ソードアート・オンライン~The Devil May Cry (リメイク)   作:i-pod男

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Recruit Negotiation

同日 第四十層『オドランド』

 

「四十層のオドランドって・・・・ここ、ほぼ何も無いじゃないか。」

 

ドイツ語で荒れ地を意味する四十層『オドランド』は、キリトの言う通り砂地に囲まれた僻地だった。

 

「アスナ、友達を悪く言うつもりは無いがこんな所にいるとは少しどころかかなり考え難い。」

 

エギルも心配そうに殆ど廃墟に見える圏内を見回した。商売人と同じく、鍛冶屋は腕前と信用がもっとも重要だ。腕が立てば注文が入り、その分収入も大きい。客が彼女の腕前を他のプレイヤー達に触れ回ればまた注文と収入が転がり込む。だが店の立地場所もグランザムの様に昼夜問わず人が動き回る様な場所でなければ望み薄だ。

 

「真の名店は看板さえ出していない、知る人のみぞ知る場所ですよ?それに、ほぼ無人地帯だから良いんですよ。集中するのにはうってつけなんです。知り合ってからずっと彼女に頼んで武器を作って貰ったけど、全部クォリティーが高いわ。」

 

「何より対人スキルが未だに低いキリト君の友達の輪も広がるしナ。ニャハハハハ。」

 

「アルゴ、一言多い。人を社会病質者扱いするなよ。」

 

元々部屋にこもってパソコンを弄るのが日課となったキリトのコミュニケーション能力が低いのは元々の事である。だがそれを指摘されて些か気分を害したのか、キリトはムッとして言い返した。

 

「あ、ここよ、ここ。」

 

辿り着いたのはポツンとある煉瓦作りの一軒家だった。ドアを開けると、丁度刀のメンテナンスを終えたらしい意外な先客が戸口に立っていた。

 

「バージル・・・・・?!」

 

「誰かと思えば貴様らか。」

 

まるで心臓が凍り付いたかの如く四人の動きが固まった。凍てつく様な視線に込められた殺気に反応し、キリトの手は自然と背中の剣へと伸びて行く。

 

「待て。」

 

一瞬にして剣呑な空気になって来た所でバージルは右手を上げてキリトを制した。

 

「お前達と刃を交える必要は無い。少なくとも、今この場ではな。今の俺は注文の品を受け取って帰路につこうとしている客だぞ。」

 

「そんな事信じられるか。背教者ニコラスを倒しに行った時お前は聖竜連合のプレイヤーを三人殺している!」

 

バージルの言い分に対してキリトは声を荒らげる。

 

「減った所で何も変わってはいない。あれは攻略組の中でも最下層に位置する雑魚だった。死のうが死ぬまいがどうでも良い。あの中途半端な馬鹿に伝えておけ。情報は馬鹿なりに役に立ったとな。お陰で屠らなければならん人物が確定した。」

 

バージルが転移門で別の階層に飛んで姿を消した所でようやく四人はほっと胸を撫で下ろした。

 

「あー・・・・・やっぱり俺ぁ、ああ言うタイプの人間が苦手だぜ。怖ぇのなんのって。」

 

エギルもキリトと同じく殺気にあてられた所為で自然と得物に手が伸びていたのか、斧の柄を握ろうと仕立てを下ろし、額の冷や汗を拭った。

 

「キー坊・・・・・あれ誰なんダ?服装とか髪型以外はダンテにそっくりだったゾ?」

 

キリトは迷った。そうだ、アルゴは元々戦闘が本職のプレイヤーではない為、前線に出る事は殆ど無い。ギルドメンバーでカバーし合ってレベルを上げているだけだ。バージルとの最後の一件の事は疎か、彼の存在すら今になるまで知る事は無かった。

 

「・・・・ダンテに直接聞いてくれ。これは俺の一存で言える事じゃないから。ただ、もし次に圏外で彼を見たら全力で逃げた方が良い。あいつはアスナや俺なんかじゃ到底勝てる相手じゃない。」

 

キリトがそう言い終わった所で、明るい大きな声が重苦しくなった空気を破壊した。

 

「あれ、アスナじゃん!久し振り!まあ入って入って。」

 

