目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
ヒロインは出した。が、イチャイチャさせるとは言っていない。
これからです、これから……たぶん。
小隊のメンバーと顔合わせしてから1時間程。
支給されたMSに乗ったままHLVに積み込まれ、降下の時間を待つ。
僕らが降りるのは北米のニューヤークで、降下と同時に都市攻略を行う手筈となっている。
突撃機動軍の先行部隊が工作を行ってある程度敵戦力を間引いているとはいえ、北米は豊富な工業力と食料地帯を有する場所だ。連邦も安くない戦力を投入してくることだろう。
敵陣真ん中に降下、そこでちょいと暴れて都市ひとつ制圧してこいだなんてとんでもねぇ作戦です。
しかもニューヤークって、原作でガルマ・ザビが占領した場所だ。この世界でもあのお坊ちゃんはこの降下作戦に参加しており、別の連隊だが現地で機甲部隊の指揮を執るそうだ。本人はいたって本気で戦闘に参加するつもりだろうけど、これは本国が地球方面軍を見捨てるわけではないという、政治的なパフォーマンスにすぎない。
つまり彼は、ザビ家が出した人質というわけです。
なんだかコックピット内が息苦しい気がしてため息をつく。いや、ノーマルスーツが窮屈なのかな。
「どうされましたの中尉? ビビッて……おほん。ため息をついていたら、幸せがお逃げになってしまいますわよ」
先程までブリーフィングを行っており、回線は繋いだままだった。聞きとがめたキリシマ曹長がモニターの向こうでこちらを小馬鹿にするような悪人顔で笑っていらっしゃる。
「作戦内容に疑問があるなら今のうちに消化しておけ。降下までいくらもないぞ」
ラムザット大尉は瞑想でもしているのか目を閉じたままだ。
「緊張するのはわからんでもない。私も地上に立つのは初めてだからな」
そう言いながらもまったく緊張した雰囲気を見せないのは、ゼクス・マーキス少佐だ。
「なぜ少佐殿が?」
「人手不足の極みだな。佐官であっても前線に立たねばならないのさ」
とのことらしい。
濃いミノフスキー粒子下では遠距離での通信は、できないわけではないがほぼ不可能になる。そうなると後方から細かい指示を送るのは難しい。よって指揮官であっても前線に出張らなければならないというわけだ。
でも少佐殿の場合は単純に自分が現場に出たいだけじゃないか、という気がする。
というわけで、我が第一機動小隊はゼクス・マーキス少佐が指揮を執ることになった。ラムザット大尉は副隊長だ。
搭乗するMSは、ゼクス少佐と大尉は新型のドムである。
そう、ドムだ。
ジオニックとツィマッドの経営統合により史実よりもかなり早く完成したドムは既に量産が始まっている。
隕石落としだけでは連邦に打撃を与えることができないと考え、事前に地上攻撃用として準備していたというわけだ。そのため型式番号もMS-08となる。グフよ、どこに消えた。
外観はザクⅡを混ぜ合わせたようなシルエットをしている。これは現地整備の観点から、ザクⅡとの部品規格共有化を念頭に置かれたためで、各部位ごとにユニット化設計されており、場合によってはザクのパーツで不足分を補うことができる。
ゼクス少佐のドムは識別用に頭部にブレードアンテナが追加され、パーソナルカラーの白と青に塗装してある。ラムザット大尉のはアースカラーだ。
僕とキリシマ曹長はザクⅡJ型。これもアースカラー。
ザクⅡJ型は新型という触れ込みだが、実際はF型から空間用装備を取っ払い、各部のアポジモーターを溶接して砂や埃を入りにくくしただけの仕様変更機だ。順次ドムに移行していくつもりらしいが、地上での生産拠点はまだないため、しばらくはこいつを使うことになる。
「そろそろ時間だ。各自、装備の最終チェックは済んだな」
「万全です」
「バッチリだぜ」
「はい」
作戦開始だ。
こうして僕は重力の井戸底へと降りていくのだった。