Q.ルギアにまいこはんは似合わないのか? 作:GT(EW版)
──ポケットモンスター金銀において、「進化の石」はショップで購入することができない希少品である。
特にお馴染みの石の入手手段はマサキのお爺さんから与えられる課題の報酬か、お母さんの貯金か。マイナーチェンジ版のクリスタルではポケギアに電話番号を登録した特定のトレーナーから貰うこともできるが、進化の石はバグ技でも使わない限り手軽に入手することができないシリーズ随一の希少性を誇っていた。
リメイク版であるHGSSでは新たに導入された新要素「ポケスロン」の景品となっている為入手難度はある程度緩和されているが、本作RHGDSSではさらにそれに加えて「タカネからのプレゼント」で入手することができるようになっている。
うずまきじまのぎんのほこらを根城にしているぎんのみこタカネは、無料アップデートにより配信されたイベントを進めることで一日一回、「ポケモンのわざあてクイズ」と題したミニゲームに挑戦することができるのだ。
これをクリアすることで進化の石を始めとする希少品を選択して受け取ることができ、難問をクリアした場合にはおまけとして「ぬおっとしたとっくん」までしてくれると言う。
ポケモンの個体値をMAX相当の数値へと引き上げる「すごいとっくん」は今ではすっかりお馴染みとなっているが、「ぬおっとしたとっくん」は本作から初めて導入された新要素である。
その内容は「すごいとっくん」のさらなる強化版──ポケモンの各ステータス全ての個体値に対して、「最高値にするか最低値にするか選べる」というものだった。
一見すると最低値にすることに何の意味があるのかと疑問に思えようが、それは対戦に力を入れているポケモン廃人たちにとっては、長年待望されていた要素であった。
その理由は対戦において、個体値が低い場合の方が最良とするケースが多かったからだ。
例えば特殊技しか使わないポケモンの場合、「こうげき」の個体値が高いと「イカサマ」や「こんらん」の自傷で受けるダメージが増えてしまう為、「こうげき」の個体値はなるべく低い方が良い。
自分または味方が「トリックルーム」を使う場合には、「すばやさ」の個体値が高いと先手を取れなくなる可能性が出る為、「すばやさ」の個体値は低い方が良い等。
日夜廃人道を歩むヘビーユーザーにとって、最高の個体とは最強の個体値にあらずということなのだ。
故に、そういった事情からタカネの「ぬおっとしたとっくん」は新たなる育成の救世主として歓迎されたものだが……この要素には幾つか欠点もあった。
それは、「わざあてクイズ」に挑戦できるのが一日一回と決まっている為、「おうかん」を使ったすごいとっくんのように一度に複数のポケモンに対して行うことができない点だったり。
それは、タカネのいる「ぎんのほこら」への手軽なアクセス手段が無い為、日課として行うにはすこぶる面倒な点だったり。
何より「ぬおっとしたとっくん」を報酬とする「わざあてクイズ」の難問編自体が、相当にやり込んだプレイヤーでなければ初見クリアが難しい点だったりと……特に出題相手がヌオーだった場合、いつもの表情から予備動作も薄く放たれる技を読み取ることは非常に困難だった。
クイズ自体は数秒で終わる上に、外れてもリトライは可能だ。その上、五回以降は健闘を讃えてタカネがサービスしてくれる親切設計となっているのだが……その際に彼女が語る「わたしのことは きらっても ヌオーのことはきらわないでね」という台詞に申し訳ない気持ちになったのは、筆者だけではないだろう。
しかしいかにクイズが難問だろうと、それが理由でプレイヤーのヘイトが彼女とヌオーに向くことはない筈だと信じている。
何故ならそんなことが気にならないほどに、次世代グラフィックが表現するヌオーのぬおっとした仕草があまりにも可愛らしいからだ。
ポケモンのかわいいは全てにおいて許される。そんな最新リメイクな本作である。
