ソードアート・オンライン~The Devil May Cry (リメイク)   作:i-pod男

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お待たせいたしました。今日は・・・・それなりに捻りを加えました。


Espada de la Rebelión

誰よりも早くに目が覚めたダンテの体はじっとりと冷や汗で濡れていた。十年前から今までまともに睡眠と呼べる物を取った数は少ない。精々が軽い微睡み程度の物だ。

 

「汗まで再現する必要があるのかよ・・・・」

 

VRゲームはリアリティーが第一だが、何もここまで突き詰める必要は無いだろうにと思いながら毛布の下から抜け出してバスルームに向かった。水の温度を限界まで下げて蛇口を捻り、頭をその下に突っ込んだ。冷水が背中の毛をゾワリと逆立たせたが今となってはもう馴れている。

 

冷水を浴びると体温が一定に保たれ、脳から血液を体表面に送れと言う命令が出される。それにより血液の循環が良くなり、血管の毒素が洗い流される。それに加えて体臭を防いだり免疫力を上げる事が出来るのだから衛生的だ。更に冷水シャワーを浴びると人体は体温を戻そうとするので基礎代謝が良くなるダイエット効果もある。まさに良い事づくしだ。

 

と言っても仮想空間で五感を騙しているだけに過ぎないが長年の習慣で染み付いてしまっている。いや、一度思い切りギスギスに痩せてしまえばリハビリで筋肉が付いて細菌の運動不足の解消にも繋がって改めて何時も以上の筋トレが出来る様になるのではと考え始めた。が、SAOから脱出しない限りこれは叶わない。

 

「どうしてるかな、あいつは・・・・?」

 

体を洗っている最中に髪を後ろに撫で付けた自分を見て、ふとそんな言葉が口をついて出て来たのを、ダンテは慌てて口を覆って地面に額を打ち付けた。何を考えた?彼とはもうとっくに縁を切った。お互い赤の他人でしかない。心配されるいわれも、する必要も無い。一生水と油の関係なのだ。

 

「何で今になってあの糞馬鹿野郎の事を思い出すんだよ畜生!」

 

壁に拳を叩き付け、紫色の破壊不能オブジェクトの告知がポップした。もう忘れよう。蛇口を捻って水を止め、ガシガシと乱暴に髪の毛と体を拭く。部屋ではシャワーの水音で目が覚めたのか、寝ぼけ眼を擦りながら盛大な欠伸をするアルゴが入れ違いでやって来る。

 

「悪い、起こしたか?」

 

「大丈夫だヨ。紅一こソ、悪い夢でも見たのカ?何かうなされてたゾ?」

 

「・・・・・いや、アルゴみたいな最高級の抱き枕があるのにマットレスが堅くて寝心地が悪かっただけさ。シャワーの温度一番下まで下げてあるから水出す時は気を付けろよ。」

そう言いながらアルゴに背を向け、メニューを開いて装備を身に付けた。知らぬ間に出来てしまったこの蟠りをどうにかしない限りは何時もの自分になれない。人を食った嫌味で傲岸不遜な態度を取る赤衣のプレイヤー、魔剣士ダンテに。

 

「暫く出て来る。朝飯までには戻るから。」

 

宿を出て迷宮区の中に踏み入った。闇雲に現れるモンスターを片っ端から叩き伏せて行く。だが無駄だった。どんなモンスターをどれだけ倒しても胸につっかえた良い知れぬ何かは皮膚の奥へと潜り込んだ棘の如く相変わらず自己主張を続ける。思わずダンテは八つ当たりで迷宮区の壁のそこかしこを殴ったり蹴ったりし始めた。そんな時、偶然左のフックで壁の一角に罅が入る。もしやと思って何度かその壁を足裏の前蹴りで脆くなった壁を弱めて行く。

 

そして、暗がりの中で赤く光る張り紙を見つけた。レアアイテムである触れた。プラウド・ソウルを獲得するきっかけとなったあの羊皮紙だ。隠しステージの出入り口であるそれを乱暴に引き千切った。前回同様、赤い光が視界を塞ぐ。

 

今度は最初の時とは全くステージが違っていた。円状のフィールドでは無く、今回は中世ヨーロッパにある内装がシックなマナーハウスの広間だった。さぞ住み心地は良さそうだったのだろうが、もう数十年は誰も住んでいないかの様に老朽化しており、壁には幾筋もの日々が走り、家具は砕け、空気もカビの悪臭で満ち満ちていた。

 

「趣味のわりい・・・・」

 

Induce Friendly Fire

 

そして再び天に浮かび上がる隠しクエストのクリア条件。

 

「同士討ちを誘発させろ?AIでそんな事が出来んのかよ?」

 

