いつも待たせてるくせに何新作に手ぇ出してんだゴラァ!!
ゆ、許せねぇ。あんたは再び、俺の心を裏切ったぁ!!
あ、こういう勘違いモノ初めてなんでよろしくオナシャス。
「………がはっ」
突如、強烈な吐き気がした。
噎せる呼吸、定まらない焦点、鈍い身体の動き。とてもじゃないが
「……こ、こ………は……」
声が出ない。喉が掠れて上手く発声出来ないのか。
胸の肺辺りがズキズキと痛む。どうやら俯せで床に長時間寝転がっていたようで、圧迫されたようだ。
ゆっくりと周りを見渡す。まず目に飛んでくるのは全く
それとは打って変わって、明らかに上質な素材が使われたベッドや整理された問題集や小説の数々。終いには畳では無く光沢のある木製のフローリング。
何処だここは。頭の中はそれでいっぱいだった。
取り敢えず体を起こそうと床に手を着く。しかし思ったように体を起こせない。
プルプルと産まれたての子鹿のように震えている前腕を見ながら、何だこの身体はと悪態つく。
半分近くまで起こせた時、ふと力が抜けて床に倒れ込んでしまった。床に肘が当たり、その余波で右頬に右肩が接触。床に当たった鈍い音と、頬を打たれたゴッという重い音が響く。
暫く頬と肘の痛みに悶え苦しむ。何故か今の身体は無茶苦茶痛みを感じる。ズキンズキンと響く痛みが鬱陶しい。
というか、よくよく見れば腕の太さに違和感がある。なんなら、今目に見える体の部位が何か違う。
何故こんなにも
「━━━━━━━坊っちゃま!!如何なされました!?」
ドンドンッと強く何かを叩く音が。多分背後にある扉を叩いているのだろうか。かなり切羽詰まった声質をしている。何かに焦っているのか。
さっき床に打ち付けた時の音が響いたので態々急いできたのだろうか。というか、坊っちゃまってなんだ。
「ご無礼をお許しください!!失礼します!!」
瞬間、扉がぶち破られた。破られた扉から廊下の光が差し込み、俺の上に重なるように扉をぶち抜いたであろう人影が浮かぶ。
部屋に入ってきたのは数人ほど。俺は誰かに体を起こされ、ゆっくりと仰向けになり頭を何かに支えられる。
「……坊っちゃま!坊っちゃまっ、しっかりなさって下さい!!」
いやだから坊っちゃまって誰だよ。そんな事を思いながらゆっくりと目を開ける。
目を開けた先には、涙目になりながら俺の顔を覗き込む3人の和服を着た美しい女性たちだった。
え、いやどういう事?
憑依、という言葉をご存知だろうか。
いっけなーい遅刻遅刻と食パン咥えながら曲がり角に向かって走る少女のラブロマンスの先、相手と接触&私達入れ替わってるぅう!?状態。
いやまあ『いっけなーい遅刻遅刻』現象は入れ替わることは無いのであんまし関係ないのだが、誰かの体に自分の意識が乗り移っている事である。
いや待って欲しい。
確かにそんなのSFとか創作の産物だからリアルで起こるわけねぇだろって思うかもしれないが、今その体験を自分がしている俺が言うんだから信じてくれ。信憑性高いだろ?な?そうだろ?
