ソードアート・オンライン~The Devil May Cry (リメイク) 作:i-pod男
2023年 12月24日、第49層ミュージェンでは、暗い夜をクリスマスの飾りと色取り取りの光が明るく照らし粉雪がその光を反射して煌めきながら静かに降り積もって行く。デスゲームの渦中にいると言う事実から一時でも解放されようと、広場の中心にある巨大なクリスマスツリーを中心に広がっている出店もプレイヤーで賑わい、ごった返していた。
「良いねえ。やっぱ俺は冬の夜が一番好きだ。空気は澄んでいて涼しいし、雪は綺麗だし、風が吹くとより一層気持ち良く感じられる。何か、一年の内にその気管で全てがリセットされて行く様な、そんな感じがするぜ。そう思わねえかキリト?」
トレードマークの赤いコート、そしてリベリオンを外して黒地に赤いラインが入ったフード付きの丈が長いパーカーを身に付けたダンテは中途半端に欠けたクッキーの様な月が浮かんだ夜空をを見上げてそう訪ねた。
「・・・・寒いのはあんまり好きじゃないな。」
襟に沿ってファーが付いたコートの襟を立てて顔を覆った。バーチャルの世界とは言え寒気は感じられる様になっている。グローブも指貫タイプの物なので指先もかじかんでいた
「おいおイ、隣に美女がいるのにそんな味気無い事言うなよキー坊。失礼だゾ?」
アルゴはキリトの無粋な物言いに顔を顰めた。彼女は久し振りにフードを外して現実世界で身につける様な普通の冬服を着ており、自身の腕をダンテの物に絡ませて歩いている。もっとも、投擲武器一揃えと短剣はすぐ手が届く所に忍ばせてあるが。
「ダンテさん、これからどこへ行くんですか?」
アスナもレイピアで武装してはいるが、普通の冬服とニット帽を被っていた。髪の毛も纏めて帽子の中に収まっているので一目見ただけでアスナと分かる者はそうはいないだろう。ダンテとアルゴが前、アスナとキリトが二列に並んで人込みの中をダブルデート中の様に多少わざとらしくショーケースを覗きながら進んだ。
あまり口を動かさずにダンテはこう答えた。
「時間差はつけるが、行き先は同じ森の中さ。生き残るためとは言え今まで結構無茶なレベル上げやって来たからな。これが終わったら今までより確実にゆっくり出来ると思う。ハーフポイントはもうすぐだし。」
ダンテは時偶エギルと風魔忍軍の情報収集や小耳に挟んだ噂話などの信憑性を吟味しては調べていた。今回の噂はベータテストにも無かった情報であり、ガセの可能性はかなり高いかもしれないが、調べてみる価値は間違い無くある物だ。その理由は、噂の内容が死者の蘇生を可能とするアイテムが存在するかもしれないからである。当然ながら攻略組に属するギルドやその他の有力者達は血眼になって探すのは自明の理だ。
キリトは九割方ガセネタである可能性があると思って無視し、一度だけとは言え彼が作ったルールを覆す事が出来る様なアイテムが存在するとは鵜呑みにするには早計と考え、唯一調査を渋った。茅場の言葉があるからである。
茅場秋彦はデスゲーム開始を告知する時、ゲーム内であらゆる蘇生手段は機能しないと言った。HPがゼロになったその瞬間、アバターは消滅し、それと同時にそのプレイヤーの脳はナーヴギアによって破壊されると言った。ソードアートオンラインがデスゲームとなって以来、ギルドのメンバーと特定のプレイヤー以外は殆ど信用せず、冷たくも現実的な考えの持ち主になってしまった。
ダンテからすれば調べる価値は蘇生出来る可能性があると言う事実があれば十分過ぎると判断し、情報収集に手を貸したアルゴやアスナもこれに賛成した。キリトも最終的にはアスナの説得と威圧的な笑顔に根負けしてしまって同行している。
「それからな、キリト。いい加減その仏頂面を何とかしろ。カモフラージュの為とは言えアスナに失礼だぞ。嘘でも楽しんでる様な顔じゃなきゃ、分かる奴には一発で分かっちまう。そうだな、ん〜〜〜〜・・・アスナ、何かきっかけを作ってやれ。」
「わ、私がですか!?」
「いや、お前以外に誰がいるよ?年齢的にお前とキリトが近いしさ。俺なんか三十路間近のオッサンなんだぜ?俺とお前だったら無理が有り過ぎるし、アルゴとキリトだったら姉弟みたいになっちまう。カップルを装った方が自然なんだ。それと、知ってるか?もし怪しいと思う視線を感じたら、キスしてる所を見せればそれで注意を逸らせる。無意識の内に相手の居心地が悪くなるんだ。周りをさり気なく見てろ。」
