宝刀が持つ呂色と白練色の刀。
平子は全刀身が灰色に近い刀。
緊迫する中でどちらも同じ選択をとった。柄尻にあるリングに手を触れぶんぶんと回していく。
シュンシャンシュンシャンと空気の摩擦により綺麗な音色が白黒世界に鳴り響き周囲には甘い匂いが立ち込めていく。
匂いがトリガーの能力を避ける事なく受け入れ、二人の鼻に甘い香りが漂い吸い込んだことで互いが互いに催眠にかかった。
「「ようこそ 逆さまの世界へ」」
言葉がいい終わる頃にはガキンっ!と音が響き刀がぶつかりあう。考えることも一緒のようで宝刀は闘気を纏って瞬歩まがいを平子は霊圧を用いて瞬歩を使用して刹那の瞬間に斬り合っていた。
「僕もそろそろ平子さんの考えることすこしですけど分かってきました」
「ん?そりゃ良かったな」
宝刀は果敢に攻め立て、逆撫の能力をフル活用することで鍔迫り合う。
もし外野に見守る誰かがいるのなら二人は拮抗しているように見えるかもしれない。だが実際は宝刀が押されている。
──ダメだ、、全く通用しない。
視点の逆転はあからさまに分かるから使った途端にギリギリ刀身を避ける距離にスルリと逃げられる。
斬りつける方向を逆にしても刀が触れる瞬間に逆さまだと理解して僕の目からは追えない速度で逆さまにした場所へ刀が滑り込んできてガード。
前後逆転しようともそもそもの速度で敵うわけもあらず即対応。
クソっ!能力のON・OFFの切り替えを上手く扱えない自分が不甲斐ない。逆撫を持て余してる。
平子さんは様子を伺っているようで一切能力を使わない。なのにどんどん追い込まれいるのは自分。
あぁ!どれだけ差があるんだ!
どんどん自分の手札が封殺されてしまいだんだんと攻撃の手が緩み始めてしまった。そんな甘さを平子さんが許すわけもない。
そこからは一方的にやられた。多分だけど翻弄されるとはこのことだろう。
平子さんは見えないほどの速度で刀はを振るい始め、能力の使用してない筈のただの斬り合いですら防戦一方にならざる負えず、自分は能力を使う暇すら与えて貰えなかった。
平子はついに逆撫の能力を使う。
そこから始まるはただの一方的な惨殺。
視点が逆転したと思えば斬る直前に解除して違和感から対処出来ずに惨殺。
瞬歩まがいで後方へ距離を取ってこちらが能力を使用する前に視覚の前後逆転が発生して後方に移動した筈なのに前方へ進んだことでの一瞬の戸惑いの間に距離を詰められ惨殺。
なんとか鍔迫り合いをしても斬られる方向を逆にされ、防ごうとしても能力の解除で普通に斬られる。
何度も何度も逆さまにしては解除して慣れたと思ったら逆転される。
逆撫の能力がこんなに厄介なんて、、。
前回の平子さんとの戦いですら僕は全く逆撫を活かしきれてない事が理解出来た。
格の違いを見せつけられて悔しい。
数えるのも億劫なほどに自分は死んだ。
逆撫の能力を自分より上手く使う人が居てくれることがどれだけ恵まれているのか、糧にする機会があるかを悔しいながら心から感謝する。
僕には成長の余地がある!
分かったことは当たり前のこと。
───想像力。
どのタイミングで能力を発動させて解除するか。
相手の嫌がる瞬間、予想できない瞬間、あえて予測通りの切り替え、いくらでも応用が効く。
そして何を逆さまにするかも肝となる。
こんなの見せつけられたら堪らないよ。
最高!逆撫には可能性しかないよ!!
僕はハイに陥ったんだと思う。現在も平子さんの使う逆撫の能力でなす術もなく殺されているが、どんどん溢れ出るインスピレーションにテンションがおかしくなる。
「ハハハ!!最高ですよ!
