素晴らしくもないダンジョンに 作:手前
「…ズく……くん!……カズくん!」
「へぇぁ!」
女神に叩き起こされた。ああ、今日もダンジョンか…。
「もう、君は起きるのが遅いよ! じゃボクはバイトに行くから、君も頑張るように!」
「行ってらっしゃーい」
さて、二度寝するか。
なんて感情が出かけたが、約束もある。ここで寝惚けるわけにもいかない。
駆け出し用の装備を身につけ、昨日の残りをちょびっと食べて出かけることにした。
「行ってきます」
小声で呟く。誰もいない空間だったが、帰ってきた事を考えると良い気分になって、カズマは出かけた。
冒険者通り。
名前の通り、冒険者が必要とするような道具や装備をある店が並ぶ、冒険者御目通りの道である。
そこの端にある店に寄った。
「よおナァーザ」
「カスマ。なんのよう?」
「客だよ。その言い方やめてくんない?」
いや、と拒絶を短くされる。そんなにカスみたいな事やったかな…。
「…なんのよう?」
「お前はNPCかよ。…ポーション買おうと思ってな」
「気分が変わったの?」
「いや、昨日死にかけたから、一本か、二本か持っておこうと思ってさ」
そう言い、値札を見てカズマは絶句する。
「うちは安い方だよ?」
カズマは薄っぺらい財布を取り出し、中身と相談する。
「…一本、お願いします…」
「…まいどあり」
そんな客にならねぇなみたいな顔で見るなよ!
実際、金になってない。
ダンジョンに向かって歩く。
朝早いこの時間は冒険者通りも繁盛する時間だ。
眷属一人だし、まあ貧乏でやりくりに困るのは承知の上だが、もっと頑張らないとな…
カズマの足取りは、ダンジョンに向かう前から重かった。
その瞬間ゾワッとした感覚に襲われる。流石に戦闘態勢は取らないが、変に硬直してしまい、周りからの目が痛い!
一人道端の石をけり進もうとすると呼び止められた。
「あの、これ落としましたよ?」
それはーー魔石?
昨日換金したはずだが…、まあ貰うが儲けだな。
「ありがとうございます」
「お気になさらず」
なんか、気が抜けたな。朝からこんな変な気分に襲われるとは。
「冒険者の方ですよね? 皆さん朝早いですよね」
「…そうですね。俺はまだ新米なんで冒険者の常識も知りませんけど」
そんな時、最悪のタイミングでお腹が鳴った。どうやら俺の腹はジャガ丸くんの半分じゃ満足しないらしい。しょうがないじゃないか、貧乏だもの。
その時白髪の人が笑った。俺の精神にクリティカルダメージ!
一人ダメージを負い膝を折っていると、パタパタと自分の勤めているであろう店に戻った。『豊穣の女主人』すごい名前の店だな。
と、白髪の人が戻ってきた。
「これどうぞ!」
そう言う手には藁性のバスケットが。
「これは?」
「お店の賄いですけど、美味しいですよ!」
どうやらくれるらしい。
もらって良いのか、裏があるのでは。でもタダなら貰うよな普通!
「ありがとうございます!」
「あ、でも」
はい?と声を上げる。どうやら何か条件付き。当たり前だね。
「今夜、この店で夕食を食べにいらして下さいね?」
「…それくらいなら」
「はい!ありがとうございます。これで私のお給金も上がります!」
現金な人だな。裏表がないとこでは良いと思うけど。
「そういえば、お名前はなんで言うんです?」
ちょっと前のめりに聞いてくる。なんかこの人可愛いな。
「サトウ・和真です」
「サトウ・カズマさん?」
へい。と返事をする。
「サトウさん。私の名前はシル・フローヴァです。どうぞご贔屓に!」
「俺カズマで良いですよ」
「え?」
え?
「それはファミリーネームじゃないですか?」
「え?」
「え?」
「俺、名前が和真で、苗字が佐藤です」
「え?」
え?俺は何かしくじったのか?
「あの、カズマさん。普通は名前をはじめに、苗字が後ですよ?」
「え? まじですか」
「カズマさん、どこの地域出身なんですか? あんまりそう言う順番は聞きませんので…」
俺は…と言葉を紡ごうとした時、店から大声が聞こえる。
「シル!早く戻って支度しな!」
「はい! カズマさん。今夜絶対来て下さいね!絶対ですよ!」
手をひらひらと振ってさよならする。
ちょっと名残惜しい。
さっさとダンジョン行くか。それにしても!
