目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第98話 Side『ニューヤーク燃ゆ』

 

「ニューヤーク市長、エッシェンバッハ氏の御令嬢、イセリナ・エッシェンバッハ嬢のご登場です」

 

 アナウンスがはいり、両階段をドレスで着飾った少女が降りてくる。

 

 初めて目にしたけど、けっこうな美人だ。少女と大人の中間、タレ目なために年齢よりも幼い印象を受ける。

 

 ロリコンの気があるシャアも「ほう」と感嘆するくらいだ。

 

 ガルマ大佐が笑みを浮かべて彼女をエスコートする。

 

 困ったのは、それまで相手していた財界連中そっちのけで、二人の世界に入ってしまったことだ。

 

 ゼクス少佐がなんとか軌道修正しようとしているが、大佐は邪険にあしらう始末。

 

「前線でラブロマンスとはな。ガルマらしい」

 

 嘲笑を唇に浮かべてシャアが言った。

 

「彼に将器があると言ったな。私事を優先する人間に、将がつとまるとでも?」

 

 ――それはアンタだって同じだろう。

 

 思わず出かけた言葉を飲みこむ。

 

「若いうちは誰しも恋などするものですからな。後で説教でもかましておきます」

 

 愛など粘膜の生み出す幻想に過ぎん。とでも言ってやりますかね。

 

「君もじゅうぶんに若く見えるが?」

 

「皆さんそう言われますね。少なくとも私はゼクス少佐より年食ってますよ」

 

 シャアは驚いた、というより引いた感じだ。

 

 まあ、僕の見た目は間違いなく少年だからね。でも人生2度目で、士官学校も君らより先に出てるんだよ。

 

 なんとかしてこの会話を切り上げたいな、と考えていたら、ガルマがイセリナ嬢を連れてテラスへと出ていく。

 

 客人置いていくんじゃないよ色ボケボウズめ。

 

「少佐、これで失礼します」

 

 そう言って歩き出した僕の背中に、勝ち誇った声がかかる。

 

「是非、頑張ってくれたまえ中尉」

 

 けっこう嫌味なやつなんだな、シャアよ。ま、あらゆることを根に持たない人間が、復讐者になるわけもないか。

 

 テラスの出入り口までくると、警備の兵士が僕を押し留めた。

 

「大佐から、誰も通すなとの仰せでして」

 

 階級を見ると、相手は少尉だ。

 

「悪いが軍務だよ。どうしても伝えなきゃならないことがあるんだ」

 

 嘘じゃないよ。軍にかかわってくることだもんね。

 

「しかしですな」

 

 彼は逡巡を見せた。まだ若い士官だ。職務にはまじめらしい。

 

「大佐殿に早急にお耳に入れねばならない事案だ。君は今は、軍に多大な不利益を与えている。今後の我が軍の動向に関わるものだ。1秒を争う。即刻そこを退きたまえ」

 

 硬い口調で言ってやる。

 

 こういうとき、僕の容姿はマイナスに働くことを知っているから、わざとだ。

 

 案の定彼は動揺し、目を泳がせはじめる。どうすればいいか迷っているのだろう。

 

 職務に忠実なのは美点だけど、この場では邪魔でしかない。 

 

「責任はこちらが取る、君は向こうに行き、客人たちの警護をしていてくれ」

 

 責任の所在を明確にしてやると、ほっとした様子を見せて少尉は敬礼し、持ち場を去った。

 

 やれやれ。

 

 さて、こっからが本番だ。

 

 お坊ちゃんを諭さなければならない。

 

 損な役回りを買ってしまったなぁ。ゼクス少佐、恨みますよ。

 

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