ようこそ 逆さまの世界へ   作:User3580

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第九話 時には甘さも必要でしょ?

 

自宅へ帰ると嫉妬深いの言葉を体現するかのようにトワは僕にずっとくっついている。

ソファーに座ると僕を呼んで膝の上に乗せて頭を撫でたり髪を弄ったりほっぺをすりすりしたり匂い嗅いだりとやりたい放題。

僕もトワの体温や匂いに包まれるから満更ではないけど今日はいつもより度が超えてる。

 

「今日はいつもより近いね?」

 

「言ったでしょ?私は嫉妬深いの。

 こうやって抱きしめて少しでも上書きしたくて仕方がないの。宝刀の心を他の人に取られないように惹きつけないと不安だわ。

 小学生の女の子に張り合うのもどうかとは私も思ってるけど止められな〜い。」

 

そう言うと更に身体を密着させて僕の頬に何度もキスをする。くすぐったくて悶えてしまう。

 

「そんな不安にならなくても大丈夫だよ。

 言ったでしょ?僕にはトワが大切だって。」

 

身体を向き合うように反転して抱きしめる。

 

「うん。宝刀のこと大好きよ。

 だから私を置いて何処にも行かないでね。」

 

「トワが離れない限り僕から何処かへ行くことなんてないよ。だから安心して欲しいな。」

 

結局夕ご飯を作るまでトワは過激なスキンシップを止めることなく料理をする僕に抱きつこうとして危ないから注意するまで続いた。

 

トワさん。包丁を持っているのに突然抱きつかれたら驚くに決まってるでしょ? 

身体が咄嗟に動いて斬るところがだったよ。

これが平子さんに白黒世界で何万回も殺された弊害かもしれない。反射的に動かないと首が飛ぶから身体が自動で動いてしまう。

僕って脳髄反射殺戮マシーンか何かかな?

 

 

ちょっとしたこともあったけど、いつものように美味しそうに食べてくれる姿を眺めながら『痛みと教訓』について僕の感じたことを話した。

 

人を殺めたことで戻らない命という痛みを。

痛みを知ったことで人に寄り添えることを。

だから僕はせめてでも不条理に善良な人が傷つくことのないように手を差し伸べれたい。これが僕の僕だけの救済であって欲しいことを改めて言葉で具現化しながら伝える。

 

「それが今の宝刀の答えなら良いと思うわ。

 もう少し答えまで時間がかかると予想していたけど、やっぱり近い年の子との交流は刺激があったみたいね。」

 

トワは絵画─聖母マリアのような顔で宝刀の頭を優しく優しく撫でる。

 

「でも、やっぱり悔しいわ。

 私が導いてあげたかったのに〜!

 あぁ!今日も一緒にお風呂に入るわよ!!」

 

マリアは一瞬だけだったようで、さっきまでの聖母の微笑みは何処へやら、今は悔しさ満点の顔で駄々っ子のように喚き散らしてる。あぁ、少しでも大人の余裕を見せて欲しい。

 

 

ご飯が食べ終わると引っ張られるようにお風呂へ向かい衣類を引ったくられて浴室に入る。

すぐにトワも浴室にやってきた。タオルで身体を隠すことなく生まれたままの姿で恥ずかしがることなく堂々としている。

 

僕はただ見惚れた。少し高い身長に人形のような綺麗な顔立ちと母性を感じさせる大きな胸。

四肢は贅肉など一欠片もなく、だが筋肉質で硬いとも違う女性ならではの思わず誰もが触れてみたいと錯覚してしまう。

 

女性が羨む全てを備えたまさに十全。

 

黒歌や白音とは違う完成した大人の色気。初めて見るわけでもないのにあまりにも綺麗過ぎて思わず目を背けてしまうほど淫美さにドキドキしてしまう。

 

「あら?私に見惚れたの?