ポップアップしたモンスターは遠近両方からの攻撃が出来て、尚且つ飛行出来るタイプは巨大な雀蜂の形をしたウィンドワスプとファイター・ビーが二匹ずつ、飛べずに近距離限定で攻撃が出来るタイプがラーカー・コボルド六匹の計十匹だ。

 

「これはまた・・・・・随分と動きが速い奴らばっかり集めやがったな。さてさてどうした物か?」

 

ダンテは早速鞘に納まったままのブラッディー・ファングを抜いて構えようとしたが、はたと考えた。この隠しクエストの内容は『同士討ちを誘発させる』事であって、『敵を全滅させる』事ではない。少なくとも、その筈だ。加えてもし自分自身が弾みでモンスターに何らかの攻撃をしてしまったらこのクエストは失敗となり、クエストを失敗した場合は通常何らかのペナルティーが課せられる。そのペナルティーの内容が何であるか分からない以上、無駄に危ない橋を渡る必要は無い。

 

「まあ、素手ってのも久し振りだからな。」

 

剣をストレージに戻し、掌を擦り合わせた。

 

「Show me a move!」

 

ダンテが一歩踏み出した途端に、二匹のウィンドワスプが尻から伸びる針を彼目掛けて飛ばして来た。更に様子を伺っていたコボルドの中でも一、二を争うスピードを持つラーカー・コボルドも猛スピードで飛びかかって来た。

 

二足歩行と違って四足歩行はエネルギー消費の効率が良く、移動の際に地面を蹴るパワーも段違いだ。加えて急所が多い胴部前面は常に地面に向いている為、真正面から向かって致命傷を与える事も難しい。下方から狙うしか無いのだ。

 

「先にどうにかするとしたら地面を這うコイツらか。」

 

まずは飛んで来る毒針を回避し、次に群がって来る一匹目のコボルドの牙から逃れた。更に折り重なって強靭な顎を開閉する様は淡水に棲息するワニの群れそっくりだ。頭を踏みつけて飛び越えた所でファイター・ビーが針を前に出して急降下して来た。

 

「やば・・・・・い筈無いでしょ〜。十二層まで登り詰めたこの俺を、ナメんじゃねえよ!」

 

空中では完全な回避行動は疎か、まともな身動きは殆ど取れない状況でダンテは狂った高笑いを上げた。ベータテストでは十二層まで登り詰めたダンテは、十二層まで登場する全モンスターの種類、攻撃方法、そして攻撃が齎す状態異常、デバフも全て熟知しているだから動揺するまでもないのだ。

 

ジャンプした先は壁がある。そこを強く蹴って突き出される針の軌道をズラし、着地した。すると再び針が生え戻ったウィンドワスプがそれを撃ち出して来る。ラーカー・コボルドも二匹大口を開いて迫って来た。ギリギリまで針を避けず、ラーカー・コボルドが飛びかかって来た所でその下をスライディングで潜り抜けた。

 

「See ya(あばよ)!」

 

針が当たる瞬間は見えなかったが、ラーカー・コボルドがギャウンと、まるで尻尾を踏みつけられた大型犬の様な鳴き声を上げたのは十中八九針が命中したと言う事だろう。これにより一時的にだがそのラーカー・コボルドの注意はダンテから逸れ、ウィンドワスプを叩き落とそうとダンテがやった様に壁を蹴って噛み砕こうとする。

 

「こりゃ驚いた。AI同士で戦わせる事も出来んのかよ。良いネタ見〜〜っけ。」

 

この情報もまた数種類のモンスターに遭遇した時に使えるかもしれない。上手く行けばボス攻略の成功率も間違い無く上がる。手を打ち鳴らし、華麗に回避を続けて同士討ちを誘発させようと動く。

 

「Too slow(遅ぇんだよ)!」

 

この間も笑い、悪態をついて挑発する事も忘れない。そしてこれを続ける事一時間弱、ようやくクリアと見なされたのか元いた場所へと戻って来た。早速獲得した物を確認する。そしてダンテは歓喜のあまり奇声を発した。

 

「こいつぁたまげたぜ!儲けモンだ!」

 

獲得したアイテムは武器であり、その名は『リベリオン』。刃の付け根には大きな頭蓋骨、手を保護するハンドガードも骨の形をした物で、全長も130cmとかなりある。だが、元々長身な体躯の持ち主であるダンテにはそれ程問題ではない。だが、未だ要求される最低限のステータスにすら達していない故使える日が来るのはまだまだ先だ。

 