うずまきじまでのぬおっとした特訓はシルバーに対して大きな好影響を与えたが、彼がこの場所に留まり続けることはもちろんあり得ない話である。
寧ろ最強のポケモントレーナーを目指し日々転々としている彼が、半月以上も同じ場所に滞在していること自体が過去に無い珍事だったのだ。
そんな彼は実力向上の成果としてタカネのポケモンたちが繰り出す「技当てクイズ」の正答率が安定し、最後の手持ちポケモンであるレアコイルの進化の番に回ってきたのを機に、彼の修行には一つの区切りがつくこととなった。
反応速度も直感の冴え渡り方も、初めてこの島に来た時とは明らかに違う。短い期間で予想を遥かに上回る成長ぶりを目の当たりにしたタカネが、心から驚いた様子で賞賛を贈る。
「簡単にクリアされたら悔しいから、途中から露骨に難易度を上げたつもりなんだけど……凄いねシルバーくん。私のバンギラスなんていつも怖い顔しているのに、よく「こわいかお」の発動を見極めたよ」
「ヌオーの顔から「ドわすれ」を読み取るよりは簡単だろ」
「ぬお?」
「うん、一番苦戦していたのはヌオーのクイズだったね。技を使う時もぬおっとしてるから読みにくいんだよね〜」
「…………」
何はともあれこれで全てのポケモンが進化完了だねと、タカネはレアコイルを進化させることができる特別な「かみなりのいし」を取り出す。
それはこの日の為に彼女がこっそりと外部から取り寄せていたものである。
発注先はエンジュシティが誇る踊り場の5姉妹──タカネの頼れる姉たちである。
家系の伝統から幼い頃からイーブイと共に暮らしている彼女らは、こと「進化の石」に関しては他所よりも詳しい知識を持っていた。
そんな彼女らもまた、しんかポケモンである自らのイーブイを各々が望んだ姿へと進化させてきたものである。
長女タマオはブラッキー。
次女サツキはサンダース。
三女コウメはブースター。
四女コモモはシャワーズ。
五女サクラはエーフィ。
末っ子タカネはニンフィア。
それが、オリ主を含めたこの世界のまいこはん6姉妹である。
タカネが前世で遊んだゲームでは各媒体で微妙に名前や扱うポケモンが違っていたり、姉妹間での立場が異なっていたりしたものだが、この世界では以上のようになっている。
タカネとしては本来いない筈の6人目の末妹がいる時点で何か、バタフライエフェクト的な変化が訪れたのだろうと軽く考えていた。
金銀とHGSS、さらにはアニメ「ポケットモンスター」が混ざり合ったようなハイブリッドな容姿、立場には原作知識が詳しい者ほどややこしく感じるところであろうが、タカネは特に混乱することなく受け入れている。
寧ろアニポケは金銀編が直撃世代である彼女はHGSSをプレイしていた頃には「エーフィの担当はサツキじゃなくてサクラでしょうが!」という固定観念を持っていたので、前世の記憶を取り戻した後で姉たちと顔を合わせた時は「そうそうこれだよこれ!」と満足感すら抱いたほどだ。
そう言うわけでタカネに最も歳の近い姉、五女サクラの容姿はアニポケ版のそれに似ていた。因みにハナダジムリーダーカスミとは大の仲良しである。それを知ったタカネは、当人たちから困惑されるほどテンションが上がったものである。
閑話休題。
技当てクイズ最後の報酬、レアコイルの進化が最後になってしまったのも単にタカネに石の持ち合わせが無かったからであった。
しかしクイズに正解すれば進化させてあげると言った手前、やっぱりできませんでしたとは言えず、彼女は自身の人脈を余すこと無く使い、姉に泣きついた次第だ。
幸い、該当の品はサンダースを扱う次女サツキが持っていたようで、彼女も末妹からの頼みを久しぶりに受けたのが嬉しかったのか、「たまには帰って来なさい」と苦笑しながらも快く引き受けてくれたものである。新たにオリ主を加えたエンジュのまいこはん6姉妹だが、姉妹仲は至って良好だった。
しかしそんな経緯で発注した「かみなりのいし」を最後の報酬として差し出す前に、タカネは念を押すようにシルバーに訊ねた。
