ソードアート・オンライン~The Devil May Cry (リメイク)   作:i-pod男

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バージルはしばしば出たり消えたりを繰り返します。


Clash of Red & Blue

デュエルは拮抗していた。兄弟であるからかお互いの次の動きが分かっている様で、開始から三十分経過しても全く勝負がつく様子は無い。振り下ろされるブラッディー・ファングに負担を減らす為に交差された鞘とシャムシールの鍔迫り合いをするまま二人は睨み合う。

 

「過去をして過去を足らしめよって言葉もあるんだぜ?俺を許す気にはなれねえか?」

 

張り付いていた表情が崩れ去り、バージルは歯を剥いて唸った。

 

「両親を死に追いやったお前を許すだと?やはり八年前のあの時殺すべきだった!」

 

「確かにあの二人が死んだのは俺の所為だ。言い訳するつもりはねえ。だがな!あの日からずっと、俺は一日たりともお袋と親父を死なせた自分を許したつもりは無い。俺を殺した所で何も変わりゃしねえだろうが!今時ガキでも知ってる常識だぞ!?」

 

斜めに弧を描くシャムシールのソードスキル『フェル・クレッセント』とブラッディー・ファングの横一閃『ホリゾンタル』がぶつかり、発動によって引き起こされるライトエフェクトの火花を散らした。そしてパワーでは勝っている為バージルが後ろに飛ばされたが、軽やかに着地して構え直した。

 

「少なくとも、俺の気が晴れる。今は理由などそれだけで十分だ!」

 

再び振るわれるシャムシールを片手で受け流し、空いた方の手に隠し持ったピックで顔を狙った。狙い通り三本のピックはバージルの右頬を捉え、深々と突き刺さって三本の深い傷跡を残す。赤いポリゴンが溢れ出たが、数秒程してから直ぐに消えた。

 

「流石は俺の元兄貴らしい発言だ。どんな些細な理由であろうと、喧嘩売って来たり因縁がある以上は容赦無くぶっ潰して全てを清算する。弟相手でも、相変わらずの即断即決振りだ。それより、良いのか?そう何度も何度も受け太刀しちまって?」

 

現実でも曲刀は構造上斬撃の威力は高い。だが逆にその鋭さを追求した為に刀身は薄く、脆く、耐久性に欠ける。この弱点はゲームにも反映されており、ダンテもまた既に検証した。同じバランス型でもパワー重視のダンテと何度も打ち合えば耐久値が底を突いて折れるのは時間の問題だろう。

 

「問題は無い。」

 

バージルはダンテの足を払ってピックを持っていた左腕を深く斬りつけた。耐久値が残り僅かとなったシャムシールをしまい、ストレージから全く同じ物を取り出した。

 

「そう来たか。」

 

ブラッディー・ファングはレアな装備でステータスも充分あるが、既に耐久値は半分近くまで減っていた。先程の様な接戦をもう一度やって剣が折れない保証は無い。ダンテもバージルに倣い、二本のアニールブレードを構えた。どちらも昨日手入れを済ませたばかりでまだ使っていない

 

「ここに来てからそろそろ売り時だったんだがなあ。」

 

まだ始まりの街にいるプレイヤーは五万といる。アニールブレードは第一層から第三層、もう少し無茶をすれば第四層の序盤辺りまでは使える武器で、店売りの物よりも性能は遥かに良い。大枚をはたいても欲しがる様な武器だ。それも二本となると尚更である。

 

「二刀流・・・・昔もその様な馬鹿な真似をしていたな。」

 

投剣を除いて複数の武器を手に持っている状態ではシステムにエラーと認知されてソードスキルは発動出来ない。加えて右手が空いていなければメニューを操作する事も出来ない。その為、精々良くなるのは見栄え程度で優位性は殆ど皆無だ。

 

「おいおい、忘れてねえか?俺は何度かお前に二刀流で勝ってるって事をよお。」

 

右手を後ろに回し、左半身を前にして切り込んだ。

 

「相変わらず左利きで通してるんだったよなあ、お前。」

 

テニスの試合と同じでサウスポー同士の試合ならば置かれる条件下は同じだ。二人は昔は近所の剣道場で良く竹刀を振っており、バージルは何度も左構えを直せと何時も師範に小言を言われていた。

 

「結局あの時に両利きをマスター出来たのは俺だけだったがな。」

 

矢継ぎ早に繰り出される斬撃を回避し、受け流しながらバージルは空いた手でダンテの喉を手刀で捉えようとした。だが手刀が当たる直前に手を引き、後ろに下がって顔に刺さったままのピックを抜き取って投げ捨てた。

