イナズマイレブン〜盤上の雷鳴〜   作:ハチミツりんご

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ラウンド1 たった1人の未入部者

 

 

 

 _______終わりを告げる鐘の音が鳴る。

 

 

「よし、今日の授業はここまで!気を抜いてるとすぐ中間テストだからなー、復習しとけよ!号令!」

 

「起立ッ!」

 

『ありがとうございましたッ!』

 

 

 ふつふつと暑さが顔を覗かせる今日、生徒達の礼と共に暖かな風が彼らの間を吹き抜ける。

 

 

 5月初頭、入学式よりおよそ一ヶ月。

 

 埼玉県に居を構えるこの【零央(レイオウ)高等学校】に進学した新入生達も、新しい生活に徐々に馴染み始めていた。

 

 

 

「うーっし、学校終わり!なぁザッキー、練習終わったら飯食い行かね?」

 

「良いねぃ、どこ行く?あ、そだ吹部の子達も誘おうぜ!だいたい終わる時間一緒だろ!」

 

「やっぱ華欲しいよな、華ッ!」

 

 

 和気藹々と、数グループに分かれて他愛も無い話しに興じる。

 入学してからこの一ヶ月の間。自然とクラスのメンバーも、仲のいい面々が固定され固まり始める時期だ。

 

 

 身体を動かす程度の目的で部活動をこなし、高校生らしく日々の青春を謳歌しようとする者達。

 少しでも良い結果を残そうとそれぞれのスポーツに打ち込み、同じ部のメンバーで固まるスポーツマン。

 互いのオススメの作品を紹介しながら、有名作家の新作について語り合う文芸部などの文化部の者達。

 高校こそは良い相手を捕まえようと同学年や先輩の異性にアンテナを張り巡らせる恋多き者達。

 

 

 大小規模は様々ながら、気を許せる相手を上手く見つけた少年少女達。

 他愛ない話に笑みを浮かべながら、ペットボトルのジュースで乾杯し合う。高校生かくあるべし、とでも言うべき姿だ。

 

 

 

「______________」

 

 

 

 そんな中で一人だけ。誰とも談笑を交わさず、黙々と一人帰宅の準備を進める者もいた。

 

 

 男子生徒にしては長めの黒髪を揺らしながら、手早く荷物を纏める青年。

 窓際の席に腰掛けるだけで周囲の注目を集めるほどに整った容姿は、表情変化の無さも相まって近寄り難い雰囲気を醸し出している。

 

 

「あ、あの…………駒神くん!」

 

「ん?」

 

 

 呼ばれた名前に視線を向けると、大人しそうな女子生徒が2人。メガネをかけたおさげの少女に、おかっぱ頭に切り揃えた小柄な少女。オドオドとした様子からは、何か文句を言いに来たようには思えなかった。

 

 

「あー………なんです?」

 

「えっと、その………駒神くん、部活入ってないんだよね?文芸部とか………どう、かな?」

 

 

 零央高校はスポーツに力を入れた学校だ。その為か、学生は一年次から何かしらの部活動に所属する事が校則で義務付けられていた。

 

 にも関わらずこの青年、部活動に所属していない。既に学年でも噂になっているが、本人が何とも思っていないのか何処かの部活に所属するそぶりは見せなかった。

 

 

 そんな彼に目を付けたのか、少女達はこの駒神という青年を文芸部へと誘った。

 メジャー、マイナーの差はあれど全校生徒の殆どは運動部に所属している零央には珍しい文化系の部活動。スポーツをやりたくないのなら、もしかしたら…………そう思って声を掛けたのだが。

 

 

 

「…………個人的にやりたいことがある。放課後に時間を取られたくない。よって部活動はしない。興味も無い。その為これから先も誘ってくれなくて結構だ」

 

 

 少女たちの目を見ることすらせずに鋭利にそう告げると、カバンを引っ掴んでさっさと立ち上がる。

 

 まさかここまでぞんざいに扱われるとは思わなかった少女たちがポカン、と口を開ける中、青年は興味も無さげにさっさとその場から離れていく。

 

 

「うっわ口悪ッ………」

 

「いやあいつ入学してからずっとあんな感じじゃん」

 

「流石にキツイよね〜………顔は良いのに………」

 

 

