殺し屋殺しは英雄になる   作:アノニム

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殺せんせーが犯罪をしてしまいます。
駄文にお付き合い下さい


一時間目 転入前の時間

アノニムの朝は早い、就寝時間は平均2時過ぎだというのに、毎朝4時に風呂場で目覚める。目覚めた後はランニング10kmを軽く流し、その額には汗が少し滲んでいる。そして、ランニングで少し熱くなった体を冷たいシャワーで冷ます、彼はこの時間が好きなのだ。

 

 アノニムは冷たいシャワーを浴びながら目を閉じ、少し前にあった超生物との出会いを思い返す。本気では無かった(・・・・・・・・)とはいえ、そこらの殺し屋や傭兵ならば一撃でやられているであろうというのに、いとも簡単にいなされた自分の攻撃。

 

 

「ハッ……面白えな」

 

思わず笑みを浮かべてしまう。しかしそれは嘲笑でも自嘲でもない、純粋に嬉しさからくるものだ。

 

(マッハ20、確かに速いが……本気でいけばマッハ20といえど、あれなら殺れるな……久しぶりに楽しくなりそうだ)

 

自らを殺せんせーと名乗ったふざけた顔をした超生物を思い浮かべながら、そう考えた。

彼はシャワーを止め、風呂から出る。そして、まだ新品であろうバスローブに身を包み、タオルで頭を拭き、シャワーの後に必ず飲むコーヒーでも淹れるかと考えながらリビングへ向かう。

 

しかし、家具はそれなりにあるが、まだ質素と言っても過言ではない、日本へ来て新しく借りた家のリビングには絶対にいるはずのないものがいた(・・・・・・・・・・・・)

 

「ヌルフフフフ、朝は意外と早いんですね〜アノニム君」

 

暗殺対象(ターゲット)がいた。

しかもコーヒーを淹れ、勝手に冷蔵庫から出したであろうスイーツを丁寧にテーブルに並べている。

あたかも自分の家の如く寛いでいるタコ、しかしながらここは——

 

 

 

「——-俺の家!!!俺のコーヒー!そしてそれは俺のケーキだ!!!」

 

 

 

「おや?これは失礼しました」

 

そう言いながら全く悪びれる様子もなく、皿に乗ったケーキを差し出してくる。どう見てもタコの方に1ホールがほぼ丸々残っているが……。

 

「おい……」

 

「さあ、遠慮なさらず先生が淹れたコーヒーと一緒に食べてください!」

 

「…………」

 

結局、勧められるがままに食べた。

コーヒーの味は中々良かった。

 

 

***

 

「で? 何しに来やがったタコ」

 

アノニムはケーキとコーヒーを堪能した後、追加でおかわりを淹れて貰ったコーヒーを飲みながら、自分の家に不法侵入した超生物を睨む。

 

「いやぁー実はね。ふぅー、今日から、ふぅー、転校、ふぅー」

 

「早く飲め!!」

 

 いったいいつまでコーヒーを冷まし続ける気だ。まだそれ一杯目で一口も飲んでないだろ…。そして砂糖を大量に入れていて、コーヒーの表面から砂糖の山が見える。そして、すっかり冷めたコーヒーだった物を飲み干すと殺せんせーは口を開く。

 

「アノニム君は今日が転入初日なので先生、張り切って迎えに来ちゃいました!」

 

「黙れ、不法侵入者」

 

タコに大ダメージが入ったようだ。

 

「にゅやっ!ひ、酷い!誤解ですよ!まるで先生を犯罪者みたいに言って!」

 

「誤解もロッカイもねーよ、クソタコ。大体どうやって入ったんだよ…」

 

「それはですねぇ〜、アノニム君が寝坊しないように起こすための寝起きドッキリの準備をしてここに向かっていたら、ランニングをしている君が見えてしまい。先生、アノニム君が家の扉を開けた瞬間に、隙間からスーッと…」

 

「余計タチが悪いわ!!!ゴキブリじゃねーか!!」

 

「そ、そんなことありませんよ!?ほら、こんなにも可愛らしいじゃないですか!!」

 

そう言うと殺せんせーは自分の触手の一本を伸ばして見せる。

ヌルヌルと動かすその姿にアノニムは不快度が増す。

 

「どこがだよ……うぜぇな、もう帰れよ」

 

「いいえ、帰りませんよ! 私と一緒に登校しましょうよ!ね!」

 

「ったく……心配しなくてもちゃんと時間通りに行くからさ、帰れ、マジで」

 

「むぅ、しょうがないですねぇ〜。E組の皆さんに紹介する前に、先生方と挨拶をと思ったんですが」

 

「あんたと前に会った烏間……後はあいつだろ、いらねーよ」

 

「そう言えばロヴロさんが師匠でしたね……という事は姉弟子になるんですか。あのおっp……姉弟子、いいですね〜ヌルフフフフ」

 

「うるせえエロタコ!!今すぐ帰らねーと、この手榴弾で粉々に殺すぞ!!!」

 

 

と、一悶着あったが殺せんせーは鼻歌を歌いながら帰って行った。

やっと一息つけると、ソファーに座り込んだアノニムは残りのコーヒーを飲み干した。

 

「クソタコめ、覚悟してろよ……それにしても、あいつが教師ねぇ…」

 

 

何か思う事があるのか、アノニムは殺せんせーが飛び去った窓の方に目を向ける。

 

「まぁ、いいか。さて………どう殺してやろう」

 

その目はとても冷たく、鋭く、そして闇を纏っていた。

 

 

***

 

「ねえ渚、聞いた? 新しい転校生の話!」

 

学校へ行く途中であろうか、制服を着た小柄な少女が、小動物のような少年に話しかける。

 

「茅野。うん、この時期に来るって事は——」

 

「——-殺し屋だよなー。変な奴じゃなきゃいいけどさ」

 

頭の後ろで手を組みながら渚の言葉に繋げる杉野。

これまでE組に転校してきた生徒2人の前例がある事から彼は微妙な顔をしていた。

 

「あはは……確かロヴロさんの紹介って聞いたけど」

 

「そうなの!? じゃあ、ビッチ先生も知ってるのかな?」

 

「どうだろーな? 俺は普通の人だったら、なんでもいいけど!」

 

「殺し屋の時点で普通の人では無いと思うんだけど……」

 

「それもそうだな!ははは!」

 

「そういえば、私こんな事も聞いたよ。その転校生の異名!」

 

「へえ、何て呼ばれてるんだ?」

 

渚と杉野は茅野の方へと視線を向け、彼女の言葉の続きを待つ。

 

 

 

「殺し屋殺し!」

 

彼女、茅野カエデはとてもいい笑顔でそう言った。

 

 

 

 

 

 




暗殺教室って何回見返しても面白いんですよね。

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