目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
「ニューヤーク市長、エッシェンバッハ氏の御令嬢、イセリナ・エッシェンバッハ嬢のご登場です」
アナウンスがはいり、両階段をドレスで着飾った少女が降りてくる。
初めて目にしたけど、けっこうな美人だ。少女と大人の中間、タレ目なために年齢よりも幼い印象を受ける。
ロリコンの気があるシャアも「ほう」と感嘆するくらいだ。
ガルマ大佐が笑みを浮かべて彼女をエスコートする。
困ったのは、それまで相手していた財界連中そっちのけで、二人の世界に入ってしまったことだ。
ゼクス少佐がなんとか軌道修正しようとしているが、大佐は邪険にあしらう始末。
「前線でラブロマンスとはな。ガルマらしい」
嘲笑を唇に浮かべてシャアが言った。
「彼に将器があると言ったな。私事を優先する人間に、将がつとまるとでも?」
――それはアンタだって同じだろう。
思わず出かけた言葉を飲みこむ。
「若いうちは誰しも恋などするものですからな。後で説教でもかましておきます」
愛など粘膜の生み出す幻想に過ぎん。とでも言ってやりますかね。
「君もじゅうぶんに若く見えるが?」
「皆さんそう言われますね。少なくとも私はゼクス少佐より年食ってますよ」
シャアは驚いた、というより引いた感じだ。
まあ、僕の見た目は間違いなく少年だからね。でも人生2度目で、士官学校も君らより先に出てるんだよ。
なんとかしてこの会話を切り上げたいな、と考えていたら、ガルマがイセリナ嬢を連れてテラスへと出ていく。
客人置いていくんじゃないよ色ボケボウズめ。
「少佐、これで失礼します」
そう言って歩き出した僕の背中に、勝ち誇った声がかかる。
「是非、頑張ってくれたまえ中尉」
けっこう嫌味なやつなんだな、シャアよ。ま、あらゆることを根に持たない人間が、復讐者になるわけもないか。
テラスの出入り口までくると、警備の兵士が僕を押し留めた。
「大佐から、誰も通すなとの仰せでして」
階級を見ると、相手は少尉だ。
「悪いが軍務だよ。どうしても伝えなきゃならないことがあるんだ」
嘘じゃないよ。軍にかかわってくることだもんね。
「しかしですな」
彼は逡巡を見せた。まだ若い士官だ。職務にはまじめらしい。
「大佐殿に早急にお耳に入れねばならない事案だ。君は今は、軍に多大な不利益を与えている。今後の我が軍の動向に関わるものだ。1秒を争う。即刻そこを退きたまえ」
硬い口調で言ってやる。
こういうとき、僕の容姿はマイナスに働くことを知っているから、わざとだ。
案の定彼は動揺し、目を泳がせはじめる。どうすればいいか迷っているのだろう。
職務に忠実なのは美点だけど、この場では邪魔でしかない。
「責任はこちらが取る、君は向こうに行き、客人たちの警護をしていてくれ」
責任の所在を明確にしてやると、ほっとした様子を見せて少尉は敬礼し、持ち場を去った。
やれやれ。
さて、こっからが本番だ。
お坊ちゃんを諭さなければならない。
損な役回りを買ってしまったなぁ。ゼクス少佐、恨みますよ。