堕天使に染まりつつある日いつものように書類を捌いている時に未来視の魔眼の異能が突然発動した。
トワは驚いて変な事を出してしまう。なんせ自動発動することなんて長く生きてきた中でも一度もなかったから。
そこには赤ん坊を襲っている悪魔と堕天使が見えた。子供を必死に守っている親を悪魔が執拗に痛ぶって殺し、赤ん坊に宿ったらしき神器を堕天使が無理矢理抜き取りその場を燃やして去る姿が映った。
未来視の魔眼がなぜこの光景を?と驚いたが何よりも堕天使が行なっていることにより驚愕した。
堕天使は天使ではないから悪どいことは行っていることなど想像がつくが未来視でみた光景の堕天使は手慣れ過ぎている。
赤ん坊ですら殺すことへの躊躇いなさや神器を抜き取ってから証拠を隠滅する手際の良さ。
そして悪魔とも手を組んで行なっている。
常習的に行なっていることが明らかであり、それを良しとしている堕天使がいることに底知れぬ気持ちになる。
多分この感情、これは怒りだ。
やっぱり堕天使はあくまでも堕天使かと。
中には良い子も居るのはこれまでの生活で理解しているがやはり堕天した者だ。そして自分にも怒りを感じる。
薄々分かっていたはずなのに。堕天使が慈善活動のように神器を宿す人間を保護するなんてあり得ないことなど理解出来るはずなのに。
ぬるま湯に浸かっていたのだ!
牙を自分から抜いてしまっていたのだ!
たった何百年でここまで腑抜けるなんて!!
クソっ!と言ってトワは手をつけている書類を投げ捨て勢いよく執務室を飛び出した。
職務を突然投げ出した上司に部下は何かを言っているがトワには気にしてる余裕などなかった。
数時間後には未来視で見た光景は行われることが確定してしまうのだから。
放浪する中で極限まで高めた堕天使の羽は6対6にまでになっていた。
複数になればなる程強大な力である計12枚の漆黒の羽を全力で使用して空を駆ける。
全速力で空を飛びながらトワは少し場違いながらも気持ちはとても浮かれていた。
自分の意思を無視をして発動した未来視。一度も起きたことがない現象から導かれる答えは《運命》。
イレギュラーとして生まれたトワの異能がまるで救えと言わんばかりの神器を宿す赤ん坊。
トワの長い人生に初めて魔眼に運命の改編を望まれて無意識発動する程の存在。
こんなことなんて本来であればあり得ないことだ。なんせ何百という年月の中で起きたことなどなかったのだから!
規格外な自分よりもより特別なイレギュラーの赤ん坊が愛おしいと感じた。自分と同じイレギュラーが他にもいる可能性が嬉しい。
多分自分は同じ存在に縋りたかったんだろう。
同種ならば自分を一人の少女、いや女として見てくれるかもしれない希望にただ縋りたかった。
自分も一人の普通の女だと思いたかった。
だからまずは救わないと!!
より12枚の羽に力を込めて駆けろ!!
未来視の光景で見た場所へやってきたが既に悪魔と堕天使に家族は襲われている。
夫婦は赤ん坊を満身創痍ながらも守り戦っていた。トワは急いで救出すべく戦いに割って入り悪魔達を何十もの光の槍を上空に出現させて貫く。不殺生で救えなくなるなど起きてはならないよう的確に心臓を狙った。慈悲などかける余裕もない。
次の敵!と堕天使に向けて再び光の槍を作成していき貫いていく。
堕天使達も一網打尽にしたので治療として夫婦と赤ん坊に近づこうとゆっくり空中から降りようとすると隠れていたのか死体の中から堕天使が現れた。
誤算が発生した。堕天使は最後の力を振り絞って夫婦と赤ん坊を道連れにするつもりのようだ。
トワは慌てて光の槍を造るが間に合わない。
私は運命の存在すら救えないのか。
なんの為にこれまで力を求めてのか絶望する。
せめてでも避けるように叫ぼうとしたトワは目の前には自分の想像とは違う光景があった。
突如空中に刀が出現して不意打ちをする堕天使の身体に刀が突き刺さっていたから。
堕天使は突然の事に対処出来ず心臓に突き刺さった刀を避けることなど出来ずに事切れた。
刀は1人でに動き堕天使の身体から抜けると赤ん坊を守護するように地面に突き刺さる。
