目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第138話 Side『宇宙の虎』

 

 少将直轄というのは伊達ではなかった。

 

 先の作戦で消耗した以上の物資が補充されただけでなく、グラナダにて、新型のザンジバルⅡ級を受領した海兵隊は、慣熟航行を名目に作戦領域へと向かっていた。

 

 旗艦リリー・マルレーン。 

 

 古巣であった艦と同じ名を引き継いだこの艦の艦橋にあって、シーマの心は晴れない。

 

 キシリアはこちらの恫喝じみた態度に怯むこともなく、ただ冷たく任務遂行と、失敗時はこちらの首を切ると宣言した。

 

 つまり、テロリストによってコロニーが大質量兵器として使用された場合、そのテロリストと共と同じく全員を消すということだ。

 

「せっかく新造艦まで貰って昇進したってのに、浮かない顔じゃねぇですかシーマ様」

 

「大佐と呼べデトローフ!」

 

 自身の副官で艦長でもある男を一喝し、シーマは鼻を鳴らした。

 

 コロニーを使ったのは海兵隊を含むテロリストたちの独断。

 

 失敗すればそうなる。

 

 だがそれをする必要はなんだ?

 

 ずっと考えていた。

 

 首を切る必要があるのならば、わざわざ直轄部隊に任じる必要はない。

 

 今まで通り別の仲介役を置いて、ただ命令だけを下せばいい。いざというときはそいつ共々捨て去ればいいだけだ。

 

 このテロリストの存在が明るみに出れば、そして自分たちが失敗してコロニー落としなど行われれば、彼女(キシリア)は確実に政治生命を絶たれることになるだろう。

 

 こちらを切り捨てるつもりなら、なぜわざわざ紐付けなどしたのか。

 

 ――少将は、ギレンと折り合いが悪いって聞いたことはあるが。見せかけだけか?

 

 政治というやつはいつだって複雑だ。一介の兵士でしかないこちらには、何も伝わるものはない。

 

 誰かの手のひらの上で踊らされているという事実が、シーマにとってはひどく不快だった。

 

 艦橋のドアが開き、男が入ってきた。

 

「大佐殿、そろそろ宙域に着くと思われますが」

 

「まだ時間はある。おとなしく座ってな、大尉」

 

 長い銀髪を後ろで結ったヘアースタイルの美丈夫だ。

 

 精悍すぎる顔だちと身に纏う雰囲気が、年齢よりも老成した人物であるように周囲に見せている。

 

 銀髪の男――アナベル・ガトー大尉は敬礼をすると、ゲスト用の席へと腰を落ち着けた。

 

 ――肝が座ってんじゃないか。

 

 クルー全員の敵意を込めた視線が、ガトーに投げつけられる。中にはこれみよがしに舌打ちをこぼす者までいた。それらのすべてに気づいているだろうに、男は微動だにもせず、ブリッジの強化ガラスの向こうの宇宙を見つめていた。

 

 シーマは視線だけで部下の軽はずみな行動を掣肘すると、自らも舌打ちしたい気分を追いやった。

 

 この大尉は、急遽、宇宙攻撃軍から派遣されてきた人間だ。

 

 ソロモンの第302哨戒中隊の隊長を務めていた男。

 

 件のテロリスト軍には、この第302哨戒中隊のメンバーの大半が参加しているという。

 

 中隊隊長であったアナベル・ガトーは部隊からの信頼も篤く、賊軍に誘われもしたが、その人物を粛清したのだそうだ。

 

 つまり今回のテロリスト軍の動きは、このガトー大尉からもたらされたものであった。

 

 そして、自らの身の潔白と、旧友ともいえる部隊員の説得を願い出てここにいる。

 

 要は今回のお目付け役と言えた。

 

 ――ったく。諜報部は何やってんだい。

 

 廃棄されたコロニーといえど、占拠されるまで気づかないなんてどうかしている。

 

 それとも、諜報部にまでダイクン派が喰らいこんでいるのか。

 

 ――気に食わないね。ああ、まったく気に食わない。

 

 自らが出すピリピリとした空気に、デトローフが肩を竦めるのを横目にして、シーマは前方の暗い深淵をにらみ続けるのだった。

 

 

  





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