 ふふ。やっぱり宝刀も男の子ね。」

 

してやったりと妖艶に笑うトワ。

 

「うん。本当に綺麗。

 僕の身体とは違うね。」

 

虐待で出来た傷だらけの身体を見て自分とは違う傷一つない綺麗な肌と比べて少ししょげてしまう。

 

「私には言う資格がないかも知れないけど宝刀の身体はとても綺麗だと思うわ。確かに人から見たら顔を顰められるかもしれない。

 でもね、それだけ痛みを知る貴方はさっきの話ではないけれど他の人の痛みに寄り添えることもできるのよ。」

 

トワは傷一つ一つを愛しそうに撫でていく。

這うように触れる手を感じながら僕は白音を思い出した。初めて3人でお風呂に入った時も僕の傷を気味悪がることなくこうして撫でてくれてたな。

 

「むむむ。ビビっと感じたわ!

 今、私以外の女の子のこと考えてたでしょ?」

 

撫でていた手が止まりジロリと顔を覗き問い詰めるような声になった。

 

「う、うん。白音と黒歌の3人でお風呂に入った時のこと思い出してたんだ。」

 

ベシっ!とトワは宝刀の頭にチョップを食らわして凄まじい剣幕で捲し立てる。

 

「宝刀。言い事教えてあげるわ。

 こうして二人きりの甘いひと時を過ごしている場合、他の女の子のことを考えてはいけないのよ。

 とても失礼な事にあたるからね。

 それにね、正直に言えば良いっていう訳でもないし優しい嘘も必要なことを知りなさい。」

 

有無を言わせない圧が降りかかる。

 

「ご、ごめんなさい!!

 僕の身体を気味悪がらずに居てくれるのが二人と一緒で嬉しくて思い出してしまったんです。」

 

チョップが予想よりも痛くて頭を押さながら懸命に申し開きをするしかなかった。

 

「そう言わられたらもう言い返せないわ。

 もう一度言うけど私は嫉妬深いからね!」

 

会話締めるとトワは宝刀を風呂イスに座らせて髪や身体を洗っていく。とても繊細な触り方で痛くもなく心地良い洗い方で思わず声が漏れる。

髪の洗い方なんかいたぞやの美容院のお姉さんくらい上手で全てを委ねてしまいそう。

 

ふふ。と笑いさっきまでの剣幕が嘘のように上機嫌になったトワを見てホッとする。

 

髪や身体の泡を洗い流してもらい浴槽に向かおうとすると手を引かれた。

ん?と振り返るとトワは風呂イスに座っている。

 

「今日は私の身体を洗ってちょうだい」

とても素敵な笑顔で言われたことで僕は頷く以外の選択肢が思い浮かばなかった。

 

今まで洗ってもらう事はあったけど逆はなかったから初めての体験でぎこちなくなってしまう。

だけど精一杯によりトワが綺麗になってくれるように身体を洗う。 

 

洗いながら思うけどトワの身体は凄い。

肌も真っ白でモチモチ柔らかでずっと触っていたくなるし見ていたくなる魔性の身体。

柔らかな感触に取り憑かれそうになりながら全身をくまなく洗ってあげて次に髪を洗う準備をする。

 

「まさかあんなに遠慮なく全身をくまなく弄られるとは思ってなかったわ。

 気持ちよかったけど、、。まさか!

 これがお約束のお嫁に行けないってやつかしら!

 なら宝刀には責任を取ってもらわないと。」

 

ブツブツ独り言を無視して髪を同じように丁寧に洗いより綺麗にトワをより輝かしてくれるように想いを込めて。

洗い終わってもトワのブツブツは治ってなくて一人で浴槽に入りお風呂を楽しんだ。

 

 

お風呂から上がり髪も乾かし合い終わると自然とソファーに二人で座った。テレビをつけることなくしばらく無言の時間が流れる。

 

「そう思えば、宝刀はどんな特訓しているの?

