休憩時間に初投稿です。
今回は長ったらしい説明会なので、読みにくいかと思いますがご了承ください。
結構お偉い御家の仕組みの捏造、独自解釈が入りますので、例えその道に詳しい方がいらっしゃっても寛大な御心でご自愛くださいませ。
やる事はまだ決まってない。だがやると決めたからにはやらなければならない。
故に何が自分に出来るのか考えた時、一貫して俺には何も無い事に気がついた。
まず第一に、俺は自分の立場というものをいまいち理解出来ていない。というのも、高松宮家とか言う大きな家の長男坊であることは分かったが、俺は本家から身を離した状態にある。
当主であるこの身体の親が亡くなったという事は、単純に考えれば俺は高松宮の次期当主になるという事では無いのだろうか?ならば、なぜ俺はここに居るのかという話になる。
聞いた所によると治療の一環らしいが、この話をした時の瑞稀達の影差す表情がやけに印象に残った。
普段の生活からでも、時折俺の事でそう言った表情を見せることから、何かしらの負い目の様な何かがあるかもしれない。いや、絶対にある。
あの3人は俺に不都合な事や思い出して欲しくない時は大抵誤魔化そうとするのが分かった。瑞稀は何事も無かったかのようにただ笑顔を作ってなんでもないと否定し、美嘉は何か言いたげな表情で直ぐに話題を変えてくる。遥かに至っては過激なスキンシップで意識を逸らそうとしてくるのだ。溜まるもんは消費してるから大丈夫とはいえたまったもんじゃないな。
まあつまり、この3人の言動を見るに、治療と言う話は嘘っぱちに近い様に思える。あながち間違いでは無いのだろうが、それはあくまでもカモフラージュで、俺には言えない俺への対処が決められている可能性がある。
例えばの話、よくこういう御家事に度々絡む権力問題。御家のトップになりたい人間が、今回の事態に便乗して実質的な家の権利を得る為に俺を無理やり本家から離した。父親に兄弟がいるのかは分からないが、権力を握りたいと思うのはまず兄弟の中からだろう。
高松宮家は代々血筋が定まっている様で、血統以外で他所から来た人間が籍をおけるのは婚姻を済ませた夫婦のみ。夫、ないし妻としての立場が出来た瞬間、初めて高松宮家の血筋に連なる事が出来るようだ。
故に、当主と婚姻を結んだものでしか権力を握れないとするならば、真っ先にそれを狙うのは兄弟の内。次いで血統的には血を引き継いだ従兄弟又従兄弟。しかし後者の場合だと、御家内で反対される事は目に見える。兄弟ならいざ知らず、本家に連なる当主の長男。つまり俺がいるのだから、次期当主としての選抜力は著しく弱い。
だからまず考えることとして、権力争いを理由に、次期当主最重要候補である俺を是が非にでも離したかったと思考する。あの3人がそれを理由に俺を本家から離すという話に納得したかどうかはあの表情を見れば分かるが、そんな幼稚な処遇を下したあんぽんたんくんは流石に下心丸出し過ぎて本当に大丈夫かと思ってしまう。
一使用人であろうこの3人にそこまでの発言権は無いとはいえ、俺の処遇をそういう対応にしたとなれば、何となくこの例え話は間違いじゃないのではないかと思える。
当主の次に権力を持っていた、或いはその傘下の人間に言われて今の状況がある。と考えた場合、自ずと納得出来る。
それとは対象的に、入院当時は本当に離隔しなければならないほどの精神状態故の処置かとも考えたが、特にそれらしい事は身に覚えがない。
と言っても、中身が違うので精神的には別人格であるから、元々病んでいた精神状態は丸っと変わってしまっているので俺の感性で図るしか無いのだが。3人の様子を見ても、俺の精神が病んでいたという事はなさそうなので、俺の予想的には前者の権力問題なのではと思う。
ドラマとかでもよくあるが、御家問題以外にも政治家や会社経営でもトップを狙うという悪質な割り込みは多々あるが、如何せん俺はそう言う光景はフィクションの中だけだと思っていたので興味等無かったのだが、いざ自分が関わるとなるとくっそ面倒臭いんだなと、今まで無関心だった事に謝罪したい程の気持ちの落差がある。
いやめんどいね。何が権力だよ。そんなに欲しいのかよ。確かに金あったらなんでも出来るけどさ、そこまで貪欲になるのかって不思議に思う。
