目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
そんなことを考えていたら、シャアが興味深そうにこちらを見ていることに気づいた。
男に見つめられても嬉しくないね。女性の場合も、相手によるな。
キリー少佐みたいな美人なら楽しいけど、キリシマ嬢やノイン女史だと震えがくる。
「さすがじゃないか、中尉」
向こうが声をかけてくる。
無視してんのわかれよ。お前ニュータイプなんだろ。
あ、まだ覚醒してないのか。
「あのガルマの名を、宇宙でもよく聞くようになったと思っていたが。なるほど、君のような部下がついていたのだな」
どういう意味だ?
口調と態度から、ガルマ大佐を下に見ている感じは伝わってくるけど。
「あのボウヤに言うことをきかせるのは、苦労があるだろう」
ガルマ大佐の方を見ると、招待客たちとうまく談笑している。
ゼクス少佐やキリー少佐のフォローもあるのだろうけど、大佐はもともと外交能力は高い。
ザビ家の末子であり、世間知らずのお坊ちゃんであるが、素直であるため、物事に対する吸収が早いぶん伸びしろがある。
外交官とした場合、素直で経験不足というのはたしかに相手に侮られる要因となる。
けど、彼のバックには強力なザビ家という存在が控えている。デギン公の末子として可愛がられているのは周知の事だから、相手は下手なことはできない。
また、侮られるというのも才能のひとつだ。
度が過ぎるのは何事も考えものだけど、彼の場合はその素直さ、実直さ、誠実さによって相手の懐に入りやすい。
取るに足らない存在だと思っていたら、いつのまにか無視できない位置を占めている。それをガルマ大佐は自然とできてしまうのだ。
ガルマ大佐は、自分には才覚がないと焦っている部分があるがそんなことはない。
生まれも、育ちも、それらすべてが自身の武器だ、と気づくことができれば、彼は一皮剥けるだろうな。
「君は……フィンゴ中尉と言ったか」
「ええ」
無視してんのにしつこい人だなぁ。
「君さえよければ、私の部隊に来ないか?」
はあ?
何言ってんのこの人。
「どういう意味でしょう?」
「なに、君の境遇を慮った。そう
疎まれてるの確かですけどね。あの人、最近だと僕の顔見ると眉根寄せるから。
「宇宙軍では近々大きな動きがある。優秀な人材を一人でも多く集めておきたいのだよ」
大きな動き……ルナツーでも攻めるのかな。
そんなことこんな場所で言うなよ。
そこまで声は大きくないけど、誰が聞いているのかわかんないんだぞ。
「お断りします」
「そうか。ガルマに義理立てしているというのなら、私が口をきくが?」
「義理で戦争はしませんよ。単純に、貴方と彼では器が違うというだけの話です」
「なに?」
シャアのトーンが1つ下がる。
この人、割と面罵されるのに慣れてないっぽい。
「私がガルマに劣ると?」
「ええ、大きく」
プライドが大きく刺激されたみたいだ。
彼はこちらに全身で向き直った。
仮面で見えないけれど、強い視線が投げかけられているのがわかる。おそらく、怒りだ。
「後学のために説明してもらいたいものだな。私のどこが劣るというのか」
どうすっかな。
見下ろしてくるシャア。
この人はガルマを裏切る。ザビ家への復讐のために。
それを止めたいところだが、手段がない。
原作のガルマ暗殺は、現場の状況を利用して成したことだ。彼が直接手をくだしたわけではなく、そうなるように仕向けただけ。
だからこの人が裏切っている、という証拠が今はないんだ。
シャアに「お前キャスバルだろ」って告げるのも悪手だ。より警戒される。
ガルマ大佐やキシリア少将に報告するのも無駄だろう。
ガルマ大佐は彼のことを親友と信じ切っているし、キシリア少将にいたっては、キャスバルということはすでに知っているんじゃないかと思う。
優秀な諜報部がそれを知らないってないと思うんだよね。常に足取りは追っていたはずだ。
そうでなかったとしても、告げ口したら「なんでお前がそんなこと知ってるんだ?」って余計に事態をややこしくしかねない。
どうするか考えてたら、会場が静かになった。