アスナの名を呼んだ声の主は、肩まであるベビーピンクの髪、リボンとフリル付きのエプロンドレスを身に付けたアスナと同い年ぐらいの女子だった。どうやら、彼女がこのリズベット武具店の店長らしい。

 

「リ、リズ、さっきの人って・・・・?」

 

「ああ、バージルさん?依頼されるのって刀オンリーなんだけど、提示した代金にチップだって言って元金の15パーセント上乗せで、しかも一括で払うのよ?無口だし、目付きがちょっと怖いけど私に取ってはお得意様よ?彼がどうかしたの?」

 

あの視線を受け止めただけでちょっと怖いで済ませてしまえるリズベットの神経の図太さに皆が面食らった。

 

「あ、ううん別に!何でも無いの。」

 

我に帰ったアスナは慌てて首を横に振った。

 

「ふーん。で、アスナ、今日はどうしたの?随分と同伴者が多いみたいだけど。」

 

「私とここにいる皆のオーダーメイドの武器を頼みたいの。今持ってる武器じゃステータスの数値に見合わなくて。」

 

「アスナは細剣で、そっちの・・・・名前何だったっけ?」

 

「キリトだよ。デビルメイクライのサブリーダーをやってるんだ。よろしく。」

 

「アスナはいつも通りスピード系よね?そっちはどうする?」

 

リズはキリトを上から下へとまさしく商売人が値踏みするかの様な視線を向け続けながらも訪ねた。

 

「今持っている一番性能が高い片手剣と同等か少し上の数値を持つ片手剣が欲しいな。一応もう要らない武器をインゴットに戻したら次のステップに行けるんだけど。」

 

「分かった、じゃあ一人ずつやって行くからここで待ってて。あ、武器は好きに見てて良いわよ?売り物だから壊さないでよ!まずアスナね、付いて来て。」

 

店内のカウンターの裏側にあるドアを開き、リズはアスナだけを伴って下にある仕事場へ通した。

 

「最後にもう一回だけ確認するけど、本当にそれをインゴットに戻すのね?一度戻してから気変わりしても遅いから。」

 

「大丈夫、お願い。」

 

アスナの言葉に押されて、リズベットは武器を炉に焼べて武器に錬成される前のインゴットに変えた。

 

「とりあえず、インゴットに戻った武器とこのインゴット、後は今あるこの手持ちの素材で作って貰いたいの。」

 

「どれどれ?」

 

思わず魅入ってしまう程に透き通った藍色の『ナイトフォール・インゴット』とストレージからオブジェクト化した『スカイ・インゴット』、そしてその他の素材を見て、リズは思わずおお、と漏らした。

 

「う〜ん、凄いわね。流石周りから攻略組トップギルドと言われるだけの事はあるわ。うん、こんなレアな金属を見るのなんて久し振りだわ。俄然やる気出て来た!任せて、最っ高の武器を用意するから。」

 

二つのインゴットを炉に焼べ、十分に熱された所で一つ目を取り出して金敷き台の上に置いた。それを叩いて平たく伸ばし、二つのインゴットを重ねた状態で半分に折り、両手に持ったハンマーでリズミカルに万遍無く叩き始めた。その手慣れた動きが丁度千を突破した所で手を止めると、赤いライトエフェクトと共に一振りの白いレイピアが現れた。握り手は大理石の様な光沢と握り心地の良い手触り、ひんやりとした心地良さがあり、鈍色の護拳の両側には一対の翼を模した装飾が施されている。

 

「凄く綺麗・・・」

 

アスナの口からほう、と息が漏れた。

 

「名前は眩き雲(ブライト・クラウド)。スピード系の割には耐久値が高いわね。後、装備した時デバフに対する耐性が全体的に上がるみたい。」

 

「流石リズ、いつもながら良い仕事するわ。」

 

新調されたレイピアの手触りを確かめ、満足そうな笑みを浮かべると、アスナはそれを鞘に納めてリズの手を握った。

 

「ありがと。でも訂正しなさい、私は良い仕事しかしないのよ。所で、失礼なのは百も承知で聞くけど・・・・あのキリトってプレイヤー、強そうに見えないけどウチの武器扱えるの?」

 

声のトーンを低くしてそう訪ねるリズにアスナは極めて心外だとばかりに顔を顰めた。

 

