ようこそ 逆さまの世界へ   作:User3580

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この回はシリアスが強めです。



未来へ祈る堕天使
第一話 ここは何処?(シリアスです)


 

宝刀は身体の痛みと共に起きた。

上半身を起こして周りを見るが何処かの寝室らしき所で寝ていることは理解できた。

「ここどこ?」

身体中の痛みを我慢して立ち上がり部屋を出る。

 

 

廊下をウロウロして捜索すると窓から子供の笑い声が聞こえる。

気になって覗くと外では僕よりも幼い十数人の子供たちが追いかけっこをしたりチャンバラごっこをしたりとても楽しそうだ。

僕には経験出来なかったことが少しだけ羨ましかったけどこうやって幸せな姿を見ると心が少し落ち着いくな。

 

 

眺めていると後ろから声がかけられた。

 

「あっ!いつのまに起きたの?

 ダメよ!まだ傷はまだ塞がってないんだから」

 

 

いきなり声をかけられたことで身体が咄嗟に動き、逆撫を出して声を掛けた者の首に添わせる。

声を掛けてきた者を見ると包帯や医療器具を持った女性のようで、明らかに自分を心配して声を掛けてくれた事を理解して逆撫を収めて謝罪した。

「ごめんなさい!

 身体が咄嗟に動いてしまって、、。」

バッと頭を下げて何度も謝罪する。

 

 

「大丈夫よ。流石にまさか声を掛けたら首チョンパされかけるとは思わなかった。でも驚いたけど怒ってないわ。」

優しい表情で心配ないと言ってくれた。

 

 

「ありがとうございます。

 一つ聞きたいのですがここは何処ですか?

 僕は死にかけていたはずですが、、。」

 

 

「ここはね、安寧の理想郷って呼ぶ屋敷。

 ある悪魔様が秘密裏に作ってくれた場所。

 もちろん冥界の何処かにあるよ。

 治療は私がしたわ!毒も完治よ。

 腕もほぼばっちり後傷にもないわ。」

 

 

「では、保護していただいたと言うことですか?

 治療も感謝します。ありがとうございます。

 ですが僕は追われ者なのですぐに出て行きます。

 手当いただきありがとうございました。

 何も感謝を返せないのは申し訳ないです。」

では失礼しますと言い残し、屋敷から出ていこうとすると強い力で腕を掴まれ足を止まられてしまう。

 

 

「もう一度言うわ!ダメよ。

 貴方の事情も含めて話をしたいから一度部屋に戻りましょう」

手を引かれるが何故か手を離さないでいた。

 

 

部屋に戻るとお互い椅子に座る。

 

「まずは自己紹介よね。

 私はトワ。トワ・ヴァレイよ。

 堕天使でもあるわ。」

 

トワと呼ばれる女性は背中から4対4の計8枚の黒い羽を生やした翼を見せた。僕は綺麗だと思って自然と手が羽に近づき触ろうたしたら手を叩かれた。

 

「淑女の羽は簡単に触っちゃダメよ。

 それで君は?」

 

 

「僕は宝刀で人間です。

 歳はわかりませんが小学校ではニ年生でした。」

 

自分の事を話すにしても考えてみれば自己紹介出来るものがなくてこう説明するしかない。

 

 

名前を書いたトワは少し考える素振りをした。

「宝刀ね。改めてよろしく。

 さっき話のだけどまずは私から話をするわ聞いてちょうだい。」

 

 

トワは安寧の理想郷について話してくれた。

ここはトワが一人で始めた人探しから発端として作られた場所らしい。

 

何年か前に一度堕天使に襲われていた家族を救出するも赤子だけしか助けることが出来ず一緒に連れて行こうかとも考えたが生活リズムも種族も違うため人間の世界に帰した。

 

だが、その子に宿っていた神器の強大さ故にまた狙われてないから不安となり探し回っていたらその子ではないが同じように悪魔からは眷属、堕天使からは神器を狙われていたり家族から神器の不気味さに捨てたれた子供たちを放っておくことが出来ずにこうして安寧の理想郷でが匿っているとのこと。

