ようこそ 逆さまの世界へ   作:User3580

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第十話 黒歌と白音の逃走

 

宝刀から逃げるように説得され森に黒歌と白音は逃げていた。

何かが必ず追いかけてくることが怖かった。

見えない敵が迫ってくる心理的な恐怖が。

でも恐怖なんかより何よりも置いてきてしまった宝刀が心底心配だった。

 

助けに行きたい。けど今の自分達じゃ邪魔になる。

もし助けに向かったとして自分達が危なくなと攻撃を庇って宝刀が死ぬかもしれない。

彼ならそうする。だって二ヶ月生活してたんだからそれくらいわかる。

彼は私達の為に死ぬことを恐れてないし助けれて良かったと言いかねない。

 

 

黒歌は白音が着いてきているか確認する。

見ると白音は息絶え絶えの状態だった。しまった。私は気などで闘気を纏ったり基本的に身体能力を底上げしている。

だけど白音はまだ仙術など闘気があまり使えない。

 

黒歌は一旦深呼吸して自分を落ち着かせる。

よく宝刀が焦ったら何も生まれないから絶対に深呼吸して思考を整理すると言ってたから試す。

 

すぅ〜〜はぁ〜〜、すぅ〜〜はぁ〜〜

 

脳に酸素が行き渡り視野が広くなる。

 

よし!と両頬を叩く。

まず今しないといけない事は何個かある。

体力がなくなった白音を休ませること。

敵に見つからないように認識阻害を行う事。

認識阻害を行ったら追ってくる敵を確認すること。

 

確か兵士2人が追手として来るはず。

白音には今から敵を探知することを伝え少しでも休んでもらう。

仙術で探知を行う。それに気が付かないなんてどれだけ慌ててるのよ。

そう後悔しながら森を探っていく。

 

探ると何故か一人にしか反応しない。

おかしい。あの上級悪魔は兵士を二人で襲わせると言っていた。

もう一度、ゆっくりと仙術に神経を注いで探知を行う。

だがやっぱり一人しか探知出来ない。

 

兵士だから私の探知を超えることは出来ないはず、

ならばあの場で何かあった?例えば宝刀が二人がいこうとした瞬間に倒すとか?

いやそれは流石に無理か。

 

「白音、今探知したにゃ!

 あの悪魔が言った二人のはず、でも、、

 二回探知しても一人しか反応しないにゃ。」

 

「うん、でも黒歌お姉ちゃんの探知を

 ただの兵士が掻い潜るのは無理。

 僧侶が実は追手?」

 

「そうかも知れない。

 でも今は隠れるにゃ!

 宝刀の為にも私達は出来ることする。」   

 

そう言った瞬間何かが目の前に現れた。

見つかった!と思った時には蹴り飛ばされていた。

 

ドンっと音とともに目の前にいた姉が消えた。

「お姉ちゃん!!」

 

「よそ見はいけないよ〜

 はいっ!グーパーーンチ」

のほほんとした声とは他所にギリギリ対応できるか出来ない速度で拳が迫る。

白音は瞬時に避ける選択肢を捨て足に力に溜める。

そして左腕を犠牲にすることを決めて拳を受ける。

 

バキっと骨が折れたが飛ばされることもなくなんとか耐える事ができた。

「あれ〜?私結構力入れたんだけどな〜

 ふむふむ、足に力を入れて我慢したんだ〜」

 

アホそうに見えて観察眼があるタイプか。

確か宝刀がそういうタイプが1番タチが悪いって言ってたな。

そういう奴は大体実力が本物と。

即座に白音は倒れている姉の為に時間をかせぐ。

 

「あの、 一つ聞いていいですか?」

 

「なになに〜 

 このキャロットちゃん答えちゃうよ〜

 ぶいぶいかもん白いのちゃん!」

やっぱただのアホかもしれない。

 

「ゲームで二人追いかけると言ってましたが、

 多分あなた一人ですよね?

 もしかして何かありました? 殺されたとか」

 

「ふむふむ、鋭いね〜君、確か白音ちゃん!」

すると声が変わり雰囲気が冷たくなる。

「それはあなたの少年が一瞬で殺したんだよ。

 追手予定の兵士をね。

 凄まじかったよ私でも対応できない速度だった。

 見事の一言だったよ。あれは、、

 転移魔法陣から出てきた瞬間にね。

 まさかあんな隙を狙ってかつ躊躇いなく首を刎ねるなんて。

 自分は外道に堕ちようとも護る目をしていた。

 あんな幼子がだよ。あれは物の怪の類だね。」

雰囲気が強者のそれだった。やはり宝刀の言葉は正しかった。

下手に反撃しないでよかった。

 

 

それにしてもやはり宝刀がやってくれたんだ。

転移魔法から出てきた瞬間に首を刎ねるなんてやっぱ規格外。

場の空気、TPOを守るべきだが宝刀の冷めた瞳から首を刎ねる姿を想像すると少し顔が熱くなってしまう。

 

「あれれ〜あれれ〜?

