目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第105話 Side『ニューヤーク燃ゆ』

 

 頭蓋の内側に何か刺さったような痛みに、ノインは顔をしかめる。

 

 フィンゴ中尉が囮となり引き離した赤い機体。

 

 全身を縛りつける重たい感覚は遠退いたが、まだ痺れるような肌感覚が残っている。

 

 泣き言は言っていられない。黒塗りの敵機が迫っている。

 

 相手の武装は、機関銃と小型のシールド。一見するとオーソドックスな装備だ。

 

「曹長、やれるな?」

 

「誰にものを言ってますの? わたくしはいつだって完璧万全ですわ!」

 

 強気な姿勢を崩さないキリシマだが、言うほどではないとノインは判断した。

 

 フィンゴ中尉のEWACによる指示がなければ、彼女は真っ直ぐに敵に向かっているはずだ。しかしそれがないということは、何かしらの影響をまだ受けているのだろう。

 

「どういう理屈か知らんが、お陰でこちらは本調子ではない。慎重に行け」

 

「ふん! バラバラにしてやりますわ!」

 

 いつもの口上を吐いてキリシマは突貫していく。

 

 敵のうち1体がマシンガンを乱射してくる。その弾丸を彼女は発砲と同時に(・・・・・・)避け、相手へと肉薄する。

 

 キリシマ曹長は突破戦術に特化している。シミュレーターや実機を使った模擬戦では、当初こそその猪突猛進ぶりを逆手に取られ撃破されることが多かったが、今は本人に合った高機動のMSに搭乗したことと、目覚ましいまでの技量上達により、単機でも並みの小隊が相手ならば手玉にとることも余裕であった。

 

 ――敵は、腕がいいな。

 

 ノインは、冷静に分析した。

 

 曹長は突貫することで、敵2体の相互の距離を引き離そうとしたのだが、無理に応戦せず、単発での牽制射撃をおこない、互いがフォローできる位置を維持した。

 

 だが相方の方は動きが悪い。

 

 距離を敢えて離そうというのか後退する。散慢的にマシンガンをこちらに放ってくるだけだ。

 

 相手の弾丸はかなりの初速を持って飛んでくるが、有効射程を外れた弾丸など、直撃したとしても分厚いドムの装甲を抜くことはかなわない。

 

 ――素人ではないはずだが。

 

 違和感があるが、ノインは深追いせずに曹長のフォローに回る。

 

 相手は本当に優秀なパイロットだった。

 

 味方からの援護も貰えず、2体のドムを相手にしながらも、巧みに機体を操り、致命打を避けながら反撃の機会を伺っている。

 

 連邦がMSを開発したのはつい最近だろう。だというのに、何年も前から訓練を受けたベテランのような動きだ。

 

 連邦には、パイロットを熟成させるための効率的な教練プログラムがあるのだろうか。

 

 そんな考えを持ちながら戦えるのは、ノインが圧倒的に相手の技量を上回っているからだった。

 

 たしかに相手は特機に乗った熟練のパイロットだが、それならばこちらも条件は同じだ。それに腕はあるといっても、この程度ならこの前シュミレーターで相手をした少女たちのほうが手強かった。

 

 戦いに余裕がある。

 

「決着をつけさせてもらう」

 

 いつまでも時間をかけているわけにも行かない。

 

 こちらの精神に影響を与える兵器――なのかは判然としないが――を積んだ相手と、フィンゴ中尉が戦っている。

 

 彼は言外に自信を滲ませていたが、ノインは敵に異様な気配を感じていた。MSの全身から、殺意のようなものが噴き上がっているように感じたのだ。

 

 フィンゴ中尉の腕なら何とかなるとは思うのだが、楽観しすぎるわけにはいかない。

 

 左腕でヒートサーベルを引き抜き、キリシマ曹長の背後から一気に迫る。

 

 こちらの意図を察した曹長が、飛び退り、敵はようやくこちらに気づいた。

 

 応戦のためにビームサーベルを抜こうと動きを見せるがもう遅い。

 

 だが――。

 

「大尉避けなさい!」

 

「!?」

 

 曹長の警告と同時に、フィンゴ中尉から送られてきた敵機のデータがレーダーに表示される。

 

 至近距離まで迫っていた敵機の胴を貫いて、赤い光が奔る。

 

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