ソードアート・オンライン~The Devil May Cry (リメイク) 作:i-pod男
それと、長らく登場させなかった鬼いちゃんをチョイ役で出しました。
PoHは体勢を低くして両側から迫る凶刃をかわし、大振りな肉切り包丁で斬り掛かった。構造上全く刺突は出来ないと言うデメリットが存在するが、短剣の攻撃スピードはそのままに耐久値やソードスキルの威力は片手剣並みに重い。
「キリトは髑髏仮面をやれ!アスナはそのカカシだ!強ぇし毒と麻痺も仕込んでる筈だから油断すんなよ!仮想空間とは言え俺と同じで人ぶっ殺してなんぼの奴らだからな!」
耐久値の減少を出来るだけ均等に分散させる為にアグニとルドラを交差させて肉切り包丁を受け止めた。
「こいつは魔剣クラスの化け物みたいな武器だな。」
鍔迫り合いで火花が散り、二人は顔を見合わせた。もっとも、PoHの顔はフードで隠れている所為で口元しか見えないが。だが馬力で拮抗していると言う事はそれだけレベルとステータスの高さも伺える。
「
アグニとルドラの刀身が光に包まれ、ダンテは回転した。発動したソードスキルは『トレブル・サイズ』と言う独楽の様に回転して斬撃を繰り出す範囲技だ。だがアグニとルドラの二刀流で手数は倍になった。そしてダンテの長い腕でリ—チもある。PoHは最初の三撃を防ぎ切り、残り半分は下がって回避した。
「ああ、イカしてるな。ここにいるって事はまだ警察にも捕まってないって事だから、総統腕が立つんだろうな。恐れ入るよ。所でお前、現実世界でも色々やってるっぽいから聞くんだが、どっちなんだ?ハッカー?それともクラッカー?」
ダンテは若干だがPoHに親近感を抱いた。自分の様な異端の存在がこの世界に存在した事が分かって少なからず歓喜を覚えずにはいられなかった。カーディナルシステムの抜け道を瞬時に見つけ出し、それを利用したPKをソードアートオンラインで考案し、更に秘密裏に実行する。高い知能は勿論の事、ウィザード級の知識と専門的な技術、そして何より人を傷つけ、殺す事に対する躊躇いの無さと強靭な精神力を持ち合わせていなければまず不可能だ。そんな化け物じみた男がもう一人。
「No need for you to know (お前が知る必要は無い)」
だがPoHはダンテの質問に対して意地悪そうににやにやしながら解答を断った。
「Come on, be a good sport(何だよ、ケチケチすんなって)!」
ダンテは巨大な高枝切り鋏の様に交差させたアグニとルドラでメイトチョッパーを押し上げ、ノーガードとなったPoHに体術スキルの基本である回し蹴り『旋天』を繰り出した。メイトチョッパーは先程押し上げた右手に持っている上、左手は底まで届かない。オレンジ色に光る左足が彼の腹を的確に捉え、Pohは宙を舞った。その隙にメニューを開いて武器を変更し、飛んで来たピックを弾く。
「二十七層のボス攻略でようやく使える様になったぜ。」
光と共に現れた剣は両手剣と見紛う程長く、刃の幅が広く、刀身も肉厚だった。刃の付け根には大きな頭蓋骨、ハンドガードも骨の形をしている。魔剣『リベリオン』だ。
「Ready for round two(第二ラウンドの準備は良いか)?」
昔持ち上げる事にすら苦戦していたのが嘘の様に身の丈程もあるその巨大な剣を振り回した。
「Whenever you are(いつでも良いぜ)!」
だがPoHは恐れるどころか狂った笑みを浮かべてメイトチョッパーを振り翳して来た。
「良いね、良いね。今まで戦って来た
「Now that is something which you have no need to know. Answer me first and maybe I’ll answer(それこそお前が知る必要の無い事だ。先に俺の質問に答えろ、そしたら答えてやらんでもない)」
リベリオンの縦一閃、バーチカルとメイトチョッパーの横二連撃の『サイドバイト』がぶつかった。
「つれないねえ。まあ、良いさ。気が変わるのを気長に待つさ。言った様に今回は挨拶代わりに来たんだしな。ジョニー、ザザ、引き上げるぞ。」