 安寧の理想郷で見てたけど、刀を振るのも様になっていたし誰かから習ってるの?」

 

「それはね、神器に平子さんが宿っててね。

 白黒世界っていう精神世界に入ってはほぼ毎日、刀の使い方や戦い方とかをその人から教えてもらってるんだ。」

 

 

トワは少し考え込む仕草をしていると考えが纏ったのかこちらを見てある提案をする。

 

「明日からは模擬戦をしましょう。

 私からもその平子さんという人とは違う何かが必ず得られるはずだから。今よりも少しでも強くおなりなさい。」

 

「うん。僕は強くなりたいから嬉しいよ。

 でも明日からってのは急だね。何かあるの?」

 

「そうね。時間は有限であることも大きいわ。

 でも一番は前に未来視で捉えたある人間の子供の窮地がそろそろ迫ってきている事ね。

 だから、一度宝刀がどれだけの実力かを見る必要がある。前も言ったけど何も出来ない者に守るなんてふざけた事は言わせない。」

 

幾度となく子供を救ってきたからこその言葉にどれほどトワが真剣なのかが伝わってくる。

覚悟があるかと問われている。失敗や足を引っ張る事など愚の骨頂だと。

善良な命が掛かっている。遊びでは済まないからこそ弱者であることや半端な感情で動くことは許さない。

 

「分かった。僕を見極めて欲しい。」

 

答えは決まっているよ。

覚悟はとうにできている。

 

「うん、合格よ。いい目をしてるわ。

 覚悟を示し力を貸してくれてありがとう。

 でも、未来視ではもう少し先に起こる予定みたいだから今はあまり気を張りすぎなくていいわ。

 貴方は技術を盗む事を考えていなさい。」

 

トワは何度か頭を撫でて優しく包み込むように宝刀を抱きしめて寝室へ向かいベッドへダイブして眠りに入る。僕もトワのぬくぬくな体温に充てられて眠りについた。

 

 

 

僕の身体は眠りに入った事で白黒世界へと気持ちを引き締めてながら降り立つ。

 

明日からトワとの特訓や理不尽な目に遭う子の救出が待っている。だから昨日のように弱気になってる時間はない!

 

だけど視野を狭くして焦ってはならない。平子さんに言われた時間を味方にするために一つでも糧にして今日も死ぬ気で頑張る。

 

───打倒平子さん!

今日こそ膝をつかしてやる!!

 

そう意気込んだのは良いが今日は誰も居ない。あれ?逆撫と平子さんは?とキョロキョロしたり移動したりしていると逆撫を見つけた。

 

どうやら彼女は昨日の事を気にしているようで目が合うと“しまった!“っていう顔をして可愛らしくちょこちょことこちらへ近づいてくる。

 

僕は挙動不審な逆撫に突撃するように駆けていき思いっきりお腹へダイブした。

はぁうっ!とうめき声が聞こえたけど気にする事なく追撃として頭をグリグリと押しつけて自分の気持ちをぶつける。

 

「もし昨日の事を引きずってそんな態度を取っているのなら僕を見くびらないで!!

 確かに無様に蹲ってしまったのは不甲斐なかったかもしれないよ?

 でも、僕は必ず逆撫を見つけるから!

 逆撫を一人になんてさせないから!

 これからもずっとずっと一緒に歩めるように頑張るからそんなよそよそしくしないで!」

 

逆撫は宝刀の言葉を聞いてハッと気付かされる。

この子は昨日あんなに悲観して絶望を味わったのにもう前に進んでいるのか驚く。

そうか。私と共に居たいが為に前を向いて進もうとしているのか。

 

──全くもう。

 

宝刀が帰った後に私がどれだけ後悔していたのか知っているのかを教えてあげたい。でもそんな貴方だからこそ私は心を動かされたのだろう。

 

気がつけば私の取り柄であたったはずの性悪さが抜け落ちてしまいただの甘やかしの存在になっているなんて。平子の斬魄刀だった私が知ったらどう思うのか見てみたい。

 

「ごめんなさい。そして私のことを考えてくれた言葉嬉しいです。ありがとうございます。

 宝刀は歩を止める事をしませんね。

 昨日はあんなに自信喪失して取り乱していたのに次の日にはこれですか。

 あれこれ考えて一人反省したりアワアワしていた私がまるで馬鹿みたいにじゃないですか。

 はぁ。本当に愛おしい子ですね。」

 

逆撫はクスリと笑うと僕も釣られて笑った。さっきまでのぎこちない距離感から迅速に解放されお互いに心が通じ合ったことに今は心地良い。

 

「逆撫と僕で更なる高みへ行こう!