摩訶不思議な事態に呆けていたトワは正気を取り戻して他に潜んでいる者が居ないか周囲を確認して夫婦の手当を行うために近づいた。
だが、夫婦の容態は芳しくない。急いで来てしまったことで全ての傷を治すフェニックスの涙を持っていない。治せる傷を治せない自分が悔しい。
夫婦は悔しがるトワに感謝を伝えた。自分達を助けに来てくれたことで大事な子供を守ることが出来たことが何よりも嬉しかったと。
夫婦は赤ん坊の傍に近寄り抱きしめた。もう自分達はこの子の将来を見届けれない事に涙を流した。
そして少し落ち着いた夫婦は子供を抱きしめながらトワに顔を向けて自分達の身の内話をした。
トワはその話を驚愕したが内容を受け止める。
夫婦は続けて赤ん坊の名前を教えてくれた。
その名前を聞いた瞬間にやっぱりこの子は私の運命であり素敵な名前だと確信する。
まるで私と対として定めたような名前。
もうじき死ぬことを理解した夫婦は1人残してしまう赤ん坊に遺言として最後に残す言葉をトワに伝言として頼んだ。
トワは一言一句を聞き逃さずことなく記憶して必ず将来伝えることを約束する。
夫婦はトワに再度感謝をして赤ん坊を慈しみながら抱きしめて事切れた。
トワは夫婦に最上の敬意を表した。死を恐れる事なく愛を貫くことは如何に尊いことか。
元天使である自分がせめてでもと祈りを捧げた。
トワ・ヴァレイの名に誓う。----- -----を必ず護り貴方たちの分まで幸せを贈ることを。
安心して輪廻の理に乗ってくださいと。
赤ん坊の傍に近寄ると刀は後は任したというように赤ん坊の身体の中に入っていった。
トワは改めて唯一救うことが出来たこの赤ん坊のイレギュラーさに驚嘆する。
先ほどの堕天使への攻撃はこの赤ん坊の意思ではないことは明らかだ。
なら神器が人の子を守る為に勝手に動いた?そんなことあり得るのか?
自立行動して宿主も護る神器なんて天使界隈でも堕天使界隈でも聞いたことはない。
意思を持つ神器であり敵と味方を判断しているなんて、、出鱈目。
それに神器の秘めた能力は四大熾天使と同格であったトワですら測ることすら出来ない。
本当にただの神器かすら疑いたくなる。
正に未知数。
だがその異様さがトワにとっては嬉しい。
イレギュラーであればあるほど私と目線が分かるだろうし、私をただの女の子として見てくれる可能性があるから。
赤ん坊を抱き上げると私に安心して眠った。
安らかに眠るその可愛いらしい愛らしい姿を見てトワは愛情を注ぎたくて仕方ない。
なによりも化け物である私に安心してくれることが愛おしさを加速させる。
才能容姿名声の全てをかな備えた誰にも受け入れることない異分子である自分に愛を感じてくれる。
じっくりと見ると引き込まれそうなる顔立ちだ。
赤ん坊の姿ですら将来確実に人を惹きつけるであろう妖艶さが垣間見える。
どんな子に育つか一緒に見ていたい。
意思持つ唯一特殊の未知数神器に愛され、私の異能にすら死を覆させるほど願われる正にイレギュラーであり特異点。やはり堪らない。
トワは都合のいい情景が浮かんだ。
自分と一緒に暮らしていき夫婦が与えることが出来なかった分まで甘えさせる未来の想像。
朝起きて一緒の布団から起きて朝食を食べさせて上げる。着替えさせてあげて学校へ一緒に手を繋いで行き、帰りも迎えに行ってあげる。
夜は一緒にお風呂に入って洗いっこする。
そして一緒の布団で抱き合って眠る。
時にトワからも甘えてそれに笑顔で応えてくれるそんな甘くて甘美な情景。
とても幸せな日常を想像をするだけで堪らない。
だけれども現実はやはり非常で一緒に居ることが出来ない事実に泣きそうになる。
堕天使と悪魔を殺したことによっていくら幹部でもお咎めなしとはならないだろうしこの赤ん坊の神器に堕天使総督は目をつけるだろう。
下手すると私ははぐれ堕天使の扱いを受けて追われる身となるかもしれない。
今回の件で堕天使陣営も信用出来ない。保護してるかもしれないが、かもしれないなんて曖昧な憶測のようなもので連れていくことなど出来ない。
トワは心底致し方なしとして一時的にだけ人間の世界へこの赤ん坊を預けることにする。
まだ人の世界の方が安全に過ごせるだろう。
だが、落ち着いたら必ず一緒に過ごす!
