目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第97話 Side『ニューヤーク燃ゆ』

 

 そんなことを考えていたら、シャアが興味深そうにこちらを見ていることに気づいた。

 

 男に見つめられても嬉しくないね。女性の場合も、相手によるな。

 

 キリー少佐みたいな美人なら楽しいけど、キリシマ嬢やノイン女史だと震えがくる。

 

「さすがじゃないか、中尉」

 

 向こうが声をかけてくる。

 

 無視してんのわかれよ。お前ニュータイプなんだろ。

 

 あ、まだ覚醒してないのか。

 

「あのガルマの名を、宇宙でもよく聞くようになったと思っていたが。なるほど、君のような部下がついていたのだな」

 

 どういう意味だ?

 

 口調と態度から、ガルマ大佐を下に見ている感じは伝わってくるけど。

 

「あのボウヤに言うことをきかせるのは、苦労があるだろう」

 

 ガルマ大佐の方を見ると、招待客たちとうまく談笑している。

 

 ゼクス少佐やキリー少佐のフォローもあるのだろうけど、大佐はもともと外交能力は高い。

 

 ザビ家の末子であり、世間知らずのお坊ちゃんであるが、素直であるため、物事に対する吸収が早いぶん伸びしろがある。

 

 外交官とした場合、素直で経験不足というのはたしかに相手に侮られる要因となる。

 

 けど、彼のバックには強力なザビ家という存在が控えている。デギン公の末子として可愛がられているのは周知の事だから、相手は下手なことはできない。

 

 また、侮られるというのも才能のひとつだ。

 

 度が過ぎるのは何事も考えものだけど、彼の場合はその素直さ、実直さ、誠実さによって相手の懐に入りやすい。

 

 取るに足らない存在だと思っていたら、いつのまにか無視できない位置を占めている。それをガルマ大佐は自然とできてしまうのだ。

 

 ガルマ大佐は、自分には才覚がないと焦っている部分があるがそんなことはない。

 

 生まれも、育ちも、それらすべてが自身の武器だ、と気づくことができれば、彼は一皮剥けるだろうな。

 

「君は……フィンゴ中尉と言ったか」

 

「ええ」

 

 無視してんのにしつこい人だなぁ。

 

「君さえよければ、私の部隊に来ないか?」

 

 はあ?

 

 何言ってんのこの人。

 

「どういう意味でしょう?」

 

「なに、君の境遇を慮った。そう箴言(しんげん)ばかりしていたら、疎まれているのではないか?」

 

 疎まれてるの確かですけどね。あの人、最近だと僕の顔見ると眉根寄せるから。

 

「宇宙軍では近々大きな動きがある。優秀な人材を一人でも多く集めておきたいのだよ」

 

 大きな動き……ルナツーでも攻めるのかな。

 

 そんなことこんな場所で言うなよ。

 

 そこまで声は大きくないけど、誰が聞いているのかわかんないんだぞ。

 

「お断りします」

 

「そうか。ガルマに義理立てしているというのなら、私が口をきくが?」

 

「義理で戦争はしませんよ。単純に、貴方と彼では器が違うというだけの話です」

 

「なに?」

 

 シャアのトーンが1つ下がる。

 

 この人、割と面罵されるのに慣れてないっぽい。

 

「私がガルマに劣ると?」

 

「ええ、大きく」

 

 プライドが大きく刺激されたみたいだ。

 

 彼はこちらに全身で向き直った。

 

 仮面で見えないけれど、強い視線が投げかけられているのがわかる。おそらく、怒りだ。

 

「後学のために説明してもらいたいものだな。私のどこが劣るというのか」

 

 どうすっかな。

 

 見下ろしてくるシャア。

 

 この人はガルマを裏切る。ザビ家への復讐のために。

 

 それを止めたいところだが、手段がない。

 

 原作のガルマ暗殺は、現場の状況を利用して成したことだ。彼が直接手をくだしたわけではなく、そうなるように仕向けただけ。

 

 だからこの人が裏切っている、という証拠が今はないんだ。

 

 シャアに「お前キャスバルだろ」って告げるのも悪手だ。より警戒される。

 

 ガルマ大佐やキシリア少将に報告するのも無駄だろう。

 

 ガルマ大佐は彼のことを親友と信じ切っているし、キシリア少将にいたっては、キャスバルということはすでに知っているんじゃないかと思う。

 

 優秀な諜報部がそれを知らないってないと思うんだよね。常に足取りは追っていたはずだ。

 

 そうでなかったとしても、告げ口したら「なんでお前がそんなこと知ってるんだ?」って余計に事態をややこしくしかねない。

 

 どうするか考えてたら、会場が静かになった。

 

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