 だから今日も一緒に戦ってくれる?」

 

「ドンと任しておくれやす。

 平子はんにぎゃふん言わせましょう。」

 

「ハハハッ。変な言い方だね。

 平子さん居ないけど何処かに居るの?」

 

「平子はんは多分あそこでしょう。

 もう少し待てば用事も終わって来はりますから私と楽しくお話ししましょ。」

 

逆撫は平子の居場所に触れて欲しくなさそうな様子で話題をどんどん作っては気を逸らそうとする。今はまだ言えないこともあるのだろうと思って僕もその意図に乗っかり色んな話をした。

 

今思えばこうして時間をかけてゆっくり話をするのも初めてかもしれない。

 

内容はくだらないことから意外な趣味や僕が赤面してしまうような多岐に渡る面白い時間だった。

 

ただ一つ言えるのは逆撫さん。僕のこと大好き過ぎでしょ。嬉しいけど想像以上でビックリです!

 

フィギュア作りが趣味なのは意外だったから気になって作品を見してもらったけど、、。

ねぇ。あれ完全に僕を模写して作ってたよね?

 

着物姿、私服姿、隊長羽織姿、逆撫を構えた姿。

果てには僕が着たことない、なんなら着る筈がない水着姿(女性用水着)まであってあまりにも完成度高すぎて少し引きました。

本当に僕がちっちゃくなってそこに居るかのようで今にも動き出しそうなクオリティには脱帽です。

今は逆撫と同じ十二単衣姿の僕を作成しているらしく僕が来ない時間は暇してないようでそれは良かったと思ってます。

 

でも出来れば逆撫の人形も作って一緒に並べて欲しいです。その方が仲良しで良いよねと伝えると顔を真っ赤にして照れていた。

逆撫の照れる基準すら僕は分からなくなってしまったのは勉強不足なんでしょうか?

 

宝刀成長記録の存在は知っていたけど他にも埃のように叩けばまだまだ僕に関する何かが出てきそうで深くは聞かなかった。

逆撫の知らなかった(知りたくなかった)新たな一面に感慨深く感じていると平子さんがのっそりのっそりとやってきた。

 

「来ったんか。待たせてごめんな。

 昨日はあんだけ凹んどったけど大丈夫そやな。

 良かったわ〜!今日もぐずぐずピーピー泣いとったら性根叩き直すとこやったわぁ。

 ほんま要らん労力使わんでよかったな!」

 

良かった!ほんと前向きでいれてよかったよ。

多分根性叩き直すって首がひたすら飛んで精神的に慰めると言うより物理でやる感じですよね?

 

「今の僕に出来ることは逆撫をより使いこなして想いを感じることだけですから歩を止めて一人絶望して腐ってはいられませんよ!

 それに時間を味方にしなくてはならないんでうじうじしてもいられませんしね。

 今日こそ膝をつかせてあげますからね!」

 

「ええで!その心意気や!

 少し本気見したるからついてきぃや!!」

 

お互い刀を構えてさっきまでの軽い空気ではなく張り詰めた空気に入れ替わる。

 

「「倒れろ 逆撫」」

 

二人とも考えることは一緒のようで最初から全力の勝負。逆撫の逆さまによる能力をどちらが如何に使いこなすかが鍵を握る死闘がゴングを鳴らすことなく始まった。

 

白い羽織の僕と上下黒い袴の平子。

互いの形状が特質した刀が相対していく。

 





ご覧いただきありがとうございました!

時には甘さも必要かと思って描きました。
トワと逆撫の魅力が伝わって欲しいです。

どちらもオリキャラですが、、。
逆撫は半オリキャラですかね。

応援メッセージどしどし待ってます!
明日も頑張って投稿しますのでよろしくお願いします!

どうぞよしなに。

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