 もしかして〜白いのちゃんちょっとあれ?

 あの、その私はいいと思うよ。

 体質は人それぞれだから。

 まさか隠れM属性。キャロットさん驚き!

なんかアホの子に引かれた。凄い屈辱。

後半素で真面目モードになってたし。あれ?ってどれよ。

あとちっちゃくボソボソ何言ってるの!

 

「まぁ黒いのちゃんの〜

 時間稼ぎもそそろにして〜

 そろそろ捕縛しちゃうぞ〜」

 

バレた!!でもお姉ちゃんも復活してるから行く!

お姉ちゃんが気流を使ってキャロットの魔力や生命エネルギーを乱しながら攻撃用の仙術を発動する。

私はお姉ちゃんが仙術で撹乱している所を隙を見つけ次第殴っていく。

でも全部届くか届かないところで避けられる。

 

「だめだよ〜白いのちゃん!

 わかりやすすぎ〜。

 狙うよ〜って感じで。

 狙うならこんな感じだよ。」

 

キャロットがいつのまにか白音の背後に回っており、横腹に重い足蹴りを食らってしまう。

予想外なスピードの攻撃であった為に防御や足元に力を込めることが出来ずに蹴られた方向に物凄い勢いで吹っ飛ぶ。

木を何本か倒すほどの威力だったようで白音はそのまま気を失った。

倒れる寸前「宝刀」と声が聞こえた。

 

黒歌は白音に向かいたかったが我慢をする。

ここで私が取り乱して白音に向かってしまうと相手の思う壺だ。

必ず私は倒されてはいけない。

そうなると宝刀が何の為に私たちのために犠牲になったんだ。

 

「黒いのちゃんは〜ちょっと強いから。

 私も〜頑張っちゃうぞ!

 騎士なんだから剣でいかないとね〜」

黒歌は衝撃だった。

さっきまでの体術の攻防でも分かる強さ。

だが本質は剣。手を抜かられていたことがなによりも悪夢だ。

 

これは無理かもと諦めかけていると

ガサガサと茂みから和服をきた男が出てきた。

刀を腰にさげ見るからにサムライと呼べる。

キャロットが出てきた男に声をかける。

 

「あっ!おっき〜〜!

 久ぶりでござんすね!」

 

クソと黒歌は思った。ここで新手なんて、、。

ごめんなさい、宝刀。ここまでかも、

ギリギリ保っていた心が折れてしまった。

 

男はキャロットを見て苦虫を噛み潰した顔をする。

「何がおっきーですか。

 斬りますよ。

 私は貴方が嫌いです。この人格破綻者が。」

 

「そんなこと言って〜

 照れ隠しかな〜かな〜?」

私でも思うこれはうざいと。

 

「今日は本当に厄日です。

 久しぶりの休日だからここに生えてる珍しい果物を取りに来ただけだというのに、、

 それで貴方は何をしようとしてるので?」

キャロットを睨む男。

 

「それはね〜ゴミからの命令だよ〜

 なんか猫ちゃん2匹を眷属にしたいみたいでね〜

 連行最中なのですよ!!」

 

「クロス・プラソンですか、、

 あの人は救いようがないですね。

 完全に無理矢理でしょう?

 ここは一つ見逃せないので私の矮小な力ではありますが阻止させていただきます。」

スッと居合の構えをする。

 

「ん〜救いようがないのは同意だね〜

 私ですら屑だと思うよ。

 う〜ん。戦いたいけどまだ無理かな。

 現魔王の騎士相手に私では無理だから今回は諦めて尻尾巻いて逃げさせて貰います!!」

ビシッと敬礼をするキャロット。

もう小物キャラにしか見えないわ。

 

「ならそうして下さい。

 ただこれは上に報告しますからね。

 悪しからず。」

 

「ん〜それ意味ないよ!

 なんかゴミ死んだみたいだよ?

 なんかうちの子ほとんど死んでるみたい。

 まさか、あの少年にね〜。

 女王と兵士は転移魔法してるから生きてるけど」

この言葉に黒歌は衝撃しかなかった。

1人でもこんなに強いのにそれを人間の小学生の男の子が上級悪魔と眷属をこの時間で倒した?

なんて化け物なんだと思うよりも私たちのために理不尽な現実を変えてくれる少年が何よりも愛おしいと思った。

 

 

「は?殺された?それは本当ですか?

 彼は屑ですが力は間違いなく上級悪魔ですよ。

 それに眷属が貴方含め3人しか残っていない?

