「「イヤーッ!!」」
紛れもない全力、カウンター度外視のフルスイングカラテ・フック!!異様な風切り音を放つ拳が互いの頬を掠め、鎌めいた腕が両者の間で交差する!
「久しぶりだな、ニンジャスレイヤー=サン!随分と暴れ回っているそうだな、俺から逃げ果せた臆病者の分際で!」
「そういう貴様はコソコソとどこで暮らしていた?まぁ良い。ワタシにここで出会った時点で運の尽き。今度こそ確実に息の根を止めてやろう。イヤーッ!!」
両手の指を噛み合わせクラッチすることで交差したディスセンブルの腕を捉えると、交差した右腕を支点に強引にヒキ・ナゲ!!前回とは馬力がまるで違う!ディスセンブルの上体が大きく崩れる!
「イヤーッ!」「イヤーッ! 」
しかしディスセンブルもまたカラテ強者!後頭部と手のひらによる最小限のウケミで衝突のダメージをゼロにすると、倒れ込みながらの蹴り上げ!運動エネルギーを利用した強烈な蹴りだ!即座にクラッチを解き連続側転回避!!
「クク、やはり中々のワザマエ。しかしそれでは俺には勝てん」
互いに一定の距離を保ちながら睨み合うニンジャスレイヤーとディスセンブル。その均衡を破る合図のように、ディスセンブルの両手が白く光る。
「思い出したか?貴様は俺のジツに破れたのだ。ブザマにもジツの種を明かした、などとほざいてな」
わかりやすい、しかし実際正しい挑発だ。ディスセンブルの持つ正体不明のジツ。前回の戦いではこのジツの実態を見誤り、ニンジャスレイヤーは手痛い被害を受けたのだ。アリスが持つゴリアテ人形もまた、このジツに一瞬晒されただけで壊滅的なダメージを受けている。なんと恐ろしく強大なジツか。
「あぁそうだ。ワタシはそのジツに敗れた」
「その通りだ。貴様だけではない。キリサメ・ダイフも、そこの小娘もだ」
「お、お前……ッ!」
続けて挑発。己どころか故人、それも実の父親を侮辱するような発言を受け、キリサメ・マリサの顔が憤怒に染まる。
「悔しいか?しかし事実だ!貴様らバカ親子は、二代揃って俺のジツに負けたのだ!俺の無敵のジツにな!弱肉強食、恨むなら己を恨むことだな、キリサメ・マリサ=サン!!」
しかしその言葉を遮る実力も体力すら未だ彼女にはない。ディスセンブルの渾身の一撃は、彼女に深刻なダメージを与えていたのだ。
「無敵では無い」
「……なに?」
勝ちは揺るがない、そう言いたげなディスセンブルの嘲笑は、その一言で苛立ち混じりのものへと移り代わった。何を馬鹿なことを?その場にいる誰もがそう言いたげな目で発言者、ニンジャスレイヤーの方を見ている。
「貴様のジツの種は割れた。……いや、今し方割られたのだ、貴様がバカ親子と呼んだ者達によってな。その光も最早威嚇にすらならん。それに気づかず馬鹿の一つ覚えのようにジツを光らせるマヌケ、それが今のオヌシよ」
なんと過去を顧みない、挑戦的な発言か!同じ失敗を二度続けようとする者はボーでブッダに叩かれる。古事記にもそう記されている通り、ニンジャスレイヤーのその無根拠な発言は正しく愚かなものであり、故にこそ、ディスセンブルの神経を逆撫でした。
「では!愚か者がどちらか今教えこんでやろう!イヤァァ─────ッ!!」
両手の燐光を一段強く光らせながら、修羅の形相のディスセンブルが迫る!ニンジャスレイヤーは……不動!バカな、迎え撃つ気なのか!?しかしここに以前のような畳は無く、あぁ、ニンジャスレイヤー!
「イヤーッ!!」「馬鹿な、何故っ!?」
ディスセンブル渾身のコッポ・パンチ!燐光と回転を伴いながら、ディスセンブルの掌底が迫る!!触れればキリサメ・コーポの、あるいはゴリアテ人形のようにバラバラに崩壊する危険な拳。しかし!しかし!おぉ見よ!ディスセンブルの拳を受け止める、ニンジャスレイヤーの姿を!!その姿は、ファイアフライとの戦で見せたあの……!
「イィィィヤァァァ─────ッ!!」「グワァーッ!?」
ニンジャスレイヤーの収縮した瞳孔がギョロリ、と混乱によりフリーズするディスセンブルを捉えると、その顔に渾身のカラテ・パンチ!!咄嗟に顔を燐光で包むも無意味!ディスセンブルの顔が大きく軋み、空中で八回転した後に壁に叩きつけられる!!被害甚大!!
