目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
第135話 Side『宇宙の虎』
ジオン突撃機動軍本部。
フォン・ブラウンと並んで二番目の規模を持つ月面都市グラナダ。
もともとサイド3建設用資材の打ち上げ基地であり、ジオ・マッド社の開発、生産施設が置かれた重要拠点である。
そこにシーマは召喚されていた。
「海兵上陸部隊司令官代理シーマ・ガラハウ中佐。ご用命により出頭致しました」
突撃機動軍本部の執務室。
デスクに座った人物に向けてシーマは敬礼を取った。
「うむ。ご苦労だな」
鷹揚にうなずく人物に、シーマは内心で舌打ちを起こしたい気分だった。
突撃機動軍総司令キシリア・ザビ少将。
これまでアサクラを通して自分たちに過酷な任務を与えてきた親玉である。
部下に対するときもマスクを外さず、その表情は冷たい爬虫類を思わせる。
才があるのは間違いないが、同じ女として気に入らない、とシーマは常々感じていた。
「まずは先だってのルナツー襲撃作戦ご苦労であった。お前の潜入工作員が持ってきた情報は実に有意義なものだったよ。ドズルからも礼がきている」
「は、はぁ」
本部に呼ばれるのも、司令に直接会うのも初めてのことだ。戸惑いが強い。
しかも、次はどんな小難しい命令を与えられるかと思っていたら、予想外の労いの言葉であった。
長いこと上官があのアサクラであったため、面食らってしまうシーマであった。
「ルナツー内の構造も概ね把握できた。攻略時には実に有用となるだろう。よくやった」
「はっ!」
――今更持ち上げようってのかい? いったいどんなおためごかしさ。
「楽にして良いぞ」
敬礼を解き、相手を見る。鋭い目がじっとこちらを貫くような光を投げかけていた。
値踏みされているな、と感じながら緊張を悟られまいと、シーマは努めて無表情を装った。
「世辞は省こう。まず、本時刻を持ってシーマ・ガラハウ、貴様は大佐に任じられ、貴様が率いてきた海兵隊はこの私直属の部隊となる」
「は? このあたしが昇進?」
「不服か?」
「はい、いいえ少将! 格別のご配慮に感謝いたします」
だが、言葉とは裏腹に内心では大して喜べない。
おそらく、より面倒な任務を押し付けられることが想像できるからだ。
「感謝などいらん。お前たちはこれから更に過酷な任務についてもらうのだからな」
案の定予測は当たっていた。
「どういうことでしょうか?」
「貴様は『LA2080−17BP』を覚えているか」
少将の言葉に自身は記憶を探るシーマ。
「ラグランジュポイント……廃コロニー跡地ですか」
大戦前、教導隊がMSの実戦練習場としていた場所の一つだ。
サイド3の老朽化したコロニーがいくつか放棄された場所であり、実弾を用いた演習を密かに行った場所である。
シーマを含めた海兵隊もそこで演習を行ったことがあるため覚えていた。
「そうだ。貴様たちにはそこに向かってもらう」
シーマは違和感を覚えた。
指令書もなく、ただ口頭だけの命令。しかも、その口調には有無を言わせない圧力があった。
「その場にて、海賊が発見されてな」
「宇宙海賊ですか。まさかアタシたちにその退治をしろとでも?」
何かがおかしい。
宇宙において連邦の閉め出しが成功した結果、各宙域の治安は急速に悪化した。
その最たるのが、海賊連中だ。放棄された連邦の艦艇を奪取し、食料や資源を運ぶ輸送船を襲って略奪する。
各コロニーはその対策に苦慮していた。
だがそんなならず者たちを相手取るのに、自分たちのような特殊部隊を出すのはいささか過剰とも思える。
「不服か?」
針のような視線と言葉が、飛んでくる。
逆にシーマは反骨心が刺激された。
「お言葉ですが、アタシたちは鉢植えの鉢ではありません。あっちこっちと勝手に動かすだけで働くと思われるのは心外ですな」
「ほう」
キシリアの反応は予想外なものだった。
面白そうに目を細め、そのマスクを首元へと下ろしたのだ。