絶対に可愛がってやると決めた。
会えない時間毎ごとに寂しさが蓄積するから早くどうにかしないと、、これは急務だ。
だって私の運命の人だから。
まず人間の世界に穏便に宝刀を送る為にすべき事を遂行しなくては、、。
トワは夫婦に申し訳なく思うが死の原因を悪魔と堕天使に襲われた認識から事故にあったと人間の記憶を変更しなくてはならない。
そして赤ん坊の名前も変更しないと、、。
死に際に話してくれた夫婦の身の内を聞く限り計画的な襲撃のものであること確定だ。
その為に認識を変更しなくては生存を勘付かれて赤ん坊が狙われてしまう可能性がある。
だから心苦しいが徹底して冷徹に死を名前を改変しなくてはならない。
トワはこれからこの赤ん坊の生きていく世界での新しい名前を付けた。
赤ん坊を護る神器の刀が真っ先に浮かんだ。
赤ん坊を宝のように護る刀の姿が。
宝刀
これほど似合う名はないだろう。
今日この場にあった事実を魔法により改変した。
宝刀の人生が少しでも良い方向へ進むように願い祈りを捧げる。
トワは人間世界へ宝刀を預けて堕天使陣営に向かい先の出来事を堕天使総督と話し合いをした。
念のために宝刀も死んだ事として伝えたが堕天使総督は寝耳に水であったらしく驚いていた。
まさか悪魔と手を組んでまで神器を宿した者を殺して回っていたんなんて。
自分を誘った言葉が虚偽であった事や卑劣さにもう堕天使を信用出来ないと伝えて離脱を求める。
決意の硬いトワと此度の問題も自分の部下を御せていないことが原因であると理解した堕天使総督は了承するしかなかった。
全面的に悪いのはこちら側なのだから。
だが、突然居なくなるとはぐれ認定される可能性がある為せめてでも一年は堕天使陣営に席を置きそこから上手くフェイドアウトさせる約束をつけトワもそれに渋々であるが了承する。
不本意極まりないが堕天使陣営に戻って数日経ちトワは宝刀が心配で未来視を使用した。
そこには幸せそうな赤ん坊の情景が浮かび宝刀は無事に生活出来ているとトワは安心して一年の時を過ごしていった。
どうにか地獄のように長い一年が終わり晴れて自由の身になったトワは全速力をもって宝刀を迎えるために未来視で見た場所へ赴く。
そこに居たのは宝刀ではない赤ん坊であった。
え?と理解が追いつかない。私が未来視で見ていたのは宝刀ではない知らない子供?なんで未来視が映さないのか、、。
まさか魔眼が拒絶しているのか?何故?何故?
こんな所で宝刀のイレギュラーさが表れるなんて想像出来るわけもなく冷や汗や脂汗が出る。
もしかしたら堕天使に見つかり神器が抜き取られているかもしれない。
もしくは悪魔に殺されているかもしれない。
そう思うだけで身体から力が抜けて倒れてしまいそうになってしまう。
トワは諦めることなく未来視の魔眼の代償の事を顧みずに未来視を発動した。
自分の身体の負担などよりも宝刀だ。
やっと巡り合えた運命なんだ!
私にはもう宝刀しか居ないんだ!!
だが魔眼は厭らしく、未来視で現れる子供の元に急いで行っても宝刀とは違う子供ばかりだった。
時に襲われていたり捨てられていたりする子供も居るので救出しながら諦める事なく宝刀を探す。
捜索している中で堕天使陣営にいた部下達がトワの元にやってきて活動に賛同してくれるということで今まで救った子供を預け捜索をより活発に行う。
一月に一回だったのを半月に一回の頻度にしたり身体は悲鳴をあげるが気にすることはなかった。
私の運命である宝刀に会いたいそれ一心だけで。
そしてトワは宝刀と再び邂逅した。
邂逅した宝刀は赤ん坊の頃に想像した以上に神秘的な美しさに成長していた。儚げで妖艶さがあり男の子には見えない美。
だがトワは宝刀の無表情がどうしても気になった。少し話をしても笑うこともなく表情が変わらない。
思い切って宝刀の過去を聞いて自分の失態を思い知らされた。
自分を呪い殺したくなってしまう。回復薬でも消えない身体の無数の暴力痕からでも想像はしていた。
宝刀の話を聞いたがその何十倍もの苦痛を宝刀は物心つく頃から過ごしていたのだ!
