目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第128話 挿話『悪童・4』

 

 ――どうする?

 

 ディライアは考える。

 

 相手の得意な狙撃のことを考えるなら、四方を建造物に囲まれた場所に身を伏せるのが得策に思える。

 

 模擬弾はコンクリートの壁を撃ち抜けないし、ビームを模したレーザー光も当然だ。

 

 しかし、実戦とした場合は、相手が高出力なビーム兵器を持っていれば別となる。

 

 メガ粒子は一般的な建物など容易に貫通するため、盾とするには適わない。壁ごと撃ち抜かれて終わりだ。

 

「ナカサト伍長は離れて潜伏しろ」

 

「え? でもそれでは――」

 

「機動戦になる。マゼラフラッグ(タンブルウィード)じゃドムの最高速に追いつけないだろう」

 

 模擬戦のルールとして、通信管制機を狙うことはしない、と取り決めがある。

 

 だが、近距離での高速機動戦では足元を転がる子犬(・・・・・・・・)を巻き添えにしないとも限らない。

 

 ディライアはこの勝負は自分たちの負けだと判断していた。

 

 4対1で、しかも管制機を狙わないとのハンデまでありながら部隊の半数が墜とされた。

 

 これが実戦であったらと考えるとぞっとしない話だ。

 

 そして、どうせ負けならば最後に全力で戦ってみたいとも思った。

 

「これまでの戦闘で敵本体の音紋パターンの解析は済んでるね。できるだけダミーを排除して必要な情報だけこちらに送って! それと撹乱幕は途切らせないで!」

 

「わかりました!」

 

 即座にレーダーに赤い点が現れる。

 

 ユウキ伍長が確認した敵の予測地点だ。

 

 そこへ向かって機体を走らせる。

 

 真正面から向かうなど、生身では愚策でしかないが、MSには装甲がある。単発ではジェネレーターやバイタルエリアをぶち抜かれたりしなければ反撃は可能だ。ビーム兵器も、少しの間なら撹乱幕で防げる。

 

 MSの本質は、高い機動性と分厚い装甲の両立にあると思っている。その思想に、このドムは見事にマッチしていた。

 

「おっと!?」

 

 ビルの角から飛び出ようとしたところで、向こうの角から射撃される。

 

 事前に構えていた盾に被弾し、センサーが左腕破損のアラートを伝えてくる。

 

「判定が辛いじゃないか!」

 

 発見した敵に向けてマシンガンを撃つ。

 

 相手はビルの影に隠れた。

 

 ディライアは機体を跳躍させ、そのビルを飛び越える。空中でマシンガンを撃ち、敵の逃走経路を遮断。

 

 着地と同時にマシンガンを放り捨て、ヒートサーベルを模した模擬戦刀に切り替える。

 

「くたばりな!」

 

 突貫し、サーベルのリーチを活かした突きを繰り出す。

 

 ガルマ准将がシュミレーターで使用する突きだ。北米組限定で、MSの挙動パターンにプログラムされている。

 

 相手が引けばスラスターを最大に吹かし突きを伸ばす。左右によければそこから薙ぎ払い。人体では不可能な動きだが、MSならばこそ可能な技法であった。

 

 敵は右へと躱す。

 

 ディライアは優れた反射神経と動体視力で反応し、サーベルを左へと薙いだ。

 

 ピンクの塗料を染み込ませた特殊ゴムの刀身が、相手の左腕を叩く。

 

 まだ浅い。

 

 距離を離せばまたアクロバティックな動きで翻弄されるかもしれない。

 

 さらに懐へ踏み込もうとしたとき、エラー音が鳴る。

 

「はぁっ!? 左脚破損? なんで!?」

 

 そこでディライアは思い至る。

 

 最近になって開発された、マゼラフラッグ搭載用、対MSマグネット地雷だ。 

 

 電磁力で装甲板に張り付き、指向性爆発でMSの内部機構を破壊する兵器。

 

 相手はこちらの攻撃を避ける際に、それを投げつけていたのだ。 

 

「ほんと、デタラメだね!」

 

 ディライアは決着が着いたと判断した。

 

 脚が動かなければ、地上用MSはただのデカい的だ。

 

 こちらは射撃武装もない以上、固定砲台の役割すら果たせない。

 

 敵がライフルを構える。

 

 後は観測班が撃破判定を下せばそれで終わり。

 

 アラームが鳴り、模擬戦が終了した旨が伝えられる。

 

 結果は――。

 

「は? あたしたちの勝ち?」

 

 コンソールに映る『WIN』の文字に当惑するディライア。

 

 状況が解放され、ロックされていた機体の機能が回復する。

 

 見れば、敵機の背面、MSの泣き所でもあるスラスターユニットにベットリとピンク色の塗料が付着していた。

 

「ナカサト伍長、やったわね」

 

「はい、当たっちゃいました」

 

 敵機の背後に回り込んだユウキが、マゼラフラッグの機銃を掃射したのだ。

 

 マゼラフラッグの機銃は軽車両用の武装だが、スラスターユニットを集中的に攻撃したことで、観測班は撃破と判断したようだ。

 

「あの、すいません。出過ぎたマネを」

 

「いや、いいよ。よくやった」

 

 呆気ない幕切れに、脱力感がぐっと肩にのしかかってきて、ディライアはシートに深く体を沈めるのだった。

 

 

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