人が幸せになる時は、己が欲求。所謂三大欲求と呼ばれる欲望を満たす時が一番幸せになれるらしい。満腹感になった時、己の快楽に浸った時、全身をゆっくり休める時。幸せ欲求というものが脳を満たしていくんだとか。
他にも、安心感を抱いた時に幸せになれる事があるという。大金を手にした時、社会的地位を確立した時、出来なかった事が初めて出来た時、不安が払拭された時。
様々な事で人間は幸せになれる。幸と不幸は両立し、どちらかがアンバランスになる事は無く、自覚が無いだけで精神的にはバランスが保たれているらしい。
まあ人の欲は強いから。幸よりも不幸な事を引き摺りがちであるのは否めない。酷な事ではあるが、そういう不幸な事を忘れて心を切り替えないと、人としての形を保てなくなる。この体の持ち主が自殺を図ったように、不安定な人は何をしでかすか分からないからな。
まあ、そんな訳で。一先ず俺は家の現状を知る必要が出てくるわけだ。分家の方々とは何度か顔を合わせたことがあるので少しだが本家の内情を聞いた事がある。
曰く、臨時当主は父親の弟。
曰く、まだ当主としての形を被っただけの道化。
曰く、俺が死なない限りは当主が移ることはない。
曰く、クソデブの癖に女を好き放題。
曰く、3人も狙われている。
これを聞いた時、思わずはぁ?となった。
最初3つはいい。しかし後の2つはダメだ。クソデブの癖に女を好き放題とか、エロジャンルからでてきた催眠おじさんかよ。気持ち悪ぃなクソが。俺は純愛厨だから、催眠だとか弱み握って身体の関係を迫るとかマジ胸糞ぶち殺したくなるんだよ。エニメのハーレムものを探していたとき、○○ちゃん調教だとか可愛い絵柄で女子高生がおっさん先生に恥辱の限りを尽くされ最終的にズルズルとその関係に浸っていくと言うクソみてぇなエニメを見てしまい、吐き気が止まらなかったのが苦い思い出だ。
それから新しい作品を探すことはめっきり辞め、既存のエニメまたは検索結果から探し出して見るだけに留めるようになった。まじであれはトラウマだ。あんな可愛い子がなんの努力もしてないおっさんに食われるとか正気の沙汰じゃない。こんな事言ってはなんだが、それみてシコれる人とは仲良くなれない気がする。
それにプラスして3人も狙ってる?殺していいか?いや殺すぞ。誰の女に手ぇ出そうとしてるんだよクソデブ。俺のお手付きを誰かに渡す訳ねぇだろ。絶てぇ失脚させてやる。
こん時程頭に血が上った瞬間は無かった。話を聞いた時思わず隣に立つ遥のことを抱き締めてしまった。
普段よりも強めに抱き締めてるせいか、遥は無駄に察しがよく、「大丈夫ですよ」と子供をあやす様に背中を優しく叩いてきた。……こんないい女、みすみす逃すわけねぇだろ。お前らは俺の傍が永遠の就職先じゃ。
……かなり話はそれだが、大雑把に掻い摘むとそう言った事情があるということが分かった。分家の方々には、俺が当主になるという旨を伝えておいた。目を見開いて驚愕し、涙しながら坊っちゃまなら必ずなれますと口々に言われるのは少し恥ずかしかった。……だからって娘をお妾さんに紹介するのはやめてもろて。御長女ちゃんは俺に懐いてくれてたからいいけど、妹ちゃん達はまだ幼稚園通ってる年齢だよね?早くない?いいなら喜んでお迎えさせてもらうけどさ。
だが同時に、俺が当主になる為には必要な事がある。それは
考えれば分かる事だが、1人で何かできる人なんて存在しない。普段生活している中で、他人が関わっていない事など有り得ないぐらい、この世界は誰かのお陰で生活出来る。
それはどんな物事にも当てはまるごとであり、政治家が当選する為に力ある他の政治家から融資他は口利きをしてもらい、見返りとして後々返していくという戦略があるが、当主になるにあたっても、それは変わらない。
自己完結ならいざ知らず、それではただの井の中の蛙。誰かと手を取り合って大きな存在になるのが人間の強さだ。
故に当主になる、または当主になった後、切る事が出来ないコネクションが必要になる。
だが、コネクションというのは1日1夜で出来るものでは無い。親からの繋がりや、昔から良くしてもらっている偉いさん方が身近に居なければまず作れない。
