ニンジャ・ビジット・ゲンソウキョウ   作:ハングネック

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リベンジ・ニンジャ・アヴェンジ・ガール #2

 

「グワーッ!?」

 

KA-BOOOOOM!!

ZAAAAAAAAP!!

 

 爆音を火種とするように、突如としてキリサメ・マリサの手に握られた大口径ショック銃が火を噴く!その電光はニンジャスレイヤーではなく、カミキの左腕を撃ち抜いていた!!着弾面が急速に発火し、左腕が焼き切れる!!

 

「き、貴様気でも違えて……まさかっ!?」「イヤーッ!」「イヤーッ!」

 

 苦痛に顔を歪めながらもキリサメ・マリサを睨みつけるカミキ。馬鹿な、なぜこちらを?ハメられた?なぜ?窮地に追いやられたニューロンが一つの可能性を導き出し、咄嗟にカミキの肉体に回避行動を取らせる。次の瞬間、真下から飛び出した青白く光る糸の束がカミキが先程までいた足場を裁断する!!

 

「貴様、キリサメ・マリサでは……」「イヤーッ!」「グワーッ!」

 

 カタカタと奇怪な音を鳴らしながら身を揺らすキリサメ・マリサを見てそれが偽物であると判断すると、油断なく懐からスリケンを抜き取るカミキ。しかしカミキは、最も油断ならぬ存在への注意を怠っている!その隙を逃さぬ電撃トビゲリ!カミキの身体がくの字に曲がり家屋へと墜落する!

 

「改めましてドーモ、ニンジャスレイヤーです」

 

「ゴボーッ……ドーモ、ニンジャスレイヤー=サン、ミラーボディです。馬鹿な、本物のキリサメ・マリサはどこに……!」

 

 上体を起こしながら挨拶を返すカミキ……否、ミラーボディ。焼け焦げてゆくサラリマンスーツの下から、鏡面ラバースーツニンジャ装束が顕になる。

 

「マリサならあなたの連れと一緒に居るわ、敵討ちの為にね」

 

「馬鹿な、貴様、アリス=サン!?ならばあちらにいたアリス=サンは……貴様の人形か!」

 

 口から血を撒き散らしつつ、そう推論を述べるミラーボディ。それに対し、『正解』と、声を出さずに囁くアリス。果たして何が起きているのか?その答えは、ニンジャスレイヤーがリグルを討ち果たした時まで遡らなければならない。

 実際、ニンジャスレイヤー達とディスセンブル達が魔法の森に突入したのは殆ど同じタイミングであった。リグルを討ち果たさねばならなかったニンジャスレイヤーと、サラリマンに偽装する時間を要したディスセンブル。両者に発生したインシデントは五分と五分、しかし両者の間には案内人の有無という決定的な差が存在していた!

 

(((一日遅れていればワタシがああなっていたかもしれぬ)))

 

 ミラーボディを見ながら、そう思案するニンジャスレイヤー。あそこでミスティアの案内が打ち切られていれば、恐らくは彼らは魔法の森の地理に多少明るいディスセンブルらより遅れて到着していただろう。蛾の誘導により、ヨーカイに襲われながらも最短の道を突き進んだニンジャスレイヤー達と安全なルートを選んだディスセンブルら、その僅かな差が今明暗をはっきりと分けていた。

 

「ホウライ!」

 

「ホウラーイ!」

 

ムテキ!

 

 アリスの指先の魔法糸が魔力による燐光を伴いながら蠢く!瞬間、偽キリサメ・マリサのテッコと衣服が弾け飛び、中から人影が飛び出してくる。巨大なランスを構えた赤ドレスの人形、蓬莱人形だ!彼女は人形を操る魔女なのだ!

 数百馬力は備えているであろうランス突進!さながら騎兵!しかし甲高い金属音が響き、その槍が受け止められる!ミラーボディの体表には金属めいた光沢。これはムテキ・アティチュードだ!身体を一瞬にして超硬質に固める、超自然のジツである。更に!

 

カガミ!

