目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
「あー本当に私は何も知らないんですがね」
「……そうか。そういうことにしておこう」
いや、『そういうことに』じゃなくて。
なんで僕があの女狐の走狗にならなきゃいけないのか。あの女は、戦中の重要な場面でギレンを射殺し、ジオン敗北を決定的にした戦犯だ。
正直気分は良くない。
「今回のことで思い知ったよゼクス。私はこのニューヤーク……いや、北米において2流以下なのだと。君たち1流に囲まれただけの、凡庸な男なのだとな」
「自らを卑下するのはあまり良い習慣ではないぞ。この北米の統治が安定しているのは間違いなく君の手腕によるものだ」
「私の名を使った君たちの功にすぎんさ。事実を受け入れるまで、こんなにも時間がかかってしまった。それまで職務を放棄していた。そんな男に将器などないさ」
そう自嘲して、ガルマ大佐は自らの毛先を弄ろうとし、短くなったことを思いだし止めた。
「愚痴を聞かせるために呼び出したのではない。せめて君たちに担がれるだけの仕事はしなければならんだろう。中尉の言では『責任を取るのが大人』ということだからな」
あ、そんなこと言ったね。正確には『自分自身に対して責任を取る手段を持たない人間を、他者は決して大人と認めない』だけど。
「私の幼稚さのせいで、優秀な兵を数多失ってしまった。だが幸いにも連邦の新造艦を拿捕することができた。それを受けて本国から召喚命令が届いてな」
そう切り出した大佐の話だと、大佐を地球方面軍の英雄として表彰し、ジオン十字勲章を授与するパレードを催そうと計画されたらしい。
「戦勝ムードとはいえ、だいぶ余裕があるのだな本国は。今はそれどころではないだろう。戦況は膠着し始めている」
「おそらく、シャア少佐の問題をかき消したいのでしょうねぇ」
今回の件でシャアがダイクンの遺児であると気づく人間はそうはいないだろうが、宇宙軍でも有名なエースパイロットが裏切り者となったという事実は、士気に関わる問題だ。
また、この地上において、近々で大きな勝利をジオン軍は得ていない。
戦争の長期化が見え始め、世論に厭戦気分が広がるのを抑えたいという意図もあるはずだ。
「さすがに断ったよ。今はそれどころではないのでな。結果、ゼクス、君への十字勲章授与式も延期となってしまった」
え、ゼクス少佐十字勲章貰えんの?
「お飾りなどいらないさ」
えーあれって結構な年金貰えるんだけどね。
「なんだ、君は欲しいのか? 意外に俗なところがある」
「尉官の年金は微々たるものですからね。そりゃあ貰えるものは貰いたいですよ。生涯軍人でいたいとは思ってませんから」
ガルマ大佐とゼクス少佐が互いの顔を見合わせる。
なにその含みある視線。
「あー、本題なのだがな……十字勲章を断った代わりに、私直下の部隊の創設を取り付けてきた」
「どういうことだ」
「北米は平定したと言ってよいだろう。今回の木馬の無理のある強行も、この私をおびき出してあわよくば、といった物だったらしいからな」
捕虜の尋問から得た情報だとガルマ大佐は言った。
まあそんなところだろうね。
策略により敵のど真ん中に落ちたといえど、わざわざ少数でもっとも激化する戦場に向かうなんて自殺行為でしかない。
ニューバーンの残存兵と連携しても、大した戦果を出せないことは明らかだったはずだ。
そもそも大気圏突入の際にエンジンを損傷していたと聞く。
そんな状態でまともな航行なんて不可能だ。最初から詰んでいたと言っていい。
「新造艦を使い捨てですか、まだ連邦の懐は温かいようですね」
「ああ。このまま膠着した状態が続くと、やつらは息を吹き返しかねない」
「宇宙では閉め出しがうまく行っているようだが」
「たしかにな。だが地上を征せねば戦争は終わらない。長引けばやつらのことだ、どのような手段を使うかしれたものではないぞ。それこそ、核ミサイルの1発でもコロニーに撃てば全て終わる」
たしかに、向こうはその気になればコロニーを全て吹き飛ばして決着をつけることもできるのだ。
南極条約は締結されているが、条約は条約でしかない。
そうして一掃したら、再び棄民政策で多数を宇宙に放り出せばいい。
なんて過激な連中は考えていそうだ。
「この膠着した状況を早期に打開したい。そこで、宇宙軍、突撃機動軍の垣根を超えた特別遊撃部隊が欲しいんだ」