ニンジャ・ビジット・ゲンソウキョウ   作:ハングネック

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エンカウント・ゲンソウガール #4

 

「貴様の知る情報、洗いざらい吐いてもらうぞスライ=サン」

 

「やっヤメロ!私はソウカイ・シンジケートの者だぞ!」

 

 スライは恐怖のあまり狼狽!しかし咄嗟にソウカイ・シンジケートの名前を出した。これは賢い。実際賢い。普通の者ならばソウカイ・シンジケートに手出しなどしないだろう。ソウカイ・シンジケートは多数のニンジャが所属する巨大暗黒ニンジャ組織なのだから。狂人でもなければ、まずソウカイ・シンジケートと事を構えようなどとは考えないのである。

 

「ならば尚更吐かせて殺す。先程言った通りだ。貴様らは全員殺す」

 

「なっ、何故だ!話を聞いていたのか!?エェッ!?私は…!」

 

「お主がニンジャだからだ。ソウカイ・シンジケートのニンジャだからだ…!フユコとトチノキを殺したッ!あのっ!!ソウカイ・シンジケートのニンジャだからだ!」

 

「アイエエエエエ狂人!?」

 

 しかしながらニンジャスレイヤーには逆効果!ニンジャスレイヤーの怒気でニンジャ装束がアフリカ産殺人ライオンのたてがみの如く逆立った!サラリマンスーツの前面が湿る。阿修羅的威圧感に当てられたスライはしめやかに失禁した。

 

「は、ハクレイ・レイム=サン!こいつを殺せ!!ソウカイ・シンジケートに恩を売っておけば損はしないだろう!?」

 

 慌てふためき今度はモータルに命乞いだ!これは奥ゆかしくない。実際奥ゆかしくない。ニンジャにあるまじき羞恥行為だ。彼の後ろにソウカイ・シンジケートという後ろ盾があるからこそ成立するコウショウ・ジツであろう。

 

 しかしながらハクレイ・レイムは何も答えない。ハクレイ・レイムは神妙な顔でスライを傍観した。

 

「なっ、何をしているハクレイ・レイム=サン!!ここで私が死ねばお前らはっ…!!」

 

「終わり、とでも言いたそうね」

 

 スライの言葉をレイムが遮った。とてもシツレイな行為である。しかしながら現状の立場は当初と真逆。日頃の鬱憤を示すように、ハクレイ・レイムは冷徹な目でスライを見下した。

 

「コーベインはあんたがたまたま忘れていっただけ。そこのニンジャは知らないし、私たちゲンソウキョウの住民にはなんの反抗の意思もない。私はそう言い張るわよ」

 

「きっ、キサマ何を言うっ!!そんなこと、俺が許さんぞ!!」

 

 あまりにもシツレイな物言いにスライは激怒!メンポが裂け怒声が響き渡る。

 

「許す許さないじゃないのよスライ=サン。私はあんたを助けない。となるとあんたは…」

 

「殺す。ニンジャは全て殺す。ソウカイヤのニンジャも当然殺す。洗いざらい情報を吐かせて、なるべく無惨に殺してやる」

 

「らしいわよ」

 

「アイエエエエエエエエ!?」

 

 殺戮者の非情な一言にスライは失禁寸前だ!!ニンジャスレイヤーはスライの胸元を掴み上げた。

 

「答えろっ!オヌシはいったいどこのニンジャだ!」

 

「ど、どこのニンジャ!?キサマ一体」「イヤーッ!」「アバーッ!?」

 

 無慈悲なカラテ・フック!スライの身体がくの字に折れ曲がる!

