たきなと一緒に左遷されたリコリスが飯を食べる話   作:ケーズ雷電

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 リコリコのアニメ4話は世界平和のために永久無料公開すべきそうすべき。



 あと、読み返してて『辛(かのと)』って名前が死ぬほど読みづらかったので、今後オリ主の名前はたきなに習って平仮名表記の『小山かのと』にします。
 名前の由来は『山椒は小粒でもぴりりと辛い』です。


 ぴりりと辛い(激痛に叫びを上げるたきなさん)。



団子三兄弟 500円

 

 DAとは。

 国を守るための公的機密組織であり、危険人物を暗殺する超法規的機関です。

 私たちリコリスはこのDAに所属し、暗殺、訓練、襲撃の日々を送っています。

 

 その日々に終わりはありません。

 あるとすれば、死あるのみです。

 

 DAはリコリスとして引き取った孤児の戸籍情報を抹消しています。

 当然、足抜けなんてできません。よしんば脱走できたとして、無戸籍の少女がひとり生きていく方法なんて殺し屋家業よりも悲惨な末路があるのみでしょう。

 

 私は運良く親切な誰かに保護されて平穏な生活が送れるなんて信じません。

 もし日本人の善性とやらがそんなに優れていたなら、DAなんて組織も、殺し屋として育てられる孤児も存在するはずがありません。

 

 所詮世の中は弱肉強食。

 リコリスという人材を消費することに躊躇いのない組織で、弱者で居ることは自らの首を締め、強くならねば敵に殺されます。

 ならば、DAという組織が整えた環境で、自分が食う側になるために牙を磨くことを選ぶべき。

 

 

 そんな中で起こったのが、たきなの命令違反であり、そして左遷の噂でした。

 

 

 たきなはそもそも去年転属したばかりです。出戻りかといえば、どうやらそうではないらしく。DAにはいられなくなるという噂が波のように広まりました。

 

 DAにはいられない。

 それはつまり、DAではない外部組織への移籍を意味します。

 

 教官のひとりにそのことを確かめた時、私が感じた衝撃は筆舌に尽くしがたく、しばらく周囲に心配されるほど呆然としました。

 

 元より、後始末や工作を担当する部隊の存在は知っていましたが、そこに戸籍を消してまで囲い込んでいるリコリスが移籍できるという事実は、まさに私にとって青天の霹靂だったのです。

 

 私は死にたくありません。

 

 だから、たきなの左遷に便乗することにしました。

 左遷とは建前で、容赦ない殺処分が待っている可能性を考えると大いに賭けでしたが、どのみち危険な家業を続けていればどこかで鬼籍に入っていたことでしょう。

 ……無戸籍が鬼籍に入れるかはともかくとして。

 

 

「どれだけ酷くても、前世よりはマシでしょう」

 

 

 既に前世の没年は超えているのですから。

 そう気楽に考えて、命を賭けに投じました。

 

 

 ☆

 

 

 3色ある串団子から抹茶を選び、口に運びます。

 上品な甘さのお団子を堪能すると、その甘みを引き立てていた抹茶のほのかな苦味を、反対の手に持ったどら焼きバーガーで打ち消します。

 舌触りのよいどら焼きの生地に包まれた、ほんのり辛口のブルーベリーソースとリンゴのシャキシャキとした食感を楽しむと、口内に残った生クリームを煎茶で流し込みます。

 

 

「―――はふぅ」

 

 

 一息つくと、煎茶の熱とともに数多の甘味がもたらす多幸感が口から漏れ出すようでした。

 

 串団子の残りを根こそぎ口にすると、その串で桜色のおはぎを両断。

 季節の味を余すことなく味わい、次の獲物はどれにしようかと、私は内心舌なめずりを止められません。

 

 いま、私の前には喫茶リコリコのメニューが並んでいます。

 DAを追われた私とたきなが喫茶リコリコに配属された日、先輩リコリスが突然たきなを連れてお泊りすると言い出し、残った新人の私が急遽夜のシフトに入ることになりました。

 私はなんとか馴れない接客業をこなし、たきなも突発的に発生した民間人の襲撃事件を無事に撃退。

 その労をねぎらうことも兼ねて、今夜は喫茶リコリコで歓迎会を開いてもらえることになりました。

 

 そこで、店長のミカさんが信じられないことを口にたのです。

 

 

「今日は俺の奢りだ。好きなだけ食べていってくれ」

 

 

 と。

 

 だから私は、遠慮なく言いました。

 

 