ダンテの筋力値を利用して後ろに飛んだPoHはアイテムポーチから銀の台座に嵌った青い直方体の結晶を取り出した。迷宮区やフィールドのどこででも使え、瞬時にどこへでも移動出来るアイテム、転移結晶である。
「You are’t going anywhere until I’ve shown you Hell(地獄を味わわせるまで逃がさねえぞ)!」
ピックに続いてナイフをシステムアシスト無しで投げつけ、更にその後に続いて走りながら『レイジスパイク』の構えを取った。
「You know nothing of hell(地獄を知った気でいるな)。まあ、 来たくなったらいつでも言えよ?俺達
ジョニーとザザも撤退してPoHと共に口元を隠して行き先を唱えると、転移結晶で青白い光に包まれて姿を消した。投げつけた武器とレイジスパイクも虚空を貫くだけで終わってしまう。
「PoHね・・・・・おもしれえ。全身全霊で相手してやんぜ。」
今更になってからシステムの穴はもう埋められないが、どうにかするしか無い。いざとなれば切り札を使う事になるだろう。カーディナルシステムを設計している時に偶然目にした、ユニークスキルとタイトルされたデータを見て作る事を思い付いた切り札だ。茅場秋彦が直々に正式サービス開始前にデータをチェックし直して切り札を削除した可能性は充分あるが、既にシステムに穴がある為、見落とされている可能性はゼロではない。
茅場は誰もが、勿論ダンテも天才と認める男である。だが茅場に劣るとしても、ダンテも二十代で海外に支社を持つ有名企業の幹部に登り詰め、その前は犯罪で生計の一部を立てて逃げ果せている切れ者だ。自分の能力だってそうそう捨てた物では無い。コンピューターネットワークや仮想空間の方が本領を発揮出来るホームグラウンドだし、そう簡単にプログラムを見つかる様に仕込む程間抜けではない。なにせ自分が考えられる最高、最上級のプロテクトと偽装を十重二十重に張り巡らせ、更にそのプロテクトの穴を塞げる限り塞いであるのだから。
「キリト、アスナ、まだ生きてるよな?」
「なんとか大丈夫だ。」
「私も、です・・・・」
二人は息も絶え絶えにそう返した。やはり感情を持たないモンスターと違い、人間が相手になると精神的な苦痛や負担は甚大になるのだろう。そして当然迷いも生じた筈だ。調子に乗って攻撃を当て続ければ死んでしまうし、アインクラッドの死は現実世界での死に繋がる。増してやアスナとキリトはまだ年端も行かない子供だ。もし誤って彼らを殺してしまったらどうなるか分かった物ではない。
「そうか。で、どうだった?本物の人殺しを相手に刃を交えて殺し合う気分は?中々精神的にクる物があるだろ。」
くるくると手首の回転を利用してリベリオンを回し、背中に当てた。するとどう言う訳か、収める為のホルダーも金具も何も無いのにリベリオンはまるで自分はダンテの物だと主張する様に背中に張り付いた。
「まあ、何にせよ、これで強化詐欺、PK、そしてPK教唆を行って来た奴の首謀者が判明した。ジョニー・ブラック、ザザ、そしてPoH・・・・前途多難だな。それで、どうだった、戦ってみて?」
「ダンテさんの忠告通り、あのずた袋・・・・ジョニー・ブラックの麻痺毒、凄い効き目でした。掠っただけでももう麻痺が回って来るなんて。結晶アイテムが無かったら間違い無く・・・・こ、殺されてました。」
声が震え始め、アスナの目から涙が零れた。今になって緊張の糸が切れ、レイピアを取り落として顔を覆った。やはりずっと恐怖を押さえ込んで死に物狂いで戦っていたのだろう。手近にいたキリトに抱きついて泣き始めた。どうすれば良いか分からず、キリトはオロオロしながら不器用に彼女の頭を撫でたり背中を摩り始める。
「ザザもダンテ程じゃないが腕は立つ。それに中層プレイヤーじゃあんなのが相手だったら歯が立たない。人が相手になる事を想定していないし。」
「攻略組の下級プレイヤーもな。隙を突かれたらもう終わりだ。麻痺毒で動けなくなったら後はやりたい放題だぜ。ルーフィーズと同じだ。」
聞き慣れない単語にキリトは首を傾げた。
「若い奴ら相手に使われる手さ。酒や飲み物に違法ドラッグを仕込んで意識を失わせる。効き目も結構早く出るし、持続時間も長い。昏倒している間は何をされるか分かったもんじゃ無い。俺も危うくやられそうになったよ。アスナの事、頼めるか?」