 入学してから約一ヶ月、良くも悪くも我が道を行っている彼に対する周囲の反応は余りよろしくない。

 といっても、本人が影で何を言われようと全く気にしておらず。寧ろ何処吹く風と他人事の様で、それが更に周囲との溝を深めていた。

 

 

 

「あー…………駒神ッ!」

 

 

 教室のドアに手をかけた所で名を呼ばれ、途端に顔を顰める。

 

 不機嫌を隠そうともしない彼を見て溜息をつきながら、教職員用の名札を首から下げたその人は手を招く。

 

 

 

 盛大なため息が、1年A組にイヤに響いていた。

 

 

☆☆★

 

 

 

 

「入りませんが部活には」

 

「開口一番それかお前って奴は……………」

 

 

 パイプ椅子にふてぶてしく腰掛けながら口を開いた生徒に、男性教師は呆れと心配の綯い交ぜになったため息を零す。

 

 

 ▼零央高校1年A組担当教師▽

    【水先(ミズサキ) 安寧(アンネイ)

 ▽担当部活動:水泳部 趣味:一人晩酌▼

 

 

「コレでも俺だって心配してるんだぞ?駒神がクラスで浮いてないかなーとか………」

 

「既に浮いてますしそれに対して何も思っていないのでご心配なく。帰っていいです?」

 

「ブレないなぁホント…………」

 

 

 力なく水先が笑うが、彼は至極どうでも良さそうに背もたれに体重を預ける。

 

 零央高校は、生徒の殆どが学生寮に身を置いている。

 目の前の彼もその例に漏れず学生寮に寝泊まりしているはずであり、ここから帰ろうと思えば数分で部屋に着く。

 

 にも関わらず帰りたさそうなのは、一重にこの状況が面倒くさいからだろう。このひと月で、彼の性格は嫌という程知っていた。

 

 

「何度言われようと時間の無駄です。僕は無駄な時間を割くつもりは毛頭ない」

 

 

 ▽零央高校1年A組出席番号10番▼

     【駒神(コマガミ) (バン)

 ▼所属部活動:未所属 推し:ワムたん▽

 

 

 染めたように黒い髪を揺らしながら、忌々しげにそう口にする青年、駒神。

 

 

 零央高校に入学したばかりの一年生であり、当学校の規則である『部活動入部義務』を拒否し続けている学年屈指の問題児。

 それが彼だ。

 

 最初は拒否していても校則なんだからそのうち従うだろうと思っていた教師陣も彼の頑なな態度には手を焼いており、こうして呼ばれることも通算3度目。更にその注意を煩わしく思って逃走したのが1度。

 総計すれば、入学してから凡そ週に一回は呼び出されている計算である。

 

 

「いやな、といってもこれは校則だから………」

 

「そもそも、だ。何度も言うが、僕はこの学校に来る時に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 ルールは守るためにあるもの。彼一人を例外として見逃す事は、教育機関である以上するわけには行かない。

 その為校則だからと口にするが、駒神はこめかみを指で叩きながら面倒くさそうにそう言った。

 

 

「あー………理事長先生との奴だろ?それが_______」

 

「大会には零央高校名義で出る。国内だろうが国外だろうが大会で結果を出して学校の名を売ってやる。だから面倒な強制入部の規則はしなくていい、そういう話だから僕はこの学校に入ったんだ」

 

 

 駒神の言葉に、水先は困ったように頬を掻く。

 

 何とも自分本位であり、自信過剰な物言い。学生特有の教師への反抗や己の実力の勘違い等ではなく、駒神という青年の根っからの性格なのだろう。

 それに、この言葉に嘘は無い。

 

 大会に出たなら、間違いなく優勝という言葉を持って帰ってくる。

 それが確信出来るほど、()()()()()()()()()()だから。

 

 

 

 フーっ、と大きなため息が水先から零れる。

 

 

「………駒神。本当に自主的に部活動に入るつもりは無いんだな?」

 

「えぇ全く」

 

「そうか…………それなら仕方が無い。此方もあまりやりたくは無いんだが………」

 

 

 校則、というものは健全な学生生活を支えるために存在するものだ。

 破るものがいればそれが他の生徒に伝播する可能性も有るし、何より学校を管理する側として好ましいものでは無い。

 

 しかし生徒側にも納得してもらった上で行動に移さなければ_______そう思っていたのだが、こうも強情ならば致し方は無かった。

 

 

 

