Unsinkable Ship   作:admiral56

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更新遅れました大変申し訳ないです。

アニメのPVいいっすねー

3Dアニメってことなので、最近ならシドニアやらアルペジオやらありますし、期待ですね


『第一二回小演習・中編 6月21日』

 第一次攻撃隊を見送った瑞鶴たちは、ラタンガイ島沿岸に沿って北上を始めていた。

 

「雪風ちゃん、しっかりやれてるでしょうか?」

 

 赤城がまさに大和撫子と言った端正な顔に、不安の色を浮かべる。この第一航空戦隊旗艦は、基本的に誰と話すときも敬語を崩さない。それがこの空母の穏和な印象をいっそう強める要因たりえているのだが、それも食事中以外のお話である。

 

「大丈夫だと思いますけど、一応教育隊を出てすぐにここに来れるんですし」

 

 レイテ沖海戦まで生き残っていた瑞鶴としては、雪風の武勲話はいくつも聞いていた。実戦だけでなく、演習でも雪風はどの艦よりも先んじて戦闘態に入れる超機敏艦としてその名を轟かせていたし、その性能は艦娘としての雪風にもしっかり受け継がれていることだろう。

 

「そうですか」赤城は弓をきつく握り直すと、自らに言い聞かせるようにしてうなずいた。「そうですよね」

 

「二人とも! まずいかもしれない!」

 

 先行して周辺警戒に当たっていた摩耶が、自らの頭に刺さるようにして装着しているアンテナを握りしめながら瑞鶴たちの方を振り返る。

 

「前方から敵機とおぼしき反応が多数、やっぱ読まれてたかもな!」

 

 言いながら摩耶は対空砲を空に向かって構える。摩耶に二基四門搭載されている12.7cm連装広角砲の対空能力は正直言ってそこまで高いものではない。その後方では空母の二隻が後方で直掩機の発射準備を始めており、姿勢を低くして力場の出力を上げて最大戦速まで加速し、矢立てからいくらかの矢が引き出される。

 

「迎え撃ちます!」

 

 赤城がまず引き絞られた弦を解放し、数条の矢が中空を滑空していく。摩耶の頭上を越えて艦載機に変容した赤城直掩隊が編隊飛行している少し後方を、発艦が多少遅れた瑞鶴直掩隊が追う。ここに、一航戦と五航戦の練度の差が表れている。栄光の連合艦隊で緒戦を勝ち抜いてきた赤城たちの誇りは、艦載機妖精たちのプライドにも影響を及ぼしているのだが、それはまた別の話である。

 

「水偵より報告、敵機総数・六八機!」

 

「なっ――それって今稼働できる基地航空隊の半数よ!? そんなわけは――!」

 

「加賀さんの航空隊ね」

 

 水偵を飛ばした摩耶の報告に取り乱す瑞鶴の横で、赤城が冷静な面もちで顎を指で撫でる。第一次攻撃隊が基地戦力をほとんど引きつけさせる予定だったが、この分だと、おそらくどこかで足止めを食らっているのかもしれない。旗艦がこちらにいるという相手の賭けが見事に的中した形であるようにも思える。

 

「バレてたんなら仕方がない……!」

 

 瑞鶴が速力を上げる。直進してくる敵編隊に対して左に針路を取り、岩場を避けようとする。赤城がそれに追随し、対空火器で身を固めた摩耶が真正面から敵機の群に突進していく。輪形陣を敷こうにも護衛艦艇が一隻では話にならない。摩耶が二隻を庇う形で敵編隊との接触を図る。

 

「独立撃ち方! 撃て撃て撃てェ――――ッッ!!」

 

 摩耶搭載の対空機銃やら広角砲がそれぞれ一斉に火を噴き出す。しかしそれはあくまで空戦の始まっている交戦域の敵機に届くようなものではなく、数で上回る敵の攻撃機や爆撃機が交戦域を突破した場合への牽制という意味合いが強い。

 

 赤城・瑞鶴直掩隊も多くは熟練したパイロットである。少なくとも基地航空隊よりは自分たちの方が腕が良いだろう――という妖精が多い。しかし、そもそも妖精に年功もなにもあるのかと言われれば、それは疑問である。超技術を持ち、不死っぽくて、小人のような外見――というのが、一般将兵たちにとって妖精について判明していることのすべてである。

 

 蚊柱のように旋回や急降下や急上昇を繰り返す小さな航空機たちの戦いは、機銃が禁止されている所為もあってか、どこか緊張感にかけた光景になる。一見、航空機同士によるじゃれ合いのようにも見える。しかし確実に双方のエースたちは敵機への後方占位を繰り返しており、既に何機かは撃墜判定をもらって白旗を揚げながら母艦に戻ってきたり、基地へと引き返している。

 

「まずい、押され気味ね」

 