凄く痛い筈なのに何度も死んでるのに刀を握ることを止められない!」
まだ僕には平子さんほど逆撫を使いこなせない。
今から真似をしても勝てる見込みすら皆無。
なら僕は違う土俵で勝ちをもぎ取ってみせる。
もう一度思考を切り替える為に呼吸を整え、現状の自分自身が定めた限界を越える!
「まだ僕の心は死にませんよ!!」
「目が逝ってんで!ヤバいな。
もうそろそろ終いにしよや。
いくで!もういっぺんはくらい死に」
平子は正眼の構えから上段に構えへと変える。
剣先を上方に掲げると今日一番とも言える程の目では捉えることが叶わない速度で振り下ろす。
平子が分かりやすく構えてくれたおかげでどう軌道がくるかは予測して刃先の下、鍔にギリギリ上部で受け止める。
速さが力であるかのように手から腕へと衝撃が走るが宝刀はこの一撃に耐えれたことで勝機を見出す。
受け止めた瞬間に足を引きながら左へいなす。すると平子の持つ刀は冗談かのように勢いよく左へ引っ張られ、まるで振り回されたかのように刀が身体から離れた事で無防備に晒す。
すぐさま宝刀は行動を起こす。小指半掛けとしていつも柄に握る手を右手だけ拳一つ分下にずらし右手だけ柄尻ギリギリを握る。
刃先を引きながら足を前に持っていき闘気を身体に纏い直し勢いを付けて無防備な平子へ──突く。
平子は急に動きが良くなった宝刀に動揺したが流石というべきか即座に刃の部分で突きを塞ぐ。
だが予想よりも突きの威力が強く後方へ飛ばされてしまった。
ええな!さっきのは俺もビビった。
一つでもプロセスがズレるとご破産なもんを躊躇いもなく命を賭ける胆力はやばいな。いくらこの世界では死なへんいうても毎回死を経験すんねんで。
次にくる手札をまちかまえていると宝刀からか弱い声で待ったがかかった。
「すいません。一度呼吸を整えさせて下さい。」
宝刀の身体には洪水のように汗が流れ、息も絶え絶えであり続きをするのも酷と一目で言える状況になっていた。
流石の平子も連戦は無理と判断して、休憩しぃや!と伝えた瞬間、宝刀は倒れた。
「宝刀!!」
逆撫は人型に戻り宝刀へ近づき慌てて介護する。汗まみれの衣服を剥ぎ取りタオルで全身を拭く。
「熱っ!」
逆撫は火照る身体に驚いて声を上げた。
「どしたんや?なんかあったか?」
「身体が凄く熱い。知恵熱かもしれへん。
さっきのやり取りで脳に負担をかけたみたい。」
「そら、そやろ。
あれはただの斬り合いやない。
ハイになりすぎたんもあるわ。
起きてから聞けばえぇわ。」
逆撫はそうね。と言いながら汗拭き作業を続けて新しい衣類に着替えさせた。すぐに起きる気配もないので宝刀の頭を自分の膝に持っていき頭を撫でながら回復を待つ。
しばらくすると宝刀は目を覚ました。目を開くと目の前に広がる胸に驚いたが逆撫に膝枕をされていたことに気づく。
膝枕をしてくれたことや手当をしてくれた逆撫に感謝を伝えてヨロヨロしながら立ち上がった。
「もうええんか?まだ休んでもええで。」
「大丈夫です。ありがとうございます。
あ〜!!もう少しだっのが悔しですけど僕としては一つ成長出来たので嬉しいです。」
「うんうん。えかったな。
そやそや。最後のあれなんやったん?