「ば、バカな……!なぜ俺のジツが……!」
「やはりキネシス・ジツか」
「ナニ!?バカな、何故それを!」
「キネシスで物体を掴み、引き裂くのが貴様のジツの正体だな?傍から見ればそれが分解や崩壊のように見えると」
ディスセンブルの問いには答えず、淡々と口を開きながらディスセンブルに迫るニンジャスレイヤー。その一言一言を受ける度に、ディスセンブルの頬を冷や汗が伝う。
「しかしその出力は血中カラテを圧縮して放出してこそ得られる代物。故に捉え切れるサイズや硬度には限度があり、限界ギリギリの行使をすれば数分程度ジツを扱えなくなる……そんな所か」
「み、見抜いたというのか!?たった一回の接触で……!?」
「一度では無い、キッカケはあの鎖を砕かなかったことではあるがな。そこで生まれた僅かな可能性を、ここでキリサメ・マリサ=サンが証明してくれた。遊びとは随分な言い訳よの、実際はただジツが扱えなかっただけというのに……」
ニンジャスレイヤーの推測は実際正しい。彼のジツは脆弱なキネシス・ジツ。故にゼロ距離での行使やエンハンスめいた扱い方でなければ物を引きちぎる力などとても生めず、また限界まで行使すると血中カラテが一定の量になるまで待たねばならない。故にビルを壊した直後も、そして部屋を包み込む爆風とその破片から自身を守った直後もジツを使用することが出来なかったのだ。
自爆に巻き込まれる寸前でありながら鎖をジツで砕かなかった理由。加えて実態のない爆炎から無傷で耐えた方法、そして連戦という不安材料が有りながらジツを出し渋った訳。正しくキリサメ・ダイフとキリサメ・マリサが命を賭した結果生まれた幾つもの小さな綻びが、今この瞬間、ディスセンブルのジツの実態を明らかにしたのである!
「故にこの通り、間にクッションを挟めば実に無害……涙ぐましい工夫も、こうして無意味なものになったという訳だ」
ニンジャスレイヤーの拳を包むのは黒炎!!この炎がディスセンブルのキネシス光を遮り、拳を受け止めることを可能としていたのだ!並のカトンならいざ知らず、ナラク・ニンジャから持たされる不浄の炎はディスセンブルの圧縮されたキネシスに弾かれることなくフジキドの拳を守りきったのだ!
「最早敗れたも同然!観念して死ねい!イヤーッ!!」
全速力のスプリントの後、槍めいたカラテ・ストレート!共振状態のニンジャスレイヤーから放たれる鉄拳を受ければ、ディスセンブルと言えど爆発四散必死!しかし彼のジツは最早……。
「イヤーッ!」「グッ!?小癪!!」
キネシス光を伴う前腕受け!黒炎をキネシスで凌ぎつつカラテ・ストレートを最小限の動きで逸らすと、カウンターパンチ!間一髪首を傾け躱すニンジャスレイヤー!ジツは破れどもまだカラテがある。ジツと黒い炎が互角だと言うなら、勝敗を分けるものそれ即ちカラテ。ソウカイ・シックスゲイツの肩書きは、ジツ一つで背負える程軽いものでは無いのだ!
「ジツを破った程度でいい気になるなよ、まだ俺が敗れた訳では無い」
「直ぐにそうなる」
「リベンジマッチか?次は無いぞ」
「当然、貴様はこの場で殺す」
互いの腕を掴み合う超至近距離に置いて混ざり合うニンジャの殺気によって、両者の間がおどろおどろしく歪む。
「「イヤーッ!!」」
事態を動かしたのは、奇しくも同じワザ!シンプルな、故にカタナめいて鋭くチョップが走る!!間に閃光を生み、二つの影が弾き飛ぶように距離をとる!
「イヤーッ!」「イヤーッ!」
側転終わりを狙い済ました、鎌めいた足払い!ディスセンブルの腕払いがそれを防ぐ!二つの風はそのままぐるぐるとポジションを変えながら天井へ!
「イヤーッ!」「イヤーッ!」
天井の鉄骨を利用した、物理法則を無視するかのようなアクロバティック前転蹴り!しかしニンジャスレイヤーは冷静に天井ブリッジ回避!二つの風はそのままぐるぐるとポジションを変えながら壁際へ!
「イヤーッ!」「イヤーッ!」
垂直なトタン壁をずり落ちながらも連続黒炎スリケン!しかしディスセンブルも負けじとキネシス光スリケン!黒星が、無惨な金属片と成り果て散ってゆく!二つの影は玄関……否、中央……否、外……否!目まぐるしく変わるその速度は、その光景を見守る者にとっては瞬間移動に等しい!視界に入るのは残像ばかり、果たして二人のニンジャはどこに?