軽くだが、ダンテはアルゴと唇を一分近くは重ね続けた。すると、確かにプレイヤーが二人から目を逸らしていく。そして二人も彼らから目を逸らしてしまった事に気付いた。
「な?演じ切るにはある程度の過剰脚色はしなきゃならないんだよ。少なくとも、ここら辺をぐるっと一周してから転移門で三十五層に移動、『とある椵の木の下』まで行く。奴が出現するのは真夜中だ。遅れるなよ。」
ダンテはそう言い残して二人の肩をポンと叩いてからアルゴと共に人込みの中に消えて行った。
「・・・・ほ、ほら、行きましょう!」
アスナは破れかぶれにキリトの手を掴んで二人が向かった先とは逆に進んだ。キリトは黙って手を引かれるままついて行く。二人は顔を真っ赤になっているのをお互いに悟られない様に下を向いて歩き回り始めた。
十五分程経過してからようやく馴れて来て、出店の方へと視線を巡らせた。
冬も案外良いかもしれないな、とキリトは不意に呟いた。今までずっと攻略の為に身を粉にして夜空の星や舞い落ちる雪など、現実世界にも当然ある自然の美しさと言う物に長らく関心を持たなかった。大抵はそれ所ではなかった様な場所にいたのだが、改めて見直すと綺麗だと思わざるを得なくなった。自然とアスナの手を握る力が若干だが強くなった。こうなったらとことんやろう。
「アスナ、こっち。」
立ち並ぶ出店の列から脇へ逸れてこぢんまりした店に向かった。
「え、ちょ、ちょっと?」
「良いから。これを少し見ていよう。何か好きそうな奴、ある?」
この店に出されているアクセサリ—はプレイヤーが手ずから制作した物であり、その内の幾つかは身につければ何かしらのバフがステータスに付加される様になっている。ありきたりかもしれないがカップルを装うにはうってつけの場所だ。
「え?」
キリトは視線をそらし、無言で頷いてどうぞと手招きした。ラフィン・コフィンとの衝突以来、どうも彼女の事を気にかけてしまう。恐らく彼女に惹かれているのだろうと言う大凡の見当位は付く。だが彼女が自分をどう思っているかなど知る由も無い。
「ほら。」
キリトは早くしろと責付いた。
「じゃ、じゃあ・・・・キリト君が選んでよ。カップルだったらこう言うのってお、男の人が選ぶ物でしょ?」
キリトに勝るとも劣らないぐらい初心なアスナは昔読んだ恋愛小説に出て来る様な場面を思い返して考えつく精一杯の台詞を吐いた。キリトは暫く面食らっていたが、並べられた品物のステータスとアスナに合いそうな物があるか品定めを始めた。そこで青いティアドロップ型のイヤリングに目が止まる。
「これとかどうかな?」
耳に付ける部分と雫の形をした石が極細の金の鎖で繋がっていた。基本アスナは赤をアクセントカラーにした白地の装備の他、赤と白の服しか今の所見た事が無いのでどうかと思ってアスナの目の前に掲げた。
「綺麗・・・・」
吸い込まれそうな青色に光が反射し、アスナは息を飲んだ。ずっと見つめていればその中に潜ってしまえる様な神秘的なそれを食い入る様に見つめ続けたが、やがて莟が開いた花の様な満面の笑みを浮かべてイヤリングを掲げるキリトの手を取って頷いた。
「うん、これが良い。」
スキル補正も付いて来る物だった為かなり値段は張ったが、キリトは無言でそれを買い、アスナに渡した。
「ありがとう、キリト君。」
「喜んでくれたならそれで良い。そろそろ真夜中だ。行こう。」
マップでダンテ達の現在地を確認すると、アスナの手をしっかりと握って足早に人込みの渦中に飛び込み、転移門を目指した。
「情報だとここら辺なんだがな・・・・」
「まア、とある樅の木の下って言ってもそう簡単に見つからないだろうサ。一年に一回しか出現しないイベントボスなんだシ。」
不意にアルゴは気配を感じて口を噤み、ピックを構えた。それを見てダンテもリベリオンを引き抜いて構えを取る。光と共に、赤備えの甲冑に身を包んだ六人のプレイヤーが現れた。クラインのギルド、『風林火山』だ。
「よお、クライン。」
「蘇生アイテム狙いですか。」
「聞いてどうする?」
「そんなガセネタの可能性大なアイテムの為に命賭ける事無いっすよ!このゲームでHPが底を突いたら・・・・」
「そんな事は分かっている。だが、ガセであろうと無かろうと調べる価値は有ると俺は判断した。もしもの事があれば・・・・・まあ、その時は俺の読みが間違っていたってだけだ。所詮そこまでしか生きる力を持ってなかったって事になる。」