そして何より、コネクションを作るにあたって闇雲に作るべきでは無いという事。こちら側から頼み込むのもそうだが、相手側が求めるものが、自分の今後に関係し、尚且つ相手側が興味のあるものかどうかを見極める必要がある。唯の成金に融資してもらったり借りを作るのは足枷になるだけだ。善意うんぬんよりも、長期に渡って培われる信頼や信用をより深く結ぶ為には浅はかな安い言葉は必要では無いのだ。
そう考えた時、俺にコネクションを作れるツテがあるのかと考える。学校にはそんなやつ居なかったし。と言うか最近仲いいヤツとしか喋ってないから全く分からんが。
勇者部面々も特にそう言った家系の子は居ない。
かなり序盤で詰んでいるのである。
少し恥ずかしいが俺はそれを加味して、今の俺の考えとこれから、そしてコネクションを作りたい話を3人に伝えた。
皆三様に涙していた。やはり俺はこの3人の事が何よりも大切なんだなと考えさせられる。
そんな時、瑞稀からこんな言葉が出た。
「そう言えば坊っちゃま。最近女子生徒に告白紛いな事を受けたと仰っていませんでしたか?」
「……あぁ、そんな事もあったな。お陰で学校生活に支障きたしてる最中だが……」
「……はっ、坊っちゃまに告白するだなんて身の程を弁えろってもんですよ。ねぇ〜?坊っちゃま?坊っちゃまには可愛くて相性抜群の専用抱き枕兼正妻候補の遥ちゃんがいますもんね〜?」
「……はぁ、遥ちょっと黙って」
「ふぎゅっ………っ////////」
口開くとすぐこれだ。大切だと思うが此奴のこの変態性は何とかならんのかといつも思う。まあその分俺のSっ気を刺激してくれるのでプレーのマンネリ化が全く無いのだが。……○便器って耳元で言い過ぎたのが悪かったのか?アイツが言って欲しいなんて言うから言ったのに………。
「……はぁ、ああっ、えっと。その女子生徒、もう一度思い出してみて下さいませんか?」
「思い出す?……ん〜と、確か」
「……お名前はそう、
美嘉の言葉にあの時の造形を思い出す。そう言えば告白紛いなことされているとき、
「姫小路家は古くから高松宮家の左翼側として仕えていた御家です。……あ、左翼側というのは、家系図を見た時の夫婦の位置のことを差します。紙に書かれた家系図を見て、右が男性。これを右翼側。左手が女性、つまり左翼側。姫小路家は代々高松宮家の男児が婚姻を結ぶにあたって選ばれる左翼御家と呼ばれる一家のことを指します。対比して分かりやすい御家ですと、高松宮家の女児が夫を選ぶに当たって、右翼側の御家のひとつに
成程、男が嫁探しをするなら、左翼側の御家の中から選ぶ。その1つが姫小路家。反対に、女が婿探しをするなら、右翼側の御家から選ぶ。対比して綾小路家という家が存在すると。
「坊っちゃまのお母様も左翼御家の御長女様です。姫小路家ではありませんが、当主様の側室に姫小路家の女性が何人か居たようです」
……なんと、それは実質ハーレム?当主になればハーレム築ける?最高じゃねぇか。
「……ん、待てよ?側室が居るって事は、もしかして俺の腹違いの兄弟がいる可能性があるのか?」
まじかよ。そんなんだったらより当主争い際立つじゃん。血で血を洗う争い、もとい戦争勃発じゃん。
「……いえ、そのような話を耳にした事は御座いません。御当主様は姫小路家を思って渋々側室を迎えられたようで……」
「渋々?なんでそんな事を?」
「……近年、それぞれ御家の力は衰退へ流れております。今や右翼左翼の御家で全盛期の力を持つ御家は1つもありません。既に大半が失脚し御家解散している家系もあり、当時個人的な仲であった姫小路家の御当主様のお願いを受けて、側室を受ける代わりに莫大な融資を回す流れを作られたそうで」
「……成程、だから渋々ね」
「生じ左翼側の筆頭ですから無碍には扱えません。コネ作りをされるのでしたら左翼右翼側の御家筆頭を味方につけなければ統制は難しい事はお分かり頂ける通り。弱体化されていると言っても、切っては切れぬ関係だからこそ、ズブズブと帯引く状況下にある訳です」
同情、人情を煽って脅したというわけか。生き残る為に仕方の無い事とはいえ、泥水を啜ってでも生き長らえようとする姿は、何ともまた形容しずらい事だ。
友すらも利用すると言うのは、その御当主様からすれば天秤が全く吊り合って仕方が無かっただろうに。友との関係を選ぶか家を選ぶか。苦渋の選択だわな。
