「イヤァァァ─────ッ!!」
「グワーッ!?」
ディスセンブルの身体を飲み込んだ光線は留まることを知らず、対核シェルターの装甲壁を容易く貫通!何たる熱量、何たる威力!以下にニンジャと言えど巻き込まれれば死は必然!!
傍から見れば決着の着いたように見える光景。しかし、キリサメ・マリサは手に込める力を緩めず。それは、彼女の胸の内にへばりつく予感から来るもので。
「ォ、オオオオォォォォ!!!」
その予感が正しいことを示すように、閃光が、まるで壁に遮られた水の様に、突如として放射状に撹拌される!その先にあるものは
「逃がすか!イヤーッ!!」
「グワーッ!」
過去に八卦炉の火から抜け出す際にも行った、ジツの過剰行使による防壁。しかしそれでも、マスタースパークは止められない!!閃光の威力増大!再びディスセンブルの身体が熱線に包まれる!!ディスセンブル全力のキネシス・ジツと言えど、無傷で凌ぐことは最早不可能!!
「に、逃げる?舐めるなよ小娘が……!俺は……俺は!」
故に!
「俺は!ソウカイ・シックスゲイツだ!イヤーッ!!」
「化け、もんがぁ……っ!!」
片腕を曝け出しての推進!右腕を犠牲にすることで、本来右腕を覆っていた余剰エネルギーを全身に回す!肘から先数十cm分の、それでも全身に回せば数秒程度維持するにしかならぬ程度のカラテエネルギー。しかしその数秒が正しく勝負を分ける!マスタースパークが再び放射状に拡散され、その衝突点とキリサメ・マリサとの距離が一瞬にして迫る!!そして!!
「イヤーッ!!」
「グワーッ……!!」
強烈なフックがマリサの頬を打ち据え、小柄な身体が宙に舞う!!それは当然、ディスセンブルの拳だ!
右腕の肘から下は完全に焼け落ち、黒く炭化した断面には溶けたニンジャ装束がへばりついている。気化熱に晒された皮膚は赤く腫れ、皮下組織はもちろん呼吸器や網膜すら焼け付いている。重傷も重傷。しかし彼は耐えた。ゲンソウキョウ最高峰の一撃を、己のジツとワザマエのみで耐え抜いたのだ。なんと恐るべき、なんと強大なニンジャか……!
「マリサ!!」
「アバッ……あ、アリス=サン……み、み……」
(((ブッダファック、殺し損ねた……!ならば追撃を……スシ……いや、まず殺すべきは!)))
壁面衝突寸前の所で、咄嗟にアリスがマリサを抱え止める!!即死回避!!
腕の断面を反射的に握りしめたくなるような激痛の中、それでも冷静な思考を保ち続けるディスセンブル!アドレナリンの分泌は意図的に抑えられている!思考を加速させつつ冷静さを損なわないための判断とはいえ、なんたる精神力か……!
カラテを構えつつ状況判断。まず己が殺すべきは誰かを冷静に見定める。気絶し横たわるチルノか?負傷の浅いアリスか?入口の外にいるダイヨウセイか?己にこの手傷を負わせた、瀕死のキリサメ・マリサか?いや違う。今、己が先ず殺すべきは……!
「イヤーッ!!」「イヤーッ!」
上空から迫るニンジャスレイヤー!!ディスセンブルの対空蹴り上げ!!拳と脚は互いに空を切り、ニンジャスレイヤーの拳がビリビリと部屋全体を揺らす!!
猛獣と猛獣、龍と虎。この空間で最も危険な二人が、今再び至近距離にて相見える!!両者の目は、己が殺さなければならない相手を海馬に焼きつけるようにギラりと見開かれていた。
「イヤーッ!!」
ディスセンブルの流れるようなかかと落とし!!対するニンジャスレイヤーは屈みこんだままだ!回避の前触れか?しかしディスセンブルの左手には十字のスリケンの姿!回避を行えば狙い撃ちされること確実!どうする、ニンジャスレイヤー!
「イヤーッ!!」
「ヌンチャク!?グワーッ!」
ニンジャスレイヤーの手から伸びた黒檀の重しが、ディスセンブルの脚を迎え撃つ!!咄嗟のキネシス光……しかし霧散!!ディスセンブルのジツは、マスタースパークを防いだ際に全て失われている!!打ち勝ったのはニンジャスレイヤー!ディスセンブルの脚ごと、身体がはね上げられる!!