 赤城が悔しそうに眉根をきつく寄せる。

 

「そ、そうですね……」

 

 隣の瑞鶴はさきほどから何故かしつこく加賀隊の直掩機に狙われ続けている自分の隊機に気が気でない。だが、瑞鶴にはどうしてこんなに狙われるのか、心当たりがあった。一昨日の、提督とのやりとりだ。

 

「でも……彩雲のパイロットは捕らえたはず……後で偵察員の方もとっちめたし……」

 

 ぼそぼそと独りでにつぶやいている瑞鶴は、ふと、隣の航空母艦に目をやった。長い黒髪を背中まで垂らしている、武人とは思えないほど端麗な容姿のこの先輩もそういえば、あの時あの場所にいたはずである。

 

「……あの」

 

 負けて戻ってきた艦載機を矢に再び戻しながら、赤城が「うん?」と反応する。戦闘時の私語は決して褒められたものではなかったが、瑞鶴にとってこの質問は作戦の成否を左右する重要なことだった。瑞鶴に厳しい加賀ならともかく、温厚な赤城なら多少の私語ぐらいは許されるだろう――そういう目算もあった。

 

「一昨日のこと――」

 

「え?」

 

 赤城は演習に関することを聞かれるものと思っていたらしく、意外そうな表情になる。一瞬戸惑った瑞鶴は、ここで萎縮してしまえば聞く機会を逃すかもしれないと腹をくくり、二の句を継ぐ。

 

「おと、一昨日、わたしが提督と会っていたこと、誰かに話しました?」

 

「一昨日、ですか……」

 

 赤城は大真面目に自分の一昨日の行動を思い出そうとしている。自分の雑談とも捉えられて仕方のないはずの発言にも、わざわざ考え込んでくれる先輩の生真面目さに瑞鶴は好感を抱いたが、同時に少し申し訳なさがこみ上げてくる。

 

「思い出せませんか」

 

 空戦を眺めながら悩んでいる様子の赤城の横顔に、恐る恐る瑞鶴は聞いてみる。

 

「あ!」赤城が明るい表情になって突然瑞鶴の方を向き直る。「思い出しました!」

 

「っ!? そうですか、どなたに?」

 

 嬉々とした様子の先輩に面食らいつつも、瑞鶴は赤城の次の発言を聞き漏らすまいと傾聴の姿勢をとる。

 

「話しちゃいました、ルームメイトの加賀さんに!」

 

 後で怒られちゃうかもしれないですね、ごめんなさい――先輩空母の屈託のない笑顔を前にして、一応愛想笑いを作り上げることには成功した瑞鶴は、脳裏にて恐ろしい速度による計算を実行していた。今回の演習――作戦の露呈――主力への強襲――加賀航の出現。

 

「あはは……やっぱり」

 

 すべての原因はわたしと赤城さんにある、と確信した瑞鶴は一度目を伏せ、天空を仰ぐ。

 

 加賀航空隊たちが自分たちを見つけたのは、綿密な行動予測などではなく、完全に執念によるものだろう、と瑞鶴は青ざめた表情のまま思索する。演習開始直後か、あるいはその前からもう自分を捜すために加賀は動いていたに違いない。そして自らの航空隊による手で自分に制裁を加えるべく、六八機もの大編隊を用意していたのだ。

 

「どうしたんです?」

 

 なんにも気が付いていない様子の赤城が首を傾げるのに、半ば絶望に支配された瑞鶴はただ笑みを返すことしかできなかった。

 

 

 同じ頃。南東方面基地港湾。

 

「あの娘だけは必ず沈めてやるわ」

 

 自身の航空機を一機残らず発艦させた加賀は、切れ長な瞼を閉じて、一昨日のことを思い出す。

 

 ――提督をつけさせていたはずの彩雲が不首尾に帰ってきたのを加賀がいぶかしんでいると、ノックの音もなしにドアが開き、眠そうな赤城が寝間着のまま相部屋に入ってくる。

 

「あれ、朝ご飯はもう食べたんですか」

 

「あ……はい」

 

 目をこすっている赤城からは、かすかに航空機の塗料と燃料の香りが漂ってくる。てっきり間宮の方で朝食を取るのかと思っていた加賀は、艤装向けの補給をしたのか、と問うた。赤城はベッドの上に放置されていたピローキャップを被って、違いますよ、と加賀の憶測を否定する。

 

「途中で瑞鶴さんたちに会ったんです」

 

 少し微笑んでベッドに滑り込もうとする赤城に加賀の腕が伸びて、襟首をつかむ。「待ってください」

 

「どういう意味ですか、それは」

 

 今の一言では全く理解ができない。何より、瑞鶴という単語が引っ掛かる。あの五航戦の新米が赤城にいったい何用があったというのだろう。朝食を一緒にした、とか、そういうことだろうか。しかし、引っかかるのはそれだけではない。