「メニューの端から端まで全部ください」

 

 

 と。

 

 そして私はリコリコのメニューを食べ尽くし、いまは折り返して2周目に突入したところです。

 

 

「ちょっと先生! こんなに食べさせちゃって大丈夫なの? お店潰れない?」

 

「だ、大丈夫だ。問題ない」

 

「声が震えてるぞオッサン」

 

 

 それにしても店長は実に太っ腹ですね。

 配属になるまでの経緯をかいつまんで話したのですが、とても親身になって聞いてくれましたし。DAに関わる大人とは信じられないくらい良い人です。

 

 おかげでこうして、何の気兼ねもなく好きなものを好きなだけ食べることができます。

 前々から1度はやってみたいと思ってはいたものの、サードのお小遣いじゃ確実に破産しますからね。

 

 命を賭けた転属の甲斐があったというものです。

 どうやら喫茶リコリコは怪しい取引現場に使われたり、二階で自由恋愛をしたりするお店では無いようですし。たきなから聞いたリコリスとしての仕事内容からも、追い出し部屋を兼ねた謎の部署ということは無いでしょう。

 

 

「かのと、流石に食べ過ぎじゃないですか」

 

 

 口の中の甘味を店長肝いりのブレンドコーヒーでリセットし、おうどんををすすっていると、隣のたきなが話しかけてきました。

 

 

「いくらなんでもお店の食材を食べ尽くすのはどうかと思います」

 

「心配しなくても、たきなの分まで食べたりはしませんよ」

 

「いやそういうことじゃないです」

 

「私だって、奢りだからといって食べまくるのが非常識だということぐらい心得ています。

 ちゃんと腹八分目にとどめますよ」

 

「はらはちぶんめ……?」

 

 

 たきなは懐からスマートフォンを取り出すと、辞書アプリを起動して単語の意味を調べ、そして首をひねっていました。

 座学は得意だと思っていたのですが、どうやら国語は苦手分野だったようです。

 外見は大和撫子然とした美少女のたきなに、意外な弱点発見ですね。

 

 

「それに、あと一皿頼んだらそれで最後にしようと思っていたんです。

 店長さん、注文いいですか?」

 

「!

 ああ、何でもいいぞ。言ってみろ」

 

「お団子をお願いします。

 大きいお皿にピラミッドみたいに積み上げたお団子を食べるのが夢だったんです」

 

「………………………………………………………………。

 わかった、用意しよう」 

 

 

 店長さんは快く引き受けてくださいました。

 

 このように、喫茶リコリコは実にアットホームな良い職場です。

 ですが、懸念事項が無いとは言い切れないんですね。

 

 

「合掌」

 

「なむなむ」

 

 

 たとえば、店長さんの背中に手を合わせる先輩リコリスだとか。

 

 

 ☆

 

 

 私には前世の記憶があります。

 といっても大した前世ではなく、ただ恵まれない環境に産まれ、不幸なまま終えた人生でした。

 

 デキ婚で駆け落ちした両親のもとに産まれ、母親は貧乏暮らしに耐えられず蒸発。父親はコンビニ弁当を買ってくること以外は育児放棄。

 

 親は無くとも、とはいいますが。

 衣食住すら足りずに育った子供が、まともに社会生活を送れるはずもなく。

 

 小学校では髪が臭うとハサミで切られ、

 

 中学校では文房具欲しさに自販機の下とお釣り取り出し口を漁り、集めたお金を不良に遊ぶ金欲しさでカツ上げされ、

 

 高校生になったら父親が酒代のために身体を売れと言い、反抗したら酒瓶で頭をカチ割られて死にました。

 

 前世ではこうして理不尽と暴力に晒され、呆気なくその幕を閉じたのです。

 

 だから、私は死にたくありません。

 

 二度目の生は、きっと私の前世を憐れんだ神様がくださった贈り物ギフトなのでしょう。

 今世でも生まれには恵まれませんでしたが、DAに拾われたことは幸運でした。

 

 整えられた訓練施設。

 経験豊富な教官たち。

 行き届いた支給品。

 湯水の如く供給される消耗品。

 

 そして何より、常人ならざる筋力を持って産まれたこの身体。

 

 神様からの贈り物とDAが優秀なリコリスを育てるために投じたあらゆる資源を、私はひたすら自分の力とするためだけに費やしました。

 

 もう二度と理不尽な暴力に晒されないために。

 食われる側ではなく食う側になるために。

 今世こそ、死なないために。

 

 こうして私は、理不尽な暴力そのものになったのです。

 