「見誤ったか、ウカツ……!イヤーッ!」
「イヤーッ!」
「グワーッ!!」
回転の勢いを活用したスリケン投擲!棍めいて突き出されたヌンチャクにより破砕!!その先端はそのままディスセンブルへと突き刺さる!ただでさえ重体の身体にダメ押しの一撃、もはや勝負は決まったか……?
「グ……イクサは、ここからぞ!!イヤーッ!」
「悪あがきを……!」
しかしそれすら耐え抜く、ディスセンブルの驚異的なタフネス!!燃え盛る鎖を腕に巻き付けヌンチャクの追撃を封じる!炎が身を焦がす苦痛、歯を食いしばり堪えることで解決!!地を蹴り左右に残像を残しながら、ニンジャスレイヤーへと一気に迫る!!
「イヤーッ!!」
「イヤーッ!!」
ディスセンブルの横蹴り!当たれば頭部がそのまま水平方向に吹き飛んでいくであろう破壊力を秘めた足先がニンジャスレイヤーへと迫る!上体を倒し、海老反りめいた姿勢で回避!MATRIX!!ディスセンブルは今や片腕、射撃戦を仕掛ければ勝利は確実だろう。となればそのまま後方へ回避か?しかし互いの手に握られたヌンチャクの鎖がそれを許さない。ならばここは、前進あるのみ!!
「イヤーッ!!」
「グワーッ!!」
バネ仕掛けめいて上体を起こしつつ、その勢いのままディスセンブルの頭部を狙い済ましたアームハンマー!!最低限の回避挙動で頭部を逸らすも、右肩に直撃!!鎖骨が砕ける生々しい音が響き渡る!これはディスセンブルの判断ミスか!?いや違う!!
「イヤーッ!!」
「グワーッ!!」
それを示すような、極超音速の掌打!!相打ち覚悟のカウンターだ!ミサイルめいて発射されたディスセンブルの掌が、ニンジャスレイヤーの脇腹を打ち据える!!肝臓を直接殴りつけられるような激痛にニンジャスレイヤーの顔が歪み、歯を食いしばるかのように牙めいたメンポが噛みしめられる!!
「イヤーッ!!」
「イヤーッ!!」
苦痛にたじろぐ隙を逃さず、鎖を利用した吊り投げ!!しかしそれに抗うように、両手で鎖を引くニンジャスレイヤー!両者の身体能力に差がなくとも片腕と両腕、その差は技では覆しがたく……。
「イヤーッ!!」
「グワーッ!?」
一回転する事で燃え盛る鎖を身体に巻き付け、遠心力+全身の力による吊り投げ!!ニンジャスレイヤーの身体が宙に待った次の瞬間、映像が飛んだかと思わせる速度で地面へと叩きつけられる!!咄嗟のウケミが無ければ間違いなく即死の一撃に、ニンジャスレイヤーの口から苦悶の声が漏れる!!
「イィィィ……」
「愚か者が!イヤーッ!!」
「グワーッ!!ソ……」
そのまま顔面掌打を放たんとするディスセンブル。しかし溜めが大きい!!蹴りあげがディスセンブルの頭部へと突き刺さり、嫌な破砕音が再び響く!!衝撃で左目が摘出されるほどの甚大なダメージ!!
「ソウカイ・シンジケートバンザイ!!イィィィヤァァァ──────────ッ!!」
「グワーッ!?」
それでもシックスゲイツは止まらない!!瓦割りめいて真下に放たれた掌が、ニンジャスレイヤーの顔面へ突き刺さる!!コンクリ床の亀裂がさらに広がる!!足場崩壊寸前!!
(((ウカツ、判断を誤った……!)))
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
再度全体重を乗せた大振りのパンチ!転がり回避!!しかしこのカラテの応酬で負ったダメージはあまりにも大きい!捨て身めいた所ではない。文字通り捨て身、自身の命すら顧みないディスセンブルの猛攻が、ニンジャスレイヤーへ甚大な手傷を負わせていた!!刺々しいメンポの下から垂れた鮮血が、赤いニンジャ装束に溶け込んでゆく!
(((手放して距離を取りスリケンを……いや、こやつにヌンチャクを奪われれば何が起こるか分からぬ。やはりこの距離を保つ他ない……!)))
