目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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 ぼちぼち復帰。


第123話 挿話『陸の群狼』

 

 ニューヤークにある通信室。

 

「よう、久しぶりだな。フィンゴ中尉」

 

 僕の目の前にあるモニターに、知った顔が映っている。

 

「お久しぶりですソンネン中佐」

 

 デメジエール・ソンネン中佐は、今は北アフリカでヒルドルブを中心とした機甲師団を率いている。

 

 ノイズとラグ混じりの映像でもわかるほど、今の彼はハツラツとしていた。

 

 やりがいを見つけたんだろうね。

 

 事実、激戦区であるアフリカにて、ヒルドルブはかなりの活躍を見せていると聞いた。

 

「して、今日は何用でしょうか?」

 

「おいおい、顔まで見せたんだ。もっと旧交を惜しんでもいいんじゃねぇか」

 

「時間は限られてますから」

 

 ミノフスキーのせいで長距離の通信はかなり制限がある。

 

 以前のようにネットのような無線による大規模データリンクは使うことができないので、こうしたやり取りは中継機を介したレーザー通信で行われる。

 

 当然、何台もの中継機を大西洋に浮かべることになり、費用だって馬鹿にならんわけだ。

 

「わざわざ秘匿の高いレーザー通信まで使ってますからね」

 

「そうだな。まあ今回はお前さんに頼みたいことがあってよ」

 

 そうソンネン中佐は切りだした。

 

 ようやく義勇兵として受け入れた外国人の練兵が終わったが、まかせる機体がないのだという。

 

 外国人部隊には虎の子のMSを任せるわけにもいかないため、ほとんどが歩兵となっているのだが、だいぶ人員がダブついているそうだ。

 

「ゲーツがあるでしょう。たしかいくつかは陸戦用として投入されているはずですが」

 

「当初はな。だがいまのアフリカでのMS戦はドムだ。ゲーツじゃ足が遅すぎんだよ。パーツの代替えも効かねぇ」

 

 それでもヒルドルブの護衛や陣地防衛ぐらいは担えると思うが。

 

「ヒルドルブの量産体制はどうなってるんです?」

 

 たしかキリマンジャロ基地に、グラナダから生産ラインの一部を下ろす計画があったはずだ。

 

「量産はできちゃいる。が、外国人兵にゃけっこうな学生上がりが混じっていてな。というか若いやつのほとんどが学生だ」

 

「あー学徒兵ですか」

 

 察しがついた。血気盛んなのはいつだって若者だ。彼らは無敵な時代を謳歌しているからね。

 

「経験の少ない新兵でも使える陸上兵器を作れ、ってとこですか?」

 

「さすがわかるじゃねぇか。ヒルドルブも操作性は悪くないんだ。だが一人で動かすこともできるぶん、新人と組ませるよりベテラン単体で動かしたほうが戦果が高くてな」

 

 いや、それこそ組ませて使わないといつまでたっても新人のままでしょうよ。

 

 でも、余裕がないのか。

 

 従軍経験のある人員で、少しでも部隊を率いたことのある者は、尉官や佐官に無理やりにでも昇進させている。

 

 一兵卒よりも、そうした指揮官の数が圧倒的に足りないからだ。

 

「練度の低下はしかたねぇが、だからといって相手が手を抜いてくれるわけじゃねぇからな」

 

 そこをせめて兵器で補いたいわけだ。

 

 アフリカは戦線が大陸全土に広がっている。陣営すべてをカバーするにはMSにしろMTにしろまだまだ数が足りない。

 

「条件としては、ヒルドルブよりも生産性が高く、操縦も経験の浅い兵士でもできる簡便なものですかね」

 

「そうだ」

 

「わざわざ通信で頼まずとも、本国に打診したらどうだったんですか」

 

宇宙(そら)の連中はあてにならねぇよ。要望書だしてからそれが審議されて計画されるまで、どれだけかかると思ってんだ」 

  

 だからって、わざわざ部署違いの人間に頼まなくてもと思う。

 

「お前さんはヒルドルブの再設計もこなしただろう? こっちで使われてるコウノトリの設計もお前らしいじゃねぇか」

 

 コウノトリってのは、ボドムキャリーのことだ。地上用の航空輸送機。

 