「実質ソロプレイで攻略するなんて無茶っすよ!俺達と来て下さい!蘇生アイテムはドロップした奴の物で恨みっこ無し。それで文句無いでしょう!?」
だがダンテはクラインの言葉に耳を傾けず、静かに首を横に振った。
「悪いがそれでは意味が無い。今の俺の使命はアルゴを現実世界に返すまで生き残る事だ。アルゴが死なない為にも、彼女を守る俺が死なない為にも、蘇生アイテムは手に入れる。邪魔するってんならたとえお前でも容赦はしねえぞ?殺しはしないが、死なない程度に痛めつける事位は出来る。反撃する気も起こらない位にな。」
中腰になってリベリオンを構えたダンテの殺気にあてられたのか、クラインが率いる五名のプレイヤーも構えを取って戦闘態勢に入ろうとするが、クラインがそれを手で制した。
「こんな所で死なせる訳にはいかないンスよ!」
「馬鹿野郎。俺はてめえなんかよりずっと強ぇんだぞ?俺の今のレベルは72だ。お前らが束になってどれだけ攻撃しようが意味は無い。安全マージンの事なんかそうそう心配する必要は無いし、何より俺はこのゲームに不可欠なカーディナルシステムの制作に携わったベータテスターだからな。まあ、茅場の次位にはこのゲームを熟知していると考えて良い。」
だが次の瞬間、再びダンテ達の周りが光に包まれ、二十人以上のプレイヤーが各々の得物を携えて現れた。
「クライン、てめえの所為で俺の計画が水の泡だ。聖竜連合とは面倒な・・・・」
「半分違う。貴様の計画が水の泡になったのは、俺の仕業でもある。」
左手には既に鯉口を切って抜刀出来る状態にある刀を握ったバージルが進み出た。
「・・・・・成る程、以心伝心で何よりだぜ。」
ダンテは内心で舌打ちした。ここまで来てこれ程障害になる奴が現れるとは。もう真夜中まで二分も無い。キリト達が追い付くのも時間の問題だろうが、それまでの間この数に加えてバージルと戦うとなると無理がある。
「貴様ら、一切手出しは無用だ。コイツらは俺が斬る。」
何名か文句を言おうとした者がいたが、言葉を発する前にバージルの手に握られた刀『妖刀・修羅刃』が牙を向き、鎧諸共彼らは腕や足、果ては首を切り落とされ、あっと言う間に二人がHPを四割、三人は死亡した。
「弱いな。肩ならしにすらならんゴミの集まりが俺や奴に勝てる筈が無いだろう。我が身が可愛ければこの場から失せろ。先程葬った奴らの様に巻き添えを食らいたいならば、楽には死なせんぞ?」
当然ながらグリーンのカーソルを持つ聖竜連合のプレイヤーを攻撃した為にバージルのカーソルもオレンジに変わったが、本人は全く気にした様子はなかった。先程斬り捨てた聖竜連合に背を向けてそう警告し、刀を鞘に納めてダンテの方へと近付いて行った。並々ならぬ殺気に気圧されて背後から攻撃する者は誰もおらず、口々に捨て台詞を吐き捨てながら彼らは引き下がった。
「ひとまずは礼を言っといた方が良いみたいだな。余計な邪魔が入らずに済んだ。さあ、やろうぜ。第二ラウンドだ。」
「語るに及ばず。ん・・・・?」
三度目の光と共に、キリトとアスナが一触即発の状況にあるダンテとバージルの前に現れた。バージルがオレンジと見るや否や、二人は剣を抜いて構えた。
「待て。これは俺とコイツの戦いだ。お前らはイベントボスの方を倒せ。クライン、組むんならあいつらと勝手にやりな。俺は少し忙しい。おら、もう真夜中だ、さっさと行け。説明なら後で幾らでも気が済むまでしてやる。」
修羅刃で霞の構えを取るバージルと向き合い、リベリオンを上段から振り下ろした。
「やっぱ楽しいなあ、お前とやり合うのはよお!昔に戻った気分だぜ、なあ!?まあ、Holy Nightとは呼べなくなっちまったが。」
「その減らず口・・・・直ぐに利けなくしてやる!」
リベリオンの強力な突きを真っ向から刃で受け止め、踏みとどまった。
「へえ〜、流石は元兄貴だ。学習の早さも一級品だねえ。」
「まだ序の口だ。」
刀を収めて再び鯉口を切ると、ダンテに向かって駆け出した。居合いの構えである。ダンテはリベリオンの大きさに物を言わせてそれを受け止めようとしたが、いつの間にか左肩から右脇にかけて大きな傷が出来ていた。
「アスナの突きよりも更に速い攻撃速度とはな。抜刀術のユニークスキルか。居合いの免許皆伝らしい。それで来るなら、俺も奥の手使わせて貰うぜ。Swordmaster!」