 

「ホウライ!」

 

「ホウラーイ!」

 

 ミラーボディのシャウトと共に、槍の接触面からエネルギーの本流が飛び出す!その形状はさながらランスだ!間一髪防御姿勢が間に合う!アリスの咄嗟の人形操作が無ければ、蓬莱人形は手痛い反撃を貰っていたであろう。

 なんと恐るべき亜種ムテキ・アティチュードか!ミラーボディのムテキ・アティチュードは、反射能力まで兼ね備えているのだ!

 

「ワハハハ!これぞカガミ・ジツ!貴様らの攻撃なぞ、そのままそっくり返して」「イヤーッ!」「ムテキ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」

 

 ニンジャスレイヤーの急襲!咄嗟のムテキ!同時にミラーボディの身体が発光し出す!これではニンジャスレイヤーは反射の餌食に……!しかし、反射よりも早い二撃目が炸裂!ミラーボディが後方に吹き飛び、放出された拳型のエネルギーは虚空へと散ってゆく!

 

「やはり反射の折には身体は元に戻ると見える。その奇妙な衣装はそれを誤魔化すためか?」

 

「ば、馬鹿な、何故それを……!」

 

 ニンジャスレイヤーのその指摘は実際正しい。体表を外殻とするムテキ・アティチュードを維持したままでは、運動エネルギーの発散は行えない!

 

「二人も要らぬな、先に行けアリス=サン。リンノスケ=サンもついて行くが良い、入口の方にダイヨウセイ=サンがまだ控えているはずだ」

 

「何言ってるの、貴方が行った方がどう考えたって……」

 

「こやつをより早く殺せるのはワタシだ。すぐに追いつく」

 

 発言だけ見ればなんと傲慢なものだろうか。しかしそれが嘘ではない事をアリスは、そしてミラーボデイは理解していた。

 

「ホウライ!」

 

 一声そう発すると、人形の背に乗り消えてゆくアリス。

 

「……時間稼ぎにすらならぬと?あまり舐めるなよ」

 

 死を覚悟しながらもカラテを構えるミラーボディ。それを迎え撃つようにジュー・ジツを構えるニンジャスレイヤー。

 

「「イヤーッ!!」」

 

 朝日の下で、二つのトビゲリが交差した。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「イヤーッ!!」「イヤーッ!」

 

FLIP!FLIP!BANG!BANG!

 

 連続して投擲されるスリケンを、七色の光が的確に撃ち抜く!貫通力はピストルから放たれるレーザーの方が上!即ち射撃戦はマリサ側が圧倒的に優勢!一方的に回避運動を取らされるディスセンブル。しかしなぜ彼は撃ち合いを?射撃戦に付き合わず格闘戦を仕掛ければ良いのではないか?という当然の疑問に対する答えは、ディスセンブルの視線の先にあった。

 

(((まず消すべきはあの氷精か)))

 

 そこに居たのはチルノだ。その手からは氷点下にもなるであろう冷気が放たれ、空気中の水分が凍りつくことで白い煙となり部屋中へと広がってゆく。低温とはすなわち分子運動の停滞だ。低温下では肉体のパフォーマンスは低下する、それはニンジャと言えど例外ではない。シェルター内の気温は今やマグロの並べられる冷凍庫と変わりない、その中ではディスセンブルと言えど全盛の動きを保つことは非常に困難なのだ。しかしそれはキリサメ・マリサも同じでは?と聡明な視聴者の方々は考えつくだろう。その疑問に対する答えのように、床を這う白い冷気は、そこに壁でもあるかのようにキリサメ・マリサの周囲を避けていた。

 

「随分と手厚い保護だな?」

 

「おかげでコート要らずだぜ」

 

 この冷気はチルノにより生み出された超自然の冷気である。故にその矛先は彼女によって自在にコントロールされる。この氷点下の地獄めいた環境の中で、唯一彼女だけがその影響を受けないままでいた。実に高度な技術だ。それを実現するために、チルノの全意識は冷気のコントロールへと向けられている。

 

(((加えてあの構え、あからさまなカウンター狙い……厄介な小娘だ)))

 