めっちゃ気になるわ。教えてぇな。」
宝刀は平子に向けて説明をした。
─── 北辰一刀流。
黒歌と白音とまだ生活していた時に何か二人を守れる知恵はないかと図書館で見つけた剣術本。
北辰一刀流の中にあった言葉。
【 一つは太刀を殺し
一つは技を殺し
一つは気を殺す 】
この言葉をより深めたのが
《先で打つ、中で打つ、下で打つ》という教え。
3つの中で今回は下で打つ使用した。
下とは刀身の下部分。所謂、鍔の少し上。
そこへ斬り込んでくる相手の刃先を合わせることが下を打つでポイントになっている。
この扱いで重心の関係上、自身の刀に重さを加えることができ、軽い力で相手の刀を勢いよく払うことが可能となる。
さらにそこから歩法として足を後ろへ下がりながら相手の刃先を払う方法を持ち合わせるとより重さが加わり先程の平子の状態のように払わされたかのようにするでた訳だ。
これが一つ目のポイント。
二つ目が北辰一刀流の突きである。
刀を普段握っている状態から片方の手を柄の下部、柄尻にあたる部分に持ち変える。
この方法で突きを防がれ例えば相手から押し込まれても柄尻にある手がストッパーの役割をこなして刀がブレることもなく威力がより出せる仕組みとなっている。
最後の止めとして歩法を用いて足を進め、更に闘気を纏えば鬼に金棒ほどではないけど簡単に破られることのない一撃が完成する流れである。
「簡単に言えばこんな形ですね。
でも一瞬の勝負でこの掛け合いや平子さんが逆撫の能力を使っていれば何も意味を成さずに死んでしまうのは確定なんで難しいです。
まさか極限思考のおかげで知恵熱が出ちゃって倒れるとは思いませんでした。」
ハハハと笑うしかない。
「最後に一度だけお願いしてもいいですか?」
「最後の一回やで。
そん代わり特別にいい技見せたるわ。
まだ宝刀には出来へんけど勉強なるで」
平子は瞬歩を幾度も使用して宝刀の前後に移動することで撹乱してきた。霊圧を感じ取れても目で追いつけるわけもなくただカウンターを狙って構えるしか方法が見つからない。
まるで僕の前後で分身しているかのようだ。スゥーと息を吸い込み目を閉じ神経を研ぎ澄ませる。深く深く些細なことでも感じとれ。
音が後方から響き理解した。後ろからくる。
「散在する獣の骨
尖塔・紅晶・鋼鉄の車輪」
後ろへ振り向くと誰も居なかった。え?と声が漏れた。平子は目の前に居るから前後の逆さまではない。なのに後方から声が聞こえて詠唱が耳に流れ込んでくる。
「動けば風 止まれば空
槍打つ音色が虚城に満ちる
破道の六十三 雷吼炮」
何が起きたか分からないまま、前方から雷をまとった巨大な衝撃波によって死んだ。
復活した宝刀はまた知らぬ能力に感動して平子に詰め寄りさっきのは何かを聞く。
「平子さん!!あれなんです??
声が逆の場所から聞こえましたよ?」
「そや!逆撫の能力。
音の反響を逆さまにした」
平子は実験やと言うと石を何処からか取り出して宝刀の右側へ投げる。すると右から聞こえる筈の石が地面にぶつかる音が左側に聞こえた。
「ろやいごすはでなかさ」
平子の言葉が逆さまになったのか、よく分からない言葉を発した。
「どや!エグいやろ。
音を反響させるとこんなんも出来る様になるからこれからと精進すれば宝刀も使いこなせる。」
「逆撫と共にいたいのならば。
思考を止めるな。考えろ!