「この石を使えば、レアコイルはジバコイルに進化する。だけど、本当にいいの? 何だったらかみなりのいしじゃなくて、「しんかのきせき」でもいいんだよ?」
レアコイルをジバコイルに進化させるという行為に対して、彼女の脳裏にチラついたのは前世の記憶に残る「レアコイルの方がジバコイルより強い説」である。
レアコイルの進化形であるジバコイルはほぼ全てのステータスがレアコイルを上回っており、特に「とくこう」の数値は粒揃いの電気タイプでもトップクラスのポケモンだ。
しかし、ポケモンバトルにとって特に重要な「すばやさ」に関しては、進化前であるレアコイルに軍配が上がる。
進化前のポケモンのみ扱うことができる強力な道具「しんかのきせき」を持たせることによって、耐久面ではジバコイルを上回るのも利点の一つであり、進化してしまったら後戻りができない以上決断が必要だった。
タカネ自身もまた、同様の理由からポリゴン2をあえて最終形態であるポリゴンZに進化させていなかったのだ。ポリゴン2の場合は全ポケモンの中でも「しんかのきせき」で受ける恩恵が特に大きいポケモンだからというのがあるが……進化させることだけが最善の道とは限らない、ポケモンバトルの奥深さ所以であろう。
──やはり何と言ってもまず高い特殊攻撃力ですよね。とくこう種族値全ポケモン中第87位の120。
で、そこから繰り出される10万ボルト。まあ、ボクはあえて決定力を上げる為にかみなりを採用して行くんですけれども、 非常に強力ですよね。
後、鋼電気といった防御面攻撃面共に優れているタイプもこれ魅力的だと思います。まあ、シルバーさんなら余裕で理解できますよね。はい。
「なんだ急に気持ち悪いな」
──ご存知ですか? ジバコのすばやさ種族値60、それに対しレアコイルの素早さ種族値は70なんです。
この10の差がとても大きくて、 レアコイルの場合はすばやさに補正を掛けて、努力値を252振る事で実数値134。 これにこだわりスカーフというアイテムを持たせる事により1.5倍となって201にまで達するんです。
これはサンダースやクロバットといったメジャーポケモン所謂130族の最高数値を1だけ上回る数値なんですね。 ポケモンというのはすばやさが1違うだけで先手後手が決定してしまうゲームです。 だからその1の差でこういった強力なポケモンに対して先手攻撃を打てるんです。まあ、倒せるかどうかは別として。
確かにジバコイルはレアコイルよりも耐久力決定力共に上回ってはいますが、 すばやさではレアコイルが上回っている以上明確に差別化が出来ていますし、下手すりゃこれレアコイルの方が強いんじゃないですかね。だからあえてレアコイルで止めてるんです。
「……という理論を、聞いたことあるよ!」
「レアコイルがジバコイルより速いのはわかったが……そのおかしな数値は何だ?」
「うーん……ポケモンのステータスを数値化して戦う、シミュレーションゲームみたいなものかな?」
「くだらん」
「ひどい……」
朧げな前世の記憶からレアコイルジバコイル論争の内容を捻り出してみたが、自分で思っていたよりも案外覚えているもんだねとタカネは自らの記憶力に感心する。
尤もそれが公的な場で語られた講義だったのかポケモン廃人が作ったネタ動画だったのかは曖昧になっていたのだが、レアコイルの長所を語る上ではこれ以上無くわかりやすい名文だと感じていた。
尤もシルバーが辛辣に一蹴したように、リアルで行うポケモンバトルは戦闘シミュレーションゲームとは全くの別物である。
「素早さがそんなに重要なら、お前の強さが説明つかないだろ」
「あら、嬉しいこと言うね」
この世界のポケモンバトルでも、足の速さが重要なステータスなのは間違いない。
だが、ゲームと違って交互に攻撃のターンが渡ってくるわけではない為、どの程度「すばやさ」を重視するかはトレーナーのバトルスタイルの向き不向きやパーティ構成にもよるだろうとタカネは考えていた。
