素晴らしくもないダンジョンに 作:手前
「はぁ。異世界も世知辛いなぁ…」
今ので断られるのは何軒目だ?と指を折りながら数える。十を超えそうになるところで、考えるのはやめた。
ほんと、異世界も辛いなぁ。
3日前。この世界に転生した。
転生前。俺は自分を女神と語る人物に出会った。蒼く透き通る長い髪を持ち、顔は人類の美の集合体。まつ毛は長いし、目は翡翠の様だった。
そいつは言った。
「世界は危機に瀕している」
「転生者たちの力が必要」
「ついでにチートもあげる」
なんとも、今思い返せばなんであんな胡散臭い話にのったのか分からない。
そこで、俺はチートを選んだ。選んだはずだ。選んだよね?
「チートはその世界で何者にも負けない力。何を選ぶのか、しっかりと悩み持って行きなさい」
ここで俺は…俺は……。
ーー俺、何を選んだ?
思い出せない。選べと渡された紙束に書いてある事も思い出せない。記憶の一部にモザイクがかかった様な気分だ。クソ。頭痛い。
「あ”あ”、頭痛が痛ぇ…」
あと腹が減った。クソ。転生なのに言い方一つもねぇ。
…もうちょっと思い出してみよう。
そうだ。俺はチートを決めて、女神に転生を頼んだ。
「それでは。あなたが世界を救う事を期待しています。あなたの旅路に良い出逢いが在らん事を! …あ、ヤバイミスったかも」
「いまなんていったぁああぁあーーーー」
女神の小声が聞こえた瞬間、空中に浮かび上がっていた俺はパスタのように引き伸ばされーー。気づいたらこの世界の路地裏に投げ出されていた。
思い出して、後悔半分と怒り半分の感情が込み上げる。
俺チート貰ってなくね。俺絶対転生する世界違くね。
「クソ。ああ、腹減った」
ポケットからジャガ丸くんを取り出し、一口かじりポケットに再び突っ込む。
このジャガ丸くん。転生直後何も持たない俺に幼女が賄いとしてくれたものだ。一口づつしか食べてないのはもちろん、これが最後の食事だからだ。
「転生先で餓死か。そりゃ、最悪だな」
冷え切ったジャガ丸くんを大事に咀嚼し、空を見上げる。綺麗な空だ。まさに異世界ファンタジー…。
もう、カズマの中にはファミリアに入れてくれ、なんて言う気力も失われていた。なんせ、断る理由にカズマのジャージやら頼りなさをつかれる。ここまで頑張ったのもギルド嬢に進めらたからだが、カズマの
ーー座ってるだけで空は暗くなった。
夜空も綺麗で、星々が散りばめられ、いつくか色を放つ星がある。
なんか、空を見上げるだけでもため息が出てきた。自分のうまくいかない現状にため息ばかりだ。
「お、おーい。そこの少年?青年?大丈夫かい?」
「…お前は…、以前のロリッ娘か」
「ボクをそんな不名誉なあだ名で呼ぶのも、子どもたちの中でも君くらいだよ」
「ん? お前家族いっぱいいるのか」
子供たちの中でも、と言う発言が気になった。
「いるわけないだろ!」
ちょっと怒った様子で否定される。
悪かったと返事を返すと、ロリっ娘が隣に座った。一人分空いてるけど。
「なんだロリっ娘。家出でもしてんのか?」
「今の君だけには言われたくないね」
ヘッとでも言いながら返される。機嫌悪いのか。
「俺は、ちょっと新しい環境に慣れてないだけだ。ここに来たばかりでね」
「ッ!…へ、へぇ。ここに来たばかりなんだ?」
あからさまに変に反応する幼女。
「ここに来たばかりなんだね?」
「あ、ああ」
こっちに体をずいっと寄せてくる。美幼女の急激な摂取は良くないぜっ!
「…ファミリアには入ってる?」
「入ろうと思って今日ズタボロになったとこだよ。精神が」
そうかいそうかい!っと愉快そうに幼女は頷く。
と思ったら幼女は深呼吸し始めた。
「よしっ! な、なぁ君! ボクのファミリアに来ないかい!?」
「え、ごめん」
え、と言い幼女は固まる。それは石の様だ。
まずったな。
「あー、自己紹介もまだだろ?俺の名前は佐藤和真。カズマって呼んでくれ」
「カズマ…カズマくん…?あぁ! よし。これから君はカズくんだ!」
そんな親しみある様な呼び方でいいんですか!?この幼女、末恐ろしい…。
「それじゃ、ボクは神。名をヘスティアと言う。神様だよ!」
「神様もバイトするんですね」
「痛いとこ突くじゃないか。最近の子供たちも酷くってね。金が欲しけりゃ神でも自分で稼ぎなーって。いつからこんなに図太くなったんだい?」
ムキャー!っと怒りをあらわにしながらも少し嬉しそうに語る神。
子供たちってのは人類とか、神以外の事を言ってたんだな。
感情が良く出てくる神だな。
「あー、それでカズくん。どうかな。ボクのファミリアに入ってくれる?」
上目遣いで尋ねてくる。
僕っ子に巨乳にツインテールにそしてこの可愛さ。俺は喜んでその手を取った。
「お願いします」
渾身のキメ顔で。
ボロボロの教会に案内されたときは、流石に冗談かなにかと思った。
まあ、ここで俺はヘスティア様の家族になったわけだ。この言い方俺はとっても好きだ。具体的には家族になったってところ!他意はないですよ?
