素晴らしくもないダンジョンに   作:手前

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3 足りないもの

 

「さぁ!これは遠征成功祝いや!たくさん飲んで食って祝おうやないか!」

糸目の貧乳がそう叫ぶと乾杯と声が上がる。

そんな騒ぎ知らず,俺は目の前のパスタを頬張った。

いやー、今日も麺が美味いっ!

そそくさと食べ終わり、財布を出しゴソゴソしている時に、それは聞こえた。

 

「そぉいやよ、遠征帰りで面白い出来事があったんだよ!あん時ぃ、ミノタウロスを何体か逃しちまっただろ?それ追いかけてたら、いかにも駆け出しみたいな野郎が襲われててさぁ!」

 

これ俺の話じゃね?てか面白いことも何も、赤々と俺が染まっただけだ。

 

「腹抱えて笑ったぜ、壁際に追い込まれちまってよぉ!馬鹿みたいに震えちまって、顔引き攣らせてやんの!」

酒を一緒に煽っている人々も笑った。それはもう大笑い。

異世界の笑いのセンスはわからんな。本当に。

「アイズが間一髪でミノを細切れにして助けたんだよ。なっ?」

「……」

口元に力が入る。たしかに俺の口の中ではギリッと奥歯が音を鳴らした。

「それでそいつ。クッセェ血で真っ赤なトマトみたいになっちまったんだよ!くくくっ、あー腹いてぇ!」

周りの人も笑う。他のテーブルで話を聞く冒険者も笑いを噛み殺している。

「アイズあれは狙ったとしか思えねぇぜ?狙ったんだよな?そう言ってくれよくくく!」

「…そんなことは、ないです」

悪口クソ犬は目元に涙を抑え、他のメンバーからも笑う様子が伺える。

「それに、そのガキ。そのあと人生で一番尊敬する人にします、なんて言ってよぉ。あんな弱さじゃいつ死んじまうかもわかんねぇってのに。ぷくく!」

どっと笑いが起こる。

笑う様子が、俺の目に、声が耳に響く、気分が悪くなる。眩暈がする。足元が急に崩れた様な。

「カズマさんっ…?」

財布を握るカズマの手はたしかに震えていた。

そして、そんな様子いざ知らずロキ・ファミリアの面々は騒ぎ出す。

「しかしまぁ、久々にあんな情けねぇやつ見たな。胸糞悪りぃ」

いつものことだ。馬鹿にされるのは。

「ほんとザマァねぇ。助けてくださいってなるくらいなら、最初から冒険者になんかなるんじゃねぇっての。ドン引きだぜ」

「おいベート」

高貴な感じのエルフが注意をする様な声で名前を呼ぶ。

 

「あれじゃ、そいつの神も苦労して迷惑してそうだよなぁ!」

 

その一言に目を見開き、シルに財布を投げ渡し店を飛び出した。

店では食い逃げかと騒ぎが起きる。

「おいシル。金はもらったのかい?」

「…ええ、財布ごと渡して出ていっちゃいました」

「…一体どうしたのかねぇ」

 

 

 

ーークソ、クソ。クソクソッ!

酒場を飛び出し、走った。

神ヘスティアの待つホームと逆方向に走る。

その足の先は天に届く様な塔が聳え立っていた。

 

「ハァ!」

一閃。そしてゴブリンを倒していく。

ーー勘違いをしていた。

 

カズマの周りをゴブリンの軍勢が囲う。

静かに剣を構え直し、突撃する

ーー異世界に行けば、周りが変われば俺も変わると。

 

ゴブリンどもは横に飛び、挑んでくる相手の横腹を鋭い爪で引き裂く。

「グッ…はぁ。ちくしょう」

ーー変わったと、思っていた。

「ちくしょう!」

倒れたゴブリンの頭を踏み潰し、周りのゴブリンどもを一瞥する。

 

ーー俺は変わってなかった。

 

ーー変わらなくちゃ。あの(ひと)の為にも。

 

 

 

 

遅い。カズくんが全然帰って来ない。もう朝だぞ。置き手紙は見ただろうし、何かあったのか、そんな心配をする神の元にトボトボと足取り重く向かってくる影が現れた。

「ーーカズくん!」

「…あぁ、ただいま帰った」

ヘスティアはカズマの腹部に抱きつき、見上げながら尋ねる

「おかえり!今までどこにいってたんだい!?」

「ちょっくらダンジョンに」

あとヘスティア様。健全な男児の健全な反応が起こる前に離れてくれないか。

「ささ、早く入りなよ。怪我してるし、寝てないだろう?」

ヘスティアは一旦離れ案内する様に手を差し出す。その手を取る前に、俺は訪ねた。

「…ヘスティア様。俺は、迷惑とか苦労をかけてますか」

ヘスティアの伸ばす手とカズマの間に、駆け抜ける様な風が吹いた。

怖い。なんて言われるか、怖い。

「…カズマ君」

声をかけるヘスティアに目を向けると首に手をまわし、ずいっと首を下げられる。目があった。そして両手で頬を掴まれ、顔を固定される。

「君は何か勘違いしている。毎日言っているだろう。ボクは感謝してるよ。たった一人の家族に」

こっちの目をしっかりと見て、恥ずかしげもなく言う。

「そんな家族を迷惑なんて思うわけないじゃないか!」

ヘスティアは笑った。酒場の嘲る笑いじゃない。あったかい、そんな顔が。

顔を固定する手を離した。暖かさが名残惜しい。

「ささ、早く家に帰るぞ。カズくん?」

「…はい。ヘスティア様」

先に入った幼女は振り返りカズマに笑顔を向ける。

「…どうかしたか?」

「言うことがあるだろう!君の帰りを待ってたんだぜ?」

そう言うことか。ほんと、この(ひと)はずるい。

「ただいま。神様」

「ああ。おかえりカズくん!」

きっと俺はこの日は忘れない。

 

 




カズマに足りないものは、覚悟でした。
なんか、書いてて思ったけど、これカズマっぽいかな。誰かの為に動くのがカズマなんだけど、ちょっと違和感があるって意見がたくさんあったら書き直すかも。

次回。「夢の中で」
次回はヘスティアとカズマの出会いだぜ。

カズマの持ってるスキル変更していい?(無理がある気がしてきた。)(あと他の設定追加したい)

  • いいよ。
  • 良いわけねぇだろボケ。
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