ソードアート・オンライン~The Devil May Cry (リメイク) 作:i-pod男
三人は無事ホルンカの村へと辿り着いた。当然ながら未だパニックと言う爆弾の
「ダンテ、キー坊。パーティー組んでいきなりで悪いガ、俺っちはちょっと別行動を取らせてもらうゾ。モンスターや地形に関する情報とかを裏付けしに行かなきゃならないんでナ。忙しくなるヨ、全ク。」
「お前なら何時もそうしているだろうが、マジで気をつけろよ?何かあったら絶対にメッセージ飛ばせ。」
「分かってるサ。」
アルゴはダンテの前を通り過ぎる直前に彼の手を小さく握り、走り去った。
「さてと、キリトも当然アレが目当てだろ?『アニールブレード』。」
「・・・・ああ。」
「んじゃ、やるか?」
「そうだな。行こう。」
クエストを受ける為の場所は村の奥の方にある民家だ。二人はベータテスト時代の事もあってそれを知っている為、受注はすぐに済んだ。
「受注場所が変わっている、と言う事は無いか。後はモンスターの攻撃パターンの違いを見極めなきゃな。」
「ああ。そう言えば、このクエストを受けた時にリトルネペントはどれだけ倒した?」
「百を軽く超えたな。胚珠は手に入れる事に成功したんだが、血路を開く最中、一度『実付き』の攻撃でしくじってな。危うく死ぬ所だったぜ。」
二人はリトルネペントが出現する狩り場へと足を運びながらそれぞれ武器を手に動き出した。更に奥へと分け入ると、繁殖期なのかと思ってしまう程そのエリアがウツボカズラに酷似したモンスター、リトルネペントで一杯だった。どれも花や実はついていない。
「さて。『花付き』は見つけて倒した者勝ちで恨みっこ無しって事で。片っ端からぶった切ってくぞ。」
「・・・・・死ぬなよ?」
意気込むダンテに、未だに沈んだ表情を浮かべたままのキリトはそうつぶやき、リトルネペントの群れへと踊りかかった。キリトは片手剣のみを駆使した回避とスピード重視の攻撃を放つ。
それに対してダンテは一体一体を倒す様な真似は回りくどくて性に合わないらしく、テクニックとゴリ押しを併用して一掃する戦法を取っていた。近付いて来るネペントはシステムアシスト無しで切り刻み、離れた所から腐食液を吐きかけようとしたネペントの胴体と根の接合部分を的確に狙い澄ましたピックや小石の投擲で動きを止めた。ある程度HPがイエローないしレッドに突入した所で再び弱点である接合部分の全てをソードスキルで纏めて刈り取り、一度に五、六匹近くのネペントを倒していた。
「相変わらずメチャクチャな戦法だ、なっ!」
腐食液を回避して『ホリゾンタル』でまた一匹リトルネペントを葬ったキリトはダンテを見てそう言った。
「お前はゲームで型にはまった戦法を使って楽しいと思うのか?キリト、伏せろ。」
キリトは言われるままに腰を落とした。ダンテは『シングルショット』でピックを今にも腐食液を吐き出そうとしていたリトルネペントの口の中に叩き込み、意外にもたった一本で二割近くのHPを削る事に成功した。突き刺さったままと言う事もあるので、その間も更にHPがジワジワと削れる。
「な?正攻法じゃない攻略法を見出だすのも、ゲームの醍醐味だぜ、っと!!」
飛び上がりながら落下の力を利用して『バーチカル』を放って真っ二つに叩き斬り、次はどいつだとばかりにフィールドを見回した。だが、クエスト受注から約三時間が経過しても一向に『花付き』のリトルネペントは現れない。
「おい、今で何体殺った?」
「二人合わせて、今丁度二百五十だよ!」
「あーあ、あのドロップ武器がありゃこんなクエスト楽勝なんだがなあ。ピックも残り少ないし。」
だが無い物強請りをした所でどうにかなる訳でもない。更に一時間狩りを続け、キリトが『花付き』一体を撃破、レアアイテムの『リトルネペントの胚珠』を手に入れた。
「キリト、行きたきゃ先に行っても良いぞ?コレ位の数なら俺もどうにか出来る。回復アイテムもたらふく持って来たからな。」
