目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第108話 Side『ニューヤーク燃ゆ』

 

 終わりだ。

 

 僕は下手投げでグレネードを投げる。

 

 高機動のMS戦では、手投げ式グレネードなんてまともにぶつけることはできないと思うでしょ。事実、使い所は固定目標や装甲車両に対して使うぐらい。

 

 相手は目立った回避行動も取らずに機体を横に歩かせただけだった。

 

 でもそれ、避けれないんだわ。

 

 強力な磁力を発して軌道を曲げながらMSの脚に取り付いた爆弾は、即座に爆発。

 

 建造物解体に使う炸薬を流用した指向性爆弾なので爆破の規模こそ小さいが、そのエネルギーが特定方向に集中することで、ルナチタニウム合金の厚板(あついた)でも吹っ飛ばす。

 

 片脚を吹き飛ばされた敵は地面に倒れた。

 

 

 そこをすかさず近づいていた曹長が足で踏みつけ、抑えつけると、持ち替えていたヒートサーベルを使って残りの脚部も溶断した。

 

「オーッホホホホホ! これでジ・エンドですわね」

 

『ちくしょう! ちくしょう!』

 

 うつ伏せのままでもがくも、もう逃げられない。

 

 地上で脚を失ったMSは、ひっくり返った陸ガメと変わらなかった。

 

「連邦の兵士に告げる。MSの機関を停止し、降伏せよ」

 

「まだだ! 私はまだ負けてない! 負けてない! 負けてない! 負けてない!」

 

 外部音声は聞こえているはずだが、相手はこちらの勧告を無視する。

 

「あらあら、お見苦しいですわよ。手も足も出ない虫けらの分際でよく吠えますこと」

 

「私はお前ら宇宙人を許さない! 地の果てでも追い詰めて必ず根絶やしにしてやる!」

 

 憎しみ深いね。

 

 これじゃあ降伏なんてしないか。

 

「キリシマ曹長、眠らせてあげて」

 

「……いいんですの?」

 

 自爆されても嫌だしね。

 

「許さないぞジオン! お前たちを絶対に皆殺しにしてやる!」

 

「わかったから。おやすみ、地球人」

 

「キサマ――」

 

 曹長のヒートサーベルが、バックパックから胴体までを貫いた。

 

 声が聞こえなくなり、すっと肩が軽くなる。

 

 やっぱりサイコミュ的なやつなのかなぁ。

 

 しかし憎しみに燃えた人だったな。他の何かを憎み続けるのには、膨大なエネルギーがいる。その力を感応波に変換し、ミノフスキー粒子を介してテレパシーのように相手に伝えているのだろう。

 

 感応波送受信機(サイコミュニケータ)はジオン連邦含めて、随分前に開発されている。

 

 機器の大きさもそれほど大きくはないので、MSに積むことは可能だ。

 

 ただ兵器と連動させて、操作補助に使おうとすると感応波の増幅装置やら制御機器やらで巨大化し、ジオンでもブラウ・ブロのような巨大MAでなければ搭載できなくなってしまう。

 

 この機体に積まれていた推定サイコミュがどういったものなのか興味深いから、できればパイロットさん含めて鹵獲したかった。

 

「――こちら、ライトニング1。戦況を報告せよ」

 

 ノイン大尉からの通信だ。

 

「あーライトニング2です。敵機撃破。ライトニング3含めて、損傷は軽微」

 

「そうか。こちらは小破した。弾薬の消耗も過大だ。いちど補給に戻る必要がある」

 

「それなら、大尉と曹長はいったん戻ってください。自分はこのままホワイトベース――木馬の探索を行いたい」

 

 たぶん雨天野球場跡に潜んでいるはず。戦闘のせいで距離が離れてしまったが、まだ間に合うはずだ。

 

「単機でか? しかし――」

 

「大尉たちは補給して、少佐と合流してください。木馬は見つけ次第、少佐に連絡しますから」

 

 それだけ告げて機体を走らせる。あまり時間をかけたくない。

 

「お前のことだ、何かを考えてるんだろう。だが、単機での戦闘は避けろ。連邦MS部隊は思ったよりも手強い」

 

 特にホワイトベースに所属してる連中はね。

 

「あら、私もついていきますわよ」

 

「いや、邪魔だし」

 

 曹長の申し出は断らせていただく。

 

「はあ!? テメェ今なんつった!?」

 

「邪魔だと言ったの。曹長のドムは推進剤ドカ食いするでしょ。大尉は小破してるんだから、合流して援護しながら補給ラインまで下がって」

 

 彼女の駆るドムは、その戦闘スタイルから『ゲバルト』の名前をつけられている。意味はドイツ語で、暴虐だ。

 

 常に格闘戦を行うために、推進剤の消耗はかなり激しいし、武装も派手に振り回すからすぐに使えなくなる。かなりの浪費家(・・・)だ。

 

 排熱と駆動音からも隠密行動に向いた機体ではないので、同行されると足手まといでしかない。

 

「……」

 

 食らいつかれるかとおもったが、無言のまま曹長は踵を返して去っていった。

 

 物分りがよくて助かるけど、それはそれであとが怖いな。

 

 

 

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