目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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 誤字報告にいまさら気づく。

 報告してくれていた人、ごめんなさい。そして、ありがとう。



第124話 挿話『魔弾の射手』

 

「さあ、どういうことか説明してもらおう」

 

 僕の目の前に、仁王立ちのノイン大尉がいる。

 

 どうも、オルド・フィンゴです。

 

 なんかすごく冷たい怒りを彼女が湛えているのが、オールド・タイプの僕でもわかるんだが、心当たりがない。

 

 何かしたっけ?

 

「はい、いいえ大尉。自分には一体何のことか――」

 

 皆まで言わしてもらえず殴られた。

 

 首をひねって衝撃を半減させたけど、また奥歯折れたらたまったもんじゃあない。

 

「厚顔にも程がある! 眼の前にあるコイツ(・・・)のことだ!」

 

 と指差すノイン大尉の先、そこにはMSが立っている。

 

「ドムであります」

 

 ノイン大尉の柳眉がおもいっきり眉間に寄せられる。

 

「そんなことを聞いているんじゃない! なぜここに、新型のMSがあるのか、と聞いているんだ!」

 

 いや、これ新型じゃないよ。

 

 ドムDを改造したものだから、改修型って言ったほうが正確だよね。とか言ったら、また殴られそうだな。さらにそれ以外のこともあるんだが。それは言う必要がない。

 

「わざわざ第2機動小隊のハンガーを使って、私に隠していたな?」

 

 ここは第2機動小隊の整備倉庫。僕らの第1機動小隊の場所だと、ノイン大尉に見つかっちゃうからね。こっちで作業させてもらってたんだ。

 

「我ながらいい出来だと――へブ!」

 

 バックナックルが飛んできた。

 

 避けるのは簡単だけど、それすると十倍ぐらいになって追撃くらう上に、後で始末書という名の反省文大量に書かされるんだよな。

 

 以前、替わりに『イケメン朴念仁の落とし方』という論文を提出したら、呼び出しくらった上に延々と説教された。

 

 机の上に置かれた、安全装置の外れた拳銃の銃口がずっと僕を見ていたのでしんどかった。

 

 でも知ってるんだ。

 

 PXで密かに売られているゼクス大佐のブロマイド、全種類買って集めてるのを。

 

 うちの基地は女性の比率がけっこう高いからね。イケメンどもの隠し撮り写真が売れる売れる。

 

 人気を二分しているのは、ガルマ准将だったりする。

 

 ゼクス大佐とはまた違った種類のイケメンだからな。精悍さとあどけなさを併せ持ったその表情が女性陣の庇護欲を煽るらしい。

 

 一部のご婦人方は、どちらがどっち(・・・・・・・)、なんて妄想でよく議論している。

 

 上官侮辱罪で処断されても知らないよ。

 

「……たしか、ドムはガルマ准将の専用機という話だったな」

 

「あ、はい。ドムDS型ですね。届いたのはだいぶ前なのですが、うちの小隊のとこは色々手狭になってたのでこちらに運び込んでいたんです」

 

 ドダイや、EWAC通信システム、キリシマ曹長のドム・ゲバルドの改造とタスクが溜まってたからね。

 

「そのドムが、なぜフル改造されてるんだ!」

 

「え? だって専用機だし」

 

 うちの大将の機体だよ。ザビ家の御曹司が乗るやつだから、徹底的にハイクオリティなものが送られてきたので、当然ながら全力で改造させてもらった。改造費もジオ・マッドが持ってくれるっていうし。

 

「もうドムの姿すらしてないだろう」

 

 うん。

 

 でもフレームはほとんどドムなんだよ。

 

 装甲を引っ剥がして新調し、軽量化を施し、可動域の拡張を行った。

 

「なんなんだ! このトリ足(・・・)は」

 

 あー逆関節の脚ね。

 

 くの字を左右反転した形の脚。ケイから得たザクS2のインフレーム構造のデータを拝借して造った部位で、ここだけは完全に新造。鳥のように細っこいけど、しっかり機体を支えることができる。

 

 ホバー駆動ではなくなったけど、足裏に無限軌道を装備させて、高速走行を可能にした。

 

 脚部にホバー用のエンジンを積まなくていい分、さらに軽量になった。

 

「自慢の出来です」

 

「そういう問題ではない!」

 

「いったい何を騒いでいるんだ」

 

 ここでガルマ准将のご登場である。

 

「何か問題か?」

 

「はっ! それが……」

 

 ノイン大尉は敬礼したまま、どう答えようかと考えあぐねているようだ。

 

「准将はなぜこちらに?」

 

 僕も敬礼はしつつ質問。

 

「現場の視察だ。聞けば私の専用機がこっちに運び込まれてると聞いてな」

 

 そう言って准将は僕らの頭上にそびえるMSを見上げる。

 

「で、このMSは見慣れないものだが、これは何だ?」

 

「ドムです」

 

「ほう。もしやこれが件の専用機か?」

 

「はい。そうでありますね。だいぶテコ入れしました」

 

「そうか。で、私は自分のMSの改造を貴様にいつ頼んだか覚えていないのだが?」

 

 そだね。勝手にやらせてもらった。

 

 だって基地司令をMSに乗せて前線に引っ張り出すわけにはいかないじゃん。とはいえハンガーに眠らせておいても、整備はしなくちゃならない。

 

 どうせ使わないなら、技術検証実験機としていろいろ改造させてもらったってわけだ。

 

「申し訳ありませんガルマ准将。こちらは私の監督不行き届きであります。しかるべき処分をとったのちに――」

 

「いや、構わん。どうせ私はMSには乗らん。貴官に貸与しよう。思えばフィンゴ中尉、貴様には前回の件で特別に報奨を出してやったわけではないからな。どうせ、そのつもりで改造してあるのだろう」

 

 ため息混じりにガルマ准将。

 

 よくわかってらっしゃる。

 

 この機体、背中にマゼラフラッグが装備している通信索敵装置を積ませて、狙撃対応させてあるんだ。

 

 要は、僕専用のカスタマイズがされた機体である。

 

「貴様は軍の私物化をするな、といっても聞く気がないようだからな。使えるようにはしてあるんだろうな」

 

「もちろんです」

 

「なんという機体なんだ? もはやこの姿ではドムとは呼べまい」

 

 技術検証が目的だったからな、特にペットネームつけてないんだよね。

 

 あ、そうだ。

 

「せっかくですので、准将が名付けていただけると助かります」

 

「私がか?」

 

 顎に手をやりながらMSを眺めるガルマ准将。

 

「――デアフライシュッツ」 

 

「ほう。どんな意味ですか?」

 

 なんか厨二病まっしぐらな名前だな。

 

「魔弾の射手という意味だ。古いオペラのタイトルだな。狙撃が得意な貴様にピッタリだろう」

 

 ドム・デアフライシュッツ。

 

 嫌いじゃない。

 

 それが、僕の新しい機体だ。 

 

 

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