ソードアート・オンライン~The Devil May Cry (リメイク) 作:i-pod男
前回の予告とは少し内容が若干、と言うかかなり違ってしまいましたが・・・・・
まあどうぞ(汗)
デスゲーム開始宣告の2022年11月6日から数ヶ月の時が過ぎ、2023年3月12日に『攻略組』と呼ばれるトッププレイヤー達は遂にクォーターポイントの第二十五層『ビエーテル』へと到達した。今も着々と迷宮区の攻略とマッピング作業が行われている。アルゴと風魔忍軍の共同作業でアルゴが単独で動くのに比べると遥か上を行く情報の拡散スピードでビギナーとテスター、どちらの死亡もかなり減った。
ギルド結成を可能とするクエストの受注を境に、アルゴ、キリト、アスナ、そしてダンテはギルド設立に踏み切った。ギルド設立までこぎ着けたまでは良かったが、三人は彼をギルドマスターにと何度も進めると彼は良い顔はしなかった。
「ダンテ、頼むよ。あんたはこのSAO中で一番レベルが高いプレイヤーだ。アルゴと同じで情報ネットワークの立役者でもある。そんな奴が前線に出ないでどうするんだ?」
「私もそう思います。ダンテさんこそがギルドマスターになるべきです。 何でそこまで嫌がるんですか?」
「Noと言うのに理由が必要か?」
彼らは断る当人を今まで再三再四なんとか説き伏せようとしたが、何度聞いてもダンテは首を横に振り続けた。
「普通なら無いと言いたい所ですけど、これは別です。納得がいく理由が無いと、はいそうですかとは言えません。」
「ガラじゃ無いんだよ。リアルでも俺は八割方ワンマンだ。まあ、言っても俺達は小数ギルドだからそこまで動き難いって事は無いから、気は幾らか楽だが。前にも言ったが、リ—ダーなんて存在はこんな小数じゃ邪魔になるだけだ。それに俺は人を率いるなんて器用な真似は出来ない。救える人間を全て救おうとする様な行動力もそうだが、慈愛の心なんて生憎持ち合わせていない。」
だが依然としてアスナは得心が行った様子は見せなかった。こうなれば仕方無い。ここで話さなければしつこくギルドマスターの座を進めて来るだろう。話せばきっぱりと諦めてくれるかもしれない。
「これでも納得出来なければ、確たる理由を教えてやろう。」
「ダンテ・・・・・」
「良いんだ。」
キリトは彼が打ち明けようとしている事に気付いたが、ダンテが彼を手で制し、意を決した。
「その内話す事になるとは思ってたし、今言わなきゃ何時言うんだよ?ギルド設立はビジネスと同じ、相手との信頼が第一だ。お互いの事をある程度知っておかなきゃギルドなんて作れてもすぐ消滅しちまう。」
ダンテは一度深呼吸をすると、再び口を開いた。
「随分前のおさらいになると思うが、リアルでの俺の名は最上紅一。元警察官僚が立ち上げたサイバーセキュリティー会社『イーグル9』の日本支部開発研究部部長だ。そして、元札付きの犯罪者。傷害罪数件、無免許運転一件、未成年飲酒、未成年喫煙、電波法違反二件、ハッキング三件。特にハッキングは良くやっていた。今はもうやってないがな。昔の俺は結構な不良でよお。俺が生まれてから六年後にお袋が死んだから、どっかおかしくなっちまったんだろうな。親父は組織犯罪対策にいる優秀な刑事だったってのに。笑っちまうよな?」
神妙にダンテの言葉に耳を傾ける三人は何も言わなかった。
「そっからだ、俺が色々と問題を起こし始めたのは。当然バレない様にはしていたよ。でも、十年後にとうとうやらかしちまった。高校の時に只のチンピラだと思ってちょっかい出した奴が元はマジモンのヤクザでさ。銃を引っ張り出した所を親父が俺を庇って撃ち殺された。背中に七発、ほぼ即死だったよ。で、放心してたソイツを俺は殺した。鼻も歯もあばらも折って、頭をカチ割って、最後は喉を思いっきり踏み潰した。気管を潰されて陸に上がった魚みたいに死んだよ。」
話している内にその光景が脳裏に蘇って来た。自分以外の血に染まった手は、生温い生乾きの血でべたべたとして気持ち悪かった。握り込み過ぎた掌は爪が食い込んで血だらけで、拳の頭は皮が剥けてそこからも血が出ている。加えて、何かが手の甲に刺さっていた。殴った相手の歯の欠片だ。
