素晴らしくもないダンジョンに   作:手前

2 / 6
2 運の良い日

 

「…ズく……くん!……カズくん!」

「へぇぁ!」

女神に叩き起こされた。ああ、今日もダンジョンか…。

「もう、君は起きるのが遅いよ! じゃボクはバイトに行くから、君も頑張るように!」

「行ってらっしゃーい」

さて、二度寝するか。

なんて感情が出かけたが、約束もある。ここで寝惚けるわけにもいかない。

駆け出し用の装備を身につけ、昨日の残りをちょびっと食べて出かけることにした。

「行ってきます」

小声で呟く。誰もいない空間だったが、帰ってきた事を考えると良い気分になって、カズマは出かけた。

 

冒険者通り。

名前の通り、冒険者が必要とするような道具や装備をある店が並ぶ、冒険者御目通りの道である。

そこの端にある店に寄った。

「よおナァーザ」

「カスマ。なんのよう?」

「客だよ。その言い方やめてくんない?」

いや、と拒絶を短くされる。そんなにカスみたいな事やったかな…。

「…なんのよう?」

「お前はNPCかよ。…ポーション買おうと思ってな」

「気分が変わったの?」

「いや、昨日死にかけたから、一本か、二本か持っておこうと思ってさ」

そう言い、値札を見てカズマは絶句する。

「うちは安い方だよ?」

カズマは薄っぺらい財布を取り出し、中身と相談する。

「…一本、お願いします…」

「…まいどあり」

そんな客にならねぇなみたいな顔で見るなよ!

実際、金になってない。

 

ダンジョンに向かって歩く。

朝早いこの時間は冒険者通りも繁盛する時間だ。

眷属一人だし、まあ貧乏でやりくりに困るのは承知の上だが、もっと頑張らないとな…

カズマの足取りは、ダンジョンに向かう前から重かった。

 

その瞬間ゾワッとした感覚に襲われる。流石に戦闘態勢は取らないが、変に硬直してしまい、周りからの目が痛い!

一人道端の石をけり進もうとすると呼び止められた。

「あの、これ落としましたよ?」

それはーー魔石?

昨日換金したはずだが…、まあ貰うが儲けだな。

「ありがとうございます」

「お気になさらず」

なんか、気が抜けたな。朝からこんな変な気分に襲われるとは。

「冒険者の方ですよね? 皆さん朝早いですよね」

「…そうですね。俺はまだ新米なんで冒険者の常識も知りませんけど」

そんな時、最悪のタイミングでお腹が鳴った。どうやら俺の腹はジャガ丸くんの半分じゃ満足しないらしい。しょうがないじゃないか、貧乏だもの。

その時白髪の人が笑った。俺の精神にクリティカルダメージ!

一人ダメージを負い膝を折っていると、パタパタと自分の勤めているであろう店に戻った。『豊穣の女主人』すごい名前の店だな。

と、白髪の人が戻ってきた。

「これどうぞ!」

そう言う手には藁性のバスケットが。

「これは?」

「お店の賄いですけど、美味しいですよ!」

どうやらくれるらしい。

もらって良いのか、裏があるのでは。でもタダなら貰うよな普通!

「ありがとうございます!」

「あ、でも」

はい?と声を上げる。どうやら何か条件付き。当たり前だね。

「今夜、この店で夕食を食べにいらして下さいね?」

「…それくらいなら」

「はい!ありがとうございます。これで私のお給金も上がります!」

現金な人だな。裏表がないとこでは良いと思うけど。

「そういえば、お名前はなんで言うんです?」

ちょっと前のめりに聞いてくる。なんかこの人可愛いな。

「サトウ・和真です」

「サトウ・カズマさん?」

へい。と返事をする。

「サトウさん。私の名前はシル・フローヴァです。どうぞご贔屓に!」

「俺カズマで良いですよ」

「え?」

え?

「それはファミリーネームじゃないですか?」

「え?」

「え?」

「俺、名前が和真で、苗字が佐藤です」

「え?」

え?俺は何かしくじったのか?

「あの、カズマさん。普通は名前をはじめに、苗字が後ですよ?」

「え? まじですか」

「カズマさん、どこの地域出身なんですか? あんまりそう言う順番は聞きませんので…」

俺は…と言葉を紡ごうとした時、店から大声が聞こえる。

「シル!早く戻って支度しな!」

「はい! カズマさん。今夜絶対来て下さいね!絶対ですよ!」

手をひらひらと振ってさよならする。

ちょっと名残惜しい。

さっさとダンジョン行くか。それにしても!