ブォンッ、と一瞬ダンテが赤い光に覆われ、光が消えた瞬間、赤く光ったリベリオンが目の前に迫り、バージルの左頬を深く抉った。
「俺のユニークスキル、『スタイルチェンジ』だ。多芸な俺にぴったりと思わねえか?」
「知った事か!」
再び居合いで斬り掛かるバージル。今度は抜き様に神速の三太刀を浴びせようとしたが、ダンテはそれらを全て紙一重で回避し、黄色に光る右手の手刀『エンブレイザー』でバージルの右肩を貫いた。
「Tricksterのスピードじゃあちと物足りないかもしれんが、そこは俺の腕でカバーしてるんでな。所で、まだそれ程に俺の死に様が見たいか?」
「それ以上に見たい物などありはしない!」
「キャリアの警察官の言葉とは思えないな。Is sanity the price to pay for power? Though I encourage for an opportunity to battle a being of such grand delusion as you. It is a sweet fortune(正気を代償に力を得るか?まあ、お前みたいに妄執にとらわれた奴と戦う機械は奨励する。誠に幸運な事だ)!」
チェシャ猫の様な三日月型の笑みを浮かべるダンテを睨み付け、バージルは彼の顔にヘッドバットを食らわせ、納刀したままの刀の柄で腹を思い切り突いた。後ろに飛ばされはした物のダンテは体勢を崩さない様にリベリオンを支え棒の様に雪原に突き刺してバク転をし、軽やかに着地した。
「荒べ。」
バージルの首から下がった青いクリスタルのネックレスが一瞬強い光を発した。そして居合いと共に青い剣閃が丁度ダンテがいる空間に幾つも現れた。時間差で繰り出される『飛ぶ斬撃』は粉雪を飛沫に変えて巻き上げて行く。
「抜刀術のユニークスキルはスピードだけじゃなく飛び道具付きかよ・・・・・ずりぃぜ。」
「貴様に言われる筋合いは無い。」
「そうかよ。Swordmaster」
リベリオンではバランスが取れた戦いが出来るが、バージルの程のスピードに特化してそれでいて重い攻撃には向かない。リベリオンからすぐさまアグニとルドラに武器を変えた。
「武器を変えた所で貴様の死は目前だ。」
実際バージルの言う事は正しい。ダンテは最初に食らった思い一撃で既に三割近くのHPを削られており、更にバージルの飛ぶ斬撃をまだ完璧には避け切れず、じわじわともう一割程HPが下がった。対するバージルは顔を掠ったリベリオンとエンブレイザーの攻撃で一割と少しだけしかHPが減少していない。このまま長引けばダンテの敗北もありえる。反応速度も半端無い。迂闊に回復結晶などのアイテムに手を伸ばせばその隙に首をはねられる。
「分かんねえぞ?」
幾度と無く二人はぶつかり合った。もう何合打ち合ったか、どれだけの時間が過ぎたかすらも分からない。それだけ二人は互いの胸を貫き、喉笛を裂き、首を切り落とす事に熱中していた。
丸鋸の様な凄まじい回転速度で執拗にバージルの刀を折ろうと躍起になるダンテは内心焦っていた。ここまで不利な状況に追い込まれるのは久し振りだからだ。だがそれが更に気分を高揚させて行く。この時、本当の意味で生きている事を実感出来る。だが高揚感もバージルが篭手と足全体を覆うすね当てを装備した所で一気に冷めた。
「やっべ・・・・」
ダンテは背筋が寒くなるのを感じた。現実世界ではバージル————最上蒼介は剣道と合気道以外に亡父から極真流空手を教わっており、表彰台を何度か飾った事もある実力者だ。今でこそ空手や剣道はスポーツだが、バージルはそれらを一撃必殺の武器になり得る程に練り上げている。本気で戦えば大抵の人間は半身不随の目に遭わされるか、最悪命を落とす。
人間離れした彼の総合的な強さは、現代にタイムスリップした屈強な戦国の武将その物だ。時代が違っていれば名を上げる事は間違い無いだろう。
「素手か・・・・上等だ。」
聖夜に似つかわしくない不浄な戦いは、まだ終わらない。
ダンテ vs バージル ラウンド2はまだ続きます。次回はニコラスとの戦闘描写も入れたいと思います。原作の方はどうか知りませんが、アニメでは姿しか出なかったので。
では、また次回でお会いしましょう。
感想、評価、報告、質問、色々とお待ちしております。