 そう思案しながら、ディスセンブルはキリサメ・マリサを睨みつけた。何かを抱き抱えるように両腕を水平に構える独特の構え。一見すると先制能力に欠けた消極的な構えだが、その実攻撃をエルボーで迎え撃ち、そのままノータイムで攻撃者を撃ち抜く危険なカウンター狙いの構えだ。ニンジャの攻撃と言えど腕を犠牲にすれば一撃耐えるのは容易、ディスセンブルと言えど今のコンディションで無策で仕掛ければ痛手を負うことは確実だろう。加えて今現在、魔法の森にはニンジャスレイヤーが居る。この後ニンジャスレイヤーの相手をするとなると、ディスセンブルは余計な負傷を負うわけにはいかないのだ。キリサメ・マリサのとった戦法は、ディスセンブルにとって最悪とも言えるものであった。

 

(((ミラーボディ=サンの相手は十中八九あの男だろうな。残りの女は人形使いだったか。さて、せめてあと一分は()()()()()()が……)))

 

 最も可能性の高いケースを想定し、頭の中で自身の行動をシュミレートする。当然彼と対面しているキリサメ・マリサも同様に頭の中で考えを巡らせていた。一挙一動を予測し動く、この読みが外れた方が即ち敗者。

 

(((ならば有利なのは……)))

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!」

 

 キリサメ・マリサの突進!走りながらも正確に狙いを定めると、眉間と心臓部目掛けてレーザー照射!ブリッジ回避!しかしその隙にディスセンブルの懐に潜り込むキリサメ・マリサ!

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!グワーッ!」

 

 ピストル正拳突き!銃口を掴みニンジャ握力により止める!しかし銃口を掴んだ瞬間、ディスセンブルの手の表面が一気に凍りつく!銃口が超低温に冷えていたのだ!

 

「イヤーッ……!?」

 

 そのまま引き金を引かんとするキリサメ・マリサ。しかし引き金が異様なまでに重い!弾詰まりか!?否、その原因はディスセンブル!凍結を予期し、掴むと共に銃のスライドを奥へと強引に引いていたのだ!スライドが元の位置に戻らなければ次弾は放てない、オマケに凍りついたことでニンジャ握力は倍!モータルの指の力では到底振りほどくことは出来ない!

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!」

 

 大型トラックの衝突にも匹敵する危険なロシアンフック!チャカを手放し回避!しかしそこは未だにディスセンブルのカラテ圏内!

 

「イヤーッ!」「グワーッ!」

 

 しかし突然、キリサメ・マリサの背の箒が星を伴った噴光を放つ!これは彼女の所有する魔法の箒だ。彼女を牽引し高速で飛行することを可能とするマジック・アイテムであり、彼女の意思一つでロケットめいて推進エネルギーを放出するのだ!その勢いはキリサメ・マリサの小さな身体を天高く打ち上げるだけに留まらず、ディスセンブルの姿勢を僅かながらもよろめかせ、キリサメ・マリサが離脱するに充分な隙を生み出した!頭上からの攻撃はニンジャにとっても死角。

 

イヤーッ!」「グワーッ!」

 

 しかしそれすら予期していたディスセンブルのスリケン投擲!マリサの魔女帽が天へと縫い付けられる!追撃は不可能と判断すると、キリサメ・マリサはくるくると縦に回転しながら着地した。

 距離が縮まれば五分と五分、しかし射撃戦においてアドバンテージがある以上キリサメ・マリサの優勢は火を見るより明らかだ。それに奢ることなく冷静に構えるキリサメ・マリサ。しかし対するディスセンブルの妙な余裕はなんだ?

 

「笑う余裕があるのかぜ?」

 

 それが鼻につくと言うように語りかけたマリサを制するように、ディスセンブルは人差し指を立てた。

 

「あるさ、今からお前に土をつけてやる。お前の土俵でな」

 

 なんと好戦的な挑発か!怒りから込み上げる笑みを浮かべながら、キリサメ・マリサの銃口が再びディスセンブルへと向く!

 

イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!

 

 次の瞬間、キリサメ・マリサが覚えたのは戦慄だった。それは視界を覆い尽くすほどの夥しいスリケンの雨!キリサメ・マリサの反射神経はニンジャに限り無く等しい。しかしそこにはやはり覆しようのない差が存在しており、一瞬の攻防ならともかく連続した行動では明確に差が浮き彫りになる。その点このスリケンは実に最悪であった。的確に最も近いスリケンを遅れなく撃ち落とさなければ被弾必死、一発でも射ち漏らせばモータルの彼女は死ぬ。しかも彼女のチャカは現在片方しかない!迎撃は極めてリスキー!