 

子供たちを救出している中で地位の高い悪魔様らしき存在がトワさんの行動に感動したらしくこうして屋敷を与えられて不安なく正に理想郷として生活しているそうだ。

この場所は冥界の隠れ場所のようでなかなか広大な土地であり資源にも恵まれてながらも魔獣も出ることなく本当に安心できる場所のようだ。

そのかわりここを知られると土地や子供たちの有用性によって大変なことになるようでトワを含め大人たちが守っているらしい。

 

 

「そしてね私には特別な力にがある。

 未来の魔眼が備わってる。

 これは見通す異能と呼ばれてる。この力は対象に願う人の未来が見える。でもきちんとその対象の名前や姿などある程度知らないとぼやけてみえる。

 だからもう一度会いたいその子を見つけたいと思うとその子くらいの子供が大変な目に合っている情景が浮かぶの。

 そして毎回助けにいってこうして保護していく。

 ちゃんと保護されたいかは確認してるわよ?

 で、今回も未来視で見つけたのがあなたよ。」

 

何があったか教えてくれない?

 

 

宝刀は悩んだが伝える事にした。

この人からは悪感情というものが一切感じることもないし信用に値すると感じたから。

 

「まずは改めてありがとうございました。

 まずは何故人間の僕が居たかを説明します。

 長くなりますが聞いてください。」

 

 

そこから宝刀は自分の短い人生を話す。

一歳の頃に両親が事故で亡くなり男の元に送られてからの日々の日常。

周りに助けてくれるものが居らず毎日森で飢えを凌ぐ為に食べ物を採取していたこと。

 

そして二人の少女に出会いそこから人生が動き始めたこと。

そこから神器が覚醒して二人の幸せな日常を守りたい為にひたすら努力したこと。

 

実は二人は珍しい妖怪で上級悪魔に昔から眷属にさせられることを嫌がり逃げていて今回の冥界にいた理由は二人の亡くなった両親のお墓に行く為に来たこと。

そしてそれを悪魔達が察知して無理矢理眷属にすべく襲ってきたので全員を惨殺したことを一つ一つ答えた。

 

トワは涙を流していた。その泣き顔は後悔しているような顔で詳しく読み取ることは出来なかった。

「なんで君は何もなかったかのように話せるの?

 痛かったよね?だって君の身体にはもう消えない傷がたくさんあった。

 こんなの耐えられるわけないよ。」

 

優しい人だと宝刀は思った。

だがら僕はここにいちゃいけない。

 

 

「僕はここに居る誰よりも危険ですよ。

 躊躇いなく人を殺せます。

 だから追手にバレたらまず狙われるのでさっきの話を聞いた限り僕はここにいない方がいいですよ?

 理想郷が崩れてしまう危険分子ですから。」

 

僕はそう告げてハハハと寂しく笑う。

 

 

「貴方は間違ったことはしてないわ!!

 危険?でも貴方は二人を守る為にしたことよ。

 確かに人を殺めることはいけないわ。

 でも私も他の子供たちを助ける為にたくさんの命を摘んできたわ。

 だからそんな顔しないで!!

 子供がそんな顔するもんじゃないわ。

 だからねもう我慢しなくていいわ。」

 

よく頑張ったわね。僕は抱きしめられた。

 

 

「でも!!僕は殺したんです!

 もしかしたら殺した人たちの中には無理矢理させられたかもしれないのに首を刎ねました。

 不意打ちをして躊躇いなく事情も何も聞くことなく殺しました!!