槍を持てば子供が大人を殺す。片腕となり、今や黒炎に全身を包まれつつあると言えどディスセンブルは強者、ヌンチャクを奪われれば超至近距離の打ち合いを除いたあらゆる状況で不利を背負う事となる。そうでなくとも、ヌンチャクによるニンジャソウルの暴走が起きてしまえばリンノスケ達に危険が及んでしまう可能性も高い。ならばこれこそが、ヌンチャクで互いを縛り付けた上でのカラテの応酬こそが最善手であると確信すると、ニンジャスレイヤーはカラテを構えつつ薪めいて炎をくゆらせるディスセンブルを睨みつけた。
「安い……アバー……実際……ソウカイ……」
対する瀕死の重体のディスセンブルは、ソーマト・リコールめいて得体の知れぬ文言をブツブツと呟いている。眉間からは脳漿と血の混じった赤い体液が滴り落ち、顎先に溜まった汗と共に床へと垂れてゆく。どう見ても死ぬ寸前の命、しかし油断はこちらに死を招く。
「イヤーッ!!」
ゾンビめいた様相から、突如としてサバンナの肉食獣めいたイナズマステップ!!片腕がない分機動力はディスセンブル有利!!右か左か、ディスセンブルの動きを見極めるべく足を止めたニンジャスレイヤーへと真正面からのジョルトコッポ・パンチが襲いかかる!!
「イヤーッ!!」
冷静にブリッジ回避!!タツジン!!
「グワーッ!!……グ、グ、イヤーッ!!」
身体が軋み、血を燃料に不浄の炎が更に身を焦がす!!しかしそれでも、追撃に走るディスセンブル!!鎖を引くことで連続側転を止めると、ブリッジ姿勢のニンジャスレイヤー目掛けて肘を打ち下ろす!!
「イヤーッ!!」
「グワーッ!」
それを跳ね上げる、暗黒カラテ奥義サマーソルト・キック!!ディスセンブルの身体が後ろに後退した隙を見逃さず、神速のステップイン!!
「イヤーッ!!」
「グワーッ!」
追撃のボディーブローが突き刺さる!!至近弾故の手打ちと言えど、今のディスセンブルにとっては耐え難い一撃!!その身体がくの字に折れ曲がる!!しかし見よ、まるで覚悟していたかのように歯を食いしばるディスセンブルの顔を!
「イヤーッ!!」
アンダースローめいた軌道を描きながら放たれたディスセンブル渾身の掌打が迫る!!これはコッポ・ドーの殺人奥義ボールブレイカー!!直撃すれば股間破壊確実!苦痛に悶えながら死ぬこととなる!!
「イヤーッ!!」
当然防御姿勢!!交差した手を股間下に置き、拳を挟み込みにかかるニンジャスレイヤー!
「イヤーッ!」
「グワーッ!?」
しかし突如としてディスセンブルの身体が更に沈む!!掌は軌道を変え、がら空きになった喉元へと直撃!!気道を押しつぶされ、ニンジャスレイヤーの身体が一瞬硬直する!果たして何が起きたのか?或いは、その一部始終を目撃していた方もいるだろう。ディスセンブルはニンジャスレイヤーが防御姿勢に入ったことを察知すると、反射的にスタンスを広げ軌道を無理やり変化させたのだ!!なんと恐るべき、なんと賞賛に値するワザマエか……。
「取った!イヤーッ!!」
「グワーッ!」
ヌンチャクを握る手が緩んだ瞬間を見逃さず、ボディチェック!!背中がニンジャスレイヤーの胴へとめり込み、ヌンチャクがするりと脱力しきったニンジャスレイヤーの腕をぬけてゆく!更にニンジャスレイヤーの身体は宙を舞う!このままでは、我らがニンジャスレイヤーがヌンチャクの餌食に……!
「イッ……な、キサマ!?」
空中のニンジャスレイヤーを薙ぎ払うべくヌンチャクを引いたその瞬間、ディスセンブルは感じ取った違和感からヌンチャクを凝視した。なぜこんなにもヌンチャクが重い?それに己の腕に巻き付く鎖の先に取り付けられた、分厚く重厚な黒檀のボー。そこに巻きついた、この燃え盛るロープは……?
「イヤーッ!」
「グワーッ!!」
ヌンチャクの先端からニンジャスレイヤーへと伸びたそれは、ドウグ社製フックロープだ!!ヌンチャクへと巻き付けたロープを燃やすことで、燃え盛る鎖と同化!黒炎のカモフラージュによりロープの存在をディスセンブルの意識外へと逸らし続けていたのだ!ヌンチャクと共に引かれたニンジャスレイヤーの身体はディスセンブル目掛けて急発進!トビゲリが再び突き刺さり、ディスセンブルの身体が地面を転がる!! 地面に指を突き立て、勢いを殺すと共に急減速を図るディスセンブル。その視界にニンジャスレイヤーの姿は無く、しかし見よ!!おどろおどろしい不気味な影が、ディスセンブルの背後から伸びている!