「流石にそれは出来ないな。経験値も溜めなきゃならないから、気長に付き合うよ。」
「悪いな。お、いた!」
助走を付けて飛び上がり、頭に花が付いたリトルネペントを滅多切りにした。そして目当てのドロップアイテムがようやく表示される。
「っしゃあ!長居は無用だ、行くぞ!!」
モンスターを一々殺して退路を開くよりも蹴り飛ばして他のネペント共々将棋倒しにしてその上を踏み越えながら森から脱出した。
「ふう・・・・四時間ちょっとでノーダメージ、胚珠二つか。まあ、いい結果だな。コルも経験値も上がったし。」
「安全マージンまでの道程はまだ遠いさ。せめてレベル13、いや15以上は必要だ。用心するに越した事は無い。」
視界の端にあるクロックを確認すると、既に午後九時を回り、そろそろ十時になりかけている所だ。夜の方が視界は悪く、モンスターの出現率も高い。手練のソロでも死亡する確率は大幅に跳ね上がる。
「んじゃ、コイツを持って必要な物を受け取ったら寝床を探そう。流石に野宿してる最中にPKされたら笑えない。特に俺の場合アルゴがいるからな。」
意味深長な笑みを浮かべるダンテ。
「え?ダンテ、まさかアルゴと・・・・」
「ああ、リアルでも一応な。フフッ、何だその顔?羨ましいか?」
「だ、誰が!」
そんな雑談(主にキリトが弄られているだけだが)を続けながらNPCに合計四つの胚珠を譲渡し、『アニールブレード』を二本ずつ手に入れた。
「んじゃ、宿探しに行くからパーティー解消するよ?」
「好きにしろ。ああ、キリト。行く前に一つ良いか?」
「何?」
「もっと人と関わりを持て。人間一人じゃ生きて行く事なんか出来ねえぞ。社会だろうと、ギルドだろうと、何らかの組織の中でだけ生きられる。俺達は元々そう言う作りだからな。一々人を拒絶してたら、後々になって受け入れるのが難しくなんぞ。」
「そんな事、分かってる・・・・・」
キリトは顔を顰めるそっぽを向き、並ぶ民家の先に見える宿に向かって行った。やがて角を曲がって彼が視界から消えて行く。ダンテも同じ道を辿ったが曲がった方向はキリトとは逆方向でどんどん人も民家も無くなっていく。宿探しには行かず、ダンテはメニューのマップを開いて位置を確認した。
「さて、殺戮系クエストの狼狩りをやるか。」
ピックを補充した後、ホルンカの村から少し離れた一軒家に向かった。納屋が家と繋がっており、数メートル離れた所には牧場があった。ある所に羊、またある所には牛が放し飼いにされている。ロッキングチェアに座ったNPCの老人に近寄ると、イベント発生を知らせるびっくりマークが彼の頭上に現れた。
「何かあったのか?」
クエスト発動のキーワードを口にした。
「実は、夜な夜な羊や牛を食い殺す狼の群れが現れました。息子は退治すると先祖の家宝である剣を持って狼達の巣に行ったきりで、戻りません。どうか狼を全て退治して、息子も連れ帰って下さい。お礼は十二分にいたしますので。」
「ああ、良いぜ。」
受注したクエストの内容を確認した。
『満月の襲撃者:ダイアー・ウルフを50匹討伐
サイドミッション:農夫の息子を連れ帰れ』
「楽勝、楽勝。久々にコイツの性能テストと行こうか。」
左腰のアニールブレードの柄に手をかけ、クエストの討伐対象であるダイアー・ウルフの群れを探しにフィールドへと足を運んだ。左手の指の間に四つのピックを挟んでいつでも投げられる様にして、右手には剣を握る。デザインが多少無骨なのが玉に瑕だが、叩き出す数値は第一層で販売される武器とは比べ物にならない位に高い。それこそ第三層あたりまでは他の武器は全くと言って良いぐらい必要無い程に。
ある程度歩くと背中の一部がヤマアラシの様に背中の毛が逆立ち、目が赤く光る狼の群れが牙を剥き出してダンテを取り囲んだ。
「ようやくお出ましか。Come and get me, puppies. Let’s play」
