香風LOVEさん、カルラ71さん
感想ありがとうございました!
今までも感想をくれた皆さんや、高評価をくれた皆さんもこの場で伝えさせてください。ありがとうございました!
その応援する行動があったお陰で今日も描こうって思えます。
面白い、頑張って、更新待ってる。そんな言葉がとても嬉しいんです。
これからもよろしくお願いします。
どうぞよしなに。
宝刀は瞬く間に一変した世界を見渡した。
側にいた筈の平子が居なくなり、さっきまで見えてた白亜の地面、漆黒の空、月代わりに照らす巨大なリングがどこにもない360度全てが灰色の世界。
そして灰色世界には十二単の見慣れた逆撫に始まり僕と同じくらい小さい女の子から杖を持つ老婦までの年齢幅の女性達。
年齢幅だけでなく恰幅の良い者やガリガリに痩せた者、美しいと思う者やお世辞にも言えない者など両手両足では収まり切らない女性達が僕の一挙手一投足を注視して立っていた。
『貴方は私を知り、力を得たいと言いましたね?
この嘘に塗れた世界で私の核を見つける。
そして刺さっている刀で一思いに貫く。
ただそれだけで私のことも知れて特別な力を手に入れれますよ。とてもいい話ですよね。
ただ甘い話には当然に裏があります。』
チャンスはたったの一度切りです。と人差し指を上げて宝刀に告げた。
「もし間違ったら逆撫はどうなるの?」
一度からのチャンスを強調する逆撫にどうしても良くないことが起きる予感が拭えない。
答えは宝刀の思ったより残酷だった。
『おそらく私の自我は消滅するでしょう。
白黒世界へ顕現することはもちろん、声を届けることすら出来なくなってしまいますね。
でも安心して下さい。私の自我が消えようとも私の能力まで失くなることはありません。貴方の力になれることには変わらずです。
ただ、私が貴方の前から存在が消えるだけ。それだけのことですよ。』
逆撫は微笑んだ。
僕が質問の答えを呑み込めず棒立ちしていると数多の逆撫達が示し合わせたように一同動き出した。
少しするとピタッとまたも示し合わせたかのように行動を終える。
終着点であったその先には灰色の地面に刺さる幾多の刀。ちょうど地面に刺さっていた刀の数と逆撫達の人数が一致しているようである。
皆が皆、覚悟を決めた顔で刀の後ろに控えてまたも宝刀の顔を眺め始める。まるで目の前にある刀で私を刺してと訴えるように。
『何一つ恐れることはないですよ。
私は貴方がどのような選択をしても怨みません。
違えたとてそれは私が貴方に相応しくない器だっただけなのでしょう。
ただ、宝刀の成長が見れなくなることや触れ合うことが出来なくなるのは寂しくはありますね。』
そう言う逆撫は少し寂しそうに見えた。
宝刀はたくさんいる逆撫の一人に近づき突き刺さる刀を引き抜いた。紛れもなく今まで何度も握ったもので、時として共に戦ってきた刀だと認識した。
スーっと宝刀は刃先を撫でると赤い血が流れ触れた手の平がジンジンと確かな痛みを訴える。
この試練と呼ぶべきものがよりリアルに感じ逆撫の言葉がいかに宝刀からすれば残酷かを物語る。
「僕にその刀で逆撫を貫けっていうの?