そこでふと、あの時の姫小路彩世の言葉を思い出す。
「……そう言えばあの時、姫小路は俺との婚姻を結ぶ手筈を親と本家が整えたって言ってたな。これの意図が分からんな」
「……と言うと?」
「つまりあれだろ?俺と姫小路が結婚するとして、世継ぎが絶対産まれるわけだ。となれば、立場的に今当主の皮を被っている俺の叔父は肩身の狭い立場になるんじゃないかなって」
「……あぁ、そういう……」
何か納得した表情を浮かべる瑞稀と美嘉。遥は未だ俺の胸の中。少し2人の表情が引っかかる。
「……坊っちゃま。酷な事を口にするに当たって誠に申し訳ないのですが、坊っちゃまの御考えは
「……通用しない?どういう事だ?」
真剣な顔で話を進める美嘉。それを補足する様に口を動かす瑞稀。
なぜこの2人がこれ程までに険しい剣幕で語るのかが言葉を発せられる度に理解していく。
「坊っちゃま……、あの男、高松宮
「その所業は御当主様も頭を悩ませる程の最悪。身内の恥として一生語り継がれるであろう悪行の限りを尽くす問題児です」
「悪行の数々の説明は省きますが、恐らくあの男が狙っているのは身動きが取れずらくなる坊っちゃまだと思われます」
「俺の身動き?……子供が出来て、人質?或いは嫁となった姫小路事消す気か?」
考えたくも無かった。まさか、そこまでやる人間なのか。
権力が絡むと、そこまで人間は行き着くのか。
「……これより先、私共が口にする事は出来ません。…おぞましく、まさに悪魔の所業。私共の同僚も何人もその毒牙にかかったのを目にした事が御座います。醜く、女を何とも思っていないゴミを捨てるが如きあの態度……。坊っちゃまがいらっしゃらなければ、私共は今頃は……」
「私達とは切っても切れない関係である事を理解して下さいませ。特に、…遥。貴方なら分かるでしょう?」
美嘉の言葉にピクリと反応を示す遥。次第に俺の服を掴む手に力が込められていく。
……まさか。
「……彼女の
「…なる、ほど……な」
何処からかすり泣く声が聞こえる。俺は追及するまでもなく、遥を無意識に強く抱き締めていた。優しく背中を叩いて安心させてやり、少しでも落ち着く様に更に身を寄せ合う。
「…こんな事を言うのははばかられるのですが、本当に御当主になられるのですか?今の環境ならば、変にあの男が接触する事も無いでしょう。……あの男に思い出ある家を汚されるのは不愉快極まりないですが、私共は坊っちゃまが無事ならばそれでいいのです。私共と共に、御家を忘れて静かに暮らしませんか?」
「……瑞稀、なんて事を……」
「坊っちゃまが望まれるのであれば、私共はなんでも致します。子が欲しいと仰るなら喜んで坊っちゃまの子を孕みましょう。私生活において手助け出来ることなど限られているのなら、せめて坊っちゃまがしたい様に私共をお使い下さいませ……」
「瑞稀……、坊っちゃまの御当主になられたいお気持ちはどうなるの?私達の我儘で、坊っちゃまを縛り付けるのは不敬極まりない事よ。瑞稀の気持ちも分かるけど、坊っちゃまの意志に従いましょう?」
「……違うっ、……駄目、駄目なのよ……っ。……分かって、美嘉。それ程あの男は恐ろしいのよ。下手に動けば、もう二度と日の元を歩くことが出来なくなるかもしれないの。そんな事、坊っちゃまや貴女達に味わって欲しくない………っ」
「……瑞稀っ」
泣き出す瑞稀を、美嘉がそっと抱き締めた。美嘉よりも高松宮家に仕えていたのが長い瑞稀は、叔父の悪行を何度も目の当たりにしたのだろう。その惨状を、その悲鳴を、そのおぞましさを。見たくなかったものを見せられて、瑞稀は怖くて怖くて仕方なかったのだろう。
……だが。酷ではあるが、俺はそれを乗り越えて行かなければならない。
「……3人とも、聞いてくれ」
泣いていたはずの彼女らは俺に視線を向けた。
「……瑞稀の言うように、もしかしたら、悲惨な結果が待ち構えて居るんだろう。見るに堪えない、辛くなることもあるかもしれない。だけど、俺はそれでも当主を目指す。なにも、3人には表立って俺の傍に控えて貰う必要なんて無いんだ。怖いなら俺との縁を切ってもいい。身を引く事も仕方のないことだと思う。けど、俺の事は止めるな。歩かせてくれ。行かせてくれ。それが、俺にしか出来ない唯一の事だから」
