目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
砂漠にある寂れたスタンド。
旧世紀のアメリカ国道に沿って建てられたもので、石油資源の枯渇した今では使われていないものだ。
併設していた商店を改装したダイナーに、金髪の男がいた。
人目を遮るようにサングラスはつけたまま。
カウンター席に座り、ロックのヴォッカを飲む。
無愛想な店主の横の台には、古ぼけたモニターが置かれており、そこではジオン軍のプロパガンダ放送が流れている。
北米にて、ガルマ・ザビが連邦の新兵器部隊を撃破、サイド7を破壊した新型戦艦を拿捕したと報道されている。
サイド7のバンチが崩壊したのは、侵入したジオンが守備隊と交戦したせいなのだが、いつの時代も歴史は勝者の都合で描かれるものだ。
画面にガルマの姿が映される。
髪を切り、どこか精悍さも感じられる表情を浮かべた青年だ。
彼は今回の功績で准将に任じられ、さらにはジオン十字勲章が授与されると報道官が告げる。
それを聞いた男は、口元に皮肉げな笑みを浮かべた。
「坊やは私だったか……」
店の入口のガラスドアが開き、女が入ってくる。
まっすぐ歩き、女は男の隣りに座った。
店主が問う。
「注文は?」
「いらない」
店主は不快げに眉を曲げた。
「ここは店だ」
「バーボン。ストレート」
女は店主の方に見向きもせずそう答えた。
美しい女だ。
蒼い髪と同じ色のリップを塗り、怜悧さを漂わせている。
「どこかであったかな?」
じっと自身を見つめてくる女に、男は問うた。
「捜したよ。シャア・アズナブル」
「……キシリア少将の使いかね」
「いや。ザビ家の女狐とは違う」
女の前にバーボンが置かれた。
初めて女が店主をみた。
店主は肩をすくめると、面倒事は知らん、というふうに肩をすくめて、裏の厨房へと引っ込んだ。
「今回の騒動で、ようやく貴方を見つけ出した」
「わからんな。私はただの敗者だ。そんな男に何の用事がある」
「ずっと捜していたんだよ、キャスバル・レム・ダイクン」
女は男の本名を口にした。
「ダイクンの意志を継ぐ者を、我々はずっと捜していた。キシリアの邪魔もあったが、貴方が騒動を起こし、行方をくらませた結果、奴らより早く接触することができた」
「何者だ」
「ザビ家によって歪められた偽りのジオンを糾弾する者」
女は嫣然と笑う。
「我々は、
*
店のドアが開き、男たちが入ってきた。
砂漠に似つかわしくない、黒いスーツを着た男が四人。
店主は黙ったまま、モニターを見ている。
画面には旧世紀の古い映画が流れていた。
カウンターの上に、空になったグラスと、一口もつけられていないバーボンが注がれたグラス。
「ここに金髪の男がこなかったか」
スーツの一人が店主に問う。
「居たよ」
「どこにいった」
「さあ? 俺が出てきたときはもう居なかった。カードだけ置いてな」
それを聞いた黒スーツたちは店を出ていこうとする。
「待ちな」
呼び止めた店主が、赤いカードを投げて渡した。
「そいつらに会ったら伝えてくれ。『うちは現金のみだ』ってな」
しばらく休みます。