無理。無理だよ。僕にはできない。
流石にこれは意地悪が過ぎるよ逆撫。」
宝刀は泣きそうな顔で逆撫達に訴えた。自分をずっとずっと見守ってくれて、抱きしめてくれて、愛情溢れる大好きな逆撫を僕が刀で突き刺さす。
それすらも忌避感情があるのにもし自分が逆撫を見つけれなければ二度と会えなくなる。
想像するだけで心が引き裂かれそうなのになる。
逆撫が僕に名を伝え姿を現してくれてからたった数日、数週間も満たないはずなのに忘れられない思い出が一杯だ。
いつも僕が白黒世界へやって来るのを楽しみにしてくれてとびきりの笑顔で出迎えてくれる姿。
事あるごとに私の愛情あげます!と僕に突撃するように飛び込んできては抱きしめてくれる姿。
僕の事を第一に考えてくれていつも平子さんとの死闘の後には心がすり減ったことを心配して甘やかしてくれる姿。
僕が成長してどんな大人になっていくのか楽しみのようで毎回身長を測っては何処からか出した成長ノートで記録してる姿。
あぁ、僕は逆撫に愛させれるな。
流れる思い出が風に吹かれた塵のように飛ばされていく。手から溢れ落ち飛んだ塵がもう二度と掴み取ることが出来ないのと同じように二度と会えることが出来なくなる逆撫。
どんどん溢れ膨らんでいくもしもの不測的可能性。
自分の選択肢によってはあり得る未来で逆撫を失ってしまった自分を想像してしまい喪失感に耐えられなくなり地面に蹲った。
幼子のように蹲った宝刀の元に普段見慣れた逆撫が近付き腰を落としてそっと抱きしめる。
『突然に選択を迫ってごめんなさいね。
始める前にも言いましたが今日はお試しですのでもう止めましょう。
でもこれだけは覚えていて下さい。
特別な何かを得るには何かを必ず支払わなくてはならない。この世の理であり真理です。』
逆撫は「幸福と俸禄、祝うは我なり」そう言うと両手を上空へと掲げ手を叩いた。パンっといい音が鳴り響くと目の前にあった灰色の世界や見慣れた逆撫以外の女性達と刀が崩れ去りいつもの白黒世界へと戻っていった。
白黒世界へと元通りとなると平子が何処からともなく現れて憔悴している宝刀を見つけた。平子は宥めるように優しく頭を撫でて心を落ち着かせる。
「まだ少し早かったみたいやな。
俺の時とは多分違う形で逆撫に試されとる。それがどんなもんかは俺には想像もつかへん。
逆撫はお前が好きで、お前は逆撫が好きなんは変わらへんやろ?今はそれでだけで十分や。
宝刀は時間を味方につけなあかん。
そないしたら、いつか自ずと分かるわ。」
今日はもう帰りやと平子は宝刀の頭をもう一度優しく撫でて現実世界へ帰した。
宝刀は白黒世界から戻りベットから起き上がる。隣には自分を抱き枕のようにがっちり固定しているトワが居たがゆっくりと身体を動かして解いていく。
なんとなく一人で外を眺めたくなりトワが起きてないことを確かめて足音を立てないようにそっと寝室から抜け出した。
外に出るとまだ真夜中のようで満天の星空が瞬いており、煌めく星のお陰か暗澹たる気持ちが少しだけ晴れていくように感じる。
ゆっくりと眺めていると後ろから声が聞こえた。
「何か不安なことがあったの?
と〜っても哀愁を感じてしまう背中。
その歳で夜空を眺めながら黄昏るのはいくらなんでも早いわよ」
トワは後ろから宝刀をゆっくり抱きしめる。
宝刀はトワの温もりと果実の匂いを感じながら甘えるように身を預けて再び夜空を眺めた。
一人で見るよりもトワと見る夜空はより一層煌めいて美しく感じる。
「ちょっと夜空が見たくなってね。
もしかして起こしちゃった?」
嘘をつくことに心が痛むが逆撫のことをどう伝えてたらいいかが分からなくて、はぐらかすことしかできない。
「言いたくないならそれでいいし、起きたのは別に気にすることはないわよ。
ねぇ、それにしても今日の夜空は最高ね。
雲一つなくて星座がよく見えてとても綺麗。」
「そうだね。
トワは星に詳しかったりするの?」
「そうねぇ、、。昔一人で旅してた時に暇だったからいつの間にか詳しくなってたのよ。
そうだ!私が星座を教えてあげるから一緒に天体観測しましょ。」
トワは背後から僕のお腹を抱きしめていた腕を指へと絡ませて掴み、夜空に輝く星達を一つ一つ繋げて「あそこにある星との点と点を繋ぐと〇〇座になってね、あっちはまた違う星座なのよ。」「ほら宝刀見て!珍しい星を見つけたわ!」どんどん星にまつわる豆知識や観測の仕方をレクチャーしていく。
初めて見る無邪気な姿がとても愛おしく夜空や星よりもはしゃぐトワの綺麗な顔を見てしまう。星の話から落ち着いたトワが顔を近づけて耳元で囁いた。
「宝刀が今、どんなことで心が無茶苦茶になっているかは分からないわ。でも前に言ったでしょ?私は貴方の拠り所でずっと側にいることは変わらない。
私は貴方の味方であり続けるしどんな宝刀であっても、もし嫌になっても離れたりなんてしいわよ。
心から貴方が大切で堪らなく大好き。」
トワは絡めていた指を離し、また腰へと腕を戻すとギュッと宝刀を抱きしめた。トワの甘い色香が宝刀を包み込んで安心感を与える。
「少し寒くなってきたしもう戻りましょ?