 

何故なら今まで後ろに回して使わずにいた右手のアニールブレードの刃を正眼に構え、刃を楯にしたのだ。今でこそ手首の四分の一までの切れ込みで済んだが、あのまま手刀を当てようと腕を伸ばし切ればバージルの右手は手首から下を確実に切断されていただろう。

 

「ああ。だが、もう違う。」

 

左手に持っていたシャムシールを右手で逆手に持ち替え、素早く踏み込んだ。刃が再び光に包まれる。下段から始まる範囲技のソードスキル、『デスクリープ』だ。

 

「おもしれえ!掛かって来い!」

 

ダンテはクスクス笑いながらバージルが近付くのを待ち、ソードスキル『シャープネイル』発動の準備に入った。それを見てフッとバージルハほくそ笑みを零したが、直ぐに消えた。理由はただ一つ。

 

構えに入ってはいてもスキルの立ち上がる事を示すライトエフェクトが見えないからだ。だがソードスキルでシステムに身を委ねてしまった以上、もう己の動きを律する事は出来ない。『デスクリープ』の射程距離を測って僅かに足を引いたダンテの鼻先を刃が掠めた。

「でもその前に、さっきの左腕のお礼もしときたいしなあ!」

 

技後硬直によって動きを封じられたバージルは右手を強かに蹴られて握った剣をどこかへ飛ばされてしまった。ダンテは更に追い打ち、『バーチカル』の一撃で右手を切り落とそうと振り下ろしたが既の所で硬直が切れ、バージルは薬指と小指、そして手の一部を失うだけに留まった。

 

ダンテはそれを見て悔しそうに舌打ちをした。

 

「おら、取りにいけよ。別に逃げたりも後ろから不意打ちもしない。」

 

その証拠にと、ダンテは二つのアニールブレードをストレージに戻し、座り込んで待った。

「その必要は無い。」

 

再びシャムシールがバージルの手に現れた。

 

「何本持ってやがるんだ、てめえはよお!」

 

苛立ち紛れに叫びながら再び刃を交える。

 

「データのバックアップと同じだ。イーグル9程の企業にどうやって入り込んだかは知らないが、それを扱う仕事をしている者としては常識だろう?」

 

「何でてめえがそれを知ってる?」

 

初めてダンテの表情に動揺が走った。今まで音信不通だった相手だ、当然ながら今自分がどんな仕事をしているかも知らない筈なのに彼はぴたりと言い当てた。

 

「警察庁生活安全部サイバー犯罪対策課情報係長、及び高度情報技術犯罪捜査第三班班長。最上蒼助、階級は警部だ。こう言うポストに就いていればデータベースにある情報など容易く手に入る。記録に記されてはいないがお前もケチな前科持ちの小悪党だからな。」

 

「ハッ!真面目だとは思ったが、お前も案外間抜けなんだなあ!」

 

内心は驚きながらもダンテは挑発を続けた。

 

「何でワザワザ死に急ぐ様な仕事してやがるんだ?親父が死んだのは組織犯罪対策なんて部署にいたからだぜ?事ある毎にヤクザと寝首の搔きあう毎日を過ごしてたからだ!俺らには警察官には絶対なるなっつってたのになあ。この親不孝者が!」

 

「その親を二人も死に追いやっておいて・・・・どの口がほざく!?」

 

後ろを向いた状態で振り下ろされるシャムシールを弓なりに背中を反らして受け止め、捻りながら再び『レイジスパイク』でバージルの腹を狙う。思わずそれをシャムシールの腹で受け止めた。だが直ぐにそれが悪手だと悟る。

 

「折れるぜ、ソイツは?」

 

先程ソードスキルを発動したアニールブレードから手を離し、もう一方のアニールブレードで同じ様に『レイジスパイク』で切っ先を同じ箇所に叩き込んだ。狙い通り、シャムシールの腹に亀裂が走り、刀身は半分程を残して砕け散った。

 

「ほらぁ、だから言ったろ?」

 

両手から武器が離れ、バージルの顔に捻りを利かせた鋭いコークスクリューパンチを丁度顎の番いに叩き込んだ。アインクラッドに閉じ込められるまではキックボクシングのジムに通っており、威力も折り紙付きだ。現実世界ならば間違い無く意識を刈り取れる。

 

「お前には・・・・お前にだけは特に負けたくねえからなあ・・・・キッチリ勝たせてもらったぜ。」

 

恐らく今までで一番激しく、長いデュエルだった。所要時間は四十五分、勝者は僅差でダンテだった。アニールブレードと最初に蹴り飛ばしたシャムシールを拾ってストレージにしまい込む。