 こんな僕が頑張ったなんて絶対に言われちゃいけないんです。」

 

僕は声を荒げてしまった。

そして自分の発言を振り返り自分のあの日にしたことを思い出してしまう。

自分は命を摘んだのだ。もしかしたら殺した人にも僕と同じように守りたい人がいたかもしれない。

そう思うと暗くて黒い気持ち悪い物が溢れてくる。

声が聞こえる。

「お前が俺を殺した。」「愛する者がいた。」

「俺たちの命を背負えよ」「ほんとに傲慢だ」

お前はお前はといろんな怨念が渦巻く。

 

自分の手を見ると真っ赤に汚れて見える。

そして手の感触には首を刎ねる感触が蘇ってくる。

 

「あああああぁぁぁああああああああ」

叫ぶしかなかった。いくら覚悟があっても人を殺すことは初めてだった。

何度も手をベットに拭っても血が消えない。

ひたすら耳元に声が聞こえる。

宝刀は手を掻きむしり暴れ出した。

人を殺し業を背負うことそれは10歳に満たない少年には大きすぎた。

 

 

突然発狂した少年にトワは慌ててしまう。

しまった!手を凝視した時に止めれば良かった。

あれは自分の手に血を幻想した者のすることだ。

この少年なら大丈夫かと思ったが昨日の今日で踏み込み過ぎてしまった。

自分のしでかしたことを恨むしかない。

暴れ自傷する少年をトワは止めるしかなかった。

 

 

「誰か!!お願い来て!!」

大声で屋敷に居る者を呼び一緒に少年を抑える。

今はこれしかできない。

救援にきた人たちも少年の発狂に驚きつつも現状を理解してすぐさま行動に出てくれた。

 

宝刀は我慢できずに嘔吐する。

食べた物はもとんど無かったが胃液がバチャバチャと綺麗なベットを汚していく。

声が鳴り止まない。恨み後悔の念がひたすら宝刀の心を侵食していく。

ひたすら自傷行為をして宝刀はキャパオーバーを起こしてバタリと倒れた。

 

 

「心が耐えきれずに倒れたようね。

 まさか昨日の死体は彼が全部やったなんて。

 私のミスだわ。ごめんなさい皆。」

救援に来た人たちに謝罪をする。

 

 

「私たちは大丈夫です。

 ですがこの少年はどうしたんですか?」

事情を知らない人達にトワは先ほど聞いた宝刀のことを伝えた。

そして昨日の惨殺現場のことを。

 

 

「それは確かにこうなるのも仕方ないですね。

 こんな幼子に人を殺めた業は重すぎる。

 2人の幸せを願う分、殺めた者にも大切な存在が居たのではないかと考えてしまったのでしょう。」

トワもそう思った。

 

 

「この子はただ2人の幸せな日常を壊したくなくて必死だったの。

 本当に死にそうな状況だったのよ。

 左腕は焼け爛れて毒で血を吐きまくりそれでもずっと2人の少女の名前を呟き続けていたわ。

 だから怖がらないであげて。

 彼は今までの人生で貰えなかった愛をなによりも大切にしただけだから。」

トワは泣きそうになった。

この少年はただひたすらに自分の大切な存在を守っただけなのにこうしてボロボロになっている。

 

 

「大丈夫ですよ。確かに怖くないかと言われたら何とも言えませんが無闇矢鱈に殺める子でないことはわかりますから。」

 

 

「そう言ってくれてありがとう。

 宝刀が落ち着いたら優しくして欲しい。

 迎え入れてあげて欲しいわ。

 とりあえず当分は宝刀のことは私が見るからまた仕事に戻ってちょうだい。

 来てからてありがとう。」

 

 

そうして救援にきた人たちは部屋から出て行く。

出て行く前に一人一人が少年の頭を優しく撫でてベットを替えて部屋を綺麗にして出ていった。

 

 

トワは誰もいなくなって宝刀と2人きりとなる。

そして瞳から涙が出てきた。

トワは宝刀という名を聞いて理解した。

ずっとずっと探していた子供だった。

あの時に手を離した一歳の子供。

助けることが出来なかった宝刀の両親が死ぬ間際に言っていた名前が「-------」だった。

宝刀という名は私がつけた仮の名前だ。

だから間違いなくこの子だ。

 

 

まさか私が連れて行かなかったことでこんな人生を歩んでいるなんて想像もしなかった。

幸せに過ごしてるだろうと安易に考えていた。

赤ん坊の頃から整った容姿だとわかる。だから小学校ではモテてるんだろうなとか別の家族に引き取られても可愛がられるとしか思ってなかった。

 