どの道死ぬ事は分かっている。もし後が無くなったのなら、刺し違えてでもあの世に道ずれにしてやる。せめて
「……坊っちゃま。坊っちゃまは本当に………っ」
「坊っちゃま……、なんと逞しい立ち振る舞いか……っ」
「……坊っちゃまっ、坊っちゃまっ。……カッコよすぎだよぉ……っ」
……ん、なんか嬉しいな。取り敢えず遥をギュッと抱きしめる。
ここまで来ると本当にフィクションみたいな話になってきたな。台本通りと言うべきか。いや、彼奴の言った通りこの世界は俺にとって現実だ。何時までも第三者でいられるような立場じゃない。
「……坊っちゃま、本当に……、本当に宜しいのですね?」
「あぁ……、男に二言はねぇ。やってやる。下克上上等じゃねぇか」
またこうして笑える様に、俺は大袈裟に笑ってみる。
3人は俺の表情に光を見たのか、影が差していた表情が明るくなった。
「……流石です坊っちゃまっ。それでこそ我らが主……っ」
「………もぉぉおぉっ、好き好き好きぃ………っ」
「……では、坊っちゃまがそう仰られるのであれば。私共は全力でサポートさせて頂きます」
「おう、宜しく頼む。じゃあ早速、さっきの話の続きといこうか」
話の続きはコネクションから。姫小路家の話題を出したが、本題はここ。姫小路家の当主と俺の叔父が俺と彩世の婚姻を認めているという事にある。
外堀を埋められそうではあるが、まだ俺が了承していないので完全には塞がっていない。
ここを先ず解きほぐすことからはじめよう。コネクションはその後。姫小路家の婚姻目的は恐らく御家復権。再び御家を立て直すために高松宮家に取り入ろうとしたのだろう。
「坊っちゃまのお考えはあながち間違いないかもしれません。御当主様のご子息で在られる坊っちゃまとの婚姻は、紛うことなき御家復活の兆しになる。家族構成など考えると、彩世様が御長女で他妹君2人と御長男様が1人。ご子息ご令嬢様方を使ってなんとか今代で立て直しを図ろうとする事は明白かと」
「ここに如何にして本家よりも坊っちゃま側についた方がメリットとして大きいかどうか示さなければなりません。多少強引な公約を掲げてみては?」
「しかしやはりここは慎重になるべきでしょう。監視の目は今は無いとはいえ、私達が何か行動を起こせば、本家の方に情報が流れる可能性があります」
「……あまり動くことは得策じゃないな。じゃあこうしよう。俺は学校で姫小路に今回の件を深く聞いてみる。姫小路自身、今回の件の裏を知っているかどうかは分からないが、深追いせずに詳しく聞いて、可能なら姫小路家本殿に足を運べるよう取り繕ってみる」
「話はまずそこからという事ですか。何か御考えになられている事でも?」
「……ぶっちゃけ決まってない。多分俺達が用意出来るものは本家でより色付けて用意出来ると考えていい。それを頭に置きつつ、話を聞こうと思ってる」
今回の筋の話を聞いているかいないかが重要では無く、あくまでも前向きに姫小路と話をしたいという体で話を聞ければ、怪しまれなくて済むはずだ。
姫小路のあの時の姿勢からして、今回の話はかなり乗り気。本人はあまり家柄について見せびらかしていないようなので、そこまで家柄に拘りは無いと思うが。
騙すようで申し訳ないが、もう一度涙を流す準備をしておいてくれとだけ切に願う。
「……畏まりました。それで行きましょう。私共は分家の方々に今回の件を共有しておきます」
「頼んだ。味方は多い方がいいからな」
「分家の方々も、坊っちゃまが御当主なられる事を心待ちにしていらっしゃる筈です」
「……そう考えると荷が重いな。いや……、俺がいる事自体が重過ぎるか……」
「……坊っちゃま?何か仰いましたか?」
「あぁ、いや。何でもない……。取り敢えず明日から行動してみる。暫くは勇者部に行くのも控えるかな」
「……あ〜あ。あの子達泣いちゃいますね。やーいやーいこの女泣かせぇ〜の屑男〜」
……はぁ?何だこの雌。生意気に俺の事を屑と罵るか。
俺は遥の頭を掴んで動かないよう固定し、耳元でそっと囁く。
「………そんな屑に飼い慣らされてるお前は何なんだろうな?」
「びぎぃっ!?」
「……はぁっ、お2人とも。戯れはそこまでにして下さいませ」
え、なんで俺も呆れられてんの?俺は仕方なくこの生意気な雌にSっ気剥き出しで言葉責めしようてしてるだけなんだけど?