 

「ヒヤヒヤしたが久々にスカッと楽しめたぜ。コイツは餞別と言うか、戦利品として貰ってくぜ。俺を殺したきゃ殺せ。むしろお前に殺されるなら文句は無い。逃げも隠れもしねえよ。だが、生憎と俺もタダでやれる命は持ち合わせていねえからな。欲しけりゃ、それ相応の代償は覚悟しておけよ。じゃあな、またどっかで会おうぜ糞兄貴。」

 

ポーションの瓶を二本空け、ダンテは大の字に倒れたままのバージルを残して迷宮区から去った。

 

畜生。まただ。また負けてしまった。昔からもそうだった。自分が勝てる時があれば、負ける時もあるが、二人は性格や好み以外に決定的な差があった。

 

ダンテは元よりメカニックや戦士として天性の才能を持っていた。一を聞いて十を知り、その十を独自に研究して百へと昇華させられる。

 

それに対して自分は一つずつ、堅実に成功を幾重にも積み重ねて初めて追い付ける、言うなれば努力の天才だ。自分が出来るのは精々階段を一段一段素早く駆け上がる事。稀に二段飛ばしたりも出来るが、精々その程度だ。

 

だが、ダンテはそのペースをほぼ自在に切り替えられる。

 

何故だ?何故、俺は勝てない?

 

怒り、屈辱、そして当惑が心の中で入り乱れ、バージルは立ち上がって獣と聞き違う様な喉が張り裂ける程の凄まじい咆哮を上げた。

 

「お前が大人しく首を差し出す様な弱者でない事など、とうに知っている。良いだろう。ならば幾らでもその代償を払ってやろうじゃないか。たとえ刺し違えてでも、二人の死を命で償ってもらう。」

 

折れたシャムシールを投げ捨て、バージルは迷宮区の奥へと足を踏み入れた。

 

「殺す・・・・必ず・・・・殺す・・・・絶対に!」

 

その為なら、どんな準備も惜しまない。待つ必要があるなら幾らでも待とう。この手で彼の首を胴体から切り離す事が出来るのならば。

 

 

 

 

 

ダンテは耐久値を大幅に削られた武器のメンテナンスをNPCの店で終わらせ、宿に戻った。既にかなりの時間が経過している。他の三人も既に起きているだろう。

 

これは怒られるだろうなと思いながらもダンテは宿のドアを開けて使っていた部屋に戻った。そして案の定、キリト、アスナ、アルゴの三人がそこで待っており、アスナはダンテを呪い殺してやるとばかりに睨んでいた。彼女の隣には目を泣き腫らしたアルゴがおり、キリトは二人を横目でチラチラ見て冷や汗をかきながら居心地悪そうにしきりに身を揺する。

 

「よう。起きたかお前ら。」

 

「どこ行ってたんですか?!マップでも追跡出来ないしメッセージの返事も返さないし!アルゴさんがどれだけ心配したか!」

 

悪びれた様子が全く無いダンテを見て、アスナは遂に堪忍袋の緒が切れて彼に殴り掛かろうとした。

 

「アスナ、やめろって!確かにその通りだけど、殴った所で何も解決しない!」

 

すかさずキリトが彼女を羽交い締めにしてそれを阻止する。

 

「その事については謝る。散歩に行っていたら、予期せぬ事が起こってな。その対処に時間が掛かったんだ。プライベートな事だから、悪いが詳しい事は何も言えないし言わない。」

 

「信じられない・・・・!それだけで片付けるつもりですか!?」

 

「違う。話す意味が無いし、話した所でお前らには到底理解出来ないからこう言っている。それに、ここじゃリアルの話はしないってのが暗黙の了解だぞ。パーティーメンバーだからと言って何でもかんでも話す必要は無いだろう?」

 

誰だって触れられたくない話題の一つや二つはある。アインクラッドの中では友好な関係を築き上げていたとしても、それはその場で限定される友好関係だ。一度現実世界に戻れば赤の他人に逆戻りなのだから。

 

そしてアルゴに向き直ると、ダンテ深々と頭を下げた。

 

「アルゴ、独りぼっちにした事は謝る。メッセージの一つも送れば済んだのにな。本当にすまない。」

 

話せる筈が無い。名実共に親の敵の様に命を狙われているなどと。それも血を分けた実の兄に。

 

「ったく・・・・・散々馬鹿やって来た報いが今更になって回って来るとか・・・・お前の仕業かよ、親父?いや、お袋か?」

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