カムラの鬼神   作:砂岩改(やや復活)

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主人公
 装備 カムラノ装一式
    里守護ノ双刃


第2話

 

「ふぅ…」

 

 このカムラの里の主人公に憑依してから3日、身体の調子を整えて記憶の整理もある程度まで済ませると修練場にまで足を運んだ。

 最初はウツシ教官が来る予定だったがマガイマドの動きを偵察しに行かなければならなくなり来れなかった。

 前回の百竜夜行の際、対峙した瞬間に体が動かなかった、想定外の事態と言うこともあったが後ろにヨモギとイオリがいたと言うのに。

 

「体が痛むかニャ?」

 

「大丈夫だよ、ムツ。少し考え事をね」

 

「クゥン…」

 

 心配してくれるムツとナガトの頭を優しく撫でると現在と前世の考えを整理する。

 

 当然ながらゲームと現実の狩猟は違う。

 爪で裂かれれば腸が飛び出るし叩きつけられればミンチになるのは人間と変わらない、多少の衝撃ならば耐えられるが限界はあるし回復薬ですべて事足りると言うことはない。

 

 なら狩りに必要なのは防御力より機動力、被弾をできるだけ避ける必要がある。ゲームではハンマーを使ってダメージ上等と言わんばかりのゴリ押しで戦ってきたが現実で自分が行えば体がいくつあっても足りない。

 まぁ、そのやり方でジンオウガと戦って相討ちになったのだが。

 

「双剣なんて珍しいニャ?」

 

「ちょっとやりたいことがあってね」

 

 机上の空論だが理想の狩りは常に動き続け相手を撹乱しこちらが攻撃を加える一種のヒットアンドアウェイ先方。

 これならライトボウガンとかでも良さそうだがボウガンは個人的に燃費が悪い気がする。すぐ弾を切らしてしまうのは自分のせいなのだが。

 片手剣も良いなと思ったのだが取り敢えず双剣のイメージがあったので持ってきた。

 

「さてと…」

 

 そう呟き行きを整えたユウは翔虫を使って一気に上昇すると空中でさらに翔虫を使って移動すると標的のカエルモドキの目の前まで迫ると一瞬だけ滞空し再び翔虫を地面に向けて放ちそのまま引っ張られる勢いを使って体を回転させカエルモドキを切り刻む。

 

「にゃ!!」

 

「グル!?」

 

 そのまま櫓越えでまっすぐ空中に飛び上がると先程の要領を使い空中にいながらにして標的のカエルモドキを切り刻んでいく。

 今までにない動きにムツとナガトは驚きを隠せずに見つめるしかない。

 そしてユウは地面に足を着けることなくカエルモドキをボロボロにすると静かに地面に着地する。

 

「っ!!」

 

 しかしボロボロで動けなくなったと思っていたカエルモドキが動きだしユウ目掛けて攻撃を繰り出す。

 だが彼の体から赤い気配が一気に吹き出すとトドメと言わんばかりに紙一重で攻撃を避けると乱舞しカエルモドキかは完全に機能を停止した。

 

「あ、やりすぎた。ハモンさんに怒られる」

 

 予想を遥かに越えるユウの動きに呆気にとられていた二匹は正気を取り戻し主人のところに駆け寄る。

 一連の動きを終えた主人の顔は歓喜に溢れていた。

 

「ニャ、さっきのは一体なんだったのニャ!」

 

「ガウ!」

 

「翔虫と双剣を見て思いついてね」

 

 モンスターたちに対して機動力で勝とうと思うなら体を鍛えるよりも翔虫を利用した移動が圧倒的に速い。

 前世から空中移動、双剣、巨大な敵という要素に進撃の◯人みたいだぁと言う何気ない感想を元に考案した空中戦、アオアシラやアンジャナフ等の陸上モンスターなら充分対応できるはずだ。

 こればかりは実践してみなければ分からないが。

 

「ニャるほど、確かにご主人の言うことを実践しようとすればこうなるのかニャ」

 

「まぁ、こんなに早く出きるとは思わなかったけど」

 

 初の試みのために時間がかかると踏んでいたが考え付いただけで実践できるとは。自身の身体能力を甘く見ていた。

 

「しかし…」

 

 とっさにだが最後に使った鬼人化+カウンターの威力は絶大だった。

 あの鬼人化を使用した瞬間、全身の血が沸騰するような感覚と共に身体能力がさらに向上した気がする。

 トランザム…いや、ギア2のような一時的な身体能力向上と捉えて良いだろう。

 体の状態を確認するが特には問題なさそうだった。

 

「調子はどうですかユウ?」

 

「その様子なら問題なさそうですね」

 

「ヒノエ、ミノト」

 

 しばらく新しい戦い方で体を慣らしていると二人が大量のお団子を持ってやってきた。

 その半分以上がヒノエの物であろうと言うのは想像通りだろうが二人のご厚意に甘えて休憩を取ることにした。

 

「ナルガクルガ?」

 

「はい、隣村の飛脚さんからの依頼です。見方によればジンオウガよりも厄介な相手かもしれません」

 

「ミノトったらずっとユウのクエストを何にしようか悩んでてね。タマミツネか、アンジャナフかってどれがユウ為になるか怪我せず帰ってこれるかって」

 

「姉さま!」

 

 若干頬を紅潮させながらからかうヒノエに言葉を放つが当の本人は10本目の団子に差し掛かっていた。

 ちなみにユウやミノトはまだ一本目である。

 