 ―――だというのに。

 

 

「千束さんは、なぜ敵を殺さないんですか?」

 

 

 戦場でそんなことをしていたら、命がいくつあっても足りないじゃないですか。

 

 

 ☆

 

 

「千束さんは、なぜ敵を殺さないんですか?」

 

「へっ?」

 

 

 不意に投げかけられた問いに、千束は思わず相手の顔を見返した。

 たきなから聞いた、仲間想いの心優しいリコリスの印象とはかけ離れた言葉だった。

 

 小山かのと。

 井ノ上たきなと共に転属してきた小さなリコリスは、ひとことで表すと小動物。あえて加えるならマスコットのような少女だった。

 

 可愛いというより綺麗な顔立ちでありながら、ぶかぶかのリコリス制服で袖を余らせている姿には、姉の制服を背伸びして着ている子供ような微笑ましさがある。

 特に、リコリコのスイーツを堪能している姿など……本人の名誉のために「とても可愛かった」としておこう。

 

 とにかく、かのとが喫茶リコリスに来たことは、千束にとって嬉しいサプライズだった。配属されるのは一人と聞いていたので、思わず頬ずりしたほどといえば、千束の喜び様が伝わるだろうか。

 

 どこか思い詰めた様子のたきなと無事に打ち解け、さてもう一人の新人と仲良くなろうと開いた歓迎会。

 先輩を調理と配膳で忙殺してくれた大型新人は、ちょうど千束が更衣室で下着姿になったところに入るや衝撃の一言を口にした。

 

 

「千束さんは、なぜ敵を殺さないんですか?」

 

「二度も言わなくていいから!」

 

「私たちに武器を向ける敵をわざわざ生かしておくなんて、無用な危険を増やす行為です。どうしてそんなことを?」

 

「どうしてって、そりゃあ気分が悪いからだよ。敵だって死にたくないだろうし、私も殺したくない。

 ホラ、みんなはっぴー」

 

「……千束さん、ちょっと屈んでもらえますか」

 

「えっなになに? こう?」

 

「もう少し」

 

 

 ぐい、と思いのほか力強く肩を降ろされ、

 そして、かのとの右手が滑るように千束の首を掴んだ。

 

 

「忠告しますが、私は片手で人の頚椎を握り潰せます」

 

「ちょっ、まっ」

 

 

 反射的に距離を取ろうと屈めた膝と背中を伸ばそうとするも、その動きは左手一本で抑え込まれた。

 

 細い首にかのとの指が食い込む。

 気道も動脈も圧迫せず、けれど直接背骨を鷲掴みにされたような嫌な感触に、千束の心臓が幻肢痛じみた高い脈を打った。

 

 訓練で身体に染み付いた習性が、殺られる前に武器を取ることを求めるが、生憎と今の千束は丸腰だ。

 

 

(こいつ人が無防備になったタイミングで奇襲したな!?

 他のリコリスには理解できないこだわりだって自覚はしてたけど、そこまでするかフツー!)

 

 

「もう一度だけ聞きます。何故ですか」

 

「……わかったよ、降参。

 ちゃんと話すから脊髄を素手で引っこ抜くのはやめて」

 

「そこまで言ってません」

 

 

 出来ないとは言わないらしい。

 

 こうしてDA最強のリコリスは、下着姿で両手を上げるという屈辱的な姿で制圧されたのだった。

 

 

 





 ぐへへ。

 ↑ぶっちゃけこれがやりたかっだけ。


 以上、オリ主を掘り下げていったらいつの間にかやべー奴になってたの巻でした。


 千束って伝説のリコリスの立場を確立してなかったら、絶対に周囲と揉める主義してますよね。

 例えば新人として配属された『秩序/善』属性の千束が「暗殺者だけど、できれば敵も助けたいのです!」と言って周囲と衝突しながら成長していくストーリーとかが思い浮かんで、よくよく考えたらうちのオリ主との折り合い悪くね? となって書いたのが今回でした。

 次回でちゃんと百合するので許してくださいなんでもしまかぜ。




Q1.もし左遷先が殺処分場や懲罰大隊的な特攻隊だったら?

A1.たきなを唆して反逆 → 二人で逃避行。
  これはこれで百合としては有り?


Q2.オリ主が理不尽な暴力とか標榜していいの?

A2.暴力の対象が自分以下の理不尽な暴力なのでOK。
  なお、どれだけ大きな理不尽だろうと、自分より大きな暴力には立ち向かわない模様。

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