ピックとアニールブレードを何度か軽く叩き合わせて注意を引きつけた。そして遂にダイアー・ウルフが一匹襲いかかって来た。それを皮切りに他のダイアー・ウルフも地を蹴って牙を突き立てんと大口を開けて噛み付こうとする。間を置いて一本ずつピックを投げつけ、口の中、目、眉間、喉など、一般的なほ乳類に取っては致命傷となる所に命中した。
それを確認すると力強く踏み込みながら怯んで動かない所を『ホリゾンタル』で纏めて薙ぎ払った。既にHPを減らしているとは言え、残りのHPは立った一撃で完全に削り切る事に成功した。
「良いね良いね!!オラオラオラ、どうしたワンコロ共!散歩程度でへばるなよ!?」
飛びかかって来るウルフは空中では当然回避が出来ない上自分に届くまで僅かだが時間はある。それを考慮し、尚且つ利用したカウンター戦法を駆使して倒せる物は確実に倒し、防御が間に合わないと判断した攻撃は回避した。出現した群れの最後の一匹は『レイジスパイク』で喉笛を穿つ。そして第二波が来る前のインターバルを利用してポーションを服用した。
「まじぃ・・・・」
瓶を投げ捨ててHPバーを確認すると、空になった部分がまた緑色で満たされて行った。確認してみると討伐数は50匹中20匹。実に四割近くだ。リザルト画面ではかなりの経験値とコル、そしてアイテムを獲得した事が表示される。
「さてと。」
再びpopするまでまだ暫く時間はある。再びピックをすぐ出せる様に準備をしてから臨戦態勢に入った。しばらく待っていると、茂みの中からダイアー・ウルフが奇襲を仕掛けて来た。ソードスキルを発動している暇は無い。倒れ込みながらも剣を上に突き出し、ウルフの腹を抉る。だが倒すには至らなかったらしく、最後の意地とばかりに遠吠えを始めた。
(増援か。こりゃあ必要以上に呼ぶだろうな)
程無くして、かなりの量のダイアー・ウルフが現れた。場所が悪いので完全に包囲される前にダンテは移動を始め、更にフィールドの奥深くへと移動した。
「Come on, Doggies!!」
そして数時間後、狼の群れとの乱闘で一気にレベルを5まで上げたダンテは五十匹以上のダイアー・ウルフを葬る事に成功した。だがまだクエストは終わっていない。ウルフ達の巣窟を見つけてNPCの老人の息子を探さなければならないのだから。
森の外れにある洞穴がスポットライトを浴びるかの様に月明かりに照らされていた。だが、そのまま踏み込もうとはせずにダンテは半歩程足を引いて構える。
そして洞穴の中から現れたのは純白の美しい毛並みを持つ狼だった。だが、ダイアーウルフとは桁違いの、それこそヒグマと同等の巨大な体躯を持つ。唾を飛ばしながら唸るその狼の牙はサーベルタイガーの物を取って付けたかの様で、凶暴さがより一層引き立った。複数のHPバーが名前と共に表示される。
「フィールドボスかよ・・・・何々?『ブランカ・ザ・ブラッドグリズリー』・・・・ほう、茅場も中々洒落たネーミングセンスをお持ちだ。シートンもびっくりするだろうな。よう、ボス犬ビッチ。生前は随分と阿呆だったが、ちゃんと学習したか?」
ブランカとは博物学者シートンの著書『狼王ロボ』に登場する白い毛並みを持った老練の猛者ロボの連れ合いである。物語ではブランカが先に掴まった事でロボの捕獲に至ったとあるが、SAOのこのブランカは生け捕りにするなどまずあり得ない。餌になるのが落ちだ。
「ほらよっ!」
小手調べとばかりにピックを投げつけたが、巨体に見合わぬ敏捷な動きでそれを回避し、突進して来た。ステータス全てに分け隔て無く経験値を振っていたのが災いして僅かに突進のダメージを受けてしまったが、只でやられた訳ではない。避けた時に至近距離からシステムアシスト無しでピックで目を狙い、向こうに自分が受けたよりも遥かに多いダメージを与えたのだ。当然目を潰された事でかなりの痛みを感じているのか、身を捩って暴れ回る。まともな追撃も出来ない。
「痛み分けだが、まだまだだ。」