「本来なら私は集会所のクエストを管理していましたが今回は特別に選ばせてもらいました。ナルガクルガに決めたのはユウの戦い方を見させてもらったからです」

 

「えぇ、あれは凄かったわ。あれが実戦に耐えうるのなら翔虫を使った戦い方は変わるわ」

 

「病み上がり初戦にしては強敵なのは承知しています。ですが近々、対峙するであろうマガイマドその為に…」

 

「ありがとう、ミノト」

 

 自分のことを心配してくれているのは良く分かっているので素直に礼を言うと彼女も大人しくなる。

 

「……」

 

 ハンマー使いだった彼が急に双剣を持ち出したと思えば想像すらしなかった戦闘術を編み出していたのは驚いた。

 まるで天啓でも降りたかのような変わりぶりに少しだけ心配したが彼がミノトに向ける優しい視線を見て彼は彼だと安心する。

 彼は昔から自身に向けられる親切心などの好意に対して機敏に察知する。そんな優しい彼を百竜跋扈する狩猟に行かせるのが本当に辛かった。

 だからこそ一時はユウと共にハンターを目指し共に戦うことを選んだが今はこうして受付嬢をしている。

 

「どうか無理をなさらずに」

 

 そうしてヒノエは20本目の団子を口に運ぶのだった。

 

ーー

 

 もう少しリハビリをして帰る旨を伝えると二人は自身の仕事に戻っていく。それを見送るとまた思案する。

 

「ナルガクルガか」

 

 ここがモンスターハンターの世界ならやりようはいくらでもある。直に見て確かめる必要があるがモンスターの行動パターンは限られてくるはずだ。

 ナルガクルガなら初登場から何度も相手にしている軽く100、200は越えている。むしろこのライズ初出のモンスター以外なら攻撃、行動パターンは頭に入っている。

 

 ティガレックスのような挑戦的な攻撃ではなく尻尾などを使ったとは曲線的な攻撃を仕掛けてくるモンスターで最初はよく惑わされたものだ。

 

「ご主人様…」

 

「大丈夫だよ。よし、これ終えたら終わろうか!」

 

 そう言って身体中に巡る血液を意識して行きを整えると赤いオーラが全身を包む。

 鬼人化による身体能力の向上。切り札となり得る以上、それの限界を知らなければならない。

 

「いくよ!」

 

 既に壊れてしまったカエルモドキを標的に先程の鬼人化中に空中戦をこなす。先程に比べスピードが上がっているのか制御が難しいがそれと同時に動体視力も上がっているようで標的を見失うことはない。

 体の赴くままに限界まで動き回ると鬼人化が強制的に解除される。

 

「90秒だニャ…ご主人様!」

 

「ハァ…ハァハァ!」

 

  めまいによる視界不良、筋肉のけいれんによる全身の震える。ムツが体を触ってみると異常なほど体温が高かかった。

 ナガトとムツは震えるご主人を修練場に流れる川に浸からせると呼吸がわずかに整う。

 

「クゥン…」

 

「だ、大丈夫…」

 

 急激な体温の上昇のせいで擬似的な熱中症に近い症状が出ていたようだった。

 ゲームならスタミナゲージなくなるまで使っていたのだがこれが使いきった状態と言うことなのだろう。

 改めて考えてみれば当たり前だろう、団子を食べて劇的にスタミナが上がるわけもないし、こればかりは鍛練でやっていくしかないのだろう。

 

「ムツ、実戦で鬼人化使うときは時間配分頼めないかな?」

 

「わかったニャ!」

 

 格段に速度とパワーが上がるが鬼人化は諸刃の剣だ。使うときは慎重に使わなければならない。

 こうして修練場での稽古は一息ついて終わったのだった。

 

「ふむ、ならこのストップウォッチはどうだろうか?」

 

「すとっぷうぉっち?」

 

 里に帰ってきた三人はロンディーネにことのあらましを説明すると小さな時計をムツに手渡す。

 

「分かりやすく言えば秒時計だ。このタイプは長針が30秒で一周する仕組みで。この竜頭を押すことにより時計の針をスタート、ストップさせることで経過時間を記録し、押すごとにスタート、ストップ、リセットとなるものだ」

 

「これ欲しいニャ!」

 

「だがこれはあまり市場に出ていない代物でな。値段が…」

 

 困ったようにするロンディーネを見て不安そうに見つめるムツ。それを見た彼女はさらに困った顔をする。

 

「いくらなんですか?」

 

「11,000カムラポイントだ」

 

「たかっ!」

 

 予想外の値段に驚くが冷静に考えるとその程度のカムラポイントは手元にあった。

 と言うかカムラポイントだけなら既に10万を越えているのである。基本的に団子と交易品を買う時ぐらいしか使わないポイントなので収入が支出を遥かに上回っていたのだ。

 

「じゃあ、買います」

 

「良いのかニャ!!」

 

「カムラポイントは腐るほどあるから」

 

「ご主人様~」

 

「そうか、ならもっとつり上げても良かったな」

 

 何を言い出すのだこの商人は…

 とにかく秒時計を購入したユウはあげるとムツは嬉しそうに秒時計をしまうのだった。

 

「クゥ…」

 

「ナガトも欲しいよね!」

 

 羨ましいそうにするナガトを見たユウはすかさずロンディーネから肉の塊を買ってあげるのだった。

 

 

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