 

だから捜索は頑張っていたが必死ではなかった。

それがトワの後悔をさらに押しつぶす。

でも今は伝えるべきではない。これ以上この子の精神を壊すことがあるともう立ち直れない。

だからこの子が寝ている間だけはひたすら自傷行為で倒れた宝刀に向かって謝るしかなかった。

「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」

 

 

 

 

 

宝刀は目を覚ました。外を見ると深夜のようだ。

目を覚ました宝刀の目は虚で今まであった目の光がなくなっていた。

先ほどまでの取り乱し収まり落ち着いたというより心に蓋をしたと表現するような状態である。

 

 

宝刀は手に違和感があり左手をみるとトワに強く離さないという意志でギュッと握られていた。

トワは先ほどまで泣いていたのか目元を赤くしながら疲れて眠っているようだ。

 

 

外を眺めていた宝刀はふと昔読んだ本を思い出す。

内容は朝起きると人より巨大な蟲の化け物になってしまった男の話だ。 

男は真面目な男だった。ひたすら家族の為に安い給料できつい仕事だとしても休むことなくひたすら働く家族愛の男。

 

最初は蟲になった現実に恐怖して暴れ出す。

その音を聞き家族が男の部屋に入り異形の蟲を見つけてしまう。

家族は半狂乱になって逃げ出そうとするが男が自分だとひたすら告げてなんとか蟲は男だと認識した家族はなんとか現実を受け入れた。

 

受け入れたとしても不気味がり巨大な蟲がいつ襲ってくるかわからない恐怖と他の人に見られた時にどうしたらいいのか分からない家族はどんどん精神的に追い込まれる。

だが男が私たちの為に頑張ってくれたことを知ってるからなんとか生活を過ごしていた。

 

だが、次第に男も言葉が喋れなくなる。人の言葉からどんどん化け物染みた声になり人の言葉すら喋れなくなる。

食べるものも人の食べる食事を受け付けなくなりどんどん蟲の化け物へと変貌を遂げていた。

だが男の精神は人間だった。言葉はいつも人間の言葉を喋っているつもりだっが出てくるのは化け物染みた声。

だが、男は家族なら受け入れてくれると信じていた。いや家族しか信じてくれる者は残っていなかった。

 

そしてある日家族は次第に化け物の蟲なっていく男に耐えられなくなり男を殺すことを決めた。

事情を警察など組織などに連絡して殺すことを。

 

それを知らない男はいつも通り生活すると急に色んな人間が自分の姿を見て恐れ鉄砲を撃ってくる。

強盗だと思った男は強盗から家族を守る為に撃たれながらも血を流しながら必死に応戦する。 

 

そして襲ってきた人間を殺し、殺した者を何十本もある腕で器用に大きな口へと運び呑み込んでいた。

正にこの瞬間に男は蟲と成り果てた。

襲った者を呑み、家族は無事かと部屋から出て家族の安否を見るとひたすら自分を恐怖する目を見てしまった。

そして男はもう自分は化け物でしかないと悟った。

男には家族しかなかった。だがその最後の心の砦がなくなった男は自ら襲ってきた者達の銃を取り自害する。

そんな話だった。

 

なんか僕みたいだな。家族愛しか残っていないくて眷属から守る為に躊躇いなく殺す化け物。 

気が付けば大勢の人を殺してた。 

巨大な蟲か。僕にお似合いの言葉だよ。

こんな人殺しを黒歌と白音は愛してくれるかな?

家族って言ってくれるだろうか?

躊躇いなく首を刎ねる僕。暗い黒い感情がまたやってくる。

 

 

宝刀は口から意識せずに言葉が出た。

 

 

 

「僕が明日 蟲となり

 人を呑み込み始めるとして

 人を呑んだその口で

 君たちを家族と咆えたとして

 君たちは果たして今日と同じに

 僕を家族と 言えるだろうか」

 

 

 

 

もう一度月を眺める。

真夜中に光る月は何も言ってくれなかった。

 

 

 

 





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