「ニンジャスレイヤー=サン、私も……」
「動くな!!」
怒声めいた叱責が反射的にキリサメ・マリサの足を止める。
「「イヤァ─────ッ!!」」
次の瞬間、キリサメ・マリサの顔両端、耳の数ミリ横をニンジャの鉄拳が掠める!迂闊に動けば死んでいた、その恐怖から分泌される冷や汗が伝うよりも早く、キリサメ・マリサを挟み込んでいた二人のニンジャは霞のように消えてゆく。
「機を急くでない!オヌシはただ、そこで
「っ……!」
ニンジャスレイヤーとディスセンブルのカラテに未だ優劣は見えない。もしディスセンブルが身を晒してキリサメ・マリサを狙えば、ニンジャスレイヤーと言えどそれを止めることは不可能に近しいのだ。
「クハハ!つまりは邪魔とな!?随分無慈悲なことを言う!甘ちゃんと思っていたが、どうもそうでは無いらしい!」
「そういう貴様は随分手緩い!やはり格下しか狙えぬ哀れなボンクラであったか!?」
「ほざけ!イィィヤァーッ!!」
「ウカツ!イヤーッ!」「グワーッ!」
上体を捻った異常な姿勢から放たれる、ディスセンブル渾身のコッポ掌底!!膝滑りめいた姿勢で股下回避!そのままスリケン投擲!股間から脳天にかけての串刺しは回避するも、胸元から首にかけて大きな裂傷が生じる!
「イヤーッ!」
肩を抑え蹲るディスセンブルの後頭部に、ニンジャスレイヤーの回し蹴りが迫る!キネシス光によるガード!しかし蹴り足にもまたキネシス光の分解を防ぐ不浄の炎!これでは蹴り足の分解は不可能……!
「イヤーッ!!」
「グ……!?」
燐光に触れた瞬間、ニンジャスレイヤーの蹴りが跳ね返される!より強力なキネシス・ジツをほんの僅かな空間に瞬間的に押し固めることで、カラテエネルギーを擬似爆発反応装甲へと変貌させたのだ!繊細なジツのコントロールがなければ到底なし得ない芸当!
「イヤーッ!」
「グワーッ!イヤーッ!」
大きく身体を捻ったディスセンブルから、高速の鉄拳が打ち出される!咄嗟のクロスガード!しかし姿勢が不安定!ガード越しでも背中に突き抜けるような衝撃を片足では受け止められず、ニンジャスレイヤーの身体が宙に浮く!苦し紛れのスリケン投擲も容易く回避!こちらに迫るディスセンブルの真横を突き抜け、地面へと突き刺さる!
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
突如、ニンジャスレイヤーの身体が空中にて急加速!トビゲリがディスセンブルの左鎖骨へと突き刺さる!その手にはニンジャのイクサにも耐えるドウグ社製フックロープ!スリケンへとフックロープを括り付け、突き刺さったスリケンを楔とすることで空中でのカウンターを可能としたのだ!何たる状況判断か!
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
後方へ吹き飛ばされながらも慣性制御、即連続バク転を行い運動エネルギーを分散することでダメージを最小限に抑えるディスセンブル。その身体の前方僅か数コンマ先を、黒色の飛翔体が真横に掠める!
「ヌンチャクか、古典的な武器を!」
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
炎を纏った鎖に繋がれた二つの重しが、巧みなコントロールにより蛇めいて空を這う!斜め下からの変則的急襲軌道!キネシス爆発反応装甲により弾く!しかしヌンチャクの嵐は一打で終わらず!
「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」「イヤーッ!」
毎秒何百打かすら分からぬほどのヌンチャクの嵐!それを一つ一つ的確にブロックするディスセンブル!両者ともに一歩も譲らぬワザマエ、しかしディスセンブルのジツには限りがある。このラリーはニンジャスレイヤー有利か!
「イヤーッ!」
「グワーッ!?」
突如テンポを緩め襲い来る強襲ヌンチャク!対応が遅れディスセンブルの顎が跳ね上がる!
「グ……イ、イヤーッ!」
「グワーッ!」
ブラックアウト確実かと思われた一撃、しかしそれすら耐え抜いたディスセンブルの足裏が突如爆ぜる!!キネシス爆発反応装甲の反発力による急接近!今度はニンジャスレイヤーの対応がコンマ数秒遅れる!そこにえぐり込まれるコッポ・パンチ!!ニンジャスレイヤーのあばら骨が軋む!
「イヤーッ!」
「苦し紛れか!?この程度……」
ヌンチャク打擲!!ディスセンブルの足へと絡みつき、両端が楔めいて地面に突き刺さる!しかしこの程度の拘束、ディスセンブルからすれば数秒で抜け出せる程度のもの。
「言われた通りちゃんと待ってたぜ、決断的にな」
しかしそれは、この場においては致命的な足止め。それを示すように、キリサメ・マリサの手元が
それが何を意味するのか、彼女が何者であるか知る読者の方々ならお分かりだろう。それは幻想郷
「恋符!!」
普通の魔法使い、キリサメ・マリサの代名詞にして切り札。その光の名は、即ち!
「マスタースパーク!イヤァァァ─────ッ!!」
「グワァァァ─────ッ!?」
超弩級の熱線が、虹色の光を伴い放たれる!!回避は!?遅い!!直撃は!?死あるのみ!!ニューロンを焼き切れんばかりに高速回転させ、光明を見出さんとするディスセンブルの身体を包み込んだ─────!!