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!イッ…ウープス!」

 

 即座に箒に跨り左へ直線的回避!スリケンの大多数が壁に突き刺さる!しかし回避運動を取ればカウンターは不可能!その隙を的確に突くべくディスセンブルが追いすがる!壁面スレスレを走るキリサメ・マリサへ水平チョップ!上下反転姿勢になり回避すると逆エビゾリ姿勢に移行!チャカ発砲……否!回避運動を続けるマリサの前方にはチルノの姿!寸前でホウキ停止!

 

「ウカツ!イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」

 

 そこへ迫る掌底モロテツキ!カウンターよりも早く、残ったチャカをディスセンブルの右手が破砕!そのまま左手の掌底が迫る!打つ手なしか……!

 

「イヤーッ!」「チルノ=サン!?何を!」「グワーッ!!……か、構えてろ!!イヤーッ!」

 

 しかし突如としてチルノがマリサの襟を引き投げ飛ばす!マリサは掌底の軌道から大きく外れるも、その突きはそのままチルノへクリーンヒット!!拳が数cm近くチルノの身体にめり込む!しかしおぉ、見よ!!めり込んだディスセンブルの拳をそのまま凝結!氷で押し固め、自身の体へと固定!肉を切らせて骨を断つ、相打ち前提の攻撃か?しかし奇妙なことに、構えられた氷礫は上空へと撃ち放たれた。ミスか?いやしかし、それならばチルノの、そしてマリサのあの失意ではなく決意に満ちた表情は?

 

「貴様ら、何を……」

 

ゴリ!

 

「……ウカツ!イヤーッ!」「グワーッ!」

 

アテ!イヤーッ!

 

イヤーッ!

 

 その瞬間、天井が大きく歪みシェルターが激しく揺れる!ひしゃげた上空の分厚い装甲板から、僅かに覗く巨大な剣の切っ先!その瞬間、ディスセンブルは自分を戒めながらチルノを蹴り飛ばした。しかし同時にその巨大な刀身に力が込められる!!天井瓦解!!全長20mはあるであろう、上体しか見えない巨大な人形が握る刀身の切っ先が、ディスセンブルへと迫る!迎撃のダブル・ヒラテツキ!爆風めいた衝撃波が散る!威力は拮抗!何たる物理衝撃か!

 

イヤーッ!」「イヤーッ!」

 

 ディスセンブルが刀身を両手で挟み込んだ瞬間、刀身に再度体重が込められる。モータルの人形と言えど、そのサイズ差は実に10倍以上だ。ニンジャと言えど筋力で一方的に押し勝つのは困難を極める。しかしこれでは時間稼ぎにしかならない。マリサのチャカは既になく、チルノは満身創痍だ。ならば誰が、どうニンジャを殺す?

 

ヒサツ・ワザ─────!!」

 

 その答えを示すように、キリサメ・マリサの手のひらが閃光を放つ。その手に握られたミニ八卦炉が、今までよりも激しく、七色の閃光を放ち出す─────!!

 

「ウ、ウオオオォォ─────ッ!!」「イィィヤァーッ!」

 

 なりふり構わず刀身を押し退けんとするディスセンブルを、アリスの駆るゴリアテが剛力で押さえ付ける!

 

「恋符!」

 

 そのシャウトに意味はない。ここはダンマク・ゴッコのルール下ではなく、それを唱えた所でなんの恩恵もありはしない。故にそれはニンジャを殺すに足る力を溜めるためのルーティンのようなものであり、そして彼女のプライドから来るこだわりだ。ヤクザクランのマリサとしてでは無く、ゲンソウキョウの白黒の魔法使いとして。キリサメ・ダイフの娘"霧雨魔理沙"としてニンジャを討ち果たすための。

 無作為に放たれていた光が次第に収束し、虹色の球体へと変化してゆく。それを見て、ディスセンブルは観念するように瞼を閉じた。

 

「マスター……」「貴様ら如きに、これだけは使いたくなかった」

 