「_______闘魂(トウコン)鳥羽(トバ)!入っていいぞ!」

 

「………は?」

 

 

 駒神に背を向け、扉の先。廊下へ向けて入室許可を出した水先。

 間の抜けた声が駒神から漏れるのとほぼ同時に、かき消す様に扉が開く音がした。

 

 

 

 

「チューッス!失礼しやーすっ!!」

「………………………………しゃ、す」

 

 

 明朗快活な声音が室内に響き渡ると同時に、消え入る様な短い声が重なった。

 

 

 水先の許可に合わせて入って来たのは2人。

 

 片方は短く赤い頭髪をオールバックにした少年。高校生男子にしては少しばかり小柄だが、黒地のウェアの上からでも分かるほどに鍛えられた肉体、特に足に関しては目覚ましいものがある。

 もう片方も同じく少年で、背が高く整った顔立ちが目を引く。外に跳ねた銀色の短髪も相まって良く目立つ彼は、片目だけを前髪から覗かせてジッと駒神を見つめていた。

 

 

「おっ、やっほー駒神!やっぱお前か最後まで残ってた部活動未登録者って!」

「……………………」

 

 

 間抜けな表情で固まった駒神に気安く声を掛ける赤髪の少年。人懐っこい笑みを浮かべるその姿は、どうにも好意的な雰囲気を隠さず醸していた。

 

 

「…………これは一体どういう事で?」

 

「アレッ、無視されたッ!?」

 

 

 そんなもん知るかと言わんばかりに少年を無視した駒神が水先に問い詰めるように声を掛けると、頭を横に振りながら一枚の用紙をカバンから取り出す。

 

 一体何事かと駒神が目を細めながらその用紙を見れば、徐々にその瞳が見開かれる。

 

 

 

「…………校則違反は校則違反。だがお前の主張も無視出来ない。故に理事長先生に連絡したんだ。そしたらコレが来た」

 

 

 そっと用紙を駒神に差し出され、震える手で受け取る。

 今一度その内容に目を通した駒神は、次第に頬をひくつかせながらぐしゃりと握り潰した。

 

 

 用紙の内容。それは_______

 

 

 

 

 

【やっほ〜コマぴ〜〜☆部活入らなくていいって言ってたけどぉ、現場の子達が困ってるみたいだからやっぱ入って♡ごめんちゃい♡】

 

 

 

 _______微妙にギャルっぽかった。

 

 

 

 

「…………あ…………あ…………」

 

「うん、気持ちは分かる。だがすまん駒神、こっちもなりふり構ってられないんだなコレが」

 

 

 ポン、と駒神の肩に手が置かれる。

 

 

 

 振り返れば、先程入ってきた赤髪の少年がいい笑顔でサムズアップしており。

 もう一人の背の高い少年が、妙にキラキラした目で哀れな男を見ていた。

 

 

 

「駒神。お前は今日から_______サッカー部だ」

 

 

 

「あんっっっのクソカス老害ジジイがァァァァァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーーッ!!?」

 

 

 

 

☆☆★

 

 

 

 

 _______零央高校旧校舎付近、旧グラウンド。

 

 

 今の零央高校はスポーツに力を入れ、生徒数も多い等立派な私立高校として若者の教育に勤しんでいる。

 しかしかつてはもっと小さい………嫌な言い方をしてしまえば、こじんまりとした学校だった。

 

 

 生徒数も一学年に1クラス程度、教員数も今の10分の1………そんな頃に使われていたのが、旧校舎。

 そしてここ、旧グラウンドだ。

 

 

 専ら使われなくなった旧グラウンドは、その殆どが雑草にまみれた上に地面がでこぼこと不揃い。

 石なども混ざってしまっており、とてもでは無いがスポーツなんて出来ないような環境だ。

 

 

 

 そんな旧グラウンドの隅っこ。

 

 一角だけやたらと丁寧に慣らされた地面の傍に立っているのが、スポーツの盛んな零央高校において満場一致で最弱とされる場所。

 

 

 

 零央高校サッカー部専用部室_______通称【ボロ小屋】だ。

 

 

 

 

 

■□▪▫■□〜ボロ小屋内部〜■□▫▪■□

 

 

 

 

「ひー!」

 

「まー!」

 

「だー!」

 

「ヌァーーーッ!!」

 

灰慈(ハイジ)〜、落ち着け」

 