因みにタカネはそこまで重視していない。彼女のパーティメンバーは種族値で言えば60前後のポケモンがほとんどであり、70のエアームドが最速という鈍足集団である。
レベル差の暴力やバレットパンチのような先制技で誤魔化すことも多いが、彼らの本領は並大抵の攻撃はぬおっと受け流す高い防御性能にあった。
その点、シルバーのパーティはゲンガーにフーディン、クロバットにマニューラと「すばやさ」の高い面々を多く揃えており、タカネとは正反対なパーティ構成をしていた。
オーダイルも特別遅いわけではなく、彼のポケモンの中で最も遅いレアコイルですらエアームドと同等の70である。
「私の場合は攻めて攻めて攻めまくる戦い方よりも、耐えてじっくり迎え打つ戦い方の方が合っていたし……速いポケモンの動きをずっと追い続けるのがしんどいって言うのもあったね。その点ずっと集中力を切らさずに対応できるキミは凄いと思う」
「つまらん世辞はいい」
「褒めてるんだけどなぁ……」
ポケモンの体力を削り合うのがポケモンバトルだが、バトル中のトレーナーの体力も無限ではないのだ。相手のポケモンに注視するだけならともかく、自身のポケモンの動きも同時に見続けるのは相当な負担になる。
自分のことをそこまで集中力のある人間だと思っていないタカネには、そう言ったバトルは向いていないと感じたのだ。
故に彼女は、敵の攻撃に対して被弾を恐れることなくどっしりと構え、粘っこく戦いながらも時に高火力で押し切る形に自身のバトルスタイルを確立していた。
「まあ、キミもキミに合った戦い方が見つかると思うから、レアコイルを進化させるか決めるのはその後でもいいんじゃないかな?」
彼がパーティの特色を生かしたスピード重視のバトルに振り切るのならば、クロバットたちのすばやさに慣れた目ではジバコイルの鈍足さに苛ついてしまう危険性がある。
それこそジバコイルより速いレアコイルに「こだわりスカーフ」や「しんかのきせき」を持たせるのも一つの手だと思っていた。
いずれにせよ、それは彼の決めることである。もうこの際二つともあげちゃおうかと右手に「かみなりのいし」を、左手に「しんかのきせき」を携えたタカネに向かって──シルバーが選んだのは右手だった。
「俺の目指す戦いは、誰よりも先へ進み、圧倒的な力で捩じ伏せる戦いだ」
そう言って差し伸ばした手は、彼女の右手から迷い無く「かみなりのいし」を掴み取っていく。
そのまま流れるような動作で彼は、傍らに鎮座しながら決断を待っていたレアコイルにその石を当てた。
まばゆい光が金属の身体を包み込み、その姿形を大きく変えていく。
「俺は立ち止まらない。コイツらと進んだ道に後悔もしない。それが……俺の選んだ強さだ」
三体のコイルが連結した姿のレアコイルは、真ん中のコイルが大型化し、UFOのような姿をしたジバコイルへと変貌した。
機械的な顔つきで、一見無機質にも見えるその目は──進化を選んだ主人の選択を喜んでいるかのように見えた。
この場所でぬおっとすることの何たるかを学んだシルバーは、以前まで抱えていた信念をより確固たる物へと昇華させたのである。
彼は進化を恐れない。
進化の先にある力を、誰よりも愚直に求め続けた。
しかし以前までの彼とは違い、その目には迷いも焦りも無かった。
何故ならそれもまた、進化した自分のポケモンこそが最強なのだという──彼のポケモンに対する無償の「信頼」の証だったからだ。
そんな彼の心境の変化を目の当たりにして、タカネは──
「……どうしよう……ぎんいろのはねあげちゃってもいいかな? でもまだウツギ博士に謝ってないし……ううむ……」
推しの成長を前に、一人葛藤していた。
こうして見るとジョウト産のメジャーポケモンってカッチカチだなって思う
ライジングハートゴールド&ディープソウルシルバーの掲示板回
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