トワなりに身を削りながらも頑張っていたが自分がゆっくり美味しいご飯を食べている時、温かいお風呂に入っている時、子供と遊んでいる時。そんな娯楽を享受していた瞬間に宝刀は哀れもない理不尽な暴力に耐えていた。
ご飯もまともに与えられることなく周りの人間も救いの手を差し伸べることなくただ耐える日々。
この日ほど宝刀を映すことのなかった曖昧な未来しか見せなかった魔眼を恨んだ日はない。
でも宝刀に救いの手を差し伸べる存在が居た。
妖怪の二人の姉妹。トワは心から感謝した。
多分ギリギリだった。人間が苦痛を耐えるには感情を捨てるしかない。それも子供なのだからあと数年遅かったら自ら命を絶つことは想像出来る。
2人との思い出を話していた宝刀は無表情ながらも幸せそうだった。
まだ宝刀の話は続き、聞いたトワは悲しかった。
世界はなんで私や宝刀のようなイレギュラーに残酷で冷酷で優しくないのかと。
心を救ってくれた2人が悪魔に狙われたらしい。特に珍しい種族であることでコレクションのような扱いで執着されていたと。
やっと掴んだ日常を守るそれだけを少年は願った。
2人の為に血の滲むような努力で蓄えた力を奮い10歳にも満たない少年が上級悪魔をそれも眷属を含めて抹殺した。
腕は爛れ毒に侵されても2人の身を案じることはやめなかった姿は気高いと思う。
それを無表情で話した宝刀は命を摘んだ事実に気づいてしまい耐えれることが出来ず発狂した。
その姿を見てもうトワは何度目か分からないほど自分の無力を感じてしまう。
何が星読みの規格外だ!こんな子供すら助けることの出来ない無能ではないか。
トワには落ち込み絶望する暇などない。
このままだと宝刀の心が壊れ廃人になってしまう。
せっかく2人が救ってくれたのだ。
次こそは自分が宝刀の拠り所となり、楔であり、愛を与える存在となって幸せを享受させるんだ!
どうにか宝刀の心は守れた。
自分の失敗多き人生で得た教訓や罪の認識のすり替えなど少しズルをしたが、結果として自分と共に答えを見つけることで罪悪感を軽くすることに成功。
話が終わると無表情が一変してとびきりの笑顔を見せてくれた。
そして自分の胸に甘えるように抱きついてくれたのだ。嬉しすぎて倒れそうになるのはしょうがない。
そして悲願の一緒に暮らす事を提案した。
この時以上にトワは緊張したことはなかっただろう。断られたら心臓発作を起こすレベルにギリギリの精神状態。
答えはOK。一緒に暮らすことに何一つ嫌がることなく自分と居たいと言ってくれた。
遂に遂にあの想像した幸せライフを宝刀と一緒に叶えることが出来る。
トワは横で自分を逃さないとばかりにギュッと抱きついて眠る宝刀を愛おしそうに見た。
これからは絶対に貴方を一人にはしないわ!
寿命だって視力だってどうにかする手立てはある。
宝刀を見つけれたから魔眼を使用することはほぼなくなるのだからこれ以上負担はかかることはない。
弱体化して現在は5対5になってしまったが時期に6対6の漆黒羽に戻ることもできるだろう。
トワは宝刀に伝えたかった。
どれだけ貴方に会いたかったか、どれだけ甘やかしてあげたかったか、どれだけ愛してあげたがったか、どれだけこの再会が嬉しかった事か。
貴方には分かるかしら?
私が良かれと思った事で予想外ではあったが貴方は辛い思いをした。心に大きな傷を残してしまった。
どれだけ貴方に恨まれても受け入れる。
でもこれだけはいい言わせてほしい。
「おかえりなさい。
これからは幸せにするわ。
心から愛してる宝刀。」
トワは起きないように丁寧に抱き返して宝刀の温かい体温を感じて幸せな気持ちでゆっくり眠った。