 その瞬間、祝詞を唱える口が止まる。何を言っている?と言いたげにディスセンブルを見据えたキリサメ・マリサは、そこで見た。白色の燐光を立ち登らせるディスセンブルと、その燐光に包まれた刀身を、見てしまった。

 

イヤーッ!!」「グワーッ!!」

 

 瞬間、鉄塊のごとき刀身が、否、ゴリアテの左肩までが一瞬にして崩壊!肩に乗り人形を操っていたアリスもまた、炸裂した破片を受け落下!しかしまだ、マリサとディスセンブルの距離は縮まっていない!ならば来るのはスリケンだ。あらゆる苦痛に備えるべく、マリサはガチンと両顎を合わせ、歯を食いしばった。

 

イヤーッ!!」「ウッソだろ……!イヤーッ!」

 

 予想通りの投擲。唯一の誤算はそれがスリケンでは無く、剣の巨大な切っ先であった事だろう。迎撃は間に合わない、故に苦渋の側転回避。しかしまだ、閃光は彼女の手のひらにある!ならばここが勝機!

 

「グワーッ……!!」

 

 突如、予想だにしない腹部への激痛!!思わず反射的に身を丸めるキリサメ・マリサ。その腹部にはスリケン!剣の切っ先に当てることで跳弾めいて、スリケンの軌道を直角に変えたのだ!

 

「グ…イ」「イヤーッ!」「グワーッ!!」

 

 苦痛に呻きながらも、影から眼前に自身の標的が立っていることを察知するとカラテパンチ!しかしそれを放つ前から手のひらで制しつつ、こめかみへ強烈な肘打ち!咄嗟に腕を挟むも上体ごと首が大きく跳ね、そのまま地面を滑ってゆく。何とか立ち上がらんとするキリサメ・マリサの視界は、目の前すら認識できぬほどに歪み切っていた。

 

「哀れな小娘が。俺を本気で殺せると?イディオットが。いくら策を練ろうと所詮モータル、貴様を殺すなぞ俺にはケーキを一切れ食う程度の難易度でしかない」

 

 立ち上がることすらままならぬキリサメ・マリサに、白光をたゆたえたディスセンブルが迫る……!

 

「お、お前だけは必ず……!」

 

「私の手で殺してやる、か?随分安い文句だ。出来もせんことを吠える様というのは実に哀れだな」

 

 呂律もまともに回らぬ状態でも尚瞳に殺意をギラつかせるキリサメ・マリサ。しかし立ち上がろうにも、腕に力を込めることすらままならない。

 

「しかし貴様はよくやった方だ、カイシャクしてやる。負け犬同士あの世で貴様の親父と仲良く傷を舐め合え」

 

 歯を食いしばりながらもディスセンブルを睨むキリサメ・マリサを鼻で笑いながら、ディスセンブルはチョップを構えた。おおナムサン!ブッダは、ブッダはどこへ行ってしまったのだ!父の仇を討てぬまま、善良な少女が失意の中死んでゆく。このようなマッポーめいた光景が許されてしまうというのか!

 

「イヤーッ!」「イヤーッ!ナニヤツ……ミラーボディ=サン!マサカ!」

 

 地獄のオニすら目を背ける悲劇的光景、しかしそこに石を投げ込む者が一人!テングか?カッパか?その答えを、ディスセンブルは自身に投げつけられた物体を、ミラーボディの生首を凝視して即座に察した。咄嗟に視界を上げれば、そこにあったのは『忍』『殺』の二文字だ。

 

「……ドーモ、ニンジャスレイヤーです」

 

 それは死神だ。眼前、わずか数cm。互いのカラテの間合いの中、最も危険な領域に踏み込んでいたのは深紅の死神だったのだ。血にまみれたおどろおどろしい瞳が、ディスセンブルを捉えていた。

 

「……ドーモ、ディスセンブルです」

 

 アイサツ、それは神聖不可侵の儀。如何なる者も妨げることを許されないものであり、そして"イクサ"の合図。当人たちにとっては悠久の、しかしほんの僅かな間を置いて。

 

「「イヤーッ!!」」

 

 ニンジャのカラテが交差した。

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