 

「瑞鶴たち、というのは」

 

「え? ああ、提督もご一緒していたものですから」

 

「提督?」先ほど戻ってきた彩雲偵察員の話では、提督は新人の駆逐艦を部屋に連れて行ってからというもの、一人で執務室に向かっていってしまい、締めだされてしまった――となっていた。その話の中に、瑞鶴やら赤城やらの単語は一度も出ていない。「どういうことですか、赤城さん?」

 

「え……」加賀から発せられる尋常ならざる雰囲気を感じ取った赤城は、急に、何かに気が付いたような様子になった。瞳を左の方へ泳がせ、口元に手をやる。「やっぱりなんでもないです……」

 

「……赤城さん」加賀が急に厳しい口調になる。赤城が時折なにかをしでかすと出てくる『海鷲の焼鳥製造機・加賀さん』モードだ。「何か隠していませんか」

 

 怒りを全く、おくびにも表情に出さない加賀の身体から、急に蒸気が湧き上がる。こういうときは大概(はらわた)が煮えくりかえっており、下手に刺激しようものならすぐに爆撃されてしまう。

 

「いや、あの……」

 

 

 ――要するに、提督と瑞鶴の謀略にはまって自分の偵察機を食べてしまった、ということであった。

 

「許すまじ……五航戦」寝ぼけていた赤城はその後の瑞鶴と提督の行方を知らないのだという。主翼を食いちぎられたはずの彩雲が無傷で帰って来たということは、おそらく工廠にでも行ったということだろうが、そのあとはもう誰にも知れたことではない。「提督も……後でしかるべき報いを受けさせないと」

 

 決意を新たに、同じく港湾に停泊している夕張の艦橋を睨みつけた加賀のもとに、第503航空隊――偵察機部隊の彩雲が戻ってくる。

 

「なに、隼鷹がやられたの?」

 

 彩雲からの通信は巡洋艦部隊の戦闘の顛末を伝えていた。様子を聞く限り、それをまだ赤城たちは知らされていないだろう。現れた戦力からいっても、おそらく雪風たちの部隊は陽動か何かということになる。その後方におそらく巡洋艦たちを一網打尽にする攻撃のための部隊が配置されている可能性が高い。

 

「でもその付近での空戦はこちらに軍配が上がっているようね」

 

 自分が動くべきだろう――加賀はそう判断した。このままでは隼鷹航と東西飛行場隊が飛行場へ反転してくるうちに、高雄たち追撃隊は確実に敵の待ち伏せに遭う。航空支援のないままでは、数で負けるであろう彼女らが優位に立つことは難しい。ならば、加賀自身がそちらに出向いて戻ってくる航空隊の反復までの時間を可能な限り短縮し、高雄たちに追いつかせるべきではないか、と考えたのである。

 

 まだ南飛行場隊は動けないらしく、加賀が動いたことが知られるまではまだ時間があるように思われたのも、加賀がこの大胆な作戦を思いつく一因となっている。

 

『こちら加賀より、高雄ら残存艦艇へ。私が隼鷹航と基地航空隊を一時収容するから、追撃の速度を一旦落として、航空部隊の到着を待って』

 

 彩雲と通信の双方を使って、確実に伝わる形で伝令を回した加賀は、続いて別方向にも通信を飛ばした。

 

『あなたたち、出番よ』

 

『はいっ!』

 

 白露型の二隻が、回線の向こうで威勢良く返事をした。加賀が瑞鶴撃破を狙って隠匿していた別働隊――時雨・夕立二隻による突撃隊だ。実のところこの二隻は瑞鶴たち主力、北上たち雷撃隊を同時に狙える位置――アタフ島・北部の入り江にこのとき潜んでいた。同じく南隣のクレドナー島に北上たちとの距離はどう見積もっても二海里もなく、このとき双方ともに非常に危険な状態下にあったといえる。

 

『その周辺を赤城さんたちが通ります。――肉薄しての砲雷撃戦、頼んだわ』

 

 了解しましたっ――二隻の返事を最後に通信が切れる。艦隊所属の駆逐艦では最も練度の高い時雨、夕立である。うまくやってくれることだろう、と期待の眼差しを西吹山の向こうにあるであろうアタフ島へ向けてから、加賀はぐっと身を沈めて足下の力場の出力を上げ、一挙に前方へ加速する。

 

「待っていなさい……!!」

 

 港湾を飛び出していく加賀の起こした高波が、付近の夕張へも波及し、中の提督のことなど知ったことではないとでも言うように、その過搭載な船体を激しく動揺させる。

 

 もちろん、加賀の当てつけに他ならなかった。

 




クールビューティー加賀さん大活躍

これまでのちょっとヤバイとことかちょこちょこ直さなきゃなんですよね
というか三分割でこの演習終わるかな……

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