「あんなかわい子ちゃんに声掛けられるなんて! 今日は幸運だな!」
それ、あんた店のキャッチに引っかかっただけだろ。と周りの目が訴えているが、カズマは気にせず意気揚々とダンジョンに走っていった。
「フッ! ソイヤ!」
煙になるモンスター。でもなんでだろう。今さっきから入れ食いの如くモンスターがやってくる。
「ハァ! オラァ!」
うし。もう大丈夫かな。今日は20体前後。結構倒したんじゃないか。
と、これは! モンスタードロップ!
本当に今日は運の良い日かもな!
魔石を回収し、もっとダンジョン奥地へ潜っていった。
ダンジョンから戻り、ギルドで換金。今日の稼ぎは3200ヴァリス、ホクホクである。
これだけあればお店でも良いもの頼めるだろう。せっかくだし、ヘスティア様も連れていこうではないか!
倒壊寸前のようにも見える教会。倒壊と教会って響きが似てるな。
「ただいまヘスティア様!」
勢いよく扉を開けた先に我が神が…。いなかった。
その代わりに置き手紙が一つ。
『カズくんへ
バイトで打ち上げあるからそっちに行ってくるぜ!カズくんはちょっとした外食を楽しむと良いさ!
ヘスティアより』
手紙でも愉快な人だな。
…なんかお土産を持って帰ろう。
まず、テイクアウトできるかどうかだな。
冒険者通りの目立つとこ。そんなとこにその店はあった。
すごい賑わってんな。
まさしく冒険者御用達の店。いる客全員が腰に剣やらなんやらを付けている。
「あ!カズマさん!来てくれたんですね!」
「そりゃ、ね。店に入る難易度が高くて四苦八苦してたとこだよ」
店の名前からわかってたが、店員全員女性。そんで種族がヒューマンにキャットピープルにそして、エルフ!
「とっても良い店ですね」
カズマはキメ顔で言った。
「まだまだ良いところもありますよ!ささ、席はあちらです!」
案内されたカウンター席に座った。
「あんたがシルの言ってた冒険者かい。どうやら驚くような大食漢だそうじゃないか。いっぱい頼みなよ!」
まじ? 俺いつ大食漢って言った?と視線をシルに向けるとすみません、というような表情でちょっと舌を出している。てへぺろってか。許すわ。
「まあまあは食べるけど、大食漢には期待しないでくれよ?」
得意げにすまし顔をしてメニューを見る。そしてすまし顔は崩れた。
メニューを見て一言目の感想は高い。一つ一つのご飯が高いのだ。
「これ適正価格?」
「何言ってんだい。うちは他と違って良い食材を使ってんだよ。そりゃ他より高いさ!」
そーだそーだーと周りの冒険者も湧く。酔ってると冒険者ってのはそうなっちまうのか? でもあんまりカズマは嫌いじゃない雰囲気だ。
ちょっと待っててくれよ、と言ってカズマは自分の幸の薄い和馬財布の中身を見る。そして、真顔になった。
「ど、どうしたんですか? お金ないんですか?」
「いや、あるにはあるんだけど、シル…このお店で一番安いものを頼む…」
「の、飲み物はどうしますか?」
「水で」
「は、はい」
絶望し切った顔で下を向くカズマを、困惑気味にシルは対応した。
出てきたのはパスタ。
ひと口いただき、そして確信する。
うまい。
それはもう美味い。
麺は熱々で絡められたソースは口全体に広がる。
口の中を幸福が支配した。
「ミア母さん! これめっちゃ美味い!」
「はっはっは! 当たり前だろう。これで高いのも頷けるかい?」
「そりゃ、もう!」
ブンブンと首を縦に振る。
さてもう一口!そうした時、店の扉が勢いよく開かれる。
「ロキ・ファミリアの皆さんのご来店です!」
勢いよく開けられたドアの先には、糸目のオレンジ髪の貧乳。高貴な存在を漂わせるエルフ。ミア母さんと同じ種族ドワーフ。黒い肌をした貧乳と巨乳。オオカミのような青年。金髪の小人族。そしてーーいつぞやに俺を助けたアイズ。
その時、どうしても嫌な予感がしたが、皿の上にあるパスタによって立ち上がることは叶わなかった。
ベートの色々を書こうとは思ったけど疲れた。
次の話でやりますね。
次回もお楽しみにしてくれたら嬉しいです。
変更
タイトルに数字書き足しただけです。すんまへん、
カズマの持ってるスキル変更していい?(無理がある気がしてきた。)(あと他の設定追加したい)
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いいよ。
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良いわけねぇだろボケ。