ダンジョンに潜る様になってから一週間も経たず、俺は行かなくなった。
仕方ないね。ニートだもの。
行かなくなってから三日間くらい、ずっとヘスティア様に言われた。ダンジョンに行けー、行かないならせめてバイトして、と。
俺は気分が乗らなかった。多分、俺は前世から変われてなかったんだな。
ある日、午後から豪雨の日があった。ヘスティアはバイトから帰ってきたとき、疲労していた。それを知ったのは、ヘスティアが倒れた音を聞いたあとだった。
バタッと静かな部屋に響いた。
俺は布団から這って顔を音の方向に向けると、荒い呼吸でびしょびしょな神が倒れていた。
そこからは、早かった。ヘスティアをソファに運び、タオルを渡し、風呂を沸かした。ヘスティアを風呂に入れてから、俺は初めて台所に立った。
こう言うときはお粥と相場が決まっているのは知っていた。
できたお粥は、ビシャビシャで、お世辞にも美味いなんて言えるものじゃ無かった。でも、ヘスティアは「美味いぜ、カズくん」なんて言いながら食べるのだ。
ヘスティアを温めたベットに寝かせてから、カズマは泣いた。
情けなさと、後悔と、自分の愚かさに。
次の日。
ヘスティアはまだ良くならない。
「ヘスティア様。安静にしといて下さいね」
「…いや、カズくん、ボク、バイトに行かないと」
息を切らしながら辛そうにそう言う神に、己の情けなさが襲う。
「バイトは休みにできる様に交渉してきます」
カズマはこの時初めて、自分の意思でダンジョンへ向かった。
長い間ダンジョンに潜った。はずなのに。
俺の稼ぎは雀の涙ほど。雀の涙よりも小さな稼ぎだった。
「ただいまヘスティア様」
ヘスティア様は、未だ良くならない。
また次の日。
ヘスティアを背負い、病院へ行く事に決めた。
昨日の内に、行く場所には検討を付けてある。
青の薬舗だ。ミアハと言う神が経営する店。神の病は神がどうにかしてくれる。してくれなきゃ困る。
ヘスティアを背負い、店へ急いだ。
まあ、結果から言うと風邪だった。薬を飲み少し元気になったヘスティアはやっぱ風邪かーとコロコロと笑ってた。
薬をいくつか貰い、教会へ戻った。
「なあカズくん。あんまり急がなくてもいいんだぜ?」
「急いでませんよ」
「最近ダンジョンに行くようになったじゃないか」
俺は、黙ってしまった。何を言えばいいのか、分からなくなった。
ヘスティアが良くなった日。
カズマは決めた。決意だ。
「ヘスティア様、今日は一応、心配なんで安静にしてて下さいね」
うん、と返事を返されたのを確認し扉に手をかけた時、呼び止められた。
「なあカズくん。君は何のために、ダンジョンに潜るんだい?」
それは、決意の確認。
カズマは背を向けたまま話す。
「俺は、俺の為に潜ります。良い暮らしをする為です。そしていつかバイトなんか行かず、でっかい家でのんびり過ごす。そんな日を手に入れて見せます」
そうか、と短く返すと布団に篭ってしまった。
ドアが閉められた音がした時、ヘスティアは独り言をこぼす。
「まったくさ、神には嘘が通用しない事、カズくんは知らないのかな」
カズマの言葉からは嘘が分かった。俺の為だと言う彼の言葉は嘘なんだろう。
嘘をつかれたのはちょっと心外だけど、
カズマがダンジョンに潜るのは、おそらくヘスティアの為なんだろう。
バイトにも行かず、のんびりと過ごす…ね。
初めて聞けた
神はベットの中でその幸せを噛み締めた。
ーーパチッと目が覚めた。そうか。俺昨日酒場からダンジョンに突っ走って、で死にかけてきたんだっけ。懐かしい夢を見たな。ヘスティアと会った時の夢だ。
今思うと、ほんと情けなさ過ぎて涙が出るぜ。
そうだ。俺。ヘスティアに苦労をかけないって決めたんだ。起きてダンジョンに行こう。変わるのは今からだ。
ついでに、カズマの経験値ブーストはチートではありません。
このすば原作では自分的にはすごい速度でレベルが上がった様に思いましたので、ブーストあったんじゃね?って事でカズマに経験値ブーストを付けています。
あとさ、思ったけどカズマはしっかりするまでは、うん。でも私、これくらいの助走が必要なのがカズマだと思うんだ。助走でどんな道を走るのかは知らないけどね。
【誤字報告】
Y4HHOさんありがとうございました。
画戯丸さんありがとうございました。
変更
なんか時系列分かりにくい。
カズマの持ってるスキル変更していい?(無理がある気がしてきた。)(あと他の設定追加したい)
-
いいよ。
-
良いわけねぇだろボケ。