まあというわけで、俺はこの体。元々あったであろう人格の上に上書きする感じで俺が意識を乗っ取っちゃったわけなのだが。どうにも意識が移る前の状態が悪かったのか、病院に入院する羽目になってしまった。
極度の栄養失調、床に肘を打ちつけたことで前腕にヒビが入り、メイドさん達の顔を見たあと意識を失ったので意識不明の状態で病院に運ばれたんだとか。再び目を覚ましたら真っ白な壁と蛍光灯の光景が視界に入って来た時は『知らない天井だ』って呟いちゃったし。
どうしてこうなる前に食事をさせなかったとかなんとか廊下の方でお医者様が誰かに叫んでいるんだけど、多分あの和服さん達に言ってるんだろうか。確かに俺のあの状況って中々ミステリー。虐めでもされてたのか?でも心底心配そうに見てた3人の表情を思い出す。まあ深くは考えんとこう。
意識が戻ったのを確認したお医者様は、俺の状態が極めて危険な状態であったと仰り、取り敢えずよく食べてよく寝て健康にってお医者様から言われた。絶対安静とも言われたので大人しくベッドの上でぽけーっと寝転がっているのだが、毎日変わる和服さんの視線がなんかヤバいのだが。
なんなのだろうか、俺の事坊っちゃまって呼んでたから俺はボンボンなのだろうか。金持ちなのだろうか?ならば好都合。好き放題遊び放題。パリピ〜な感じで毎日過ごせるやないか。
とはいかないのが俺。お金は金持ちになろうと大切にしなきゃならない。お金は命の次に大事。これ俺の座右の銘。
話を戻すが、和服さん(今日側に居るのは美嘉さんって方)の視線がヤバい。ヤバいっていうのは、明らかに監視しているような鋭い目をしているのだ。監視カメラか何かなのかな貴方は。
時折視線が下半身に来るのはなんでだろうと思うが、きっと気のせいだ。暇なので喋り相手になってくれるのは嬉しいが、坊っちゃま坊っちゃまっていうのはマジで恥ずいから辞めて欲しい。
というか話の途中で、知らない単語ばった出てくるのはなんだ?
神世紀?ウイルス?神樹様?
俺が憑依したこの世界って、もしかしなくとも俺の知ってる現実世界じゃない?
ガチか。なんかこう、凄いな。色々と。興奮が収まらんぞ。
まあ兎も角、恐らく憑依?をした俺の後は退院まで同じ日々が続くのだが、肝心なのはここからなのだ。
何とか立ち上がって歩くまでが出来るようになった為、リハビリがてら和服さんの補助の元男子トイレに用を足しに行った時の事だ。
この身体の持ち主のアソコはデカ過ぎる。超弩級戦艦じゃねぇかこれ。なんか真っ黒けっけで少し右に曲がってるし。
これにも驚いたが、本番はここからだ。
何食わぬ顔で手を洗っていた時、ふと目の前の鏡を眺めたのだが、俺はその時驚愕した。
まず飛び込んできたのは金髪の髪の毛。地毛なのか、染めた形跡が無いのでほぼ100%地毛確定なのだが。そして顔面。ワイルドなイケメンって感じの憑依前の俺なら間違いなく妬んでいたであろう厳つい顔をした俺がいた。え、いやこれ俺だよな。
そして意識を失う前に見た筋骨隆々な体と、日焼けした健康的な肌。総合的に見て、所謂チャラ男にカテゴライズされる人間が鏡に映っていた。
いやなんだこれは。誰だよお前。あんなに参考資料とか受験用の対策勉強本とか置いてあった癖になんだよこの見た目。ギャップ萌えでも狙っとんのか憑依前の俺は。
何度見ても俺の姿は変わらない。チャラ男、チャラ男なのだ。
俺はぶっちゃけチャラ男が苦手だ。憑依前、エニメを見ようと好きなサークルさんのエニメを見ようとしたのだが、まさかのそれがNTR作品で、そのNTRをした竿役の男はまさに俺のようなチャラ男だったのだ。
俺はそのエニメを見てその日心底萎えてしまった。どうしてそこまで酷いことが出来るのかと。ドロドロに抜け出せない沼に入り込んだのも悪いが、それを弄ぶ竿役の男は本当に許せないと思った。
だから俺はチャラ男が苦手だ。はっきり嫌いと言えないのは、そのエニメを開いたのは俺だからであって、自業自得も含まれているからだ。
まあそんなこんなで悶々とするのだが、ふと俺はあることに気付く。
「………未知のウイルス、神世紀?完全に俺の知ってる世界じゃない。憑依って時空とか越えて憑依するのか?そして尚且つ俺のこの見た目。我が半身は超弩級戦艦」
これ何かしらのエニメ、エロゲの世界なのか?
次元超えて2次元に憑依した感じ?
もしかして俺所謂竿役ってやつ?(小並感)
憑依した事にはあまり情緒を乱さなかったが、竿役と分かったや今、俺は絶望に浸るのだった。
「ぬぅわぁああんでだぁあああああああああぁぁぁ!!!!!!」
「ぼぼぼぼぼ坊っちゃまっ!?!?如何なされましたぁ!?!?」
あ、ここ男子トイレなので入ってこないでください。
1話にして原作キャラ出せんかったのは不覚。
いやいやこれから無理やり出しますとも。