 

「そ、ソウカイ・シンジケートです!ソウカイ・シンジケートのニンジャです!」

 

 ソウカイ・シンジケートの名を取り乱しながら口にするスライを、ニンジャスレイヤーは怪訝な目で睨んだ。

 

「キサマらのボスは既に死んだはずだ。ワタシが殺した。ネオサイタマにて葬った。であれば今のキサマらのボスは誰だ?」

 

「ぼ、ボスを殺した!?ネオサイタマ!?なんの事だ!キサマ本当にイカれて」「イヤーッ!」「アバーッ!?」

 

 無慈悲なユビオリ!スライの小指から人差し指がまとめて明後日の方向へと捻じ曲がる。

 

「あっ、アババっ!ぼ、ボスの本当のニンジャネームは誰も知らないんですぅぅ!ソウカイ・シックスゲイツでも聞いたことがないって、話で」「よくわかった!イヤーッ!」「アババババーッ!?」

 

 無慈悲な金的!スライは口から血色の泡を吐きながら悶絶した。

 同時にニンジャスレイヤーはいくつかの情報を手にしていた。ボスの入れ替わり、ネオサイタマのことを知らないという事、にもかかわらずソウカイ・シンジケートの名を使っているという事実。

 

((どうもこの地はネオサイタマとは全く別の場所であるようだな……))

 

 今は疑問が多すぎる。あれこれ考えるよりも先に、ニンジャスレイヤーは目の前のニンジャを惨たらしく殺すことにした。

 

「オヌシにはまだまだ喋ってもらうぞ!ひとしきり情報を吐かせた後に、惨たらしく殺してやる!」

 

「あ、アイエエエッ!?」

 

 ハクレイ・レイムはソウカイ・シンジケートに楯突き、何よりソウカイ・シンジケートを恐れぬ狂人めいたニンジャが一人いる。その事実をソウカイ・シンジケートに伝えられるのは、今インタビューを受けている己のみ。

 狂乱と恐怖に陥った彼のニューロンであったが、しかしながら同時に1つの光明が舞い降りる。

 

「つ、つまり逃げ切れれば俺の勝ちだな!」

 

 スライのサラリマンスーツめいたニンジャ装束が突如膨張!これにはニンジャスレイヤーも咄嗟に後退!

 

「ソウカイ・シンジケートを侮ったな!!イヤーッ!!」

 

「「グワーッ!?」」

 

 刹那太陽のごとき閃光と爆音!!ついで突風!!スーツの如きニンジャ装束を割いて出てきたのはジェットパックだ!背面にはクロスキューカンバーのエンブレム!カワシロ工業製のジェットパックである!

 

「ホーッ!ホーッ!バカめ!!このことはキチンとソウカイ・シンジケートに伝えてくれるわ!」

 

 ソウカイ・シンジケートにこの事さえ伝えられれば、すぐさま上のニンジャが駆けつける。

 ただでさえ反抗的な態度が目立つゲンソウキョウの住民など、今回の一件があればたちまち皆殺しの許可が降りるだろう。もちろん、あの謎のニンジャも一緒だ。

 

 閃光に二人が怯む間にスライは鷹の如く飛翔。爆炎に怯むニンジャスレイヤーとルーミアを見て笑いを浮かべた。

 

「……何?」

 

 そう、ニンジャスレイヤーと、ルーミアである。

 

「アンタの前ではずっと大人しくしてたものね」

 

「あ、アイエエエエエエ!?ハクレイ・レイム=サン!?馬鹿なっ!なぜキサマが空にっ!」

 

 空を飛ぶスライの眼前に現れたのは、赤と白の派手な服を着たミコだ。すなわちハクレイ・レイムである。

 馬鹿な!!ここはジャンプなどでは届かぬ超上空の筈だ!

 

「イヤーッ!!」

 

「アバーッ!?」

 

 ハクレイ・レイムの強烈な蹴りがスライの頬を殴打!

 困惑にニューロンが支配され、スライはそのままキリモミ回転しながら落下!!

 

「イヤーッ!」「アバーッ!?」「イヤーッ!」「アバーッ!?」「イヤーッ!」「アバーッ!?」「イヤーッ!」「アバーッ!?」「イヤーッ!」「アバーッ!?」「イヤーッ!」「アバーッ!?」「イヤーッ!」「アバーッ!!」

 

 否、スライの足をフックロープが捉えた。ロープを掴んだニンジャスレイヤーはそのまま腕を振り下ろし!振り下ろし!連続して振り下ろし!さながら餅つきの杵の如く、スライの身体が地面に叩きつけられた!ウケミが取れればニンジャにとっては実際大したことの無いダメージ、しかしながらウケミが取れぬ今、その一撃はスライに致命打を与えた!!