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
咄嗟の掌打裏拳!高速の打撃、しかしその手首を的確に掴み止めるニンジャスレイヤー!手首が砕けんばかりの万力でディスセンブルの腕を握りしめると、そのまま背中に回しながら捻りあげる!これは古来より伝わるカラテ技、ハンマーロック!!関節が引き裂かれるような激痛が、ディスセンブルのつま先まで走り抜ける!
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
「グワーッ!」
そのままディスセンブルを押し倒さんとするニンジャスレイヤー、それに抗うディスセンブル!両者の筋力は拮抗、しかし再び捉えられた左腕が捻りあげられる!!ディスセンブルの口から、苦悶の声が漏れる!更に!
「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」「イヤーッ!」「グワーッ!」
片腕を捻りあげげつつ、ディスセンブルの後頭部にチョップ連打!乱雑な連打の様に見えてその動作は実にコンパクト、チョップの合間を縫うようにもがいても、拘束は一切緩まない!
(((マリサ=サンとの戦いから察するに、ジツが扱えるようになるまで少なくとも数十秒あることは確実……!このまま捕えて殺す!)))
「イヤーッ!」
「グワーッ!や、安い……実際……」
再度弾頭チョップ!たかがチョップ、されどチョップ、このまま受け続ければディスセンブルと言えど爆発四散は確実。しかし死神の拘束からの脱出は容易ではない。ましてや彼は片腕なのだ。あまりにも絶望的な状況、だがしかし、このディスセンブルの不気味な言葉は一体……?
「イィッ……」
それを考察する時間はない、そう切り捨てるように再度チョップを構えるニンジャスレイヤー!
POP!!
その瞬間響いたのは、肉が爆ぜる破裂音であった。ディスセンブルの肩口に灯るは……あぁ、なんと恐るべき事実か!あの白い光は、ディスセンブルのキネシス光!!しかしなぜジツを?ニンジャスレイヤーの見立てが間違っていたか?否、ニンジャスレイヤーの考察は実際正しい。彼のジツは万全となれば三分、たとえほんの僅かの行使であったとしても二十秒ほどの時間が、この状況においては稼ぐこと不可能に等しい時間が必須であった。ではなぜ今扱えたのか?それを示すように、敗れたメンポの隙間からグロテスクな歯茎が露出する!流れる脳漿と血を啜り、更には下唇を、己の五体を噛みちぎり僅かなエネルギーとする!これによりほんの僅かに、秒数にして
しかし問題はまだある。不浄の炎の存在だ。キネシス光を遮る不浄の炎はニンジャスレイヤーの手足を包むに留まらず、今や彼の全身すら覆い尽くしている。互いに身を焦がしながらのイクサ、故に彼のジツはもはや機能しないはずでは?その問いに対し否と答えるように、ディスセンブルの肩口が光る。光の中に覗くは肩の断面……だが待って欲しい。断面が覗いているのは、先程まで腕が生えていたはずの左肩である!!なんと、なんと恐るべき事実か……!彼は己の左肩を、内部からキネシスにより引きちぎり破裂させたのだ!肉体の内部であれば、不浄の炎の能力は及ばない!火を見るより明らかな当たり前の、しかしこの状況下においてなんと豪胆な判断か……!
片腕は爆ぜ拘束から離脱!更に肉片が視界を奪い、異音が耳から潜り込む。状況の精査と判断の為に、ニンジャスレイヤーのニューロンがほんの一瞬、ほんの僅かに停止する!
「俺と貴様がの命が引き換えなら、実際安い!!イヤァァァァ────ッ!!」
「グワッ……!?」
そこへ叩き込まれる、ディスセンブルの全体重を乗せた後ろ回し蹴り!片足、しかして足の筋力は腕の三倍!足裏を掌に見立てた、派生ビヨンボ・バスター!!変則的な形ゆえのワザマエの粗を筋力で無理やり補う荒業!ニンジャスレイヤーの肋骨から破砕音が響き渡り、心臓と肺が押し潰される!悲鳴すらまともに漏らせぬ、致命的威力……!!
「イ、ィイヤァーッ!!」
片腕の吹き飛んだ断面から夥しい出血!キネシスで荒々しく引き裂いたが故に表面積が大きい!このまま行けば、数分後に失血死は確実……!しかし!それすら覚悟の上と言わんばかりの突進!!ディスセンブルの足に、白い光が灯る!
「スゥッ……ゴホーッ!!ゴホッ!!」
それを迎え撃つべくチャドー呼吸を重ねんとするニンジャスレイヤー。しかし被害は未だ甚大、肺が痙攣し呼吸すらまともに行えない!!このままでは防御すら不可能!