「・・・・努力するよ。」
相変わらずアスナにスピード重視のプレイヤーとは思えない程の腕力で抱きつかれているキリトは苦笑しながらそう答えた。
「そこはちゃんとイエスで答えろよ。男だろ?レディーはちゃんとエスコートしてやれ。」
ダンテはメッセージ作成画面を開いてエギルとアルゴに搔い摘んだ現状と援軍を寄越す様に一報した。二人掛かりとは言え誰かを庇って移動しながら戦うのは存外難しい。加えてモンスターはプレイヤーと違い時間と共に無限に湧いて来る。精神的に消耗するのは時間の問題だ。
「問題は山積みだな。」
「まあ、何とかなるさ。」
しばらくしてからエギルとアルゴが援軍を引き連れて現れた。その援軍は長らく姿を見せなかったクラインと彼が率いるギルド『風林火山』のメンバーだった。武田信玄の軍旗に記された言葉をそのままギルドの名前に使っているのに倣い、彼らは全員戦国時代の鎧甲冑で身を固めている。武具も大多数が朱塗りの赤備えとなっており、武勇に秀でた武士の集まりに見えて来た。
「お、おおっ!?キリトじゃねえか!久し振りだなあ、おい!いやー良かったぜ、お前、てっきりソロで行くつもりかと思ってたから心配してたんだが気の所為だったか。良かった良かった。」
クラインがばしばしとキリトの背中を叩いて豪快に笑った。
「久し振り。ギルドは順調か?」
「おうよ!俺らのモットーは『死傷者ゼロ』だからな。」
「クライン、俺がこんな優秀な人材をソロプレイさせると思ってるのか?隙あらば懐柔するってのが俺のやり口だって知ってるだろ。遊ばせておくなんて勿体無さ過ぎる。しかし、ギルドの頭やってるとはお前も結構出世したな。その調子で女の一人でも探せば、一国の主も同然だぞ。」
「そう簡単に言わないで下さいよ、ダンテさん。」
クラインと風林火山のメンバーはアスナと腰が抜けた彼女に肩を貸すキリトを囲んで今までの経緯やどうやってアスナと知り合ったかなどの会話を弾ませた。エギルもその中に加わり、忽ち賑やかな道中となった。アルゴはダンテと殿を志願してその後ろを歩く。
「ん〜〜〜、久々ダ〜〜〜♪」
腕を組んで頬擦りをするアルゴは長らく家出をしたペットがやっと戻って来たかの様だった。ダンテもフードの下に手を入れて彼女の頭を撫でている。
「うん、やっぱアルゴがいると落ち着くな。エギルの方はどうだった?」
「順調だヨ。中層プレイヤーにもある程度は物資が行き届いているけド、やっぱりエギル一人だけじゃかなり無理があル。一応風魔忍軍にも他の職人系プレイヤーに強力を呼び掛けるビラとPKプレイヤーご注意のビラを撒いたが、これでどうなるかナ・・・・?」
「さあ、どうなるだろうな?お前が生きててくれれば、俺はそれで良い。」
ダンテはアルゴの肩を抱いて抱き寄せた。心の支えとなっている彼女を利用されたり、失う訳にはいかない。特に、ラフィン・コフィンの様な物騒で得体の知れないプレイヤーの集まりの存在を本当の意味で知った今では。
撤退したラフィン・コフィンの三人はとある階層の迷宮区にある安全地帯に転移していた。既にHPや武装の耐久値も回復してある。
「ヘッド、どうすんの?あいつのステータス、マジでヤバいよ?ヘッドが押される所なんて俺初めて見たぜ。」
膝を曲げて抱え込む様に座り込み、ジョニーはそう零した。
「対策を、練る、必要が、ある。」
「No problemだ。そうだろ?バージル。」
「俺があいつの行動パターンを教える代わりにお前達は俺に奴を差し出すと言う取り決めだ。その間に貴様らだろうと下の層にいる雑魚だろうと、何人がどう死のうが俺の知った事では無い。」
黒のインナーにスカイブルーのロングコート、そして後ろに撫で付けられた銀髪を持つ男、バージルがその安全地帯に足を踏み入れた。左手にはいつでも居合いを放つ事が出来る様に長尺の刀が握られている。
「だがどんな形であろうと俺の妨げになる様な事があれば、必ずお前達の頭を五寸刻みにする。それだけは忘れるな。」
眉一つ動かさず淡々とそう言い放った。血液が凍り付いてそのまま心臓を冷気が纏った手に握り潰される様な他者を圧倒する存在感に、ジョニーは思わず一歩後ずさり、ザザは喉の奥がカラカラになるのを感じて生唾を飲んだ。