天神竜と天空の巫女 作:FAIRY NAIL
ギルティナ大陸最大都市ドラシール。
大陸の中央に位置する巨大都市。ナツ達一行はそこに木神竜アルドロンの情報があるというその街にやってきてみれば、情報どころかその巨大都市すらアルドロンの右手の甲に乗っているという巨大さを誇るドラコンであった。
両手、両肩、背中に5つの街を持つアルドロンは人間と共生しているように見え、封じるべきか情報を集めていると白魔導士に取り憑かれた少女トウカに操られた
白魔導士の目的はそれぞれの街に存在するオーブを破壊しアルドロンの力を消し去り、白魔導士の持つ
ナツ達は仲間を取り戻すために戦闘、及びオーブの死守。そこに加わる第三勢力、ディアボロス。アクノロギアから逃れギルティナ大陸で生きていたドラゴンを殺し、その肉を喰らいドラゴンの力を得た第5世代の
彼等もアルドロンの力を封じるためにオーブを破壊しようとし、結果的には全てのオーブの破壊は成った。しかしそれは五神竜が一角月神竜セレーネにより与えられた偽の情報。オーブはアルドロンの力を封じる枷であり、それが全て消えたことによりアルドロンは
そして、オーブの守護神として想像されたゴットシードがフェアリーテイルに牙を剥く。
そのうちの一体………ドゥームがウェンディ、シャルル、ハッピー達の前に現れた。
「遊ぼー、遊ぼー」
「…………貴方は、アルドロンの部下、なんですか?」
「一部だよ」
「じゃ、じゃあ………天神竜グランについて何か知りませんか!?」
「ウェンディ、こんな時に!」
ウェンディの問いかけに人の姿に変身したシャルルが叫ぶ。ウェンディも謝りながらも、それでもどうしても母を同じくする神の竜が気になった。
「………グラン」
「え……」
と、ドゥームがカタカタと震えだす。怯えているようにも、あるいは起こっているようにも見えた。
「グラン、グラン! グラン! テンペスタの守護竜! 人を守る竜か! どうして君が、その名を!!」
「人を、守る? て、天神竜は国を滅ぼしたんじゃ………」
メルクフォビアから聞いた話と異なるドゥームの言葉に困惑するハッピー。ウェンディもどういうことか、と聞き出そうとした瞬間だった…………
「うわあ!」
「きゃあ!?」
「っ!?」
突如吹き荒れる突風。空を覆う分厚い雲は、その表面の形を絶えず変える。上空にも暴風が吹き荒れている。
「あ、嵐!? なんで急に!」
「あ………あ…………!」
ドゥームがガタガタと震え、空を見上げる。雲を突き破り、何かが降ってきた。
「っ! シャルル、ハッピー! トウカさんと白魔導士を!! ここから離れて!」
ウェンディの言葉にハッピーは白魔導士に取り憑かれていたセレナというエクシードを、シャルルは白魔導士を抱え翼を広げその場から離れる。ウェンディも魔力の付きかけた体を懸命に動かし………
ゴバァァァァァン!!