 

 旧グラウンドに響き渡る、間延びした声。

 声の主は、ボロ小屋の中でじったばったと両手両足を動かす少女。よく手入れされたなった金糸の様な髪に、桃色のインナーカラーをあしらったお洒落な娘っ子だった。

 

 壁は一部塗装が禿げ、天井も雨漏りしないのが不思議な程にボロボロ。建付けが悪いのか、少女がジタバタ動くのに合わせて微妙に揺れている。

 そんなボロ小屋を案じてか、それともただ単に煩かったからか。金髪の娘の傍に座っていた小柄な人影がペシン、と元凶の額を軽く叩いた。

 

 

「だァーってホウリン!暇だよ!暇過ぎて暇だよ!つかやること無さすぎっしょ!もはやヒマ通り越してマヒだよ!!痺れて動けんレベル!!」

 

 寝転がった金髪のギャルっぽい女………入間(イルマ)が布団の上を高速回転しながら抗議の声を上げる。

 ギャイギャイ騒ぐその姿は、ギャルというよりもはや大きなガキンチョであった。

 

 

 ▽零央高校1年D組出席番号2番▼

     【入間(イルマ) 灰慈(ハイジ)

 ▼ポジション:攻め攻めミッド! 好きな事:アゲアゲな事ジャン★▽

 

 

「意味分かんないから静かにしとけ、このお馬鹿!(カケル)仂弥(リキヤ)がそのうち新入部員連れて戻ってくるから!」

 

 その入間を叱りつけながらボールを一つ一つ掃除しているのは、赤い長髪を靡かせた小柄な少女。

 ともすれば小学生にすら見間違う体躯だが、ゴロゴロする入間を叱る姿は正しく『おかん』であった。

 

 

 ▽零央高校1年E組出席番号9番▼

     【衣里(キヌサト) 縫璃(ホウリ)

 ▼ポジション:DF 特技:家事全般▽

 

 

「つかそれもマジ系〜?うちの学校(ガッコ)、部活動強制入部でしょ〜?この時期に入ってないやつとかいる訳無くね」

 

「それが居るってんだから待ってるんでしょ?(カケル)のクラスの子らしいけど………」

 

 

 零央高校はスポーツを中心に部活動が盛んな学校、入学した生徒は一週間以内に何れかの部活動への所属を義務付けられている。

 かくいう入間、衣里の両名も4月の入学式を終えて一週間以内にサッカー部への入部届けを提出している。

 

 ましてや今は入学式からひと月が経過している。零央高校生徒の中で、部活動に所属していないのは本来ならば有り得ないことなのだ。

 

 

「えっとね!多分駒神くんじゃないかな!」

 

「おろ、ミクっち知ってんのん?」

 

 

 ふと、一人の少女が言葉を零す。

 

 入間、衣里の他にこのボロ小屋にてちょこんと座っていた3人目。

 腰まで伸びたボサつき気味の薄い紫髪、そして両目と口を除いて顔を全部覆うように巻かれた包帯が異常に目を引く少女だった。

 

 

 ▽零央高校1年B組出席番号22番▼

     【三繰(ミクリ) (テン)

 ▼ポジション:GK 欲しい物:友達▽

 

 

「_______ゴメンねいきなり声出して会話遮って私みたいなのが加わってくんなって話だよねホントにごめんね部室の隅でロッカーの凹みの数でも数える埃になっとくね…………」

 

「ミクっち今日も飛ばしてんねぇ!」

 

(テン)アンタ、その1回ネガティブ挟む癖どうにかしなさいよホントに」

 

 

 ニコニコと笑いながら両手を合わせて話し始めた三繰だったが、突如として膝を抱えて部屋の隅で項垂れ始める。

 とにかく明るく笑ったかと思えば、この世の終わりかの如く項垂れる。入間はいい個性だと笑っていたが、衣里は些か心配そうな顔を見せていた。

 

 

「そんでさミクリン。コマガーミってどこのどちらさん?」

 

「!えっとね、A組にまだ部活入ってない人が居るって言ってて!噂通りならその人かなって!」

 

「噂?」

 

 

 首を傾げる入間、衣里の2人に向かって元気よく頷く三繰。

 

 部活動未入部者で、A組の駒神。

 学校内では既にかなりの有名人ではあるが、練習漬けだった彼女らはあまりそういう類の話を耳にしなかったようだ。

 

