幻想の白き騎士   作:Yukifuki 122

3 / 3
遅れてしまい、本当に申し訳ありません。

言い訳はしませんが、忠告を一つ

卒業論文を舐めてはいけない


それは、幻想に至る病

「...一夏、すまないがここまでだ。」

「千冬姉?どうかした?」

 

俺を家に送るため、千冬姉は俺を横抱きなしながら空を駆けていた。自分で操縦こそしていないが、初めてのIS飛行とさらに姉に抱かれているという特異な状況に、羞恥心と好奇心が混ざり合った気持ちだった

そんな時、唐突に千冬姉が話しかけてきた

 

「お前は先に帰れ」

「なん、、、うわぁ!」

 

理由を聞こうと口を開いた瞬間に、千冬姉が急下降したおかげで叫び声に変わる

 

「すまん」

 

俺を住宅街の真ん中に下ろすと、千冬姉はこちらを振り返らずに、空中へと飛翔した

 

「なんなんだよ、、、!」

 

俺は遠くなっていく姉の背中を見ながら、そうつぶやく他なかった

 

 

☆☆☆☆☆

 

一夏を街中におろしてから、15分程度、私はどこともわからない山の上空にいた

 

「さて、もういいだろう」

 

そう虚空に問いかけると、前方の空間が歪み一機のISが姿を現す

それは篠ノ之束に次いでISに詳しいはずの千冬が知らないISだった

 

アーマーは鮮やかな赤で、白騎士のように全身をアーマーで覆うフルアーマータイプだった

第二世代が最新となる現代ISには珍しい頭をすっぽりと覆うフルフェイスアーマーが目立っている

 

「目的はなんだ?ん?」

 

そんな問いかけに何も答えず、紅いISは右手にコールしたブレードをこちらに突きつける

 

「反応はなしか、、、まるで傀儡だな」

 

挑発じみた言葉を吐いた瞬間、相手の雰囲気が変わった

背部の飛行ユニットから高音が鳴り響き、聞き取れないほどになったと同時に爆発的な速度でこちらに突進してきた

 

「ほう、瞬時加速(イグニッション・ブースト)か。ある程度はできるようだな」

 

紅いISが超スピードでこちらに向かってくる中、千冬は前身から力を抜きつつ言葉を続ける

 

「だが甘い」

 

次の瞬間、千冬の右手には雪片が握られ紅いISが放った上段からの斬撃を受けていた

油断はしない、しかし余裕は無くさない

現最強を誇る織村千冬だからこそできる力の抜き方だった

 

「早いだけでは私は墜とせないぞ、小娘」

 

その後の展開は一方的なものだった

紅いISは、まるで子供のようにがむしゃらに剣を振り翳し続ける

しかし千冬には一太刀も入ることはなく、掠りすらさせず、だが千冬からの的確な反撃により確実にSE(シールド・エネルギー)を削られていく

 

「もういいだろう」

 

戦闘とも言えないものが始まってそろそろ10分ほど経とうという時、千冬が声を発する

 

「お前では、私を堕とすどころか掠らせることもできないさ」

 

紅いISはまた激昂したように突進したが、斬撃に合わせるように放たれたら千冬のカウンターによって吹き飛ばされる

10メートルほど錐揉みしながら、やっとのことで機体の制御を取り戻した

 

「もう一度問う、なにが目的だ?」

 

切先を紅いISに向けながら、千冬はもう一度問いかける

数瞬の沈黙の後、紅いISが答えた

 

「あなたが、、」

 

「なんだ、喋れたのか」

 

千冬は今まで沈黙してきた相手の、予想より幼い声に少し驚いたように声を発した

しかし、紅いISは千冬の反応に意に返さず言葉を続ける

 

「あなたがいなければ、、一夏は危ない目に遭うことはなかった!」

 

「ほう、、、?」

 

「あなたがISにうつつを抜かさなければ、一夏寂しい思いをすることはなかった!あなたがいなければ!!」

 

               「黙れ」

 

その声は、とても冷たく、しかし身を焦がすほどの怒りが込められていた

 

「!!」

 

紅いISは二の句がつげなくなっていた

 

「お前に何がわかる」

 

雪片の柄からミシミシと音が鳴る

千冬の体から、目には見えないが、全てを圧倒するほどの何かが滲み出る

 

「、、っ!」

 

それを一新に浴びる紅いISは、身動き一つ取れず、自分の体が意思とは正反対にガタガタと震えていた

 

「死ね」

 

紅いISの瞬時加速(イグニッション・ブースト)とは比べるべくもない速度で、千冬が突き進む

雪片の刀身が開き、実体のないビーム状の刃が伸びた

紅いISは、自分へと迫る死の予感をただ見つめるしかできなかった

 

 

☆☆☆☆☆

 

「千冬姉遅いな、、、」

 

俺は家のソファに座り、ただ千冬姉の帰りを待っていた

 

「飯、冷めちまうよ、、」

 

そう広くないが、しかし思い出が詰まったテーブルの上には所狭しとご馳走が並ぶ

千冬姉の優勝祝いに、二人きりでお祝いをするつもりだったが、その本人が帰ってこないのだから始まられるはずもない

 

「やっぱり俺のせいだ、、、」

 

考えないようにしてたことが、俺の心を暗く蝕んでいく

 

「ごめん、、謝るから、、、頼むから帰ってきてくれよ」

 

俺は誰に言うわけでもなく、ただ謝る

 

パキッ!

 

「なんだ!?」

 

何かが割れたような音に驚き、音のした方を見ると、テーブルに置かれていた千冬姉の茶碗が真っ二つに、まるで()()両断されたかのように綺麗に割れていた

それは一年前、初めてのバイト代を使って送ったものだった

その時の千冬姉の恥ずかしそうに、しかしとても綺麗な笑顔は俺の大切な思い出になっている

そんな茶碗が急に割れてしまったのに、急な寂しさを感じながら長年の家事により身についた動きで割れた茶碗を片付けていく

 

「早く帰ってきてれるよ、千冬姉」

 

その声は、誰もいないリビングによくひびいた

 

 




次回幻想入り!

デュエルスタンバイ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。