怯んだ所でスキル発動後の硬直時間が短い単発ソードスキルの『スラント』で尻尾を切り落とした。痛みに遠吠えを上げるブラッドグリズリーは目への攻撃から回復し、再び飛びかかった。横に払われる右の前足の外側に回避した。可動領域の範囲外である以上、その攻撃は当たらない。
「Gotcha!」
アニールブレードを瞬時に右から左へ持ち替え、横腹を横一閃の『ホリゾンタル』で、硬直が回復してから最後に『レイジスパイク』を発動してブランカを後ろから貫いた。強化前とは言え流石にクエスト入手の武器と言うべきか、凄まじい勢いでブランカ・ザ・ブラッドグリズリーのHPが削れて行く。最後一本のHPバーがイエローへと突入し始めた。
一度後ろに下がって再びピックを持つと、ブランカは耳を劈く凄まじい咆哮を上げた。体中の毛が逆立ち始め、まるで食い殺した得物の返り血を浴びたかの様に赤く変色した。そして気の所為か体のサイズが僅かにまた大きくなった様に見える。後ろ足で跳躍して空中で回転しながらダンテに向かって行く。
「おいおいおいおいおい!!!うぉっと!?」
前転で受け身を取って木陰に身を潜めた。一度呼吸を落ち着けると、ピックを二本連続で投げつけるソードスキル『フリック・ショット』を発動して何時もの用に顔を狙って投げつけた。幸か不幸か、それはブランカの鼻に当たってしまい、大きく吠えた。 イヌ科の生物は総じて鼻がデリケートな生き物だ。いきなりそんな所に刃物を叩き付けられれば当然痛いだろう。
「全くしぶといボス犬だ。このクエストやるんじゃなかったぜ。」
だが、先程のその咆哮は衝撃波となって無防備なダンテを十数メートル後方に吹き飛ばし、木に激突した。そして更にモンスターを呼び寄せる要因となる。早急に片をつけなければ如何に手練のベータテスターであろうと自分は一人だけなのだ。囲まれでもしたら只では済まない。ソードスキルを乱発した所為で集中力も途切れかけていた。頬をビンタして喝を入れ、アニールブレードを握り直した。
「後もうちょいだ。Go down!」
最後の一撃を擦れ違い様に叩き込み、目の前にリザルト画面ともう一つの画面が現れた。
『Congratulations!! You got the Last Attack Bonus!!』
ラストアタック・ボーナス、通称LAB。フロアボスやフィールドボスを倒す決定打を与えたプレイヤーにのみ与えられるボーナスアイテムで、それは武器であったり装備品であったり、様々だ。だがどれもが間違い無く高レベル且つ高価なユニークアイテムである事は間違い無い。ストレージを確認し、装備してみる。
「Damn!」
それは白い鞘に収まった見事な一振りの剣だった。銀色の鍔を持ち、柄には革製の紐が巻かれて球状の柄頭は細かい彫刻が施されている。一度抜いてみると、血の様な緋色の刃は鞘と同じ様な北欧の紋様が刻まれているのが視認出来る。ステータスも当然ながらアニールブレードを凌駕していた。
「『ブラッディー・ファング』。血塗れの牙か。コイツは儲けたな。」
主要の目的は果たしたが、NPCの息子を捜さなければならない。ダンテはポーションでHPを回復し、ブランカが出現した洞穴の中にゆっくりと足を踏み入れた。そこには服や物が散乱しているだけで息子の姿は無い。だが、ふと地面に赤いコートが落ちているのに気付いた。それに手を触れると、アイテムストレージに収納されて行き、サイドミッション達成をメインメニューで確認した。早速NPCの家に戻って事を伝えると、老人は泣き崩れ、形見となったその赤いコートを差し上げると言ってクエストが完了した。
「装備、装備っと♪」
一瞬にして臑の中間辺りまである長丈の革製コートに体が包まれた。袖も動きを阻害しない七分サイズにカットされており、襟元などには白いファーがあしらわれている。
「『コート・オブ・ブラッディームーン』、か。良いね。」
流石にこれ以上の先頭を継続すれば集中力が切れて間違い無く死んでしまうため疲労が重なって来た為、今日の強化はひとまず打ち止めだ。突然押し寄せた疲労や脱力感と懸命に戦いながら宿に入り、装備も解かずに眠ってしまった。