 

「さぁっ、年貢の納め時だスライ=サン!!」

 

「アッ、アババッ……!!ニンジャ死すともっ、ソウカイ・シンジケートは死せずっ……!!」

 

 それはハイクであった。偉人の言葉に己の容態を重ねた極めて奥ゆかしいハイクだ。ポエット!!

 同時に、甲高い電子音が鳴り響く。音の主はスライが身に付けるジェットパックだ。ナムアミダブツ!ジェットパックに内蔵された小型爆弾が作動したのだ!このままでは、ハクレイ・シュラインごとニンジャスレイヤー達は消え去ってしまうだろう。

 

「情報など渡すものか……貴様らもっ、道連れだッ…!!ホーッ、ホーッ!!」

 

 スライの勝利を確信した高笑い!!自爆まであと何秒か、そんなことを確認している余裕は最早ないだろう。ナムサン!ここでニンジャスレイヤーの旅路は終わってしまうのか!?

 

「ノーカラテ、ノーニンジャ」

 

「アイエッ?」

 

「カラテを舐めるなサンシタッ!!イヤーッ!!」

 

「アババババーッ!?」

 

 刹那、ニンジャスレイヤーから紫色の炎が立ち上る!体内のカラテ粒子を燃やし尽くすような猛火に包まれたニンジャスレイヤーの肉体は大きく隆起!!スライごと、フックロープを振り回し始める!さながらデス・メリーゴーランド!!遠心力でスライは吐血!!

 

「イヤーッ!!」

 

「サッ、サヨナラーッ!!!!」

 

 そのままスライの身体を空中に投擲!!花火めいてスライの身体が爆発四散した。

 

「…まだ、聞き出したいことがあったのだがな…」

 

 他のニンジャの構成、ニンジャのジツ、この謎の土地"ゲンソウキョウ"について、この地に居座る目的、ニンジャソウルを宿した経緯。そして何よりも、己の妻子を殺した、憎き"ダークニンジャ"はここに居るのかどうか。

 

 謎多き現状、1つでも多く答えを得たかったものの、その答えを知るものは爆発四散してしまった。ソウカイ・シンジケートの情報は闇の中に消えてしまったのだろうか?

 

「あら、ここにも貴重な情報源がいるじゃない」

 

「…何?」

 

 爆発四散の痕が残る空を眺めるニンジャスレイヤーに、ハクレイ・レイムは不敵に語りかけた。

 

「知ってる事なら教えて上げるし、私の味方にも合わせてあげるわ」

 

「オヌシが味方だという保証は」

 

「敵の敵は味方、でしょ?」

 

 敵が共通するのなら、それは味方となる。古事記にもそう記されている。即ちニンジャスレイヤーにとっても、目の前の少女にとってもソウカイ・シンジケートが敵である以上、互いに利害は一致しているのだろう。

 

「あんた名前は?」

 

「…ドーモ、ニンジャスレイヤーです」

 

「そうじゃなくて、本名の方よ」

 

「……イチロー・モリタです。よろしくお願いします、ハクレイ・レイム=サン」

 

 それは偽名であった。己の名を迂闊には晒せないと言う合理的状況判断から来るものであった。それはきっと、ハクレイ・レイムも悟っていたことであろう。

 

「ドーモ、イチロー・モリタ=サン」

 

 しかしながら追及せず。ハクレイ・レイムのミコとしての感と、彼女の人間性がそうさせたのであった。

 

 そこに多くの言葉は要らず、僅かばかりに喧騒な夜明け。けれどもそこには確かに、数奇で、更なる喧騒を巻き起こすユウジョウが産まれていた。

 

【エンカウント・ゲンソウガール】終わり

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