 

「あーなんか聞いた事あるかも!なんかちょ〜スゴい噂立ってた気がすっけど〜………忘れたし〜!」

 

「みえたみえた部室みえたぞ!」

 

「アンタねぇ………まぁでも、確かに話あったわね。何でもすっごい変人って_______ん?」

 

 

 口元に指を当てながらん〜、と悩む入間。

 そんな彼女にジト目を向けながら、そう言えばそんな変人がいた気が、と衣里が腕を組む。

 

 そんな折、ふと衣里が視線をドアの外へ向ける。

 急にどうした、と入間と三繰が声を出そうとしたが、唇に指を当てて静かにとジェスチャーを送る衣里に従って耳を澄ませる。

 

 

「ぬがァァァァァァ離せこの蛮人共がァァァァァ!!!」

 

「うおおおおお暴れんな!?足抑えるの頼むぞ鳥羽!」

 

「…………ねぇ灰慈、纏。何か聞こえない?」

 

「…………………………!」

 

「おー、聞こえるよ〜な、聞こえないよ〜な…………つかなんか走って来てね?」

 

「貴様ら許さんぞというか今日は7時半からワムたんの定期グループ配信だ一瞬でも見逃したら抹殺するぞ社会的にィィィイィッ!!」

「………………!?」

「暴れんなっつかワムたんって何だよ!?うおおおあとちょっとだ気張るぞ鳥羽ァ!!」

 

「聞こえるね!闘魂くんと鳥羽くんだと思うな!_______違ったらごめんね数少ないチームメイトの声間違えんなって話だよね私なんて床のささくれ数える置物程度が相応しいよね…………」

 

「ミクっち〜、戻ってこ〜い」

 

 

 ワイキャイと騒がしくなってきたボロ小屋。

 

 流石に聞こえてくるこの声は聞き間違いなどでは無い、と思った衣里が、眉間に皺を寄せながら小屋の扉を開け放つ。

 

 

 そして次の瞬間_______

 

 

 

 

「ワッショーーーイッ!!」

 

「…………………ショイッ!」

 

「離せっつってるだろうがァ!!!」

 

 

 _______簀巻きになった男子生徒とそれを抱える顔見知り2人が飛び込んで来た。

 

 

 

「うおわぁぁぁぁなんじゃぁぁぁぁッ!!?」

 

 

 思わず野太い悲鳴をあげる衣里。

 状況が呑み込めていない入間と三繰はポカン、とした顔を浮かべているが、そんなのお構い無しに簀巻きの侵入者はジッタバッタと暴れ始める。

 

 

「ボクは貴様らと違って暇じゃあ無いんだ大体簀巻きってなんだバカなのかあぁそうだなこんなこと実行するんだ馬鹿に決まってるなァ!!?」

 

「衣里ドアサンキュ!!やばいやばい入間布団空けろぉぉぉ!!?」

 

「おぉっ!?りょーかい灰慈ちゃん緊急布団だーーーっしゅつ!!」

 

 

 額に汗を浮かべながら簀巻きの前方を抱えた快活そうな少年が叫ぶ。

 騒ぎ立てる簀巻きマンに気を取られながら、入間は言われるがままに布団からぴょーんっ、と横に飛び転がった。

 

 

「いくぞ鳥羽、せーのっ!!」

「……………!」

 

「ぼべっ!?」

 

 

 簀巻きの後方を持っていた銀髪の少年と息を合わせてポイッ、と布団に向けて簀巻きマンを放り投げる。

 

 当然簀巻き状態ではまともに受け身も取れるはずなく。

 顔面からもろに薄い布団に突撃した簀巻きの少年は、間抜けな悲鳴をあげながら着地をする羽目に。

 

 

 そんな一連の流れを見て、まさか………という目で衣里と入間がボロ小屋の隅に座っていた三繰の方を見る。

 

 彼女はその視線を受けると、すすす………と布団に放り捨てられた簀巻きの少年に近付き、顔を覗き込む。

 

 

 そしていい笑顔で二人に向き直ると、グッとサムズアップして見せた。

 

 

 

 

「駒神くん!」

「「あぁ〜ホントに変人………」」

 

「誰がだッ!!!!」

 

 

 

 男駒神、渾身の叫びが木霊した_______。

 

 

 

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