「見かけでキリト君を判断しないでよ。悔しいけどあれでも私よりレベルは上だし。デュエルでも私が負け越してる。まあ、ダントツでギルドマスターのダンテさんが強いんだけど。」

 

「ダンテって、あの『魔剣士(ダークナイト)』って物騒な渾名で呼ばれてる人?会った事無いけど、どんな感じ?」

 

「えーっと、色白で、銀髪で、やる事なす事滅茶苦茶で破天荒な人だけど、性格は陽気で大らかで、どんな局面でも冷静さを失わずに自信たっぷりで挑んで行く人、かな。」

 

「物っ凄いキャラが濃いって事は分かったわ。でも、まさかアスナがキリトみたいな年下に手を出すとは、ちょっと意外。」

 

「何よそれまるで私が肉食系女子みたいじゃない・・・・」

 

だがそこで声が途切れさせた。と言うのも、その華奢な体型と童顔も相俟って年上と肉食系女子に人気がある。かく言う自分も年上であり、現在気になる異性はキリトである。

 

(ちょっぴりだけど私に当て嵌まってるじゃないのぉ〜〜〜〜〜!!!)

 

図らずも墓穴を掘ってしまったアスナは不明瞭なうめき声を上げながら両手で頭を掻き毟った。そんな彼女を見てリズは笑った。

 

「さてと、じゃあ次はキリトの番ね。やっぱり作るプロセスも本人に見てもらいたいし。所で、『閃光』と名高きアスナはあいつのどこに惚れた訳?」

 

「べ、別に惚れてなんか!」

 

「ふ〜ん。ホントかなぁ〜?前回会った時はそんなピアスしてなかったのに。」

 

リズが指摘したのはクリスマスイブにミュージェンでキリトが彼女に贈ったイヤリングだった。

 

「以前はそんな物付けてる所なんか全く見た事無かったのに、最近になって付けてるから。大方彼に買って貰ったんでしょ?見た所かなり値段も張るみたいだし。」

 

図星を見事に突かれ、アスナは顔を真っ赤にしたまま俯いて黙り込んでしまったが、ここに来た本来の目的を思い出し、我に帰ると強引に話題を反らした。

 

「それはそうと、実はオーダーメイドの武器を頼む以外にもう一つ話があるの!実はウチのギルドに入ってくれないか誘おうと思って。」

 

「う〜ん・・・・」

 

やはりこうなったか。職人プレイヤーとしての技術が高いリズの武具はどれも例外無くハイクオリティで攻略組御用達の物だ。それを自分達が独占すれば他のギルドとの軋轢は免れないが、エギルへの負担を減らさなければこの先が大変になるのは間違い無い。友人と仲間、どちらを優先すべきかアスナは頭の中で必死に考えていた。

 

「おーい、アスナの武器はどうなった?まさか失敗したのか?」

 

中々出て来ない二人を不信に思ったのか、キリトはドアを開けて頭だけを覗かせた。

 

「あのねえ、私がそんな凡ミスをする筈が無いでしょ!どれだけこの仕事やってると思ってんの?」

 

「そうだよキリト君。それより、見て見て!凄く良いのが出来たよ!」

 

子供の様にはしゃぐアスナを見て、キリトははにかんだ。それを見てリズはいずれ二人は両思いになる事を感じ取る。

 

「じゃあ次は俺のだな。」

 

「見てなさい、あんたが持ってた武器なんかポキポキ折れる位凄い武器を作ってやるんだから!」

 

不要品となったキリトの剣とダンテが渡したインゴット、そしてその他の素材となるアイテムを幾つか出すと、アスナのレイピアを作った時と同じ手順を踏んだ。アスナもそれを真剣に見守る中、光と共にまた一振り新たな片手剣が形となって金敷の上に現れた。

 

『キングダム・ブレード』と銘打たれたこの剣は見た目こそ眼を引く様な装飾は無く、キリトと同じく柄から刀身まで真っ黒だった。だが、樋と鍔の一部、そして柄頭にはどこか高貴さを感じさせる濃い群青色があしらわれており、シンプルさ故の美しさを引き立てている。キリトはゆっくりとそれを拾い上げた。程良い重さを感じ、何度か試しにソードスキルを発動した。どれも問題無く発動に成功し、キリトは満足そうな表情を浮かべて頷く。