「一時的な精神的疾患でお咎め無しだったが、暫くは施設に缶詰されて、自由にされてからは殆ど一人で生きて行った。で、イーグル9がインターンと言うか、そう言うプログラムをやっていて俺はそれに参加した。武力に頼るのも良いが、こんなフレーズあるだろ?ペンは剣よりも強しって。今は情報は兵器より強しと改めるべきだが。まあ、俺の生い立ちはこんな所。」
「そんな・・・・」
「本当の事だ。」
そんな馬鹿な、とアスナが口を開きかけたが、キリトがそれを遮った。
「ダンテの親父さんは、警視庁の組織犯罪対策にいた優秀な刑事だったそうだ。」
「何でキリト君がそんな事知ってるの?」
「この事を最初に話した相手が俺だからだ。ダンテのプライバシーに深く拘る事だから今まで俺も話さなかった。」
ダンテは天を仰いで溜め息をついた。こんな時こそ煙草を一服吸いたいと思う。この事を話すのはこれで四度目だ。最初はトリッシュ、次はレディー、三度目はキリト、四度目は皆に。もしかしたら自分は亡くなった母が与えられなかった二十年分の欠落した愛情を埋めようとしていたのかもしれない。そう思いながら立ち上がって乱暴に頭を掻いた。
「そんな訳で、本来俺は大手を振りながら表立って歩ける様な人間じゃないって事だ。アルゴに話さなかったのも、まあ分かるだろ?間接的に、そして当時は少年法に守られていたとは言え、俺の存在その物が三人の人間の命を奪った事に変わりは無い。犯罪者と好き好んで関わりたがる奴なんかいねえだろ?」
唯一自分の過去を知る者・・・・実の兄、バージルが自分を孤立させ、その手で殺す為にこの事実を散撒く可能性がある。そうなればキリト達も只では済まない。アルゴも、所詮は犯罪者を庇う自己中心的なベータテスターと蔑まれる。攻略も長引けば死ぬまでこの仮想空間を脱出する事無く死に絶えてしまう。それだけは何があろうと絶対に避けなければならない。二人は表の大物、自分は裏の大物として徹すれば被害の拡大は抑えられる。
「故にキリトをギルマスに、アスナをその補佐に推薦する。コンビネーションもばっちりだしな。話はこれで終わりだ。もしそれでも俺をギルマスにしたいなら・・・・・・もう分かるよな。」
ダンテの瞳は恐ろしく冷たかった。思わず一歩下がりそうになったが、アスナとキリトも肩を並べ、負けじと睨み返した。
「俺にデュエルで勝たなきゃならない。二人共だ。もし二人が半撃決着デュエルで俺に勝てば、ギルマスをやる。文句は言わない。だが、二人の内一人でも負ければ諦めろ。このオファーは今回限り。交渉の余地も無い。」
「半撃決着なんて・・・・・加減を間違えたら死んじゃうじゃないですか!」
「それがどうした?今まで散々命を賭けてモンスターと戦って攻略を続けて来たんだろ?今更何をビビッてやがる。デュエルも飽きる程やった。俺をモンスターと・・・・悪魔だと思って戦えば良い。」
実際、自分はそうだと認識していた。自分は、人の皮を被った化け物だ。疫病神だ。悪魔だ。今でも三人の人間の命を奪ったと言う事実に苛まれ続けている。三人の死を境に、人に対する共感能力や良心の呵責と言った物を少しずつ削られて行く感じだ。今の自分には、最早魂と呼べる物は存在しないのかもしれない。
「デュエルをする気になったら言ってくれ。俺は部屋にいるから。」
使っている部屋に戻り、壁を背にすると、ずるずると崩れ落ちた。両手で顔を覆い、目尻から熱い涙が幾筋も零れる。
まただ。またやってしまった。過去の事を掘り返したり掘り返されたりすると何時も自分の古傷を舐める為に人を避ける。母がこの世を去った時は泣き、その日を境に弱さを嫌った。泣かないで済む位に強くなると決めた。その強さの証明の為に非行に走った。それが過ちだったと気付かされたのは、再び命が贄となってからだ。学ぶまでに同じ過ちを二度も犯してしまい、その授業料は両親の命。
「結局俺は、あの頃から何一つ変わっていない変わってねえじゃんかよ・・・・」
そんな自分に対する情け無さが我ながら滑稽で、ダンテは笑い始めた。笑いながら涙が零れ始めた。母に先立たれ、父を死なせ、父を殺した男を手にかけ、兄に二人の死を恨まれる。もしこれがシェイクスピアの悲劇ならばさぞ好評だった事だろう。
「結局俺もこの様か。」
