目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
待機命令の出てるMSを動かしてんだから、そりゃ怒るわな。
管理責任者として問題だからね。
「パイロットは待機命令出てますけど、自分はメカニックなんで」
「詭弁はどうでもいいんだ! ルウムの二の舞するつもりかお前は! 大佐にぶん殴られてんだろうが!」
懐かしいな。あの時もシゲさんに迷惑かけた。
てか、やっぱり大佐に殴られたのは知れ渡ってるのね。あれだけ大声で騒げば当然か。
「あーその節はすいません。でも昔、シゲさんが言ったじゃないですか」
「あん? 何のことだ?」
「『自分自身に対して責任を取る手段を持たない人間を、他者は決して大人とは認めない』って」
「あー? いつの話だそりゃ」
僕がシゲさんと初めて会った時の話だね。見た目がこんなで、口だけは達者な僕にそう言ったんだ。
続けて、理屈はいいから手を動かせとも言われたな。
現場は常に時間に追われてる。良くも悪くも成果を出せる者の意見と行動だけが通る状況なのは、いつどこの世界でも一緒だ。
「だから責任を果たそうかなと思いまして。ハッチ開けてくれます? 開けてくれないなら、吹き飛ばすしかないですが」
「馬鹿言ってんじゃねぇよ! そんなの――」
「オッケー開けるわ!」
通信に飛び込んできた声。
ケイ・ニムロッドだ。
「おいおい! ケイ! そんな勝手なことできるか」
ザクS2を届けたケイは、そのままニューヤーク基地所属となった。
MS、特にS2の専任整備士として務めることに決まっている。
「アタシが命令したことにすればいいだろ。階級はアタシのが上なんだ! 名目は後でなんとでもなるんだからさ」
さすが皆から姐御と慕われるだけあるな。決断したら行動は早い。
「ふざけんな! 整備責任者はオレだ! お前らが勝手に決めれるわけねぇだろうが!」
軍内部では階級は絶対だけど、所属部署では役職が物を言う。MSの管理維持は、下士官であるシゲ曹長が資材含めて責任者であり、その決定は役職のない士官よりも圧倒的に上だ。
「ふむ。それなら、私が一枚噛んだことにしようじゃないか」
「ゼクス少佐?」
モニターにノーマルスーツを着て、コックピットに座った少佐の姿が映る。
「
実はゼクス少佐には、シャアが不穏な動きを見せているとだけ伝えてある。
少佐も、士官学校時代から彼にはどこか危険な雰囲気を感じていたようだ。
だからガルマ大佐の傍にシャアが居ることが不安なのだろう。
「そういうことらしいぞ中尉」
さらにモニターに、ノイン大尉が映る。こちらもコックピットの映像だ。
「もちろん、ワタクシもおりましてよ!」
キリシマ曹長まで準備万端だ。
さすが我が部隊はみんな破天荒だ。
「……基地の警備はどうすんだよ。お前ら抜けた穴、どこが塞ぐんだ」
「それは私達が受け持つわ」
通信に入ってきたのは、キリー少佐だ。
「第1機動小隊の代わりは、私達ノイジー・フェアリーが担当する。それなら文句はないでしょう」
「キリー、恩に着る」
「いいわよ。それよりゼクス、ガルマのことお願いね。彼はこの北米に……いえ、ザビ家にとって必要な人材だわ」
あ、彼の存在価値を正確に見抜いてる人間、他にもいるんだな。
ガルマというあまちゃんがいなくなれば、ザビ家の専横を止める人間はいなくなる。そう考えているのかもしれない。
「第1機動小隊、これより出陣する!」
ゼクス少佐の宣言が格納庫に響く。
シゲさんは諦めと呆れを表現するように薄い髪ををかきむしると、部下に命じてMSの発進シークエンスを進めてくれる。
ごめんね。でもこれまで全部事後承諾でやってきたんだからさ、今回だけお淑やかに言う事聞くなんて、するわけないじゃない。
「目的はニューヤーク市街に侵入した敵の殲滅。そして木馬を追うガルマ大佐の支援だ」
「了解」
もう建前さえ告げなかったゼクス少佐に、メンバーは苦言も指さずに了承する。
さて、広げた風呂敷は自分で畳まないとな。