「あんなかわい子ちゃんに声掛けられるなんて! 今日は幸運だな!」

それ、あんた店のキャッチに引っかかっただけだろ。と周りの目が訴えているが、カズマは気にせず意気揚々とダンジョンに走っていった。

 

「フッ! ソイヤ!」

煙になるモンスター。でもなんでだろう。今さっきから入れ食いの如くモンスターがやってくる。

「ハァ! オラァ!」

うし。もう大丈夫かな。今日は20体前後。結構倒したんじゃないか。

と、これは! モンスタードロップ! 

本当に今日は運の良い日かもな!

魔石を回収し、もっとダンジョン奥地へ潜っていった。

 

ダンジョンから戻り、ギルドで換金。今日の稼ぎは3200ヴァリス、ホクホクである。

これだけあればお店でも良いもの頼めるだろう。せっかくだし、ヘスティア様も連れていこうではないか!

倒壊寸前のようにも見える教会。倒壊と教会って響きが似てるな。

「ただいまヘスティア様!」

勢いよく扉を開けた先に我が神が…。いなかった。

その代わりに置き手紙が一つ。

『カズくんへ

 バイトで打ち上げあるからそっちに行ってくるぜ!カズくんはちょっとした外食を楽しむと良いさ!

 ヘスティアより』

手紙でも愉快な人だな。

…なんかお土産を持って帰ろう。

まず、テイクアウトできるかどうかだな。

 

冒険者通りの目立つとこ。そんなとこにその店はあった。

すごい賑わってんな。

まさしく冒険者御用達の店。いる客全員が腰に剣やらなんやらを付けている。

「あ!カズマさん!来てくれたんですね!」

「そりゃ、ね。店に入る難易度が高くて四苦八苦してたとこだよ」

店の名前からわかってたが、店員全員女性。そんで種族がヒューマンにキャットピープルにそして、エルフ!

「とっても良い店ですね」

カズマはキメ顔で言った。

「まだまだ良いところもありますよ!ささ、席はあちらです!」

案内されたカウンター席に座った。

「あんたがシルの言ってた冒険者かい。どうやら驚くような大食漢だそうじゃないか。いっぱい頼みなよ!」

まじ? 俺いつ大食漢って言った?と視線をシルに向けるとすみません、というような表情でちょっと舌を出している。てへぺろってか。許すわ。

「まあまあは食べるけど、大食漢には期待しないでくれよ?」

得意げにすまし顔をしてメニューを見る。そしてすまし顔は崩れた。

メニューを見て一言目の感想は高い。一つ一つのご飯が高いのだ。

「これ適正価格?」

「何言ってんだい。うちは他と違って良い食材を使ってんだよ。そりゃ他より高いさ!」

そーだそーだーと周りの冒険者も湧く。酔ってると冒険者ってのはそうなっちまうのか? でもあんまりカズマは嫌いじゃない雰囲気だ。

ちょっと待っててくれよ、と言ってカズマは自分の幸の薄い和馬財布の中身を見る。そして、真顔になった。

「ど、どうしたんですか? お金ないんですか?」

「いや、あるにはあるんだけど、シル…このお店で一番安いものを頼む…」

「の、飲み物はどうしますか?」

「水で」

「は、はい」

絶望し切った顔で下を向くカズマを、困惑気味にシルは対応した。

出てきたのはパスタ。

ひと口いただき、そして確信する。

うまい。

それはもう美味い。

麺は熱々で絡められたソースは口全体に広がる。

口の中を幸福が支配した。

「ミア母さん! これめっちゃ美味い!」

「はっはっは! 当たり前だろう。これで高いのも頷けるかい?」

「そりゃ、もう!」

ブンブンと首を縦に振る。

さてもう一口!そうした時、店の扉が勢いよく開かれる。

「ロキ・ファミリアの皆さんのご来店です!」

勢いよく開けられたドアの先には、糸目のオレンジ髪の貧乳。高貴な存在を漂わせるエルフ。ミア母さんと同じ種族ドワーフ。黒い肌をした貧乳と巨乳。オオカミのような青年。金髪の小人族。そしてーーいつぞやに俺を助けたアイズ。

その時、どうしても嫌な予感がしたが、皿の上にあるパスタによって立ち上がることは叶わなかった。

 




ベートの色々を書こうとは思ったけど疲れた。
次の話でやりますね。
次回もお楽しみにしてくれたら嬉しいです。

変更
タイトルに数字書き足しただけです。すんまへん、

カズマの持ってるスキル変更していい?(無理がある気がしてきた。)(あと他の設定追加したい)

  • いいよ。
  • 良いわけねぇだろボケ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。