目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第132話 挿話『勝利者たち・2』

 

「アタシが野良猫なら、あんたは乳牛だね。牧場で飼ってもらったらどうだい」

 

 キリシマを挑発する言葉を吐いて、ケイは缶ビールを呷って立ち上がった。

 

「ああ? やんのかコラ! 泣くまで詫び入れさせんぞ!」

 

「アタシはいつでもいいぞ! でも泣くのはそっちだがな!」

 

 裸のまま湯船で火花を散らす二人。

 

 間のノインは、ため息を吐いて頭痛を抑えねばならなかった。

 

 この二人が一緒にいると、いつだってろくなことがない。

 

 キリシマ曹長が一方的にニムロッド技術少尉を嫌っているのだが、その理由が男だというのだからため息も付きたくなる。

 

 どういうわけかキリシマ(彼女)は、同じ部隊のオルド・フィンゴ中尉に懸想しているようだ。

 

 過去にMS開発で知り合っており、中尉と仲の良いニムロッドが気に食わないのであろう。

 

 件のニムロッド技術少尉の方は、どちらかというとフィンゴ中尉をヤンチャな弟のように扱っており、恋愛対象とは見ていないようだ。

 

 フィンゴ中尉は見た目こそ愛らしい少年のようだが、自分やゼクスよりも年上であり、さらに目的の為なら手段を選ばないような、とんでもない性格をしているトラブルメーカーの1人なのだが。 

 

 ――たしか、破れ鍋に綴じ蓋。といったか。

 

 以前に聞いた東洋のたとえだ。言い得て妙だと思いながらも、聞いた相手が件のフィンゴ中尉だったことを思い出してげんなりした。

 

「やってやろうじゃねぇか! うすぎたねぇ野良猫が!」

 

「おおこいよ牛乳デカ尻女!」

 

「お前ら、そろそろいい加減に――」 

 

 ノインが一喝しようとしたときだ。

 

「やっほー! ひろーい! 本当にこんなとこあったんだ。全然気づかなかったよ、」

 

「思った以上だな。ティルナノーグと同じぐらいあんじゃねぇか?」

 

「ちょっとアルマさん! 走ると危ないですよ!」

 

「あらあらウフフ」

 

 姦しい声が反響して耳にとどく。そして――。

 

「やっほーい!」

 

 何かが湯船に飛び込み、盛大な飛沫が上がった。

 

「こらアルマ! 風呂は身体洗ってからにしろと――げっ! ノイン大尉!?」

 

「他にも人がいるんだから飛び込みは――ひゃあ!? ノイン大尉!」

 

「あらあら? こんばんは。大尉殿」

 

 ――またうるさい四人が来た。

 

 ノインは目を瞑り、頭から被った雫を手で払う。

 

「アルマ・シュティルナー少尉だったな」

 

「は、はひ!」

 

 先程飛び込んだシュティルナー少尉は裏返った声を上げて直立し、敬礼した。

 

 つややかな肌だ。治りかけの擦り傷の跡などが見て取れるが、全身に若々しい張りが感じられる。

 

 またひとつ打ち負かされたような気がして、ノインは深く息を吐く。もう何度目のため息か。

 

「なんだ? キサマは湯があったら飛び込まないとすまない性分なのか?」

 

「はい。いいえ大尉! 申し訳ありません! はじめて見る大浴場に興奮してしまいまして」

 

「……もういい。次は落ち着いて入れ。入浴くらいゆっくりさせてくれ」

 

 後半は小声だったが、心底からでた声だった。

 

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