「うわああああ!?」
「きゃああああ!!」
「シャルル、ハッピー!」
降ってきたそれは、ドゥームを押し潰しアルドロンの巨体を大きく揺らす。土や木片が飛び散り衝撃が暴風となって街の残骸を吹き飛ばす。
「う、ぐ…………な、何が………」
「こ、この魔力は……」
土煙の奥に見える巨大な影。大気を震わせる膨大な魔力。そして、数多の血の匂いが染み付いて解りにくいが、獣とも人とも違う独特の匂い。
「白い、ドラゴン………?」
白い羽毛のような毛で覆われた巨大な体。
染み付くはドラゴンの血。その奥に感じる、彼本来のものであろう匂いから感じる懐かしい匂いは………。
「グラン、ディーネ……」
前足と翼が一体化していた彼女と違い、独立した鳥のような翼を持つドラゴンは地面を睨み口を開ける。
「オオオオオオオオ!!!」
吐き出される竜巻のような咆哮。それは街の残骸も背中の一部も、纏めて吹き飛ばした。
「あ、あれ………オイラ達、生きてる?」
「アームズ、ギリギリ間に合いました………」
自分達が生きていることに困惑するハッピー。その横で、ウェンディが風を纏いながら呟く。
「ウェンディ、あんた魔力が!?」
「あのドラゴンの魔力を分けてもらったの」
咄嗟に食らったのだろう。ナツがイグニアの炎を喰ったように、ウェンディも同じ属性である風の、厳密には天の魔法を喰らうことが出来る。
つまりあのドラゴンの属性は天。そして力を奪われたメルクフォビアや目覚めたばかりのアルドロンを超える力の波動。それが意味するのは…………
「あれが、天神竜…………」
「…………………」
「っ!」
ギロリと睨まれ固まるウェンディ。天神竜グランと思われるドラゴンはしかしすぐに視線を下に向ける。アルドロンの体から無数に生えた枝がグランを貫かんと迫り、空を飛び回避するグラン。そのまま風を纏い移動しアルドロンの眼前で停止する。
「久しいなアルドロン」
「…………グラン」
その頃アルドロン内部。
「な、なんだ!? どこいった!?」
ゴットシードの長にして、アルドロンの脳に当たるゴットシードのアルドロンが姿を消しナツが騒いでいた。出口はない。炎を吐き出し破壊しようとするが、僅かに焦げるのみ。閉じ込められた。
「性懲りもなく目覚めたか………滅してやる」
「ほざけ、小僧」
先程まで獣のようだったアルドロンの目に確かな知性が宿り、山より巨大な樹木が上空のグランに迫る。グランの翼が風を纏う。
「天神竜の暴乱!」
「ぐぬぅ!?」
吹き荒れる風の刃は木々を切り裂き大地を破壊しアルドロンの巨体を僅かに浮かせる。アルドロンが口を開け咆哮を放ち、グランも迎撃するように咆哮を放った。
一見すれば巨大なのはアルドロン。しかし、密度も魔力総量もグランが上。アルドロンの咆哮を突き破り右上の一部を大きく抉る。
「うぉ!?」
「きゃあああ!」
アルドロンに乗っていたフェアリーテイルのメンバーは文字通り大地を揺るがす衝撃に振り回される。直ぐにアルドロンから降りるが、吹き荒れる暴風と揺れる大地は天変地異すら容易く超える。
残った数人はゴッドシードと対面していた。
「力が弱まったな。分けていた力が破れたか」
「貴様を喰らい、消費した魔力を取り戻すまでだ」
「そのまま争いなさい、アルドちゃん、グランちゃん」
セレーネが口調を変えてその光景を観戦する。六神竜同士の争い。本来なら漁夫の利を狙うべき状況だが、弱っているアルドロンとグランの戦いなど、結果は見えている。ましてや常に餌が周囲にあるグランでは消耗もすぐに回復してしまうだろう。
それに、グランは他の六神竜とは違う。
「それにしても、派手に戦うわねグランちゃん。アルドちゃんと喧嘩した理由忘れたのかしら?」
自らの領域に侵入して、当時の先代天空の巫女………子を成し、役目を継がせたばかりのグランの弟子の一人を踏み潰したアルドロン。その怒りを買い殺されかけた。
しかし当時未熟なグランもまた深い傷を負い追撃を行えず、再び動けるようになった時にはアルドロンは己の背に街を築かせていた。当時はまだ人の味方であったグランはそれ故手を出せなかったのだが、今のグランは既にアルドロンの一部となった街の住民はともかく、人間であるフェアリーテイルにもまるで配慮をしていない。
「アクノロギアと同じ。人として生きたことを忘れ、ドラゴンになったのね…………ならばドラゴンの時代を長引かせる、私の敵だ」