 

「重い。良い剣だ。所でリズ———」

 

「あー、良い、良い。皆まで言わなくて良い。どうせあんたも私をギルドに勧誘したいんでしょ?でも私がそっちのギルドの専属スミスになったらお店の方も出来なくなるし、攻略組のプレイヤー皆が困っちゃうし。」

 

それもそうだよな、とキリトは半ば諦めかけたがその話を聞いていたらしいエギルが顔に笑みを浮かべながら作業場の戸口に現れた。

 

「なら俺達が必要な素材を提供すると言ったらどうだ?」

 

「え?」

 

突然の提案にぽかんとしたリズに構わずエギルは続けた。

 

「店の規模を見ると、武器の制作も素材の収集も全て一人でやってる。インゴットはまだしも、一人で地道に集めるなんて疲れるだろ?集められる量だって限られているし、効率は悪い上に危険過ぎる。」

 

「アスナ、この人は・・・・・?」

 

「エギルさんは戦闘以外にも商人をやってるうちのギルドの大黒様なの。店の品揃えも豊富だし、値段の交渉余地もあるわ。ね、エギルさん?」

 

「おう。」

 

デビルメイクライの資金源は迷宮区攻略の際に手に入る物だけではなく、エギルがやっている店からもそれなりの収入が入る。武器や防具の強化に使える素材も多数扱っているのだ。

 

「それに何も店を畳んで四六時中ギルドメンバーに付いて回らなきゃ行けないって訳じゃ無い。俺みたいに互いに利益を齎す持ちつ持たれつの対等な関係を築くだけだ。そっちは素材やインゴットが欲しい。こっちはパーティーのバランスを良くする為に腕利きのパワーファイターがもう一人欲しい。両者のニーズは全て満たされる。悪い話じゃ無いと思うんだが、どうだ?」

 

「・・・・・・考える時間、貰える?」

 

「分かった。で、剣の代金は幾ら?」

 

「アスナのは特性もあるから、二十万コルって所かしら。キリトは、今回は依頼が初めてだし、手間もかなり掛かったから三十万コルって事で。」

 

「ま、良い武器が高いのは当然か。分かった。一括で払うよ。」

 

「私も。」

 

「毎度あり〜。」

 

トレード画面を閉じると残り二人、エギルとアルゴの武器もそれぞれ作ってデビルメイクライとの身の振り方の話を進めて行ったが、結局リズは最後まで頭を縦に振る事は無く、彼女の返事待ちとなった。

 

「ありがとね、リズ!またお願い!」

 

「閉店している時以外はいつでも来てよ。」

 

二人が店から出ると、リズベットは盛大に息を吐いて椅子に腰掛けた。

 

「ギルドかぁ・・・・どうしよ・・・・」

 

 

 

 

 

 

足をテーブルに上げた状態で椅子に深く腰掛けたダンテはリズの元へ交渉に行った経緯に耳を傾け、手を叩きながら笑った。

 

「そうか、やっぱ懐柔には至らなかったか。残念、残念。ナハハハハッ!」

 

「はい。返事待ちですけど、私は多分断ると思ってます。リズのスキルは攻略組プレイヤーの共有財産ですし、彼女も職人としてのプライドがありますから。」

 

「まあ良い、こっちは既に待つって言っちまったんだ。辛抱強く返事を待つさ。」

 

戦闘を行うプレイヤーの未来に大小様々な影響を及ぼすのが職人プレイヤーや商人プレイヤーだ。そう簡単に靡く輩ではない。

 

「皆ご苦労様。さて、待ちに待った自由時間だ。好きに過ごせ。ただし報告(ホウ)連絡(レン)相談(ソウ)と単独行動厳禁を忘れずに。ほい、解散!」

 

パンパンと手を叩き合わせ、皆は思い思いの場所へと向かった。唯一人、アルゴを除いて。

「どうしたアルゴ?キリトやアスナをからかいに行かなくて良いのか?」

 

「紅一、それより大事な話があル。バージルってプレイヤーネーム、聞き覚えないカ?」

 

その名を聞いてダンテのこめかみがピクピクと引き攣った。

 

何故彼女がその名を知っている?

