目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
「ビスト財団。たしか、歴史的な美術品の回収、保護を目的とした法人組織だったな。実態はアナハイムのマネー・ロンダリング組織だ。母体の1つと言ってもいい」
さすがに幼い頃から社交界に触れているガルマ大佐だ。
アナハイムが連邦と癒着し、世界経済の大半を牛耳っているのはその筋では周知のこと。
そしてそれを可能としているのが、ガノタなら誰でも知っているサイアム・ビストの持つ『箱』の力。
「深く調べたんですよ。そうしたら、ピースクラフトには、ビスト家の血が流れていました」
サイアム・ビストの妾のひとりが産んだ子の子。それがマルティクスだった。
彼は母親をなくしてから財団に入り、そしておそらく、内部派閥争いに負けた。
結果、サイド3へと逃げた。
「なんだと!?」
大佐は鋭く反応する。
セイラさんは訝しげだ。
「なんのことですか?」
「ビスト財団は、サイアム・ビスト氏が一代で築き上げたものだ。アナハイムが月の王と呼ばれるほどに巨大な企業となったのも、バックにこのビスト財団があったからこそと言われている」
「つまり、影の支配者というわけです」
「その財団と、ピースクラフト家の関係がどのように私たちの問題に繋がるのかしら」
ピンとはこないのだろう。
当たり前だ。
『世界の暗部と言える存在がいるよ』なんて話が出ても、それを知らないものからすれば、どのようなものか想像もつかない。
「ビスト財団の宗主、サイアム・ビストは連邦政府と深く癒着しているという噂だ。彼の一言があれば、連邦はあらゆる便宜を彼のためにするとも」
大佐は説明する。
「そしてビスト家は、我らと同じく身内でかなりの血を洗っている。子が親を、親が子を殺すのも厭わない呪われた家系だ。ジオン3大貴族のひとつが、そのビストに関わりあるために消された……というのは想像がつく」
「その波紋が父の……ダイクン暗殺に繋がったというのですか?」
僕はうなずいて見せる。
「それに関して証拠はないのですがね。ピースクラフト暗殺の2日前に、ムンゾにビスト財団の客船が寄港してるんです。さらに、ダイクン暗殺時も5日前に」
ガルマ大佐がうなる。
「当時、ビスト財団はジオンともあらゆる商談を行っていたはずだ。私の父がダイクンを殺していない証拠としては弱いだろう」
「そうなんですけどね。ただ、あーなんというか……」
「なんだ、君らしくない。まだ何かあるのならはっきりと言え」
「はい。お二方は、父君から、『箱』という言葉を聞いたことはありませんか」
「『箱』? それは聞いたことはあるが――」
「ただの箱ではない、そういうことですわね?」
そう。『ラプラスの箱』だ。
前世知識によって、僕はピースクラフトもダイクンも、この『箱』に触れたから、もしくは触れようとしたから消されたのではないかと考えている。
「そういえば……ダイクンが身罷った後、父が私に溢したことがある。『ダイクンより箱の鍵を預かった』と」
大佐がセイラさんを見る。
彼女は顎に手を当て、首を傾げながら過去の記憶を探っている様子。
「うろ覚えではあるのだけれど、幼い頃、父が『箱の中身を子どもたちに託したい』とお母様に語っていたのを、聞いた覚えがあります。その『箱』という響きに、なんだか落ち着かないような不穏な気持ちになったので、記憶の隅にひっかかっていたのだけれど」
「中尉。『箱』とはなんだ?」