仕方なしにリベリオンをストレージにしまい、ブラッディー・ファングを担いで元来た道を上機嫌で口笛を吹きながら戻る。その最中に戦闘の喧騒が聞こえた。普通なら我関せずと無視して通り過ぎるのだが、上機嫌なので特別に冷やかしついでに見に行こうと戦闘音がする方向へと進んだ。

 

「Finished already(もう終わりか)?」

 

聞き慣れた流暢な英語。まさかと思い、ブラッディー・ファングを抜いて歩くスピードを速めた。

 

「Oh, you gotta be fucking kidding me(おいおい、冗談も大概にしろよ畜生)!」

 

ダンテは自分に良く似た男が十体近くのモンスターを相手に一人で戦っているのを見た。能面の様に張り付いた表情は全く変わらず、左手に持った中近東の刀剣である細身のシャムシールで戦っている。流れる様な動きは一切の無駄を省いて洗練されている事が伺える。受け太刀は全くしていないが、避ける際、必要最低限の動きしかせず後は只管急所を狙って攻撃に徹している。

 

やはりそうだ。ダンテの疑惑は僅かな時間で確信へと変わる。

 

目鼻の顔立ち、声、体格、身長、そして染められた髪の色まで全てが同じ。違う所があるとすれば、深紅のコートを好んで着るダンテとは対照的なスカイブルーのコートに袖を通している事とオールバックに銀髪を撫で付けている事と胸元で青いペンダントが光っている事位である。

 

彼もそうだった。派手好きで赤いシャツを着る自分とは対照的に落ち着いたターコイズなどの青系の服を何時も選んでいた。

 

「蒼介・・・・」

 

気付いた時にはダンテもブラッディー・ファングを手近なモンスターに突き立てていた。

 

「久し振りだなあ、おい!」

 

「紅一か。予想通りと言わざるを得ないな。」

 

平坦で抑揚の無い声が返事をした。顔を合わせずとも声だけで誰なのか分かったのだろう。二人はお互い見向きもせず、喋りもせずに黙々とモンスターを倒して行く。最後のモンスターがポリゴンに還元されるとようやくダンテが口を開いた。

 

「九年振りだな、蒼介。」

 

「お前ならこのSAOに来ると思っていた。昔からこう言う物が好きだったからな。」

 

「そいつぁお互い様だろ?まさかとは思ったがマジでお前だったとはな。高校に入ってからあんな堅物になっちまったお前が流行のゲームとは俺も久し振りに驚いた。」

 

「お前に会って・・・・・お前を殺す為だ。」

 

大した事では無い様に言って退けた彼の言葉にダンテは顔を顰めたが、直ぐに鼻を鳴らして笑った。

 

「穏やかじゃないな、再会早々によ。ほら、大好きな弟からのキスはいらないか?」

 

おどけた笑みを浮かべていたダンテも表情を曇らせ、ブラッディー・ファングの切っ先を蒼介に向けた。

 

「いや、それよりもこいつのキスを食らわせてやるぜ。目一杯な。」

 

蒼介と呼ばれた男はメニューを開いて操作した。すると、小さなポップアップがダンテの前に現れる。

 

『Vergilさんから決闘を申し込まれています。受けますか?』

 

デュエルのモードは半撃決着、つまり先にHPを半減させた方がデュエルの勝者となる。蒼介———バージルはダンテが動くのをじっと観察した。

 

「これが所謂『心温まる兄弟の再会』って奴かねぇ?」

 

デュエルを受けたダンテは皮肉を口にしながらブラッディー・ファングを肩に担ぎ、構えを取った。

 

「だろうな。」

 

デュエル開始のカウントがゼロになると、まるで縮地を会得したかの様に僅か数秒でバージルが既にダンテの目の前に迫っていた。

 

「うぉっ!?」

 

居合いの様に横一閃に振り抜かれるシャムシールの凶刃を仰け反りながら回避したが次の瞬間腹に強い衝撃を感じた。バージルの蹴りが腹に減り込んでいる。パワーも中々だが、ダンテを吹き飛ばすには至らなかった。

 

「スピード主体のバランス型か。やっぱ変わらねえ所はホント変わらねえな、お互い。」

 

「言いたい事はそれだけか?」

 

「まだまだあるぜ!」

 

思いもよらぬ変幻自在のテクニックと力押しを大胆且つ繊細に織り交ぜて相手を翻弄するダンテ。

 

一切の飾り気を捨て、堅実に只々相手を打ち倒す為だけに霹靂閃電の一撃を何度も振るうバージル。

 

決して相容れない水と油の様に、または対極の存在である炎と水の様に二人はぶつかり、反発した。




今回は少し早めに鬼いちゃんを出しました。会話の一部はDMC3で兄弟がぶつかる戦闘を自分なりに翻訳した物です。
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