蝶番が軋む音と共にドアが開いた。アルゴだ。彼女が知っている何時ものダンテからは想像もつかないその姿に、一瞬言葉に詰まってしまう。だが、言った所で意味は無いと思い直し、ダンテの頭を胸に強くかき抱いてゆっくりと撫でた。
「おい・・・・?」
「紅一は、悪魔なんかじゃないヨ。ホントの悪魔ハ、涙なんか流さないだロ?顔も見ないし誰にも言わないから今位は泣いて頼ってくレ。ずっと辛かったのに全然気付かなくて、ごめんナ。」
アルゴも泣く一歩手前だ。声で分かる。泣いている所を見られたのが恥ずかしいやら情け無いやらで更に涙が溢れて来た。
「良いんだよ。俺は隠すのが上手いだけだし。遊里、こんなんじゃ駄目だな俺。何時もの自分じゃねえわ。全然かっこ良くねえ・・・・最悪だ。」
そしてダンテは泣いた。声を押し殺しはしたが、これまでに無い位に涙を流した。アルゴも共に泣いた。ダンテが流した涙が悲しみによる物か、はたまた枯れたと思っていた涙をまだ流せると気付いた歓喜による物かは、二人だけの秘密となった。
ひとしきり泣いてスッキリしたのか、ダンテは何時もの自分に戻った。そしてアルゴを更に抱き寄せて膝の上に座らせると、チョンチョンと幾度も彼女の唇を啄む。まるで甘い砂糖菓子を口の中で転がす様な舌使いにアルゴも逆らうと言う選択肢を早々に放棄した。寧ろ少しでも長く甘美なキスを味わえる様にと更に体を密着させて来る。
「ありがと、遊里。元気出た。」
立ち上がりながらも器用に壁を使ってバランスを取り、アルゴを抱き上げながらキスを続ける。酸欠にしてしまおうと言う位長く唇を合わせ続けた。
「ダンテさん、キリト君と決めました!やっぱりギルドのトップはダンテさんがなるべきです。こうなったらデュエルに勝って嫌でもギルドマスターをやって貰い、ま・・・す・・・・・え?」
意気込み十分でダンテに挑戦状を叩き付けようと思い切りドアを開けたアスナの語気はあっと言う間に尻窄みになって行った。と言うのも、アルゴが小さく色っぽい声を上げながらダンテに抱きつき、ダンテもまた若干服がはだけているのだ。そして二人の唇に掛かるのは極細の糸。
「な、なななになない・・・・え、ええええ!?」
一瞬脳味噌がフリーズしたのか言葉にすらならない頓狂な声を上げた。
「おお、よう、アスナか。デュエルの事だが、十分・・・・いや、五分待ってくれ。アルゴを一旦トばしてから相手してやるからさ。」
そしてダンテの言葉通り、五分後に彼はアスナとキリトの二人と向かい合って立った。
「さて、どっちが先に行く?二人同時にってのもアリだが、生憎とシステムじゃそれが出来ない様になっているんでな。」
「わたしがやります。」
「アスナ、気をつけろ。あいつの強さはホントにヤバいぞ。」
「知ってる。」
いや、彼女は知らない。見ただけでは何も分からない。モンスターは所詮プログラムされた攻撃パターンに沿って動いているだけだ。それを分析し、最小限の負担で最大限の効率を叩き出すならキリトにも出来る。
問題は対人戦、デュエルの時にそれを応用すると言う事だ。人間の脳はコンピューターの様だと良く言われているが、ダンテの脳味噌は間違い無くスーパーコンピューターと呼んでも遜色無い。初撃決着だろうと半撃決着だろうとダンテは常に先の先まで計算して予想の斜め上を行く戦法で勝利を掴み取る。キリトが最初に戦った時に一番恐ろしかったのは、その表情だ。まるで心の奥底を除かれる様な錯覚に陥る目と、戦いを楽しんでいる事をアピールする為に喜怒哀楽を絶やさない。
「お、トップバッターはアスナか。準備は良いな?」
「だ、大丈夫です!」
先程図らずも目撃したラブシーンがまだ鮮明に焼き付いているのか、まだ顔が赤い。クスクスと笑いながらデュエルの申請を彼女に出した。それを彼女が承諾した所で六十秒のカウントダウンが始まる。
まず間違い無く勝てると、ダンテは既に確信した。レイピア型の武器は短剣の次に攻撃間隔が短い上リーチがある。だが耐久値は曲刀よりも低い上、ソードスキルも刺突系の技が主体なので直線的な攻撃となる。読み易い。
「ここは、コイツで行くか。」
取り出したのは『クロム・シリーズ』の曲刀カテゴリーに属する『紅蓮』と言う名を持ち、中国の
「さてと・・・・もうそろそろだな。」
