目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第119話 Side『ニューヤーク燃ゆ』

 

「ビスト財団。たしか、歴史的な美術品の回収、保護を目的とした法人組織だったな。実態はアナハイムのマネー・ロンダリング組織だ。母体の1つと言ってもいい」

 

 さすがに幼い頃から社交界に触れているガルマ大佐だ。

 

 アナハイムが連邦と癒着し、世界経済の大半を牛耳っているのはその筋では周知のこと。

 

 そしてそれを可能としているのが、ガノタなら誰でも知っているサイアム・ビストの持つ『箱』の力。

 

「深く調べたんですよ。そうしたら、ピースクラフトには、ビスト家の血が流れていました」

 

 サイアム・ビストの妾のひとりが産んだ子の子。それがマルティクスだった。

 

 彼は母親をなくしてから財団に入り、そしておそらく、内部派閥争いに負けた。

 

 結果、サイド3へと逃げた。

 

「なんだと!?」

 

 大佐は鋭く反応する。

 

 セイラさんは訝しげだ。

 

「なんのことですか?」

 

「ビスト財団は、サイアム・ビスト氏が一代で築き上げたものだ。アナハイムが月の王と呼ばれるほどに巨大な企業となったのも、バックにこのビスト財団があったからこそと言われている」

 

「つまり、影の支配者というわけです」

 

「その財団と、ピースクラフト家の関係がどのように私たちの問題に繋がるのかしら」

 

 ピンとはこないのだろう。

 

 当たり前だ。

 

『世界の暗部と言える存在がいるよ』なんて話が出ても、それを知らないものからすれば、どのようなものか想像もつかない。

 

「ビスト財団の宗主、サイアム・ビストは連邦政府と深く癒着しているという噂だ。彼の一言があれば、連邦はあらゆる便宜を彼のためにするとも」

 

 大佐は説明する。

 

「そしてビスト家は、我らと同じく身内でかなりの血を洗っている。子が親を、親が子を殺すのも厭わない呪われた家系だ。ジオン3大貴族のひとつが、そのビストに関わりあるために消された……というのは想像がつく」

 

「その波紋が父の……ダイクン暗殺に繋がったというのですか?」

 

 僕はうなずいて見せる。

 

「それに関して証拠はないのですがね。ピースクラフト暗殺の2日前に、ムンゾにビスト財団の客船が寄港してるんです。さらに、ダイクン暗殺時も5日前に」

 

 ガルマ大佐がうなる。

 

「当時、ビスト財団はジオンともあらゆる商談を行っていたはずだ。私の父がダイクンを殺していない証拠としては弱いだろう」

 

「そうなんですけどね。ただ、あーなんというか……」

 

「なんだ、君らしくない。まだ何かあるのならはっきりと言え」

 

「はい。お二方は、父君から、『箱』という言葉を聞いたことはありませんか」

 

「『箱』? それは聞いたことはあるが――」

 

「ただの箱ではない、そういうことですわね?」

 

 そう。『ラプラスの箱』だ。

 

 前世知識によって、僕はピースクラフトもダイクンも、この『箱』に触れたから、もしくは触れようとしたから消されたのではないかと考えている。

 

「そういえば……ダイクンが身罷った後、父が私に溢したことがある。『ダイクンより箱の鍵を預かった』と」

 

 大佐がセイラさんを見る。

 

 彼女は顎に手を当て、首を傾げながら過去の記憶を探っている様子。

 

「うろ覚えではあるのだけれど、幼い頃、父が『箱の中身を子どもたちに託したい』とお母様に語っていたのを、聞いた覚えがあります。その『箱』という響きに、なんだか落ち着かないような不穏な気持ちになったので、記憶の隅にひっかかっていたのだけれど」

 

「中尉。『箱』とはなんだ?」 

 

 

 

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