目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第116話 Side『ニューヤーク燃ゆ』

 

「捕虜の中に、シャアの妹がいます」

 

 と告げた時の二人の顔は無表情だった。

 

 人は本気で驚くと思考が追いつかなくなり、感情が削げ落ちるんだ。

 

「シャアの妹……アルテイシア・ソム・ダイクンか?」

 

「はい。それです。どうされます?」

 

「どうも何も――待て、なぜアルテイシアが連邦軍に所属しているんだ?」

 

 原作通りなら、成り行きだよね。

 

「今回のシャアの策は、連邦と通じていたということなのか?」

 

「いやそれはないかと。たまたまでしょう」

 

「馬鹿を言え! 偶然がこんなに揃ってたまるか! シャアと内通していたと考えるのが当たり前だろう」

 

 うん。でもその偶然が起きているんだよね。

 

「その点は本人に聞いてみたらいかがでしょうか」

 

「……この件は姉上は?」

 

「おそらく知らないかと。連邦の方も当人の正体は把握していないはずです」

 

「貴様は一体どこからそんな情報を……まあいい。本人に会って確かめる」

 

 というわけで、尋問室へ移動だ。

 

 

 

 *

 

 

 部屋に入ると、連邦の軍服に身を包んだ女性が座っていた。

 

 コンクリートの壁に覆われた狭い一室。

 

 机と椅子が置かれただけの寒々しい空間で、彼女はまっすぐ前を見つめている。

 

 入ってきたガルマ大佐に向けて一瞥を投げたけど、それだけでも相当な美人だ。

 

 これでまだ17歳。びっくりする。

 

「似ている、な」

 

 大佐が思わず呟いた言葉に、セイラさんの――オタクの習性で、つい『さん』づけしちゃう――顔が強張る。

 

 ガルマ大佐は咳払いをすると、見張りの兵士に退出を促し、彼女の対面に座った。

 

 僕はドアの前で直立不動だ。

 

「尋問を始める。こちらの質問には正直に答えてもらいたい」

 

 ガルマ大佐の声には緊張が含まれている。

 

「……はい」

 

「名前は?」

 

「セイラ・マス」

 

「軍での役割は?」

 

「通信士です」

 

「君の階級は?」

 

「わかりません」

 

 回答に大佐は眉を寄せて、手元のタブレットに表示された資料を見た。

 

「こちらの資料では、軍曹となっているが」

 

「すでに知り得ていることを聞いても、時間の無駄ではありませんこと?」

 

 まっすぐ見つめてくる彼女の姿勢に気圧されたらしく、ガルマ大佐は鼻白んで口ごもってしまった。

 

 やれやれまだまだボウヤだな。

 

 援護射撃のために僕も前に出る。

 

「質問しているのはこちらだよ。君は立場というもの理解したほうがいい。君の発言、行動が他のクルーにも波及する。そう考えれば、自身が取るべき態度というものがわかるだろう」

 

 きっ、と鋭さを増した目でセイラさんが睨んできた。

 

「ジオンはいつから条約も知らぬ野蛮人となったのですか」

 

「南極条約のことかな。あんなもの、条約は条約でしかないよ。ましてやここは戦地だ。戦火の中でMIAなんてごまんといるんだ、お姫さま」

 

 最近僕は、悪役が板についてきた気がする。

 

「やめろ中尉」

 

 大佐の一喝で引き下がる。

 

「話を戻そうか。君は自身の階級を知らないのか?」

 

「ええ。ホワイトベースに乗る前は、サイド7で医療ボランティアをしていました」

 

「待て。では何だ? 元々は民間人……現地徴用兵だというのか?」

 

「そうなりますわね」

 

「君のような子供を……」

 

 思わずという調子で大佐が僕の顔を見る。

 

「木馬のクルーの幾人かは学生で、未成年者の数が多いそうです。なかには一桁の年齢の幼子もいます」

 

 艦長が19歳だもんな。

 

「冗談ではないぞ! 連邦はどんなつもりで戦争をしているんだ!」

 

 ガルマ大佐は、信じられん、とタブレットを机に投げ出した。

 

 物に当たるのはやめなさい。

 

「貴方たちがサイド7にこなければ、みな無事でいられたのです」

 

 静かにセイラさんが口にした。

 

「もともとサイド7は戦火を逃れた人間が集まっていた場所。貴方たちのせいで親を亡くした子どもを保護し、居場所を失った人間が生きるために軍に入ったのです」

 

「貴女もそうだと?」

 

「ええ。サイド7には医療従事者として派遣されただけです。避難のためにホワイトベースに乗り、正規の乗組員が多数死傷していたため、仕方なく」

 

 だから自身の階級も知らない。特別話せるようなことはないのだ、と彼女は言った。

 

「あいにく、それを鵜呑みにするためにわざわざ僕たちも時間を割いてるわけじゃないのですよ、アルテイシア・ソム・ダイクン嬢」

 

「え?」

 

 セイラさんの挙動が止まった。

 

 

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