カウントが十秒を切り、先手必勝とばかりにアスナが飛び込んで来るかと思ったが、ダンテと自分の武器のリ—チの差を見て思い止まった。
「賢明な判断だ。だが、いつまでもその距離にいたんじゃ勝てないぞ?」
だが答えの代わりにアスナの手からピックが三本投げ放たれた。目標は、ダンテがいつも狙う顔だった。
「アルゴから学んだか。感心、感心。」
紅蓮の腹で飛んで来るピックを弾いた。そして視界が覆われた所で二段突きのソードスキル『パラレル・スティング』で機動力を削ぐ為に右足を狙う。だが切っ先がダンテの膝頭に近付いた瞬間、アスナのレイピアは目標を失い、空を切った。左足を軸に時計回りに回転し、回避したのだ。
「残念。ピックを顔の前で受け止めさせて視界を防ぐってのはいい判断だが、ライトエフェクトを纏ったレイピアが曲刀の腹に映ってるんだよね〜。表面がピッカピカだもん。」
そしてその回転の勢いを利用し、通り過ぎようとしているアスナに後ろ回し蹴りを後頭部目掛けて繰り出した。当たりはしたが体勢を崩すには至らなかったらしく、HPも数ドットしか減少していない。
「惜しい・・・・当たりそうだったのになあ。ほら、まだ始まったばっかだよ?」
余裕たっぷりの笑みを浮かべながら、ダンテはクイクイと指先を手前に曲げて手招きした。アスナの顔付きが僅かだが険しくなり、得意の『リニアー』の連続突きを繰り出した。
「おおっととと、うぉお〜あぶねっ!ほっ、はっ、っと、ぬぅおぉう?!」
わざとらしく危機一髪避けた様な声を上げるが、実際はどの突きも掠りさえしなかった。最後に突きを放った瞬間、ダンテはアスナの右腕に自分の右腕を絡ませ、蛇の様に巻き付けて腕を固定した。
「ランダムにリニアーを使っているつもりでも、実際はパターンがある。アシスト無しでもそうだ。これでも確率計算は得意でね。」
固めを緩めるとそのままアスナの背中を押してつんのめらせると、再び構えを取った。
「・・・・やっぱり強い・・・・」
パーティーを組んでから、四人はレベル上げに取り組んでいた。難易度が上方修正されたデスゲームと化した以上はアインクラッドに於ける安全マージンを過信するのは危険だ。現在ダンテのレベルは42、アルゴ、キリト、そしてアスナは39と、大体同じだ。だがこのたった一つの差でも途轍も無く大きい。
あのやり取りで、アスナはそれを実感した。ダンテの過去から現実世界で潜り抜けた修羅場の数は両手では足りないだろう。それだけ戦闘と言う行動に馴れているのだ。レベリングに必要な『経験値』もそうだが、彼は本物の『経験』がある。
気を取り直して再びアスナはレイピアを突き出して来た。今度はソードスキルやシステムによる補助を使わず純粋な剣技で挑もうと考える。動きを頭の中で考え、刺突の中にも斬る動きを織り交ぜた。だが、まるでダンスでも踊るかの如く体をくねらせて全て回避した。最後に放った苦し紛れの下段突き『オブリーク』さえも不発に終わる。
「はい、貰った。」
紅蓮を振り上げ、ソードスキルの軌道をズラしながら柄を握った右手を順手から逆手に持ち替えてアスナの腕を体と右腕の間に挟み込んで手前に引いた。これでもうレイピアでの攻撃は出来ない。そしてノーガードとなった頭を鋭い頭突きで仰け反らせ、その拍子に突き出た腹を柄の後端で強かに殴り付けた。そして追い打ちに突進技のソードスキル『リーパー』で左肩から右脇にかけて切り裂く。
「はい、俺の勝ち。いや〜、速い速い。またレベリングしなきゃそろそろ俺が負けちまうな。」
倒れて行くアスナの背中に手を持って行き、上体を起こさせた。
「もう〜〜〜〜〜何なのよこれ!全然当たらないじゃない!」
「だからあいつの強さはホントにヤバいって言ったのに・・・・・」
キリトはやれやれと手を頭にやる。
「当たらない様に避けてんだから当たり前だろうが。それとも、戦っている最中に何らかの邪念があったのか、んん?」
ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながらアスナの顔を覗き込むが、腕を振り解かれて乱暴に押し返された。何か言いたくても言えず、こめかみをピクピクさせながらダンテを睨み付ける。
