目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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 以前も書きましたが、勢いありきで執筆しております。整合性はなく、矛盾も多いかもしれません。ご了承ください。


第118話 Side『ニューヤーク燃ゆ』

 

「世間一般に言われているザビ家内の確執は、すべて出鱈目だ」

 

 え、そうなの?

 

「兄上たちの仲は実は良好なんだ。独裁者として振る舞ってはいるが、それは強い為政者の姿を見せるための、対外的なものにすぎない」

 

 意外だな。

 

 いや、でも思い当たる節はある。

 

 宇宙軍と突撃機動軍の連携は密であり、人材や資材の交流も盛んだ。関係部署の風通しは想像していたよりもずっと良い。

 

 特に人員の損耗が激しい北アフリカと、旧ロシア、中東、地中海は共同で作戦を遂行することが多い。

 

 事案に対する本国からの反応も早く、諜報部からの情報開示も頻繁に成されている。

 

 けっこう動きやすい――あくまで思っていたよりも、だが――現場が作られているのだ。

 

 この点は、僕の知る原作にないジオンの姿である。

 

「ザビ家は――ザビ家は本当に、父を殺したのですか?」

 

 セイラさんが聞いてくるが、ガルマ大佐は答えあぐねたようだ。言葉を選ぶために思案し、やがて口を開く。

 

「すまないアルテイシア嬢。私は当時幼く、政治という言葉すら理解できないほどだった。家族としては、父の誠実さを信じたいと思うのだがな」

 

「……そうですか」

 

 二人の間に流れる微妙な空気。

 

「よろしいですか?」

 

「なんだ、中尉」

 

「推察にしかならないのではありますが」

 

 前置きをして、持論を述べることにする。

 

「デギン公は、おそらくダイクン暗殺には関わっていません」

 

「なぜ君にわかる?」

 

「お二方は、なぜジオン・ズム・ダイクンが、建国にあたって、ジオンの父と呼ばれるようになったか、ご存知ですか?」

 

 ガルマ大佐もセイラさんも首を傾げる。

 

「建国を主導した人物だ。だから、ではないのか?」

 

 おいおい、不勉強だなぁ。

 

 連邦が棄民政策を決定した背景は、増えすぎた無能な(・・・)人間の処分に困ったからだ。

 

 当時の――いや、今もそうだが、地球に住む大半の人間は貧困層であり、まともな教育を受けていない。

 

 それは勉学を望んでもその環境を得られないからというものだけではなく、彼らはそれを必要としていないからだ。

 

 前世の知識として、旧世紀の日本の記憶がある僕からしたらとんでもないことなのだが、世の大勢の人間はその日その時を

安楽に過ごせるならそれでよいと考えており、ビジネスシーンにおいては、時間と契約を遵守するなんて考えは欠片もなかったりする。

 

 向上心も、知識も、技術も生活力もない人間。

 

 資本主義経済において、生産能力が低く、社会に寄生するだけの存在が大多数を占めた。

 

 たとえ能力があっても、そうした社会構造のせいで力を発揮することができず、埋もれていく人材ばかりとなった。

 

 そして手っ取り早く快楽を得るために、粗雑なドラッグの濫用が横行し、さらに人々はまっとうな思考力を失っていく。

 

 負の連鎖が続く状態がついに飽和してしまったのが旧世紀であり、今の宇宙世紀なんだ。

 

 情勢を打開するために連邦政府は宇宙へと人を捨てる。一部のエリートと特権階級者が社会と経済を回すためにだ。

 

 サイド3も、コロニー移住当初はそうした人間ばかりだった。

 

 それを是正するため、ダイクンは独立国家樹立という目標を掲げ、コロニー移民たちを扇動、熱狂の中へと送り込んだ。

 

 今も他サイドとは労働意識の差が大きく存在しており、特にサイド1とサイド5は労働者の質がかなり低いことで有名だ。

 

 この北米は経済圏として恵まれた場所のため、それほどでもなかったが、他の地域、特にアフリカでは現地民の就労意識が低すぎて、『ガルマモデル』の統治は不可能だ、とデメジエール中佐が通信でぼやいてた。

  

 さて、ダイクンだが、デギンと組んで厳格な社会統制と規範を構築し、瞬く間にムンゾを重工業技術世界一のコロニーへと押し上げた。その手腕は天才的と呼んでいいものだと思う。

 

「それがダイクンの功績です。だが、問題もあった」

 

 独立国家樹立。

 

 その夢に、民衆が奔走し過ぎてしまったんだ。

 

 連邦から課せられる理不尽な要求や扱いの不満を燃料に、独立というプロパガンダを育てた結果、日に日に過激な行動が増えてきた。

 

 一般人の連邦駐屯地への襲撃計画――大半が事前に阻止されたが――などがいくつも明るみになり、ダイクン自身すらコントロールできなくなる。

 

 そこでダイクンは、本気で(・・・)サイド3を独立させようと考えた。

 

 その状況に異を唱えたのが、デギンだ。

 

「父上が? そんな話は聞いたことがないが」

 

 でしょうね。

 

 僕もこの世界の成り立ちが、前世の知識と妙に齟齬があるから気になって調べた結果なんだ。

 

「当時のニュース記事や議事録では、デギン公はダイクンの描いた独立政策のあり方に反対、というよりも性急すぎると釘を差しているんです」

 

 事実、いくつかの政策には自身の派閥を無視して賛成し、積極的に協力している。

 

「つまりデギン公は、連邦の武力とその性質から、独立するには国軍をもっと精強にせねばならないと考えてたんです。当時からして、国力は30倍もの差がある。完全独立なんてどうあがいても絶望的だったんですよ」

 

 だというのに、ダイクンは独立を宣言し、ジオン共和国を名乗ってしまう。

 

「ダイクン家、ザビ家、ともに不幸だったのは、独立宣言後、連邦との橋渡し役を担っていたマルティクス・ピースクラフトが何者かに暗殺されたことなんです」

 

「ジオン3大貴族であったピースクラフト家だな。たしか、一家皆殺しという惨事であったはずだ」

 

 そう。ゼクス少佐の、本当の父親だ。

 

 これによりピースクラフト家は断絶する。本当は長子であるミリアルド・ピースクラフトが生きているから、血筋が途絶えてはいないんだけど。

 

「このピースクラフト家襲撃暗殺事件、調べてみるとどうもおかしいんですよ」

 

「当初は、我がザビ家、もしくはその派閥に属する人間によるものだと噂されたな。後にダイクン派の偽装工作であったと判明したが」

 

 ガルマ大佐は、セイラさんの心中を慮るように視線を投げたが、彼女は小さく首を横に振る。

 

「私は、政治家としての父の顔を知りません。その痛ましい事件が、父の手引であったかどうかまでは」

 

「いや、真意を問いたいのではなく、その、君の前で父君の名誉に傷をつけたくなかっただけなのだが」

 

「そうでしたの。ありがとうございます。お優しいのですね」

 

 大佐はやりづらそうに咳払いをした。

 

「マルティクス・ピースクラフトなんですけどね。彼、調べてみたら元はルナリアンなんですよ」

 

「月、アナハイムか?」

 

「そうなんです。正確には、ビスト財団の元幹部です」

 

 さーこっからどんどんきな臭い話になっていくぞ。

 

 

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