

「わ、分かったファイン。君のいうことを聞くよ」

 

「うむ、分かれば良いっ」

 

私と隊長さんと呼ばれたウマ娘が同時にため息を吐く。

あ、もしかしてあなたも結構苦労している感じですね?

会話を交えた訳ではないが、なんとなく彼女がそう思っている感じがした。

 

「それでトレーナーはなんでここにいるの?」

 

「ファインを探してたんだよ、契約書にサインしなきゃ担当契約は結べないからね」

 

「あ、そうだったんだ。ごめんね」

 

「大丈夫だよ、初めてだもんね」

 

新しいウマ娘を探してたなんて言ってはいけない。

なんとなくそんな感じがする。

 

ファインに持っていたバインダーとペンを差し出し契約書にサインをして貰う。

 

「殿下をお願いします」

 

「隊長さんも頑張りましょう」

 

ファインに聞こえなように私に耳打ちしてくれた隊長さん。

やはり彼女も苦労をしているらしい。

 

「はい、書けたよトレーナー!」

 

「ああ、ありがとうファイン」

 

無事担当契約を結べた私たち。

一体今後のトゥインクルシリーズはどうなるんだろう。

 

パンっと頬を叩き気合いを入れる。

ファインの為にも頑張らないと。

 

「ねぇトレーナー」

 

「どうしたのファイン」

 

「さっきグルーヴさんに対していい走りだなって言ってたけどどういうこと?」

 

「え?」

 

「私を探してた筈なのにどうして走りを褒めてたの?この資料は何?」

 

手に持っているバインダーをふりふりと振る彼女。

あ、これやらかした?

 

「……きだ」

 

「ふぁ、ファイン?」

 

「浮気だああ!!隊長さんやっちゃって!」

 

「かしこまりました、殿下」

 

「え、隊長さん?ちょ、待って、痛い痛い痛い!!!」

 

こうして私に新しい担当バが出来た。

 

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