目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第136話 Side『宇宙の虎』

 

「このキシリア・ザビの命令を了承できんと?」

 

「命令もなにも、指令書もないものにどう賛同しろと?」

 

 苛立ちを隠そうともせずシーマは正面から言い放ってやった。

 

 ――舐めてんじゃないよ。こっちにもプライドってもんがあんのさ! 

 

 これまでアサクラを使っていいように自分たちを使ってきた黒幕だ。ここで意趣返しをしてやる。無論、自身と部下の立場が悪くなるだろうが、元々海兵隊の面々は創設にあたって個人のIDすら消された札付きだ。

 

 もし放逐されるなら、このまま海賊にでもなってやる。そうシーマは考えていた。

 

「書面には残せない作戦ということだ。相手はただの海賊ではない」

 

「また後ろ暗い作戦だというんですかね」

 

「そうなるな」

 

 素直にキシリアは認めた。

 

 意外さにシーマは肩透かしを食らった気分だ。相手はこちらの態度に激昂するでも、冷たくなるわけでもなく、淡々としている。

 

 むしろ、向こうから一歩、こちらの心情に近づいたような雰囲気すら感じられた。 

 

「海賊といったが、その構成は我らジオン正規兵の武装と同等だ。およそ1個中隊」

 

「それは……」

 

 続く言葉を失い、シーマは口をつぐんだ。

 

「貴様が察した通りだ。我が軍の一部将校が造反し、同ポイントにある廃コロニーを占拠した」

 

「なるほど、それは書面には残せませんな」

 

 裏切り者の始末。

 

 何度か請け負ったことのある任務だ。しかし、今回は相手が中隊規模というのが異常である。

 

「海賊、ということにしているが、賊軍は自らを『真のジオンを憂う者』と称し、密かに廃コロニーに核パルスエンジンを取り付けている」

 

 シーマは驚愕した。

 

「まさかコロニー落としでもする気ではないだろうね!?」

 

「そのまさか、だよ大佐」

 

「馬鹿げたことを。狂ってるのかい!」

 

 隕石群の落下により、地球環境は壊滅的な打撃を被ったとされる。水と空気という人類に不可欠な資源を汚染したジオンに対して他コロニーだけでなく、国内の自然愛好者(ナチュラリスト)どもからの非難の声は決して少なくない。

 

 連邦憎しというコロニー民の感情と、ジオン優勢の状況にあって、各コロニー間の経済交流が活発化していることでそれらの声は抑えられているが、もしもさらなる地球への打撃が行われれば、世論がどう沸騰するかわからなかった。

 

「南極条約があるでしょうに。なんだってそんな――」

 

「やつらテロリストにとって、そんなものは意味を持たんということだ」

 

「相当数の仲間が地上にいるのに、今更落とす必要があるとは」

 

「貴様の言を借りなら、狂っているのだよ、ヤツラは」

 

 上官の前ではあるが、シーマは抑えられずに舌打ちを返した。

  

 テロリストの鎮圧ならば、自分たち海兵隊を使わずとも十分使える手駒がキシリアの手元には大勢いる。それこそ、キシリア本人に忠誠を誓っている特殊部隊がいくつもあるほどだ。

 

 信用度という意味なら、そうした部隊を使う方がよいだろうに。

 

 わざわざ海兵隊の中でも曰く付きの自分達を直轄部隊としただけでなく、昇進させてまで釣る必要があるのか。

 

 この女狐はまだ大事なことを話していない。そうカンが告げている。

  

「貴様は軍人として優秀だが、直情傾向があるな。軍で上に立つつもりなら、女は捨てることだ」

 

 ――余計なお世話なんだよ! 上から気取りやがって。

 

「申し訳ありません。育ちが悪いもので」

 

「良かろう。お前の気骨は評価する。まだ知りたいことがあるという顔だが?」

 

「はい。テロリストを鎮圧するのは構わんのですが、なぜ我々なのでしょうか? コロニー落としなんぞ仕掛けようという連中です。外部に情報が漏れるのもまずいのでしょう?」

 

「貴様たちの実力を正当に評価したというのでは不服か」

 

「……軍で、あたしたちがどのような評価を受けているか知っているでしょうに」

 

 ジオン軍の汚れ役。派閥政争の道具として、大戦前から同胞すら始末してきた。反ギレンを掲げる国民を、1つのバンチごと虐殺した。

 

 自ら望んだものではない。すべて上からの命令を、歯を食いしばりながら遂行したものだ。

 

「……テロリストどもは、『真なるジオン』を名乗っている」 

 

 それがどうしたというのだ。

 

 そこまでで、シーマの脳裏に1つの可能性が浮かび上がった。

 

「まさか、ダイクン派ですか?」

 

「そのまさかだ」

 

 過去から迫りくる悪寒が、シーマの全身を這い回る。

 

 

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