あ、それが駄目?わかりました……。
「……最近は遥ばかりでこちらにもお慈悲と言うものをですね。一番親身を注いでいる私にご褒美等頂けても宜しいような気がするのですが?」
「……それを言うなら私にだって。そろそろ美森さんにも弟か妹が欲しいような気がして……」
いや後半。なんか結構やばい事言われてるんですけど俺の気の所為?
「……まぁ、あんまり久しぶりな感じはしないが。確かに遥は流石にやり過ぎたか。遥、今夜は1人でおねんねしな」
「えぇえ!?酷いですよっ!!私もう坊っちゃまに抱き着いてないと寝れないんですよぉっ!?私が寝不足になったらどうしてくれるんですかァ!!」
「……まず貴方はそれを危ぶまれる仕事量をこなしなさい」
確実に仕事に関しては戦力外通告受けてるな遥って。まあほぼ俺の隣に居るし、俺がいない時は俺の部屋の掃除しかしてないみたいだからそりゃそう言われるわ。
「勝手に俺の寝床で寝るなよ。ヨダレが凄い」
「あ〜っ、うわっえぇ〜?そんな事言います?美少女な遥ちゃんの有難い体液ですよ?普通の人なら眉唾物の特級需物ですよ???」
美少女(笑)。いや否定はしないが。体液求めるなんて普通の一般人はやらねぇよ。特殊性癖者しか聞いた事ねぇわ。てか需物て需要低そうやろ。供給との釣り合い取れなくて在庫余るわ。
「いっつもぶっかけられてるから俺は要らん。寧ろ濡れてシーツ毎洗濯しなきゃならんのは勘弁してくれ。俺は寝床少しでも変わったら眠れなくなること知ってるだろ?」
「モチのロンです。あ、ほらほらー。私がいなくなったらいつも抱き締めてるものが無くなっちゃうから眠れなくなっちゃいますねー?あーあー、どーするんですかねぇ?専用抱き枕である遥ちゃんをお捨てになるって言ってますしぃ〜?今日からゆっくりと眠れませんよねぇ〜?」
「いや瑞稀か美嘉を抱くからお前は間に合ってる」
「んんんんなぁあんでぇえええ!?!?!?」
ぐわんぐわんと顔面を悲しみと怒りで染め上げた表情の遥が肩を掴んで鬼気迫る、いやコイツヘラってる?面倒い女やとは思ってたけどほんとに面倒やん。
まあ遥は放っておこう。いつもの事だから。
話は脱線したが、取り敢えずは方針が決まった。ぶっちゃけ継ぎ接ぎだらけもいいとこで、簡単に崩れ去る脆いものであることには変わりない。
従って、姫小路に再び接触する時は、かなり緊張感をもって動かなければならない。
しかもどうだ。今学校での俺は針のむしろ。大半の同級生達に冷たい視線を送られている。その原因の一貫となった姫小路ともう一度話さなければならないという事が、どうにもこうにも今一番頭を悩ませている。
味方いない状態で開幕ボス戦とか。ボス戦前にいくつもの障害が勝手に湧いてくるんだろうなと思いながら、さっきからのやる気満ち溢れた志とは変わってかなりどんよりとした気持ちになっていく。
正直関わりたくないのが本音。割り切れるが出来れば回避したい障害。
そして鬼に悪さされているかのように、時間はあっという間に次の日へ。タイミングが大事だと自分の中で言い訳をして休み時間を浪費させ、遂には放課後までたどり着いてしまった。
後がない。満を持して俺は姫小路に声をかける。
「………ちょっといいか?」
「っ、……え?」
俺が声をかけ、姫小路が反応を返す。
その瞬間クラスは一瞬にして静まり返り、誰も彼もが俺たちの方に刺さるような視線を向けてくる。
いや、なんでさ……。
こういう損な役回りは俺のスペックじゃ持て余しちゃうぞ……。勘弁してくれ。
地獄へ片足を入れ込んだ俺は、取り敢えず周りが気にならないよう無心になろうと黙り込むのだった。
次はいつになるのやら……。