自分の尺度で可能性に蓋をするな。
俺が言えるのはそんだけや」
僕は頷くことしか出来ない。
頭の中に平子さんの言葉がリフレインする。
ぼぉ〜と考え込んでいると何か柔らかいものに身体が包まれた。後ろへ振り向くと逆撫が素敵な笑顔で僕を見ている。
本来なら誰もが見惚れるほどの笑顔が僕には恐怖を与えて身体がプルプル震えてしまう。
「ほ〜う〜と〜う〜」
あっ、思い出した。笑顔って元来は攻撃性を含む意味合いがある行為だと。
「貴方は無茶をしすぎです!あんなに斬られて死んでそれでも諦めずに挑むことは凄いと思います。
ですが心はすり減っていくんですよ。
宝刀が死ぬ度に私がどれだけ心を痛めてるのか知ってますか?」
逆撫の説教は止まる事なく続いていたが途中からポロポロと涙を流し声も震わせながら宝刀の身を案じる言葉になっていった。
「ごめん。ごめんなさい。」
宝刀はただ謝る。自分のせいで泣かせた女性を慰める方法なんてハイになりかけた今の自分には思いつかない。だからひたすら謝る。
「許しません。私は傷ついてます。」
また目がうるうるしていつでも泣ける状態の逆撫を見て最終奥義を出さざる負えない。
「僕が出来ることなら何でもするから!
お願いだから泣き止んで。」
その言葉を聞いた瞬間に逆撫はニヤリと笑った。
あっ、、。騙された。
「仕方ないですね。
そこまで言うならコレで手打ちにします!
あぁ。私はなんて慈悲深いのでしょうか。」
逆撫は何処からか取り出した紙袋を手渡す。
中を見ると何かの衣類が入っている。
これに着替えろと言うことだろうと思った宝刀は少し離れた場所に移動して着替えていった。
結果この日ほど「何でもする」という言葉を悔いた日はないと宝刀は言うだろう。
「あぁぁぁあああ!ヤバ!!
可愛い!!宝刀可愛いですぅ!!
堪んないです。ヤバいです!!
もう食べたい。かぶりつきたいぃ」
逆撫ははぁはぁと明らかに危ない人のように顔を火照らせながら手に持つカメラでパシャパシャと写真を撮っていく。
逆撫が手渡したのは水着(ちゃんと女性用)。
もちろん宝刀大好き至上主義な逆撫がただの水着を手渡す訳がない。
胸の部分はマイクロ水着となっており、ギリギリ先端部分が隠れるくらいの見えるか見えないかの攻めすぎた痴女ですらビックリの布面積。
男なので胸は見られても大丈夫の筈なのにそのあまりにも頼りない感じが逆にこっ恥ずかしいタイプ。
下はスカートタイプのフリルが付いた物だが、これまた中の水着が見えるか見えないかギリギリを攻めすぎた短すぎる丈。
少しでも動けば理想郷がチラリズムしてしまいそうなこれまた恥かしい。
簡潔に言えばひたすらエロい。
宝刀はもう顔から火が出そうなほど真っ赤にしながら羞恥許容範囲メーターが弾け飛んだ為に「くっ!殺せ。」と自暴自棄になる。
「くっ殺いただきました〜!!
平子はん!宝刀がヤバです!!」
逆撫は鼻から赤いものを、口からは涎を出しながら拭くことすら忘れてシャッターを押すスピードを加速させる。
「ヤバいのはお前や!
それにしても似合うな宝刀。
めっちゃおもろ〜」
平子は腹を抱えて笑い出す始末。
もう宝刀ですら止められない世にも奇妙なカオスが白黒世界で繰り広げられた。
恥を白黒世界へ置いてきた宝刀は逆撫を振り切り現実世界へどうにか帰る事が出来た。
そして一つ誓いを自分に課した。
──逆撫を泣かせない。
さもないと自分の尊厳が死ぬ。
今日もご覧いただきありがとうございます!
北辰一刀流を調べて使ってみました。千葉周作から始まり坂本龍馬も門下生になった由緒正しい流派です。
合理の剣がかっこよすぎて採用です。
初めてほぼ一話丸々戦闘描写にしましたがいかがですか?拙いながらも頑張りました。
そして宝刀のセクシー回はどうですか?
なんで宝刀が女の子じゃないだぁ!と描きながら思いましたが許してください。
宝刀の可愛さが伝わって欲しいです。
クソっ!私に画力があれば挿絵がお届けできるのに、、。
誰か、、。誰か我こそは宝刀の水着を描いてみせるという勇者はいっしゃいませんか?
崇め奉ります。
どうぞよしなに。