「さて、One down、one to go。次はお前だ、キリト。掛かって来い。」
「臨む所だ。負けっぱなしってのは性に合わないんでね。」
黒い片手剣『サイレント・シュラウド』を背中から抜き、デュエルの申請を受けた。薄笑いを浮かべながら武器を『ソリッド・ヴァーミリオン』に変更し、左手に持ち替える。キリトはそれを見て顔を顰めた。昔は剣道をやっていた経験があるが、道場にいた門下生でも左利きの者はいなかった。それ故にそう言った相手の動きを想定した練習をした事は無い。唯一左利きで剣を交えた相手はダンテだけだ。そしてそれにより今まで一度も勝てた試しが無い。だが、左利きの者にはその分リスクもある。構える時に左半身、つまり心臓がある側が前に出る。実戦では自殺行為に等しい。
「キリト、お前剣道やってたろ?」
ダンテがそう訪ねたのは、デュエルが始まる三秒前だ。
「え?」
キリトがそう聞き返すのと、ダンテが足元を狙ってチャクラムを投げつけたのはほぼ同時だった。足首を僅かに掠ったが飛び上がってチャクラムをギリギリ交わした。しかし、次の瞬間、目前にソリッド・ヴァーミリオンを大上段に振り上げたダンテが迫って来た。基本の縦に振り下ろすソードスキル、『バーチカル』である。
「このっ・・・・汚いぞ!」
チャクラムを回避する為に飛び上がってしまったお陰で回避などままならない。キリトも横一閃の『ホリゾンタル』で応戦した。
「
ライトエフェクトが火花の様に散り、力負けしたキリトは空中でバク転をしながら着地して体勢を立て直した。身構えたがダンテは追撃して来る様子は無い。何時もの様に余裕の笑みを浮かべている。
「キリト君、後ろ!」
アスナの叫び声で大きく横に飛ぶと先程自分の背中があった所をチャクラムが通過した。そうだった。何故忘れていたんだ、とキリトは自分の迂闊さを呪った。チャクラムやブーメランなどの投擲武器はピックとは違い自動的に回収出来る武器だ。自分は殆ど使わない武器なのでその特性を利用した不意打ちに先程まで頭が回らなかった。あのまま迎え撃とうとすれば背中から攻撃されて怯んだ所を前からの攻撃で負けていた。
「おいアスナ。何やってんだよお前は?勝負に水差しやがって。」
飛んで来るチャクラムをキャッチし、興を削がれたと言わんばかりの表情をアスナに向ける。
「あ、あああああんなの見せた仕返しですっ!」
肩を怒らせるアスナは顔を真っ赤にして叫びながらそう返した。
「残念だったな。アスナが何も言わなければあのまま勝てたかもしれないのに。けど、何で分かったんだ?」
「剣を抜いて一度正眼に持って行きながら右半身を前に出す時、左足を後ろに引いただろ?その数秒前に両足が並行だった。中段構えの基本だ。俺も一応小学校から中一までやっててな。良く左構えを直せって親父に叱られたよ。さて、じゃあ張り切って・・・行ってみようか!」
突進技の『レイジスパイク』で切っ先同士が激突したが、キリトはダンテの突きを受け流し、力の流れをズラした。ダンテがやった様に一度剣を両手で持ち、逆手に持ち替えて接近した。懐に飛び込まれて碌に応戦出来ないダンテの腹目掛けて一撃を見舞おうとするが。チャクラムがそれを阻む。
「俺を真似たか。良い考えだが、俺が俺の動きを学習してないと思ったか?」
そしてキリトは背中に衝撃を感じた。下を見ると、背中からソリッド・ヴァーミリオンに貫かれている。そしてその刀身はダンテ自身をも穿っていた。だが先にダメージを受けたのはダンテではない為、システムはダンテを勝者と表示した。
「自分まで攻撃するなんて・・・・・」
「捨て身の攻撃なんざ幾らでもやって来た。さて、俺にお前ら二人が俺に勝てばギルマスをやると言った話だが、結果はご覧の通りだ。ギルマスはやらない・・・・と言いたい所だが気が変わった。俺で良ければ喜んで引き受けよう。ただし!あくまでギルド設立の為、形式上の話だ。俺達のギルド名は、これだ。」
オブジェクト化した紙切れに大文字で三つの言葉を大文字で書きなぐった。
DEVIL MAY CRY
「悪魔も泣き出す最強の小数プレイヤーの集まりだ。ギルドになる以上、名は売らなきゃな。手始めに二十五層の迷宮区を攻略して、ボスを見つけ次第血祭りに上げるぞ。」