それに、私はぬくぬくで心地いい宝刀を抱き枕にしないと寝れないんだから。」
トワは宝刀を抱き上げて家へと歩を進め始めた。
宝刀は抱き抱えながら申し訳ない気持ちになる。
トワだけじゃない逆撫や平子さん、皆がこんなに想って貰っているのに何も返せず成長が出来てない自分が不甲斐なくて泣きそうになる。
「心配ばかりかけてごめんね。」
「私が宝刀を心配するのは大好きだからよ。
いくらでも迷惑かけなさい、貴方が成長出来るのら私はそれで充分だから。
それに、人っていうのはね謝ってもらうより心から感謝を伝えられる方が嬉しものなのよ。」
宝刀の頭を撫でながらトワは笑いかけた。
「僕もトワが大好きだよ。
だがら、ありがとう。トワ」
抱っこされながら家に戻りそのまま寝室へと直行して布団に潜る。宝刀とトワは顔を向かい合わせて身体を密着させながらお互いの体温を分かち合うように目を閉じて眠りについた。
宝刀は眩しくて目が覚めた。寝室の窓から外を見ると太陽が燦々と部屋を照らしている。
真夜中から二度寝をしたことで予想よりも眠り続けていたみたいで時計を見たらお昼を過ぎていた。
トワを起こして2日連続で朝ごはん兼昼ごはんを食べることとなってしまった。
「今日は少し用事があるから私は出掛けるけど宝刀はどうするのかしら?」
ご飯を食べて寝衣から外行きの服へと着替えを行っているトワは宝刀に問いかけた。
「僕は昨日の散策の中で少し寄ってみたい所があるから今日はそこに行ってみる。」
「そう。なら気をつけなさいね。
知らない人に着いてっちゃダメよ。」
「僕そんな子供じゃないよ。
それに、トワもとびきり美人さんなんだから悪い人に着いてっちゃダメだよ!」
冗談を交わし合いながらトワの髪を櫛で整える。
綺麗だなと思ってトワのサラサラの髪で遊ぶ。
「もぉ、くすぐったいわよ。
宝刀は私の髪がそんなに好きなの?