「頼むぜ。お前なら信用できる。ノイエン・ビッター少将には話を通しておくから、設計図だけでも送ってくれ。そうすればこっちの生産ラインで建造する」

 

 つまりヒルドルブと生産ライン共有するわけですね。

 

 難易度上がったなあ。

 

「ま、やるだけやってみます。マゼラアタックよりかはマシなのにします。が、肝心の練兵がお粗末ではいくら兵装を調えてもどうにもなりませんよ」

 

「おう、練兵はこちらの仕事だ。そっちは任せたぜ」

 

 ソンネン中佐は、狼にも似た獰猛な笑みを浮かべてモニターから消えた。

 

 

 *

 

 

 砂塵の中を、連邦の61式戦車とガンタンクが進む。

 

 目的地はジオンの防衛陣地の1つだ。

 

 キンバライト鉱山を抑えたジオンは、そこを急速に基地化し、キリマンジャロまでの防衛ラインを整えた。

 

 そのキンバライトに至るまでの陣地のひとつに、これから襲撃をかける。

 

 激化する戦闘は、まるでオセロの盤面のようだ。

 

 相手の陣地を奪った次の日には、こちらの別の陣地が奪われる。

 

 黒と白の駒がいくつもひっくり返っては消えていく。

 

 繰り返されるゲームに、敵も味方も倦んでいた。

 

「隊長! 前方に敵影!」

 

「種別と数を言え」

 

 ガンタンクに乗る小隊長は、怒りを抑えるのにかなりの自制心を引き出さねばならなかった。

 

 繰り返される戦闘で頼れるベテランは数を減らし、補填としてやってきた兵士は、学生といってよいほど若い連中ばかりだ。

 

「あ、えっと、3機です! MSと、あれなんだ?」

 

 明瞭さに欠ける報告に気が飛びそうになるのを堪え、小隊長は測量用の望遠レンズを覗く。

 

 砂塵を上げて迫る人型――ドムだ――が3体。そのわずか後方、両翼に小型の車輌らしきものが見える。

 

 マゼラアタックとは形が違う。

 

 幼子が乗る三輪車のようなふざけた形状だが、車体下部には砲塔が見える。

 

 それが――

 

「20機だと!?」

 

 こちらの数のおよそ3倍の数だ。

 

 見慣れぬ車輌はドムの速度にも追いついているらしく、先頭を切るMSに引き離されることもなく、こちらとの距離を詰めてくる。

 

 やがてその三輪車どもは左右に分かれた。

 

 ドムを中央に突撃させ、車輌でこちらの左右を挟み込むつもりなのだ。

 

「61式は前にでろ! ガンタンクは前方のドムに火砲集中!」

 

 61式には若手が乗り込んでいる。

 

 数で劣るこの状況に、小隊長は瞬時に彼らを盾にすることを決定した。

 

 61式(ブリキ缶)が囮となっている間に、MSを仕留める。初めて見る装甲車はしょせんは小型だ。大型の火器さえなければガンタンクの装甲で対処できる。

 

 そう読んで彼は主砲の照準を先頭を駆るドムに合わせようとした。

 

 その時、通信に悲鳴が響く。

 

「うわああああ!」

 

「なんだ!? 来るな! 来るな!」

 

「ウギガガガギガがががが!」

 

 展開していた三輪車共が、急激に方向を変え、61式戦車の群れに、文字通り飛びかかった。

 

 装甲車とは思えない機敏な動作で跳ねるように飛びつき、側面から61式を蹂躙する。

 

 車体からは細長いワイヤーが繰り出され、それが突き刺さった瞬間、操縦士たちの断末魔が轟く。

 

 ドムが装備しているヒートロッドと同じものだ。

 

「くそったれ! ジオンには戦術ってもんがないのか!」

 

 小型戦車どもは61式に群がり、その哀れな羊をよってたかって破壊していく。その様は、まるで群狼の狩りのようだ。

 

「隊長! 上!」

 

 同ガンタンクに乗った部下の声に、彼がハッとしたときは遅く、モニターには、前衛を乗り越えたドムが跳躍し、赤熱したサーベルをこちらに振り下ろそうとしているところであった。

  

 

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