 一体誰が?」

男は物凄い慌て方をしてた。

 

「あ〜おっきー慌てすぎ〜

 どんだけ質問すんのよ〜

 まぁ自分目で見れば良いよ〜」

慌ててる男を腹を抱えて笑ってる。

 

「貴方はこれからどうするのです?」

去ろうとする前に男が聞いた。

 

「そりゃ決まってるよ〜

 より強くなるためそれだけだよ。

 私も守りたい者があるからね。」 

じゃあねとキャロットは消えた。

 

 

黒歌は急いで白音に近寄りケガを見る。

重症であることは間違いないが命に別状はなく今はそれだけでホッとする。

おっきーと呼ばれる人が近づいてきた。

 

黒歌は警戒する。今は誰も信用出来ない。

私たちが信用するのは宝刀だけ。これは絶対。

たった1日だけ帰ってきただけでこんな状況になっているのだ。

ここで警戒を怠るなんて愚の骨頂だ。

 

 

ふしゃーと言わん張りに威嚇する。

男は警戒する黒歌を見て歩を止めて両手を上げて自分は敵じゃないと行動でします。

 

「無闇に近づいて申し訳ないです。

 私は貴方達の敵ではありません。」

そう言うと持っていた刀を私たちの方へポイッと投げる。これで大丈夫ですか?と。

 

「助けてくれたのは感謝するにゃ。

 でも私たちは貴方を信用出来ない、

 少し帰ってきただけでこんな状況なのよ。

 貴方だって誰かも分からない。」

近づいてくるなと。

 

「改めて名も申さずすいません。

 私は沖田総司と申します。転生悪魔です。

 現四大魔王ことサーゼクス・ルシファーの騎士を務めております。」

 

サーゼクス・ルシファー

現魔王であり超越者。最強を体現する悪魔。

そして慈愛の家系。

 

黒歌はこの沖田と魔王である悪魔を信用はしないが慈愛の家系であることを利用する。

こんな状況なのだから慈愛を名乗る者ならば放っておくことは出来ない筈だ。

ならば利用する。いくら悪役のような行動でも白音と宝刀は守り抜く。

 

「申し訳ありませんでした。

 まさかそんなお方とは思わず。

 先ほどまでの失礼な態度を取りながらお願いするのは申し訳ないのですがキャロットが言っていた少年は私の家族です。

 戦いで傷ついている筈なんです。

 お願いします。家族を助けて下さい。」

 

 黒歌は土下座をして沖田に願う。

 

「大丈夫です。そんな事しないで下さい。

 まずは頭を上げて欲しい。

 その白い少女は私が背負います。

 そして早く少年を助けに行きましょう。」

 

白音を背負わせる事は嫌だったので自分で背負い沖田と急いで宝刀と別れた場所へ向かった。

 

 

そこには首と身体が離れた死体しかなかった。

そして地面一面の血。

 

「な、なんですかこの惨劇は、、

 本当にこれを少年が、、。」

沖田は呆然としていた。

 

 

黒歌はゴミ屑共がどうなろうとどうでもよかった。

多分、今どんなスプラッターな状況でもどうでも良いと言える。

何よりもどんなことよりも宝刀の存在だ。

何処?何処にいるの?宝刀!宝刀!宝刀!!

 

ひたすら仙術で探知を行う。でも反応がない。

探知だけじゃなく戦闘現場を走り回る。

全力で闘気を纏わして駆け回る。

でも何処にもいない。

 

「あの、黒歌さん少年の特徴は?」

 

「うるさい!黙れ!」

つい怒鳴ってしまう。今こいつと喋っている程の余裕はない。

「子供がいたら宝刀よ!!

 それくらい考えろよ!!!」

 

それから何時間も探し回る。

でも何処にも居なかった。

 

もしかしたら実家に戻っているかもしれないと沖田を無視して駆ける。

家に着くとそこにも沢山の死体があった。

黒歌からすればどうでもいいので何よりも宝刀。

 

家の中を本当に隅から隅まで探す。

大声で呼んだりもした。でも応えは返ってこない。

 

気がつけば昨日3人で寝た場所に居た。

そこにはピアスが置いてあった。

白色と灰色のスティックピアスと黒色と灰色のスティックピアス。

でも白色と黒色のピアスがない。

もう宝刀が居ないかのように。

黒歌の心は完全にへし折れてしまった。

 

「ああああぁぁぁあ」 

叫ぶしかなかった。愛し子が何処にも居ない。

私たちの核が何処にもいない。

もう黒歌は限界だった。

叫び終わると宝刀の居ない現実と今までの疲れで倒れた。

 

 

沖田は叫び倒れる少女に何もいえなかった。

人はここまで人を愛すことが出来るのかと、、。

必死と言う言葉を体現する少女に憐れを抱き、まずは治療の為に自分の住んでいる上司である魔王の屋敷へ2人を背負いその場を離れた。

 

 

「これは、サーゼクス様に伝えねば。

 何よりも緊急事案として。」

 

 

 

 

 

そして黒歌と白音の物語は宝刀を交えぬまま進む。

 

 

 





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