他の人に触れられるのは絶対に嫌だけど宝刀にされてると思うと気持ちいいわ。」
トワは猫のように目を細めて気持ちよさそうに身体を横にユラユラ揺らした。
「トワの髪は綺麗で好きかな。
それと黒い翼も綺麗で好き。
ねぇ、今度羽を触らしてくれない?」
「そんな素直に言われると嬉しいわね。
まぁ、気分が乗ったら今度触られてあげるわ。
でも優しく触れないと怒るからね。」
準備が完了したトワを見送りする為に一緒に玄関へ向かい「いってらっしゃい」と伝えて抱きしめた。
トワを見送りリビングに戻った宝刀は机の上にある雑貨に目が止まった。
昨日トワと出掛けて買ったものが整理されぬまま乱雑に置かれ、アロマキャンドルや何かのオブジェなどがひしめきあっている。
宝刀は雑貨の中からトワに買ってもらったものを取り出し手に取った。ピアスをする為に耳を開けるピアッサーと呼ばれる道具。
黒歌と白音が恋しくて寝る前にピアスを撫でて眠っていたが、そろそろ自分の耳に付けてより身近に感じたくなってしまい、昨日トワにねだって買ってもらったものだ。
使い方や開ける位置などはトワが昨日教えてくれたからあとは僕の気持ち次第。
「思い付いたら吉日ってトワも言ってたし、今日思い切って開けちゃおうかな」
二つの両耳分ピアッサーを手に取り大きな鏡台へとやってきた宝刀は白と黒のスティックピアスを耳たぶに当てながら綺麗に映える位置を決めていく。
ペンで位置決めた所がずれないように目印を付けて躊躇う事なくピアッシングをした。パチンっ!音が響き一瞬耳が熱く感じたが特に痛みもなかった。同じ要領でもう片耳もパチンっとピアッシングをする。
位置がおかしくないかチェックしたが両耳どちらも同じ高さできちんと出来ていたのでよかった。
鏡を覗くと金色のファーストピアスが輝き、宝刀は両耳に触れて満足した気分になる。
何週間後かすれば穴が完成して念願のスティックピアスが付けれると思うと自然に口角が上がる。
これからは大好きな白音と黒歌の存在をいつでも感じれることが嬉しい。
少し気分が高揚してしまい鼻歌を奏でながら自室兼トワとの共有スペースとなっている部屋に入りクローゼットから白シャツと黒色スキニーを見繕い着替えて宝刀も家を出た。
昨日気になった神社を目指してゆっくりと時間をかけて歩き目的地へと到着する。目の前には最上段の見えないほど高く積み上げられた石段が宝刀を待ち構えている。
良しっ!と気合を入れて一段ずつ歩を進めていく。見た目通りいくら石段を踏みしめてもゴールの神社が遠く感じてしまうが気分転換も含めているので特に苦痛も特になかった。
ようやく辿り着くとそこには壮観で立派な神社が出迎えてくれた。
宝刀は確かな達成感を味わい、登ってきた石段と高い場所から見える街の景色を堪能していると何かの足音が近づいてくる。
「あれ?すっごい綺麗可愛い子がいる!!
ねぇねぇ見たことないけど何処から来たの?」
突然、声が掛けられて少しビクっとなってしまい振り返ると少女がワクワクしてます!みたいな雰囲気で僕を見つめていた。
「あぁ、こんにちは。
僕、昨日この街に引っ越してきたんですよ。
街を散策してたらこの神社に何故か心惹かれてしまいまして、訪れてみたくなって今日来ました。」
驚きながらもどうにか受け答えをする。
「そうなんだぁ!じゃあ、ようこそだね!
私この神社に住んでるんだ。
ねぇ貴方はの名前聞いてもいい?」
「僕の名前は宝刀って言います。
改めてよろしくお願いしますね。
それで、えっと、良かったら貴方の名前を聞いてもいいですか?」
「宝刀ちゃんかぁ。女の子にしては珍しいね。
それにしても綺麗な顔に髪。
あっ、ごめん、、。
あんまり同い年くらいの子と話すことなくて嬉しくなってベラベラ喋っちゃった。」
えへへと特に反省をしてなさそうに謝罪する少女。
「私は姫島朱乃って言うの。
改めてよろしくね!宝刀ちゃん!」
この街で初めて出会った少女は満面の笑顔で宝刀を受け入れた。たったそれだけの事がとれも嬉しくて新しい街に来たんだなも実感した。
姫島朱乃さん登場です!
子供時代の朱乃さんの口調が分かりませんのでお転婆にしました。
もしかしたら原作での年齢などおかしな事になってるかも知れませんがあくまで二次創作だと思って寛容にご覧ください。