 

「・・・・・何でそんな事を聞く?」

 

「髪型と服装以外、あいつは紅一と瓜二つだっタ。他人の空似なんてレベルじゃなイ。声も同じだ。兄弟なんだロ?それも攻略組のプレイヤー三人を殺したって・・・・・あいつ誰なんダ?」

 

ひた隠しにして来た彼の存在を今になって話す事になるとは思わなかったダンテの明るかった表情はあっと言う間に曇った。ここまで来てしまった以上隠し通す事はもう出来ない。下手に嘘をつけば余計に疑心が募るだけだ。

 

「以前、俺がギルドマスターになる前に身の上話をしたよな?お前には黙っていた部分がある。」

 

そしてダンテは全てを明かした。バージルとの関係も、何故彼が自分を憎み、SAOの中で自分と幾度も刃を交えた事も。

 

「あいつからすれば、俺は親父とお袋の仇だ。次男は存在その者で両親を死に追いやり、人を殺し、更にその兄が仇を取ろうと次男の命を付け狙う。シェイクスピアのハムレットよりもエグくて笑える話だろ?けど俺の命はあいつにそう簡単にくれてやれる程安い物じゃない。お前をここから解放するまでは死なないと決めたからな。」

 

自虐的な笑みを浮かべて立ち上がってギルドホームの格子窓から外を眺めた。気持ち悪い位に澄み切った青空を見ているとまた彼を思い出してしまい、乱暴にカーテンを閉めた。

 

振り向いた瞬間、腰の入ったアルゴの右ストレートがダンテの顎を捉えた。突然の事に対処出来ず、吹き飛んだ。倒れた所を更に追い打ち、マウントポジションを取って何度も何度も殴り付ける。大粒の涙が見下ろす顔から溢れてダンテの顔に落ちて行く。

 

「そんなの・・・・・そんなの悲し過ぎるよ!こんな所で兄弟で殺し合って、それで何になるって言うんだ!戦った所で二人がどうにかなる訳でもないのにっ!それなのに何で!?何で戦ってんだよ!?」

 

何時もの口調はどこへやら、アルゴはダンテの胸ぐらを掴んで引き起こした。悲しそうな眼で静かに答える。

 

「何で、か。俺も良く分からん。親父はヤクザを相手に日々現場をかけずり回っていた。現場(戦場)こそが生きる場所だった。あいつだってリアルじゃ警察官だし、俺もサイバー攻撃を仕掛けて来るクラッカー相手に戦ってる。一家揃って戦いの中で本当の意味で生きられるからだと思う。見ろ、この目を。以前は思い出すだけで涙が出て来たってのに、涙も遂に枯れ果てちまった。悪魔は涙を流さない(Devils never cry)ってのは俺やバージルの為にある様なフレーズだ。」

 

「悪魔でもなんでも良いよ、もうっ!でも頼ってくれても良いじゃないか!」

 

泣きじゃくるアルゴの胸ぐらを掴む手の力、揺すり加減、そして声の勢いもどんどん弱まって行く。

 

「充分頼っているさ。お前の存在で、救われたと思った事は数え切れない程あった。隠して来て本当にすまないと思っている。でも()()()()の心の傷は、癒せる程浅くはないし、人様に見せられる様なモンでもねえ。傷は欠落。大切な物が欠け落ちた心の穴だ。その穴を抱えたまま泣くか、恨むか、怒るか、絶望するか、あるいは別の何かを渇望するか。俺はその選択肢を巡り巡って最終的には別の何かを選んだ。後悔はしていねえ。でも道を変えた所で俺の自己(アイデンティティー)が変わる訳じゃない。」

 

アルゴは立ち上がってメニューを開き、何かの操作をするとダンテの前にウィンドウが開いた。

 

『Argoさんがギルド脱退を申請しています。受諾しますか?』

 

「そうか。本当にお前がそうしたいなら、俺は止めない。」

 

脱退申請を受諾すると、視界の左上でにあるギルドメンバーのHPバーが一つ消え、アルゴは外套を被ってギルドホームを飛び出した。

 

「ごめんな、遊里。」

 

閉じて行く扉に向けてダンテはそう呟いた。

 

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