目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第95話 Side『ニューヤーク燃ゆ』

 

「はっきりと物を言う。気に食わんな」

 

 ワイングラスを揺らしながら、シャアが言ってくるが、無視だ。気に入られるために部下をやってるわけじゃないからね。

 

「作戦に失敗した客人は黙っていてください。これは我が部隊の大将の問題です」

 

 きっぱり言い切ってやると、さすがに鼻白んだのかシャアは動きを止めた。

 

「フィンゴ中尉、シャアは私の友人だ! 侮辱は――」

 

「普段、貴方が口にしているザビ家の男とは、ずいぶんと都合が良いのですな」

 

「なんだと!?」

 

「なるほど、貴方にすり寄ってくる財界の連中は貴方を見ていない。貴方を通して父君であるデギン公に取り次いでもらいたいと考えている。それは貴方に力がないからだ。経験も、実力も足りない。だというのに貴方は、この折角の機会を不貞腐れてすごすおつもりですか? せっかくゼクス少佐とギャレット少佐が場を作ってくださっているというのに」

 

 ゼクス少佐たちの周囲の輪は、外から眺める限りは和やかだ。

 

 人はやはり、輝かんばかりの才覚を――この場合は容姿だ――持っているものに惹き寄せられる。

 

 中には企業の上役なども含まれている。

 

 このまま、少佐たちに任せるのも良いのかもしれない。でも、それではいつまでもガルマは侮られたままだ。

 

「ザビ家の男だというのなら、そのザビ家から与えられている特権を有用に使いこなしてみせてはどうです? でないといつまでもボウヤのままですよ」

 

 僕の煽りにガルマ大佐は、全身を震わせながら、ワイングラスをテーブルに置いた。叩きつけなかったのは、称賛してもいいな。このグラス、いまでは珍しい本物のガラスなんだよ。

 

 ひとつ大きく息を吐いて、大佐はかぶりをふる。

 

 かなりの自制心を発揮したみたいだ。

 

「ほう」

 

 横で面白がるように見ていたシャアが意外そうな声を発した。

 

 たぶん癇癪を起こすと思ってたんだろうね。でも、これまで接してきたなかで、だいぶ大佐は鍛えられたからねー。まあ、主に僕が煽りまくった結果ともいうが。

 

「キサマに言われんでもわかっている。これは政治だというのだろう」

 

「ご理解なさっているのでしたら、さっさとあの輪に参加してきてください、それで顔を売って、金貨の1枚でもくわえてもってきてくださいよ。それが明日のジオンに繋がるのですから」

 

 実はこのパーティーには、アナハイム・エレクトロニクスの人間も密かに参加している。

 

 ケイ技術少尉が、ジオ・マッドの知り合いづてで仕入れたネタだ。

 

 アナハイム・エレクトロニクスは月にあって、軍事用品から民生品まで、連邦の工業・電子・電気機器製品を支える軍産複合体だ。

 

 月の専制君主とまで言われる大企業。

 

 このアナハイムとつながりのない企業は皆無と呼べるほどの存在である。

 

 連邦政府とも深く癒着しており、原作では、UC100年代まで圧倒的な影響力を与え続けた。

 

 そんなバケモノ企業の人間が、身分を偽ってここに参加しているのは、おそらくこの戦争の帰趨を測ってるんだろう。

 

 どちらにつくのがより得か? 金のたまごを産むのはどのガチョウか?

 

 商人の考えることは常に明快だ。

 

 ガルマ大佐には、彼らと本国の強固なパイプ役になってもらいたいと思っている。

 

 まっくろくろな企業だが、それでもこの世界の経済を大きく担っている存在だ。無視などできないだろう。

 

 いつまでも戦争特需は続かないのだから、どこかでこの戦いを終わらせないとならない。でないと、どちらかが力尽きるまで争うことになってしまう。

 

「さ、行ってください。このままだと、ゼクス少佐が全部持って行ってしまいますよ」

 

「言われんでも!」

 

 大佐は僕を視線で殴りつけるように睨んでから、髪をかき上げ、大股でホールの中心へと向かっていった。

 

 途中、ゼクス少佐がこちらに視線をやるのが見えた。

 

 今回悪役を被ってあげたのは貸しですからね。あとは、そちらで上手く回してくださいよっと。

 

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