「ゴリ!!」
そこへ割り込む!
「アテ!!」
巨大な影!!半身の崩壊したゴリアテ人形を駆るのはアリスだ!!込められた魔力を示すように一際強く輝く魔法の糸が、ゴリアテの巨拳をディスセンブル目掛けて振り下ろす!!
「邪魔だ!イヤーッ!!」
「グワーッ……!」
しかしそれすら歯牙にかけぬ、ディスセンブルのキネシス・ジツ!!今のニンジャスレイヤーならばジツが無くとも殺せる、そう即座に判断してのジツ全力行使!!キネシス光の消失と共にゴリアテの拳完全崩壊!!もはや、彼を止められるものは……
「流れ星への願い事ってのはよ」
勝利を確実なものとすべくニューロンが加速し、周囲が鈍化して見えるディスセンブルの意識を持っていったのは、空に散る木片の中ではためく、
「3回やれば必ず叶うもんだろ」
「キ、リサメッ……」
その考えを見透かすように、そう合理性もクソもない言葉を吐き捨てながら、血みどろの顔で不敵に微笑んで。
「キリサメ・マリサァァァッ!!」
「イィィィヤァァ───────ッ」
「グワーッ!!」
三度目の構え、そして二度目の光。魔法少女の閃光が、再びディスセンブルを包み込む!!ジツ、無し!盾、無し!防ぐ術、もはや無し!!
(((最初からこのガキを殺しておけば……!いや、それ以前にあの男を……キリサメ・ダイフ=サンを素直に殺しておけば……!慢心、慢心が俺を、こんな、やり直しを……!!)))
全身が光に包まれる。表面にこびり付いた血は即座に蒸発して消えてゆき、全身が表面から炭化してゆく。ニューロンの加速故に、酷くゆるやかな、しかし逃れられない
「サヨナラ!!」
KA-BOOOOOM!!
ディスセンブルの身体は、閃光の中で爆発四散した。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
やがて閃光は途絶え、壁の大穴から吹き抜けた風がかつてニンジャだった残骸を攫ってゆく。しかしそれでもキリサメ・マリサは八卦炉を下ろさなかった。下ろすことができなかった。
「マリサ=サン」
突如として肩に置かれた手に身体を跳ねさせながら振り返れば、そこに居たのはニンジャスレイヤーであった。既にナラク・ニンジャの面影は無く、正しく満身創痍といった風貌のニンジャスレイヤーであった。
「あ、あぁ、ニンジャスレイヤー=サン。……その、なんだ。大変だったな!お互い死にかけたし!」
「……そうだな」
「いやーしかし、よくあんな無茶な作戦に付き合ってくれたもんだぜ!意趣返しで命を賭けるな!って怒られるかと思ってたんだけどよ」
「それでは溜飲が下がるまい」
先程まで死にかけていたとは思えない、いや、死線を超えたからなのかにこやかに言葉を交わす両者。しかし彼女の視線は、未だ地面の黒いシミに向けられていた。
「なんだ、アンタ堅物だと思ってたけど違うんだな。案外レイムと似てんのか?あいつも実は結構抜けててな」
「……マリサ=サン」
「にしても見たか?あたしの決めゼリフ!いや〜、実は前から……」
「マリサ=サン」
顔を見せぬまま、淡々と言葉を紡ぐキリサメ・マリサ。そんな彼女に、ニンジャスレイヤーは首を左右に振りながら声をかけた。
「復讐は終わった。ならば
八卦炉を握る手に手のひらを重ねながら、ニンジャスレイヤーはそう告げた。武器を下ろすとは復讐の終わりを意味する行為。即ち、父の仇を討ったということで、同時にそれは自身の肉親の死と向き合わなければならない行為であった。
「……今日はさ、本当は親父の誕生日でよ。あたしが出てってから初めての。だからさあたし、久々に親父に会いに行く予定だったんだ」
ニンジャスレイヤーの言葉を受け、キリサメ・マリサは静かに八卦炉を下ろした。
「あと少し待ってくれたら、会えたはずなのにさ。カミサマってのはやっぱ意地悪だよな」
八卦炉を下ろして、静かに、静かに泣きながらそう呟いていた。
キリサメ・マリサは人間の少女だ。年端もいかぬ、幼気な少女なのだ。親の仇を討った。そんな彼女にとってその事実は重く、重く。重力に従うように、両の目から大粒の涙がぽろぽろとこぼれ落ちて行く。
「サヨナラ、親父」
その場に居ない父親に向けてのその言葉で、キリサメ・マリサの復讐は、静かに幕を閉じたのだった。